彼の双眸に映る景色は   作:sophist

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6 アル晴レタ日ノ午後

「ところで、龍驤さんはどこに居ます?」

 昼食を食べながらここに唯一いない人の行方を尋ねる。

「哨戒です。『誰か一回はしとかなあかんやろ』と言って、出ていかれました。そろそろ帰ってくると思いますよ」

はす向かいの鳳翔が答える。

「ただいま帰ったでー」

丁度話題の人物が現れた。噂をすればなんとやら。

「お疲れ様です。何か有りました?」

と僕は聞いた。

「特に何も無かったで。キミらは仲良く敷地内を巡っとったみたいやけどね」

どこかから見られていたのだろうか、と思い暫くして思い付いた。そっか、艦載機か。

「ご馳走さまでした」

 僕は食べ終えた食器を手早く片付け、執務室に戻った。そして十数枚の書類とメモ用の紙を数枚取り、来た道を戻る。再び食堂に戻ると球磨さんが食べ終えていた。

「食べた人もこのまま食堂に居て下さい。ちょっとしたい事が有りますから」

「何をするクマ?」

「えーっと、話し合いの様な、……ロングホームルームみたいな感じかな?」

「ろんぐほーむるーむ?」

発音が完璧にひらがな調な数名。ほかの子も皆知らない様だった。

「まあ、そうだね、名付けて鎮守府会をしたいと思うよ」

 

 昼下がりの陽気が眠気を誘う午後。僕は席に座って話し始める。

「まあ、話し合いと言っても会議とか会談みたいな厳めしいものじゃないから。気楽に気張らずにね」

対面に五人、左右に二人ずつ座った各々に、この企画の意図を告げる。

「僕達がこの鎮守府でどういった行動をするのかとか、僕が個人的に聞きたい事とか、あとは共有しておきたい事とか、そういった事を話しちゃおうっていう場だね。まあそれに限らず話したい事を話していいよ」

「じゃあ、青葉まだ司令官に聞きたいことが」「それは後で聞くから」

油断も隙も無いな。流石に収拾がつく様にはしておきたいから言葉を遮らせてもらった。

「それでは最初は、ここの行動指針についてだね」

そして座談会とも言うべきそれは、踊りだした。

 

「それでは、明日から活動をしていきますので、宜しくお願いします」

 最後に回した『僕への質問』を真摯に答え切り―但し青葉さんの死球同然の質問にはお茶を濁した―目出度く鎮守府会(三十分程度)はお開きとなった。僕は申し訳程度に書いたメモを見つめる。

「あっ、そういえば司令」

声の主は不知火さんだった。

「何だい?」

「秘書艦は誰になさるのでしょうか」

 秘書官。いやこの場合は秘書艦か。提督の業務の遂行を補助する、文字通り秘書である艦娘。果たして田舎とも言えるこの鎮守府において、それが必要となる量の業務が起こり得るとは思えないが。それを踏まえなくても、

「誰でも良いと思うけど」

「……結構キミ適当やね」

僕がそう返すと、龍驤さんが呆れたような口調で言ってきた。

「そうなんですよ。僕は結構適当でしてね、学友に適当人間とまで言われましたよ」

「それホンマか?」

「いえ嘘ですよ。……そうだね、秘書艦はじゃんけんでもして決めたら?週単位ぐらいで交代はしていくけど」

 全員一度は書類仕事をした方が良いと思うから交代制にした。経験は積めるなら積んだ方が良いし。それと万が一の為に。賑やかにじゃんけんをし始めた彼女達を尻目に、僕は白紙に字を書き始めた。

「……いつもの、だね」

僕の書いていく字を見てキリが隣で言う。

「まあね」

と返す。人間やろうとする事は、どこでもあんまり変わらない。

「お兄さんは心配性だね」

「とういよりかは不安性、不安症なのかもね」

 事象の羅列、列挙、整理、整頓、類推、推察。出来る事はまだそんなに、というか殆ど無いが、僕は忘れ易いので一々書き起こす。

 果たして誰かさんがその様子を見つめていた、かもしれない。

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