とある雪旗は転生者   作:三十面相

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久々に投稿です。

今回も駄文だと思いますが、温かい目で見ていただけると、幸いです。


後方のアックア

 ボロボロの雪旗は一人で第二十二学区に倒れこんでいた。そして雪旗が体を動かすのも億劫な時に、ソイツは来た。

 

「よぉ、雪旗。お前っていっつもボロボロだな?」

「垣根か……まあな。いろいろ事情があんだよ」

「あの化物の事か?」

「なんだよ……見てたのか?」

「あぁ、まぁな。事情はよく飲み込めなかったが、とりあえず誰かが死ぬような世界にお前も入ってたんだな? お前みたいな甘いやつでも」

「じゃなきゃ、お前や麦野達みてぇな連中には関わらねぇよ」

「それもそうか」

 

 学生しかいないこの街ですら、殺しが存在してしまう。そんな『闇』の部分とも言える存在を雪旗はいくつも目の当たりにしてきた。その度に雪旗はなんとかしようと努力してきたのだ。

 救う。なんて大層な事はしていない。それでも何かが変わってくれたのならば、雪旗はそれで良いのではないかと思っている。一番ダメなのは何も考えない事だ。やはり自分の考えをしっかりと持つべきなのだろう。そう思う雪旗。少しずつ、体力も回復してき、雪旗は立ち上がる。

 

「……ふぅ、次は万全の状態で本気でぶっ飛ばしてやるか……」

「あぁ? まだやんのかよ? 諦めろってアイツ、マジで強いぞ? よくわからんが、何を使ってるのすら、俺にはわからなかった。まあ俺の『未元物質』の前ではどんな常識も通用しねぇから無駄だろうけどな」

「知るか……あぁ、疲れた。体重たい……眠い……」

 

 なぜか、本当に体が気だるくなっている雪旗。おそらく気を張ってた分、体力がかなり削られたのだろう。

 回復が追い付かなくなるぐらいに。雪旗は自分の部屋まで垣根に送ってもらった。

 垣根はしぶしぶ雪旗を運ぶ。こんなタクシー代わりみたいな役割をはじめは嫌がったが、もしかしたら自分は殺されていたかもしれない状況の中、助けて貰っている垣根にとってはここはこう動かざる得ないのだ。

 

「……悪いな。なんか、恩を利用したみたいでよ。いやそのつもりで前は助けたんだけどさ……」

「フン、気にするな。どうせ、この状況だったらどっちみちこうなってたさ」

 

 そう言って、そこまでキレてない垣根。良かった。と雪旗は安堵した。さすがに今の状態から戦ったら、こちらに分が悪すぎる。正直言って、今なら、誰が相手だろうと、負ける自信しかない。と雪旗は思う。

 

(いや、それは自信とは言わないか……)

 

 雪旗はそのまま連れて貰って、寮へと戻る事ができた。雪旗は帰ってきて早々、ベッドへと体を預けた。そして、すぐさまその意識は夢の世界へと誘われたのだ。

 目を覚ますと、まだ日の光すら差し込んでいなかった。時刻は一時二十分。全然寝てねぇじゃねぇか。でも、確か……天草式は、結構早い時間に来ていた気がするな……。くっそ、頭が冴えない……。すぐさま、学ランに着替える、替えの学ランを着て、心機一転させる。次は殺すつもりでやる。

 

「……よし、行くか」

 

 深夜一時。

 深夜というのは、若干変なテンションになるものだが、今の彼にはそんなものは存在しない。あるのは、確かな恐怖と絶望感――ではない、むしろ、絶対に勝つという、確信に他ならない。

 雪旗はアックアの第二戦目の場所を思い出しながら、走っている。

 

(場所は確か、第二十二学区の第三階層だっけ?)

 

 すぐ傍の第二十二学区へ着くのは、早い。今の時刻は一時四十分。もう少し急がないと。

 しばらく走っていると、やっと第二十二学区に辿り着く。

 ここは地下施設が発展している。言ってみれば、地上よりも地下が広いという感じである。ちなみに、アックアはそこの三階層に居る。

 辺りを雪旗は見回す。そこには壊れた機械が少なからずあり、おそらくアックアが壊しながら、進んだ結果なのだろう。

 雪旗はちょっとだけ、深呼吸をしながら、アックアと戦うまであと少しだ。雪旗は心なしか、膝が笑っているように感じた。少なからず、恐怖心も抱いているのに、雪旗も気付く。

 

(情けないな……死なないだろ……ッ!)

