彼は別の場所へと行く。しばらく経つと辺りに人が一切居なくなる。それは何を意味するか。
人払いルーン。おそらく、それなのだろう。
(なんだ? さっきのヤツではないよな? だったら、ステイルか神裂のどちらか?)
すると向こうから、出てきたのは、ステイル=マグヌスだった。タバコを吸いつつ、彼は、呟く。
「君、さっきの黒い修道服の男と話してたよね。君……まさか、あちら側か?」
そのあちら側は、おそらく『魔術側』かということだろう。やはりヤツは『イレギュラー』なのだろう。
「……さぁね。アンタが言ってることの意味がこっちにはさっぱりだ」
あえて、挑発する。こう言えばきっと彼は、魔術を使うだろうと彼は思う。
「そうか……だったら」
ステイルは懐から、ルーンを取り出す。そして。
「巨人の苦痛に贈り物を!!」
そう、詠唱すると炎の剣が飛び出す。それを使い、こちらに攻撃を仕掛けてくる。それを避ける、避ける。そもそもこの程度じゃやられないのは、自分でもわかっていた。自分は避けることだけなら、聖人クラスの身体能力でも来ない限り、負けることはまずないだろう。
「チッ……仕方ないね。
そう言うとさらにルーンの数を増やす。
「……世界を構成する五大元素の一つ、偉大なる始まりの炎よ それは生命を育む恵みの光にして、邪悪を罰する裁きの光なり。 それは穏やかな幸福を満たすと同時、冷たき闇を滅する凍える不幸なり。 その名は炎、その役は剣。 具現せよ、我が身を喰いて力と為せ。 顕現せよ!!
そう言うと、そこには巨大な炎の人が現れた。その炎の巨人はこちらを容赦なく攻撃する。近づくだけで燃え尽きてしまいそうな程の火力でこちらを攻撃する。
(っとと、さすがにこれは、まずいな。俺には『
すると自分の異変に気付いた。それはあの魔術についてだ。なぜか、なぜだかわからないが、彼にはその魔術がどういう術式を組んでるのかが、理解できた。
よって、それの弱点も理解できる。たとえば……あのルーンを破壊してしまえば、どうとでもなるなど……。その上、どうやら理解できた、ということは実行することもできる訳だ。この戦いが終わったら、後で試してみようかと思いつつ、原因を探る。そして気付く。この『原因』に。
(神の英知か?)
そもそも神の英知は、理解する力に特化したモノで、それ以外には役が立たないので、これぐらいにしか使用できない。
(理解できるけど、実際に使えるのか、わからんねぇな)
そんなことを考えながら、とりあえず向こうの攻撃を避け続ける。そして考え、下に貼ってるルーンに目を向ける。
(まだ、あの弱点は克服してない……っと。だったら、簡単だな)
そのまま攻撃を避けつつ、即座にそのルーンを破りに行こうと思ったが、ステイルはそこまで近づけるはずもなく、すぐに魔女狩りの王をルーンの目の前まで来る。
(ま、そうなるよなッ!!)
それから、一気に方向を転換させ、無防備のステイルの所まで一気に駆け抜ける。しかし、それはステイル自身も予期していたことだったのだ、彼はルーンで作り出した、炎をこちらに擲つ。その炎が体を直撃し、全身が燃えたぎる。
死を直感した。おそらく自分はここで死ぬだろう。そう思った直後だった。
(あ、俺、不死身だった……)
忘れていた。というより実際に感覚として、『不死身』を体験するのは、今回が初めてだった。体が燃え盛り、焼死体と化す。が、死んでいない。この体もすぐに修復されていくのが、感覚として実感できた。相手もプロだ。こちらを完全に殺す気で攻撃をしたはずだ。相手は踵を返し、そのまま懐から、タバコを取り出す。そして、火を点け、吹かす。
しかし、不死身もそこまで便利な代物ではなかったのだ。体の修復をしているが、それでも時間がそれなりに掛かるようで、このままだと彼はどこかへ行ってしまうだろう。
(ま、仕方ないか……今回は、俺の完全な負けって訳だな)
自分の敗北を噛み締めながら、我ながら情けないと思いつつも、とりあえず自分は体を修復することに専念しようとする。ちなみに燃えた部分は上半身だけと言う、すごく器用な燃え方をしていた。
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