「……うわぁ」
玄関から出るとそこには20はあった大根がすべて引き抜かれていた。
玄関の前に20体の大根人形が転がっている光景は、かなりシュールだ。
これ、死んでないよな?
「ご、ごめんなさい」
「おにーさん?」
後ろからひょっこりと顔を出すキマ。
「いや、何でもない」
「おにーさんおにーさん!きょうはどこにあそびにいく!?」
「えっと……遊びにかぁ」
「キマはね、おにーさんのいきたいところにいきたいな!」
「あー、うん。俺のいきたいところかぁ……」
キマは、見た感じ両生類、なのか?海にいたっていってるけど、淡水は平気か?
「それじゃあ森にでも散歩にいくか」
「いくー!!」
「うおっ」
背中に飛び乗ってくるキマ。軽いな……。軽いけど、温かい。
「それじゃあ行くか」
「おぉ!!」
壊れたままの玄関を後にキマを肩車したまま森へ歩いていく。
「そういえば、昨日壊したドアはあとで直してもらうからな?」
「き、キマはすこしにがてかもしれない」
「……まぁ、やってもらうけど」
「うぅ……」
「痛い痛い。あんまりしめるなよー」
「いじわるするおにーさんにはこれくらいしないといけないんだよ!」
「別に意地悪はしてないけどな……」
森といってもそこまで木が生い茂っているわけじゃなくて、どっちかというと公園に近いところにいくことにした。森は割りと遠いし、公園っぽいところには川も流れてるから涼しいだろう。
「キマは淡水は大丈夫か?」
「ん?たんすい?なにそれ?」
十五分ほど歩いて一番近くに流れている川についた。歩いている間ずっと肩車していてキマがいくら軽くても多少は肩が重い。
「あー!おさかながいる!」
「ん?そういえば、キマはいつもは何を食べてるんだ?やっぱり魚か?」
「キマはエビがすき!おかーさんがいっつもとってきてくれる!」
「キマは苦手なのか?魚とり」
「とくいだよ!でも、いっつもまいごになっちゃう……。まいごになってクイミにばかにされるの…」
「クイミ……そういやベストラさんも言ってたな。キマのお姉さんだったっけ?」
「むぅ、ちがうよ!!キマのほうがおねーさんなの!」
「あれ、そうなのか?」
「そうなの!キマのほうがおねーさんなの!」
「まぁ、それはどうでもいいとしてっと…」
肩車してるキマを持ち上げる。
「わ!」
「ほら、魚とってみようぜ?」
「うん!」
ズボンをまくりあげてキマといっしょに川に入る。冷たくて気持ちいいわ、
「つめたーい!」
「思ったより冷たいな。……キマ?」
「うーん」
川に入って泳ぐキマ。やっぱりこう見ると人間じゃないな。めちゃくちゃすいすい川を泳ぐ。この川じたいは膝までしかないけど、その中をすいすい泳ぐ。
「おにーさんもおよごー」
「いや、俺はいいや」
「えぇーきもちいーよー……」
「あんまり遠くまでいくなよ?」
「ふふーんキマはおよぐのはやいんだー」
「わかったから、あんまり遠くにいくなよ!」
キマはあっという間に上流まで泳いでいく。確かに早い。
「……大丈夫か?」
一人で川辺で座る。今でここに来て危ない目には会ったことはなかったけど、だからキマがどっかへいっても安心する訳じゃないし……。
俺は立ち上がるとキマが泳いでいった方向に歩き出した。
「あぁもう!俺は保護者か」
「グルルル……」
「!?」
歩き出したとたんに後ろから何かのうなり声が聞こえる。
「クマ………?」
いつのまにか俺のすぐ近くまで全身真っ白のクマが近づいてきていた。
人間あまりにもビビったり慌てたりすると一周回って冷静になるらしい。
「………クマ……」
「グルルル」
ゆっくりと近づいてくるクマ。段段と距離が近くなり目の前までくる。
「…………こんにちは……?」
「…………ぺろ」
「うっ!」
顔を近づけたクマがペロペロと俺の顔をなめる。
なんだ?食べる前にキレイにしようって感じ?