 

 死なない。その言葉だけで、この恐怖心を和らげるなんて不可能だ。それは雪旗にだってわかってる。自分が恐れてる理由は、死ぬからではないのだ。今まで、雪旗はいろんな戦いをしてきた。

 その中で、未来を変えたなんて思わせる程の戦いを幾度もしてきた。

 今まで、死傷者は出なかったが、もし今回、この戦いで、死人が出たら? 上条が死ぬのは無いにしても、もしかしたら五和が今回死んでしまうかもしれない、建宮が死んでしまうかもしれない、もしかしたら、他の天草式の誰かが死ぬかもしれない。

 そんな恐怖が今も彼の心を蝕む。

 

(平気だ。大丈夫だ……俺だけで片付ければ、誰も傷つかない。俺はどうせ死なないんだ。だったら別にいくら傷ついても構わないだろ)

 

 そんな自分の尊厳すら、どうでも良いと考えている。本気で考えている辺り、どこかおかしくなっているのかもしれない。三階層に着くと、既に後方のアックアが待ち構えていた。

 ゴクリと唾を飲み込む雪旗は膝の震えが相手を見定めた瞬間、自然と治まった。

 

「……来たのであるか、まだ時間はあるのだが……?」

「急がなきゃ、やってられなくてね?」

「……決断は早い方が良い。どうするのであるか?」

「一つに決まってんだろ? 俺が友達を売る理由はねぇ――!」

「交渉決裂という訳であるか」

 

 その言葉と同時だった。雪旗の体が吹っ飛ぶ。だが、ただ飛ばされただけではなく、雪旗が体を後ろへと飛んで、ダメージを吸収していた。不思議だった。雪旗の体はまるで、羽のように軽い。レベルは確かに、相手の方が上だ。いくら身体能力を上げようと、最高まで上げたとしても、アックアには勝てない。だが――。

 

「……少しは腕を上げたのであるか?」

「いいや、たった数時間で上げれるような、裏技はさすがに、学園都市でもねぇよ。強いて言うなら、スッキリした後だからかな?」

「……ほう、面白い」

 

 アックアの影から突如、金属棍棒 (メイス)が現れた。雪旗はゴクッとつい息を呑み込む。向こうの攻撃の範囲と威力が格段に上がっただけだ、大丈夫だ。と雪旗は自分に言い聞かす。

 

「掛かってくるのである」

「……言われずとも!!」

 

 雪旗は跳躍する。素早く近づいてく、雪旗にアックアは金属棍棒 (メイス)を振るう――だけだ。とてつもない威力の攻撃が雪旗の体に叩きつけられるかと思いきや、雪旗はグイッと空中で体の向きを変えて、攻撃を避ける。

 アックアの一瞬の驚きの表情を見て、少し愉悦に浸る雪旗。そのまま顔面に思い切り蹴りを喰らわしてその反動を利用して、一回転して、着地する。

 

「ふぅ……」

「むっ……やるのである……」

「お前の使い慣れてるその武器で、どう俺を倒すんだよ?」

「……一つである」

 

 ブンッ! と振り回す。そう、それだけだ。ただ振り回すだけで、相手が吹っ飛ぶのだ。だがそれは相手が普通の人間ならの話だ。こちらは学園都市の能力者、言ってみれば普通ではない。

 

「終わらせてやるよ」

 

 走り出す雪旗。一気に飛び、本気で殴る。アックアはそれをメイスで向い撃つつもりのようだ。殴ると同時にブンッという音が聞こえる程の衝撃。

 雪旗はとっさに身を引いて、その攻撃を避ける。来るとわかっていれば、何の事は無い。

 そして、渾身の右拳がアックアの顔面を確かに捉えた。だが、その程度だった。アックアのメイスが雪旗の横腹を叩きつけた。何かが潰れた音がした。

 雪旗の口から血が飛び出て、飛ばされる。

 

(ぐっ!!? マズイ……!?)

 

 雪旗が魔術を使う場合、自らを傷つけ、放たなければならない。その前にダメージはあまり受けたくないのだ。今、この場で魔術を使わずにできるのならば、良いのだが、さすがにそれは不可能だとわかっている。

 

「ゴホッ! グハ――ッ! ガハ――ッッ!!?」

 

 咳き込みながら、雪旗は立ち上がる。向こうへそれほど、ダメージを与えてないというのに、こちらはほとんど死にかけという状況だ。ここまで力の差を感じるのは、雪旗自身、滅多にない事だ。それほど、相手が悪い。

 

(マズイ……これだけで、意識が朦朧としてきやがった……一人じゃ厳しいのか? 一人じゃ無理……なのか?)

 

 アックアがズンズンとこちらに向ってくる。一切、躊躇を見せない。おそらくもう決心しているのだろう。雪旗を殺すという決心を。雪旗はいくら攻撃されようと死なないように体が作られている。だから、いくらアックアが殺そうとしても、無駄だ。だが、それをバレるのは――。

 

(困る……!)

 

 雪旗は弱々しく右拳を握り締め、そして向う。雪旗の胸中はさながら絶望的な状況に立ち向う脇役の気分だ、と卑下する。

 

(脇役が勝っちゃいけないって言う法則はねぇよな……!!)

