大群のシスター達は、一切の情け容赦なしにこちらに迫ってくる。どうやら向こうも本気のようだ。雪旗は一応、助けてやったんだけどな、と小声でぼやく、勿論誰一人として聞いてないが。
「いけっ!! 何がなんでも、あの子を連れ出してこい!!!」
と叫ぶ建宮。雪旗達もその声に従い、雪旗達が走り出そうとしたら、それよりも先にシスタールチアとアンジェレネが動き出す。よっぽど助けたいという意思が見られた。
「シスター達はお前らに任せたぞ、麦野達もあっちを手伝ってくれ!」
「ったく、てめぇが命令するとか、何様だァ?」
「命令じゃなーい! お願い!」
「チッ、しゃあねぇな」
そう言うと、麦野と絹旗は残る。ちなみにフレンダ、滝壺、フレメアはここには居ない。別の場所で待機させてもらっていた。船はどうやら多く用意できるようで、その中に待機してもらっている。天草式の面々には感謝だ。
「……いくぞぉ! 絹旗!」
「はい! 超わかってますよ!!」
二人の連携プレイでどんどんシスター達を排除していった。ちなみに誰一人殺さず、無力化させてるところが、戦力の差を思い知らされる。
戦艦内部は雪旗。上条、インデックス、オルソラ、シスタールチア、アンジェレネだ。戦艦内部に二手に別れて、移動する。女性陣と男性陣にだ。
「さてと、一体どこにいるかな?」
「さっさと助け出そうぜ!」
走りながら、場所を探すと、氷の兵が現れる。そのまま攻撃してくるのを、雪旗と上条は殴って倒す。能力で破壊できるので、結構楽だった。それから、しばらくすると、インデックスから電話が掛かってくる。
それによると、どうやら刻限のロザリオという術式は嘘情報らしく、ローマ正教内部にのみ伝わる術式らしい。そんな電話をしていると、天井から自分達を押しつぶせる程の大きさの氷の塊がこちらに迫ってきた。とっさに上条が右手で破壊する。そして、そこから現れた人物。
ビアージオ=ブゾーニだ。
「その右手、承服できないね。そんな主の恵みを拒絶する力など、あまつさえ、それを武器として扱うなんて。私はビアージオ=ブゾーニ……主の敵に引導を渡そう」
「へへっ、負け惜しみってやつか? 外道が……アニェーゼの場所はどこだ?」
怒りに任せて、攻撃などしない。場所を聞き出すのが、先だ。まあそれでも……。
「言うと思っているかな?」
言わなければ、話は別だが。先に動くのは雪旗。一気に距離を詰めようとしたが、その前に十字架を取り出すビアージオ。それを見ると、とっさに身を引く雪旗。さすがに魔術を無視して攻撃しようとか、そういうふざけた真似はしない。だが、そんなものに意味はなかった。一瞬で巨大化した十字架に体を押さえつけられる。だが、肉体強化を使い、一気にその場から抜け出すが、二つ、上条にもそれが圧し掛かっていた。当然、それを右手で破壊する事に成功したのだが、その右手が地面に触れていたのだろうか、雪旗を含め、穴の開いた地面に一緒に落ちてしまう。
綺麗に着地する雪旗とは違って、上条はドサッと腰を打つ。
「っつぅー……」
「大丈夫か」
手を貸し、上条を起こす。
「悪い」
起こしたと思ったら、上から巨大化した十字架がまたもや、来る。数は三つ。縦に落ちてくるのを上条と雪旗は転がって、避ける。だが、次の十字架は小さなまま、鋭利になって、こちらに一気に降り注ぐ。さすがにあぶない、道を塞いでる十字架を上条は右手で破壊する。雪旗はなんとか、それを掴みながら、向こうへと投げる。無論、肉体強化を使ってだ。
「ぐっ!!?」
そして上条が壁に右手をつけ、部屋がある。そこへ転がるように入っていく、雪旗もそこへ行くと、ビアージオも来る。
「まったく、あまり壊さないで貰いたい、向こうの完成度に影響が出るのでな」
「向こうだと……?」
「刻限のロザリオだ。この期に及んで知らぬとは言わせないぞ?」
「ともあれ、てめぇを潰して、アニェーゼ連れてくりゃ、それで終わりだ」
ビアージオはまた十字架を用意する。数は七個。巨大化して、襲い掛かってくる。小さな部屋なので、避ける事ができない。上条はその場で一瞬たじろぐ。だが、直撃する事は無かった。
「ヴェネツィアをどうこうできるだけの力をてめぇが持ってると、勘違いしてんじゃねぇぞ!」
上条が巨大化した十字架を破壊して言う。だが、向こうはどうやら上条が考えてるような事をする気は無いようだ。
「シモンは『神の子』の十字架を背負う!」
