ハリー・ポッターと幻想殺し(イマジンブレイカー)   作:冬野暖房器具

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 ハグリッドってこんなしゃべり方だったかなーと思うこと数時間。

 諦めました。


12 繋がる力

 

 

 

 

「んー先生。もうちーとばかし右だ、右」

 

「うーん……こうか?」

 

「おお、いい感じだな」

 

 マクゴナガルの話し合いから1週間後。あれからハーマイオニーの件についてはまったくといっていいほど進展は無く。胸の内になんともいえないモノを抱えたままに、上条は坦々とホグワーツでの日常を過ごしていた。

 

「しっかし、ハグリッドも忙しいんだな。こんだけデカイ城の飾りを一人でなんて」

 

 そして現在。ハロウィンを前日に控えた中、上条はハグリッドと共ににホグワーツの飾り付けを手伝っていた。内容としてはハグリッドが上条を肩車し、上条はフックの刺さったミニカボチャを各所に結んで吊るす、といった具合である。

 

「んにゃそうでもねえ。マクゴナガル先生やフリットウィック先生なんかは何日も前から準備しちょるみたいだしな。俺にできるのは精々、育てたカボチャを吊るすくれぇだ」

 

 上条を肩車しながら、ハグリッドは陽気な声で答えた。特段卑屈になっているというわけでもないようなので、そうなのかと上条は適当に相槌をうつ。ハロウィンに向けてこつこつと、ミニカボチャの世話をする大男(ハグリッド)を想像しながら、上条はくすりと笑った。

 

「にしても助かったぞ上条先生。まぁ、俺だけでも飾りつけは毎年できてたんだが……あんまし器用じゃねえんでな。先生だとあっという間だ」

 

「お礼を言うのは俺の方だよ。みんな何かしらハロウィンの準備をしてるみたいだけど、俺に出来る事はなかなかなくてさ。ちょっと気まずいなと思ってたところだったんだ」

 

 これは上条の本心だった。生徒のみならず教員までもがハロウィン一色ムードの中で、まったくもってそのビックウェーブに乗れない東洋人。実質的に上条が関わっていたハロウィン的イベントといえば、時たまウィーズリー兄弟が持ってくるコウモリだったりフクロウだったりをカボチャに変えるという、不思議な挑戦の失敗作を右手で粉砕するだけだったのだ。

 

「気まずい? いやいや、先生はハロウィンの終わった後の片付けが主な仕事だと聞いちょる。気まずさなんか感じる必要ねえ」

 

「うん?……ちなみに片付けの件は誰から?」

 

「? ダンブルドアがいっちょったが……」

 

 上条としてはそんな話は聞いてなかった。飾りつけを手伝えない上条を誤魔化すための発言なのか……あるいは本当に仕事があるのだろうか。

 

(魔法は使えないし片付けって言ってもなぁ……幻想殺し(イマジンブレイカー)で手伝えることがあるのか?)

 

 ぼんやりとそんな事を考えながら、上条は自らの右手を見遣る。ユニコーンのたてがみによって編まれた手袋。この学校のスーパー魔法使い兼校長先生作の、屈指の不思議アイテムである。

 

(最近は幻想殺しの特性が掴めてきたとかなんとか言って、私室では手袋を外してもいいって言われたけど……本当に大丈夫なのか? 一体どんな原理でコイツは作られてるんだか)

 

「ほい先生。次はここを頼む」

 

 ハグリッドの声にはっと我に返り、手に持っていたミニかぼちゃを吊るし始める。上条の手元にミニかぼちゃが無くなると、ハグリッドは右手に持ったカゴから新しいモノを差し出してきた。

 

 そうして、何個目かのかぼちゃを上条が右手で(、、、)掴んだ瞬間―――

 

 バキッ! という音と共に。カボチャは突如として、一匹のヘビへと姿を変えていた。

 

「……は?」

 

 全長は上条の身長ほどはあろう大蛇の出現だが、上条に恐怖はなかった。あまりにも突然の出来事に、上条は思考を停止させていたのだ。そしてヘビが飛び掛らんと、全身に力を入れた時、上条の止まっていた時間がようやく動き出した。

 

(なっ……まず―――

 

