「……」
目を覚ました雪旗――なのだが、体がまったく動かない。それどころか瞼すら開けることのできない状態である。これは完全に能力の副作用のようなモノだと思った。限界値を超えた動きをした代償というヤツだろう。二度と使えなくなる程ではないと思うが、しばらくの間、使用できないという事にはなるだろう。
実際、考えてみても、最近は面倒事が多すぎた気がする。いや、徐々にこれが当たり前になってきていて結構、恐怖を感じ始めている。
「おーおー。随分と気持ちよさそうに寝てるじゃねぇか?」
と声を掛けてきたのは、誰であろう、ヤツである。垣根帝督。通称メルヘンやら冷蔵庫やら、といろいろつけられてる。バレーボール――じゃないや、第二位である。
「コイツ……死んでんのか?」
「い、きてる……よ」
「うお!?」
とガタッと音がする。イスが倒れたのだろう。瞼すら開けれず、視認ができない為、いろいろと不便である。いい加減、目ぐらい開けたいと雪旗は切に願う。
「なんだ、生きてんのか」
「あ……ぁ」
(声を上げるのもキツイ。何気に全身から激痛走ってるし……)
とこれ以上の会話を求めていない雪旗だが、そんな事は露知らず、当然喋り続ける常識の通用しない男。
「ったく、甘ったれた野郎だぜ、俺はお前を殺そうとしたのに、お前は俺どころか、あの女だって手に掛けなかった。まったくもって理解できないヤツだよ、だが気に入ったぜ? お前の事をよ」
知らん。と雪旗は心の中で呟いた。はっきり言って、前の状況的に考えて、こっちがそっちを気に入る可能性が一ミリもないという事を理解できないのだろうか、理解できないのだろう。
「……どうした? 表情が若干苦いが」
「お、まえ……俺がお前を……気に入ると思う……か? お前は未遂ではあるが、一応……俺の仲間を殺そうとしたヤツだ……ぞ?」
「はっ、そりゃそうだ。お前に気に入られようなんてのは思ってねぇよ。ただ俺が一方的に気に入ったってだけさ」
「そ……りゃ、うぜぇ……な」
「そうかい。んじゃま、俺はそろそろお暇させていただくわ、じゃあな」
「二度と来るな……」
ガラガラと扉が閉まった。それから数分経ち。若干、機嫌の悪い四人組が入ってきた。『アイテム』である。どうやら垣根と会ったようだな。と推測する雪旗。
「おい、雪旗。起きてるか?」
「あぁ、起きてらっしゃいますよ……なんですかい?」
少しずつ、まともに喋れるようになってきた雪旗。薄目だが、目も開けているので、機嫌を把握できた。そして四人は一斉にこっちに飛び込んできた。洒落にならない事態である。
「ギャァアアアアアアア!!!」
全身から軋む音が聞こえた。勿論ベットの軋む音ではない。体の方だ。死ぬ、死ぬ、死ぬ。本当に死ぬかと思った瞬間であった。今回もし死んでいたら、二回目になっていたかもしれないぐらい怖かった。
「……悪かった!!」
と麦野が謝罪する。一体何に対する謝罪か理解できなかった雪旗はそれをやめさせ、どういう訳か、説明してもらった。
「私達が……本当は私達の問題だったのに、お前を……巻き込んで……」
「全面的に超私達が悪いですから……」
「今回はさすがに悪かったって訳よ」
「ごめんなさい」
と全員の謝罪が送られた。それには雪旗もさすがに機嫌がよろしくない。
「おいおい、どう考えたって俺が悪いだろうが? お前らを暗部から抜けさせたのも俺だし、今回の問題に首を突っ込んだのも、こうして怪我したのも俺の責任だ。お前らが謝る事じゃねぇし」
そこで区切り。
「しかも! 俺が聞きたいのは謝罪じゃねぇんだよ!」
そこで四人は首を傾げる。
「こういう時は謝罪じゃなくて、一言。お礼があれば良いんだよ。困ってる人が居たら助けて、助けられた方は感謝してお礼する。これ常識だぜ?」
「そ、そうか……その、ありがとう。雪旗」
「超ありがとうございます」
「ありがとうって訳よ」
「ありがとう」
こうして聞いてみると、何気に誰が誰の言葉だが、わかるから不思議だ。と何気に自分の口調をまた気にしだした雪旗はこの大事な場面でボケをかまそうかとも思ったが――。
「おう、どういたしまして……」
と大事な場面では一応、礼儀なので、ふざけないでいる雪旗だった。四人は一応、お見舞いとして、なんか滅茶苦茶高級そうなフルーツの盛り合わせとか、いろいろとプレゼントしてもらった。
(おお、さすがだ。というか今思ったけど、アイツら金持ちすぎるだろ。いや俺もだけど……)
心の中で独り言を呟きまくっていた。
四人は後日も来るそうで、俺は二日間、入院する事になった。思った以上に体の方はボロボロだったようだ。ベットに体重を預け、少しだけ、考え事をする。
(次はえっと左方のテッラだっけか? そんで、後方のアックア。前方のヴェントは終わってんだもんなぁ、わー、懐かしい面子だ)
そんな完全、読者目線になっている雪旗。当然だが、彼らと戦う事になるのは、わかっているだろう。彼自身、そのつもりで、ここまできたのだ。
次の敵は今まで以上に強大だと言う事を肌で感じていた。
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