すると突然、身体が押しつぶされるように重くなる。どうやらこれも術式の一つだろう。なすすべなく上条は倒れこむが、雪旗は肉体を強化させてる為か、なんとか耐えてる。すると、ビアージオは巨大化させた十字架をいくつも、こちらに投げてきた。
「ま、ずい……ッ!」
雪旗は倒れてる上条を庇うように体で覆う。そのまま巨大化した十字架は一気に降り注がれ、地面へと穴を開けるほどの衝撃だった。
場所は変わり、インデックス側だ。どうやら向こうにはかなりの数の氷の兵が居る。近くには扉があり、中に入ればおそらくアニェーゼが居るのだろう。氷の兵は強い。だが、なんとかシスタールチアとアンジェレネが居るお陰か、そこそこ相手ができているようだ。
そして、氷の兵が居たが、とりあえず、全員で扉の中に入る事に成功したようだ。中にはアニェーゼが居る。とても大きな氷の塊に体を預けている姿だ。そしてアニェーゼがシスタールチアとアンジェレネ、そしてオリアナ、インデックスの姿を見て驚く。
「あ、あなた達! 一体なぜここに!!」
「それは私達のお言葉です。シスターアニェーゼ!! どうして逃げようとしないんですか!」
「そ、そうです! 私達はあなたともっと一緒に居たんです」
二人は懇願する。アニェーゼは二人にとって、とても大事な人なのだろう。この言葉だけでそれがすぐにわかる。それを聞き、オリアナは少し微笑む。
「私は……私の意思でビアージオに従ってるんです! だから、あなた達はさっさとここから立ち去りなさい! 今がどういう状況かわかってんでしょう!? 早くしないと!!!」
「「嫌です!!!」」
二人の言葉が重なる。意地でもアニェーゼを連れて行くつもりだ。その為にわざわざここまで来たのだから、当たり前だろう。二人はアニェーゼを見据える。揺れるアニェーゼ。
「困るんだよね、そういう事をしてもらうと……君が死んでも、計画は途絶えない。だが面倒だ。他の適正者を探すのが、私は面倒臭い事が大嫌いなんだ……」
「貴様……」
歯噛みするルチア。殺意すら湧く。シスターアニェーゼを死なせたくないからここまで来たというのに、邪魔が入る。現時点でここに居る誰一人、ビアージオには勝てない。差がありすぎる。構えるが、ビアージオが止める。
「あまり暴れないでくれないか? ここを安易に傷つけられると、困るのでねぇ」
「対ヴェネツィア用大規模術式、そんなものをなぜ今更?」
オリアナが聞くが、ビアージオが否定する。
「そんなモノの為じゃない。その先だ。アドリア海の照準制限を解く。その為の刻限のロザリオだ」
「まさか、あなた達は邪魔と感じた都市を破壊するつもりですか!?」
ふざけすぎている。あれだけの大規模術式だ。その制限を解かれたら、それこそ、最悪の結果を招くに決まってる。
「アドリア海の女王はその都市に関わったすべてを破壊する。それと同じ事を敵対する都市に向かって放てば、どうなると思う?」
「まさか、学園都市を!!?」
「あらゆる科学技術は学園都市の影響を受けている。それをすべて破壊するとなれば、忌々しくも、世界の半分を包み込んでいるサイド全体を一夜にして、破壊する事ができる!!」
「それで、皆が幸せになるとでも!?」
「思わんよ! 魔術サイドでも、敵対するものは居る。だが、それを続けていき、いずれ不純物は取り除かれる」
「あなたはっ!!」
「あんなヤツの言う事を聞いても無駄です!! アンジェレネ!」
「は、はい!」
二人はビアージオに向かって、術式を放とうとするが、それよりも先に、ビアージオが動く。
「十字架は悪性の拒絶を示す!」
巨大化する十字架。その数は四つ。そして、そのすべてが綺麗にオルソラ、インデックス、ルチア、アンジェレネを押しつぶす。
「ぐっ!!」
全員が押しつぶされ、動く事ができない、
「さて、少し早いが、始めるか、シスターアニェーゼ」
そう言うと、巨大な氷の塊の真ん中に小さな穴が開く。
「喜べ、君は十字教の歴史上、最も多くの敵を葬った栄誉を得る!」
「や、めて……シスター……アニェーゼ……」
「シスター……アニェーゼ……」
そして意を決したように、アニェーゼはビアージオの方を見る。どうする事もできない状況だ。だがそれでも。
「私は……シスタールチアとアンジェレネと……まだ一緒に居たい!! 面倒を……みたい!! 他のシスター達とも一緒に居たいんですよ!!」
彼女は対抗する。ビアージオには勝てないだろう。だが、それでもこの四人を逃がす事ぐらいは、隙を見て、逃げる事ぐらいはできるかもしれない。その言葉に彼女達は重たい十字架を必死の思いで、退かす。そして、シスターアニェーゼのところまで行く。