 魔法でもなんでもない動物の強襲。幻想殺しで防げないのは間違いなく、ヘビ相手ではガードの仕方もわからない。避けるにしても現状はハグリッドの頭の上という絶望的な状況である。

 

 詰んだ。『如何にして防ぐか』という発想は無くなり、『毒蛇だったらどうしよう』という噛まれる前提の思考が上条の頭を埋め尽くす。せめて首だけはと、両手を構えたその時―――

 

「おっと危ねえ」

 

 飛び掛ってきた大蛇が視界から消えた。猛スピードで横合いからやってきたソレは大蛇の頭を正確に捉え、存在ごと掻っ攫って行ったのだ。

 

「どうどう。うーむ、コイツは森にいる感じの奴じゃねえな。生徒のペットか?」

 

「……えーと、ハグリッドさん? かぼちゃから殺意MAXこんにちわを果たしたそのでっかいニョロニョロに対しての感想が、まさかそれだけとは言いませんよね?」

 

 混乱のあまりよくわからない事を口走る上条に対し、ハグリッドは生返事をしながらヘビと戯れている。ハグリッドのデカイ指がヘビの首根っこを掴みつつ頭を撫でているのに対し、蛇はどうにかハグリッドの右腕をへし折ろうと巻きついていた。

 

「……それ、大丈夫なのか?」

 

「何がだ? ああ、コレか。なに、コイツはただじゃれてるだけだ。可愛いだろ?」

 

 絶対違う、と喉元まで出かかった反対意見を上条は飲み込んだ。とにかく助かった、とハグリッドに礼を言おうと思ったのだが、冷静に考えればあのヘビはハグリッドのミニかぼちゃに化けていたのである。あれがもしハグリッドなりのサプライズなのだとしたら……上条も渾身の力でもって、彼とじゃれつく( 、 、 、 、 、 、)必要が出てくるだろう。

 

「ハ、ハグリッド!」

 

 そんな二人の横合いから、半ば悲鳴のような声が上がった。ハグリッドが勢いよく振り向き、上条はたまらず振り落とされる。頭を打ち付け、ほっぺたを大理石の床にくっつけながら見上げると。上条の目は紫色のターバンを捉えた。

 

 クィリナス・クィレル。ホグワーツにて『闇の魔術に対する防衛術』を担当している教師である。

 

「クィレル先生。どうしたんですかいこんな所で」

 

「い、いやその、そのヘビの、事なんだがね?」

 

 どもりながら、恐る恐るといった感じでハグリッドの右手を指差すクィレル。ああこれかという感覚でハグリッドが右腕を突き出すと、クィレルは悲鳴を上げて2歩3歩と後ずさりしてしまう。

 

「ど、どうにもや、『闇の魔術に対する防衛術』で、使う奴が逃げたみたい、なんだ。す、すまないがそれを……」

 

「なんだ、そうだったのか。持ち主が見つかるまでは飼ってやろうと思っとったんだが、それじゃ仕方ねぇな」

 

「!? い、いや手渡しはやめてくれ! そいつは猛毒を持ってる上に大変危険な種類なんだ!」

 

 急に饒舌になるクィレルに面食らいつつハグリッドはとある事を思い出し、自らの頭の上へと視線を向けた。

 

「なに!? 上条先生は大丈夫か? ……あれ? 上条先生はどこ行った?」

 

「か、彼ならそこで倒れているが……」

 

「大丈夫か先生!?」

 

「ああ、上条さんは大丈夫ですのことよ……って、毒蛇を手にぶら下げたまま近づくなっての!!」

 

 ごろごろと床を転がり、ハグリッドの魔の手(ヘビ)から逃れようと上条が必死になっていると。そのわき腹をそっと踏みつけ、上条の回転を止める存在がいた。

 

「……何をしている」

 

「……話せば長くなるんですが」

 

 不機嫌なコウモリ、と表現しても差し支えない。魔法薬の先生がそこにいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ヘビが紛れ込んでいた?」

 

「そうそう。ハグリッドのかぼちゃにな。いやーホントびっくりした」

 

 その後のことである。ひとまずあの蛇はハグリッドが腕に巻きつけたまま運ぼうという事になり(クィレル先生が懇願した)残るミニかぼちゃも少ないこと、お昼も近いという事から上条とハグリッドはそこで別れることにしたのだ。

 