 

 雪旗は拳を握り締めたまま。走り出す。アックアは再び、メイスを振り回そうとする。だが、終わりだ。

 雪旗は体を低姿勢にさせながら、近づく、いつでも金属棍棒を避ける為だ。アックアが凄まじく、振り下ろす。雪旗はそれを右腕で受け止める、雪旗の腕から、潰れた音が聞こえる。

 どうやら右腕は使い物にならなくなったようだ。青くなった右腕を一瞬見て、苦い表情になった後、アックアを見定め。

 

 

 一言発した。

 

 

「――『竜王の息吹』ッッッッ!!!!」

 

 

 ギョッとした表情で雪旗を見るアックア、だがもう遅い。雪旗の最強最大の攻撃を受けて、今まで立ち上がったヤツなんて居ないんだ。

 雪旗は放ち終わった後、今までにないぐらいの疲労感に襲われる。倦怠感、疲労感、様々なモノが雪旗に渦巻いている。

 そんな良くないモノばかり渦巻いているが、一つだけスッキリとしたモノも雪旗の中に確かにあった。

 それは――達成感。

 

「……終わった……」

 

 バタッ! と倒れこむ。血まみれの雪旗とそこで倒れているのは、アックアだ。血まみれで倒れているアックア。あの距離で受けたのだ。絶対に立てるはずがない、と彼は確信してる。

 

(というか、そうじゃないと俺が終わりだ)

 

 ググッと力を入れて、立ち上がろうとするが、フラッと下半身から力が抜けるような感覚に襲われる。出血多量、横腹損傷、右腕損傷。傍から見ると、これ、死なない方が不思議じゃない? みたいな感じになっている。

 しかも、先程の『竜王の息吹』で最悪な場所がやられたのだ。雪旗は静かに目を閉じた。

 目が覚めると、日が窓に差し込んでいた。雪旗は腕を動かそうとしたが、どうやらコードやら何やらが体にくっ付けられていて、動かしにくいのだ。雪旗は少しだけ、汗を掻いているので、拭きたいなんて考えている。

 

(えっと……どういう状況なんだ?)

 

 思い出そうとするが、どうにも、アックアを倒した辺りから記憶が無い。おそらく意識がなかったのだろう。そんな事を考えていると、コンコンッと病室の扉からノック。雪旗がどうぞ。と言うと、そこに居たのは、天草式のメンバーと神裂火織だった。

 

「お? お前ら久々だな。どうした?」

「一つ、良いですか?」

 

 ズイッと距離を縮めてくる神裂に一瞬ビクッと体が震える雪旗。

 

「な、なんだ?」

「あなた、どうしてあんな所で、ボロボロになっていたのですか? というか、その傍で後方のアックアも倒れていたのですが、どういう事ですか?」

 

 遅れて、上条とインデックスに土御門も来たようだ。

 

(何、何!? ちょっと大所帯すぎるよ! 病院は静かに!!)

 

 心の中で叫ぶが、そんなものは届かず。ちょっとだけ、目を伏せながら、小声で。

 

「俺が倒しました」

「あ、あなたは!! あなたは、一人でそんな無茶をしたのですか!!」

「…………はい」

 

 なんで、倒したのに怒られてるの……。なんて心の中で呟く雪旗。でもいつもの事なので、そこまで反抗心も湧いてこないのだ。これは向こうが自分を心配してくれているからしてくれる事だと言うのも、知っているから。

 

「というか、アックアはどうしたんだ?」

「アックアは私達が取り押さえました」

 

 そうか……。と思い、ちょっとだけホッとする。どうやら役には立ったようだ。

 

「俺は役立ったみたいだな……」

「というか、どうやって一人で倒したのか、気になるのですが……」

 

 呆れたように言う神裂は下がっていく。そして前に来るのは、上条とインデックスだ。

 

「よぉ、お疲れさん。いやぁ、今日は俺、何も役だってないというか、なんというか、水臭いじゃないか、なんで俺にも教えてくれなかったんだよ? 全然知らなかったんですが」

「え? いや、正直、お前の真似のつもりだけどな。いっつも一人で困難に立ち向って、それで女の子に惚れられるって言う。まあ、今回、俺にヒロインは居なかったけど」

「??? 俺にいつそんな女の子が? 俺はいつだって、万年モテない男ですよ……」

 

 トホホと肩を下ろしながら言う。雪旗はまず、インデックスの方をチラリと見て、五和の方をチラリと見て、神裂をチラリと見る。

 

(ふむ、ここに居るだけで、三人か……学園都市には、えっと……御坂に、御坂妹に、確か姫神もだっけ? うん……爆発して!)

 

 そんな事を笑顔で思いながら、しばらく待っていると、なぜか土御門に唆された神裂が堕天使エロメイドのコスチュームを着たりといろいろ病室で騒いでいて、ちょっと節度を守って欲しかった雪旗であった――。

 

 いつもの連中が来ない事にちょっとだけ寂しさを感じながら、雪旗はみんなが去っていった後、窓を眺めていた。

 その直後、ガラガラとノックも無しに、不躾に扉を開いていたので、雪旗が文句でも言ってやろうとそちらを見ると、そこには雪旗が青ざめる光景が広がっていたり、といろいろあったりしたのだ。




ここまで読んでいただき、ありがとうございます。


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