「私達も一緒に居たいです!」
「私もです!!」
それを見たビアージオは憤る。
「舐めた口を聞いてるんじゃねぇぞ!! 罪人がぁああ!!」
そして十字架を投げる。
「シモンは『神の子』の十字架を背負う!!!!」
全員の身体は押しつぶされる。誰一人動けない。苦しそうな声を上げる彼女達。シスタールチアとアンジェレネを見て、一瞬心配そうな顔をするアニェーゼ。そんな事を気にせずにビアージオはアニェーゼの顔を蹴り上げる。
「ぐあっ!!」
一気に飛ばされるアニェーゼ。どうやらこの術式は他のシスター達の装備品の重量を攻撃に変換させてる術式らしい。だがそんな事がわかった程度で、彼女達に突破口は見つからない。立ち上がろうとするアニェーゼを見て、ビアージオが嘲笑する。
「そんな軟弱な腕で、やるならもっと頑丈な腕を用意しろ!」
そして、声が響いた。それは誰もが待ち望んだ声だろう。
「なら、こんな右手でいいか……?」
ビアージオがアニェーゼから声の主の方へ視線を移す。そこには上条と雪旗が居た。そして上条は右手を空へ掲げ、そのまま重量は消される。
「貴様……異教のサル共がァァァ!!!」
「死体ぐらい確認しとけよ、アホなのか? アイツの右手はお前が思ってる以上に厄介な代物だぜ?」
上条の方を親指で指して、雪旗は笑みを浮かべながら言う。そして二人同時に一気にビアージオに迫る。ビアージオが十字架をこちらに向けてきたが。
「おせぇ!!」
上条が右手でうち消し。そのまま殴る。そして雪旗はそのまま吹っ飛ばされたビアージオに追撃し、殴る。それだけでビアージオは動けない。
「ありがとな、アニェーゼ。もしもお前が居てくれたおかげで、どうやら全員無事みたいじゃねぇか」
雪旗が言うと、アニェーゼはそっぽを向く。頭を軽く掻く雪旗。そして上条がアドリア海の女王の壊し方を聞くと、どうやらここの部屋だけが代えが無いらしく、どうやらココを完全に破壊すればいいのだと、上条が思った瞬間、アニェーゼが苦しみだす。何かと思った瞬間、ビアージオの方を見ると、十字架が光っており、どうやら刻限のロザリオを発動させようとしてるようだ。だが完全には使えないようで、力のみを発動させているようだ。そして今、起こそうとしてる事は自爆だ。そして天井が何やら突起物が出てくる。そして一瞬で景色が変わる。全体的に暗くなった感じだ。ここは大規模魔術装置のようで、壁や床を壊した程度では、完全破壊は無理だ。そしてこのままでは、爆発だけで、かなりの広範囲に被害が加わるようだ。そしてアニェーゼもかなり大変な状態だ。
「おい、お前らは先に逃げろ。ここは俺と上条でなんとかする、他のやつも連れてな」
「な! お前も逃げろ! 雪旗」
「ざけんな!」
「ですが、あなた達は!」
とルチアとアンジェレネも心配したが、雪旗が笑顔で。
「後で必ず合流するから、心配するな。アニェーゼも心配だ……早く安静できる場所に連れてってやれ!」
そしてやっと折れてくれた彼女達は心配そうな顔をしたまま、とりあえずこの部屋から出て行く。どうやらビアージオは上条をローマ正教の強敵として、判断しているようだ。最後の最後ですべてを巻き込んで、上条を倒そうとするビアージオ。
上条がその言葉に憤り、一気に駆け、右手で殴ろうとする。雪旗もすぐさま駆ける。そしてビアージオは十字架を巨大化させる。複数の巨大な十字架を右手を使って、上条は複数の十字架を無効化させていく、次に鋭い小さな十字架を複数上条達に投げる。それも雪旗と共に上条は避けていく。
次にビアージオは十字架を伸ばし、飛んでビアージオの元に来る上条を飛ばそうとしたが、それを雪旗が横から十字架をぶっ飛ばす。
「ぐっ!」
そして上条は一気にビアージオを一気に殴りぬけた。どうやら持っていた十字架の全てを壊したようだ。アニェーゼ達を助ける事になんとか、成功したようだ。
そして戦艦が壊れていく。雪旗は竜王の息吹を使い、戦艦に大穴を開ける。穴の先に外が見える。雪旗は上条を背負い、一気にそちらに向けて、走り出す。当然、先程魔術を使ったので、体全身がボロボロになっている。だがそんな事すら構わず、彼は一気に出る事ができたようだ。そして水に浮かびながら、彼は崩壊していく戦艦を見ていた。
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