ささくれ   作:oceano

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カーテンが締め切られ、蛍光灯とパソコンの光だけが照らす室内。

そこに体育座りでぽつんとしているひとつの人影。

ボサボサの黒髪を一つにまとめ、死んだ魚のような目をした、隈を拵えた少女だ。

タンクトップにパーカーを着込み、中学校などでよくありそうなよれよれのジャージを身につけている。お世辞にも綺麗とは言えないその様は、彼女の人柄を模しているように見えた。

 

彼女の名前は山村深智。

今日『頭痛がする』と仮病で学校を休んだ少女だった。

 

そんな彼女には、目下の悩みがあった。

 

それは、友達ができないこと。

 

今までの山村は、そういったことを気にしなかった。それには彼女の悲惨とも言っていい過去が影響しているが、そんな過去にもめげず、博愛主義を名乗って生きてきた。

 

それがどうして急に気にし始めたのかと言えば、彼女が所謂『オタク』と呼ばれる存在であり、それを語る人間が全くもっていなかったからである。

 

過去の出来事から交友に重きを置いて、SNSサービスなどは殆ど利用してこなかった。そのせいで恐る恐る始めたTwitterなどのサービスを使いこなすことが出来ず、インターネット上ですら友達ができなかったのだ。

 

山村は落ち込んだ。

そりゃあもう物凄く落ち込んだ。

敬語を使うのはアルバイトをやっているおかげか慣れていると思っていたし、礼儀は欠いていなかったはずである。何がダメだったのかと、考えに考えているうちに眠ってしまい、今日提出の課題をやり損ねてしまったが故に学校に行きずらく、彼女は勢い余って学校を休んでしまったのだ。

そんな決断力があれば友達など簡単に作れそうではあったが、そこは初対面から真面目そうと言われイメージを崩そうとふざけてみたりと、努力の方向性を間違え続ける山村である。固定の友達が作れずに、クラスでのいじられ役になるくらいだった。

 

友達が少ないのは元からであったが、二三年と持ち上がりのこの学校で、友達作りに躓くのは大きな失態であった。

ネガティブ思考の気がある山村は、パソコンで二次創作サイトを見ながらうじうじと妹が帰ってくるのを待っていた。妹は同士のいない山村にとって唯一と言っていい語り仲間である。

 

「はぁっ。……いいなぁ」

勢いのあるため息をつきながら山村が眺めていたのは、『青の祓魔師』の二次創作作品。様々な原作の二次創作作品を見る彼女の最近のブームはコレだった。

 

『青の祓魔師』。

加藤和恵作の、アニメ化・映画化までした人気ダークファンタジー作品である。

 

並々いる個性豊かなキャラクター達の中でも彼女のお気に入りは、『志摩廉造』というピンクに似た茶髪の青年だった。

 

幼い志摩廉造が、血筋上身分が違う幼馴染みを身を張って守り、最期には悪魔との契約を果たし魂を捧げて死ぬ。

ある時機会がありそういった作品を見てからというもの、そんなストーリーに虜になってしまっていた。

 

「………………志摩くんは、『家族』って言葉嫌いなのかなぁ」

 

今しがた眺めていたキャプションの文には、その作者の志摩廉造に対する愛が語られていた。

曰く、「志摩は『家族』という言葉は嫌いそうだ。明陀を連想してしまいそう。」

 

山村はその作者の作品を眺めていた手を止めた。

そうではなさそうだなぁ、と思ったのだ。

山村が志摩の状況にあるなら、『家族』という言葉は、忌避こそすれど嫌わない。

確かに、不浄王篇では身内を好ましく思っていない描写があった。彼の身の上は少々特殊であり、宗教という立場の中にあれば、血統を守ろうとするのは必須であろう。

事実、不浄王篇を読んでいた当時山村は、不器用な愛を感じながらも血統を守ることに執着する様に、薄気味悪いものを感じていた。

しかしどうだろう。イルミナティのスパイとして頭角を表した時。彼の父親は最後まで反対していたのだ。

それを受け止める志摩。賢い彼のことだ、きっと自分が不器用ながらに愛されてきたことを知っていただろう。それでいて、それ以上を望むだろうか。『志摩家』を大事にしない理由には、ならないのではないか。

 

『明陀』を嫌っても、『家族』は愛している。

だからこそ、勝呂の考える『家族』とは全く違う。

志摩の『家族』は『志摩家』だけ。

勝呂の『家族』は『明陀』だ。

 

勝呂の『家族』が『明陀』であれば、

志摩の『家族』は『明陀』にならざるを得ない。

 

そういう家だから。

そういう血筋だから。

理由はただそれだけで。

 

『家族』を簡単に覆す『明陀』だから。

彼は明陀が嫌いなんじゃないかなぁ。

 

そんな事を考えている内になんだか眠くなってきて、山村は潔く寝てしまうことに決めた。彼女の眠りは相当に深く、夜中地震が起きてもぴくりとも動きやしないレベルである。

帰宅時間が遅い父親の希望で、夕飯は皆で食卓を囲む山村家。夕飯というよりは、夜食とも言っていい時間に食べる。

一度寝てしまえば起こしてこそくれるものの、根気よく起こしてくれる訳では無い。一度声を掛けて、それで終わりだ。山村はいくら起こしても起きないので、彼女は今晩夕飯を食べないでいる、という決意をした事になるのだ。まぁ、そんなに大掛かりに語る事でもないのだが。

 

布団に入り、目を瞑った所で、妹の声がした。

やっと帰ってきたか、と頭の裏でぼんやり思いながら、山村は意識を失うように眠りに落ちた。

妹とは明日また話せばいい。

そう思いながら。

 

 

 

 

 

 







山村深智
コミュ障JK
敬語が固い
友達いない歴=年齢
軽度のヲタ
機械オンチ
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