「おにーさんが、キマのお婿さん?」
「え?」
クマが喋った。なんだこの世界。クマも喋っちゃう感じなのか?全生物皆兄弟?大根妖精さんたちごめんなさい。
「………キマのほうが先にけっこんなんて、クイミは許さないの」
「グルルル……ペロペロ」
「うわっぷ、ちょっ、まっ、やめって……!」
「うわっ!クマごろー!めっ!……おにーさん大丈夫?」
「……?だれ?」
喋ってるのはクマじゃないみたいだ。
ベトベトする。
……なんか、俺ってこんなに冷静だったっけ?何が起きてもすごい観察して考えてる。
「おーい!おにーさーん?大丈夫?」
「あぁ、うん。ベタベタする以外はなんともない」
「あはは……」
どうやらクマの背中に誰か乗ってるらしい。クマが大きすぎて背中に乗ってる誰かが見えなかったみたいだ。
「よっと」
クマの背中から飛び降りてくる女の子。キマとそっくりだ。キマと違うのはからだのラインに所々黒が混じっているところだ。というかこの種族は何でこんなエロい格好なんだ。
「クイミ?」
「あれ?おにーさんはクイミの名前知ってるの?」
「キマから聞いたことがあるんだよ。キマのおねーさん、だっけ?」
「そう!クイミはキマのおねーさん!キマよりもずっとずぅーっとお、と、な、なおねーさんなの!」
「そっか、まぁとりあえずベタベタするんだけど?」
「うぅ…ご、ごめんなさい」
「はい、良くできました」
決まりが悪そうにこっちを見るクイミとその後ろで反省!みたいなポーズをしているクマ。
「その、クマは?」
ハンカチでクマのよだれを拭き取りながら聞く。
「ん?この子はクマごろー!クイミの友達だよ!」
「グルルル」
「すごい、きれいなクマだな」
「でしょでしょ!!クマごろーはクイミのじまんの友達なんだ!!」
「クイミは、どうしてここに?魚とりか?」
「あ!そうだ、おにーさんに会いにきたんだった」
「俺に?」
「そ!キマはまだ子どもだからしらないけど、おねーさんなクイミはしってるんだ!けっこんするときはおたがいのごーいのうえじゃないとできないんでしょ?」
「まぁ、そうだな」
「キマなんてお子さまよりもおとななクイミのほうがおにーさんにお似合いなんだよ?だ、か、ら、クイミがおにーさんとけっこんしてあげる!」
「………いや、別にいいかな……」
「えぇ!!どうして!?」
「いや、逆に何でクイミは俺と結婚したいの?初対面だろ?」
いや、それだけでいったらキマとも初対面なんだよな……べ、別に結婚する訳じゃないからな?
「うっ、べ、べつにクイミよりも先にキマがけっこんするなんてうらやましーなーなんて思ってるわけじゃないんだよ?クイミはおねーさんだからキマよりも先にけっこんしてキマにいろいろとおしえてあげないといけないんだよ!」
「別に、結婚すること無いんじゃないか?」
「ダメなの!おとななクイミはけっこんしないといけないの!!」
「まぁ、いつかは結婚できるんじゃないか?クイミは可愛いし」
「ふぇっ!!」
顔を真っ赤にするクイミ。
感情が顔に出やすいところもクイミとそっくりだな。
「あたたたたたたたりまえなの!!クイミはキマよりもずっとずっと大人でセクシーなんだから!!」
「あーー!!クイミだ!」
「!?キマ?」
川からキマが飛び出してくる。
「おにーさーん!キマ、えびつかまえたよ!!」
「うわっ!抱きつくな!」
「こら!キマ!クイミのだんなさんに勝手に抱きつかないで!」
「……?おにーさんはキマのだんなさんだよ?」
「違うの!おにーさんは子どもなキマじゃなくておとななクイミとけっこんするの」
ギュゥ
キマが胸元に飛び込んできたのに対抗してかクイミが背中に乗ってる飛び乗ってくる。
キマよりは少し重いな。っていうか、キマが川から上がってすぐに飛び込んできたから胸元からズボンにかけてビショビショになってる。
なんだこのロリハーレム。
「……クマごろだっけ?お前も大変そうだな」
「グルルル……」
俺の後ろで何やら寝転がっているクマに話しかけると疲れたような鳴き声がかえってきた。
「キマ?とりあえず濡れてるからどいてくれるか?クイミも、とりあえず降りてくれ」
「「えぇ~~」」
「えぇ~じゃない。このままだと風邪引くからな?それは困るだろ?」
二人とも根は素直だからしっかりと頼めば渋々ながらもどいてくれる。
「家に戻ろうか。俺も濡れちゃったし、クイミたちはお腹減ってるだろ?」
「わかった!!」
「別におなかへってないけど、おにーさんがどうしてもっていうなら食べてもいいよ!」
クイミはクマに飛び乗り、キマは俺の肩に飛び乗る。
「あぁ!!キマずるい!クイミもおにーさんの肩にのりたい!」
「いや、さすがに二人は勘弁してくれ……今度やってやるから、な?」
「むー!!ぜったいだからね!やくそくだよ?」
「ああ、約束だ」
指切りげんまん。