「右手で触った途端に変わったから、俺が変身の魔法を打ち消しちまったんだろうな。とにかく、生徒に被害が出なくてよかったよ」

 

 結局のところ、あの毒蛇が紛れていたのは生徒の悪戯である、という意見がハグリッドとクィレルの間で下されていた。上条としては物騒なこと極まりない結論なのだが、それが魔法界のスタンダードなのかなと、ひとまず強引に納得する事とする。

 

「……ふん。そんな時まで生徒の心配か」

 

 そして今。上条とスネイプは食堂までの廊下を共に歩いていた。スネイプが上条を質問攻めにしながら、二人仲良く足を揃えて歩くその様相を見て、時々すれ違う生徒や教員は口をあんぐりと開けていた。

 

「別にいいだろ、一応先生なんだから、生徒の心配をするくらいは……」

 

「貴様のそれは過保護すぎると言っているのだ。例のグレンジャーの件に関しても、わざわざグリフィンドールの寮監へ相談に行ったらしいな」

 

「んげ、もう知ってるのかよ……そうだよ。何か問題でもあるってのか」

 

「相談に行くのはまぁいい。だがその様子だと、まだ諦めていないようだな。それが問題なのだ」

 

 ぴたり、とスネイプは足を止めた。湖の見える廊下の片隅で上条になぞ目をくれず、スネイプは吐き捨てるように言葉を続ける。

 

「孤独は悪ではない。むしろそれで磨かれる力もあるのだ。それを妨げるのは明確な悪だと我輩は考える。本人がそっとしておいて欲しいと言っているのにそれをさせず、哀れみの感情を向けるのは侮辱と同じなのだ」

 

 短い言葉だが、重みがあった。まるでその言葉の内に、セブルス・スネイプの半生が詰まっているような。それほどまでの重さを、上条は感じていた。

 

『それが生来の気質であれば強制する事もないでしょうし、たとえ友人が少なくとも、大成した魔法使いを私は知っています』

 

 上条の頭に、マクゴナガルの言葉がよぎる。彼女の言葉はもしかしたら、スネイプのことを指していたのかもしれない。言葉は違えど、そして寮が違ったとしても。二人の学び舎の導師の声は、この瞬間だけ一致したと上条は思った。

 

「……それでも俺は、諦めきれない」

 

 その言葉に、スネイプは憎しみを込めた表情を上条に向けた。だが上条は怯むことなく、その顔をまっすぐ見つめ続ける。

 

「アイツが心の底から友達を求めてないって、アンタは本当にそう思うのか? ほんの些細なすれ違いが続いて、それがどうしようもない食い違いに繋がって。どうしようもない亀裂を前にして、アイツが途方にくれちまってるとは考えなかったのか?」

 

 その言葉にスネイプは身を強張らせた。見開かれたその瞳を少しの間睨み返した後で、上条は肩をすくめて、幾分和らいだ口調でこう続けた。

 

「確かにお節介かもしれないけどさ。侮辱だのなんだのと思われちまっても、勘違いならそれでいいじゃねえか。俺が嫌われるだけなら、それで何の問題もないんだから」

 

「……随分と、簡単に言ってくれるな」

 

 そう言い残して、魔法薬の教師は去っていった。どうやら彼は食事を取らないらしい。

 

 その後ろ姿は上条から見て、何故だかとっても疲れているようにも見えた。

 

 

 












上条「……そういや最近はカボチャ持ってこなくなったな。もう飽きたのか?」

フレッド「いやいや上条大先生」

ジョージ「貴方様のお陰様で我々はついに……」

上条「わかった、わかったから。その何か企んでる風の話し方は止めろって。で、結局何がしたかったんだ?」

フレッド「ま、ぶっちゃけるとね上条先生。俺たちが作ってたのはシンプルに、頭だけをカボチャに変える薬なんだよね」

ジョージ「魔法なら一撃なんだけど、魔法薬で安全にってなるとそこそこ難易度が上がるからさ。動物で実験してたってわけ」

上条「ふーん……ってちょっとまて。って事は次は」



 瞬間、壮大な爆発音を背景に。双子の兄弟はニヤリと微笑んだ。

フレッド「それでは先生」

ジョージ「お望み通り、カボチャをお持ちしましょう」

上条「 」



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