とある雪旗は転生者   作:三十面相

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久々の投稿です。

温かい目で見ていただければ幸いです。


テロリスト

 それからいろいろあった。

 一言で言えば、インデックスが飛行機に夢中で、ガチャガチャしてるというべきなのだが、それを止める上条という図だった。雪旗は半目を開けて、それを見ていた。さすがの雪旗もこんな状況でグースカ眠れる程、呑気にはなれないようだ。

 

 

 そしてインデックスが空腹を訴えると、上条が、あと九時間程、機内食がない事を言えば、インデックスが暴走し掛けたりと、大変だった。

 

 

「フリードリンクコーナーか」

 

 

 雪旗はおもむろに立ち上がった上条が向かった場所を見ると、そこにはそう書かれていた。

 

「何それ?」

 

「んー? ようは、自由に飲み物が飲めるコーナーって訳だな」

 

「えぇ!? 全部!?」

 

 

「んー。多分」

 

 

「凄いかも!!」

 

 

 興奮気味のインデックスに、気圧されている雪旗だが、おそらくそれで間違いないと思う雪旗。それから、なにやら落ち込んでる様子を見せてる上条が、三つ程、紙コップにジュースを入れてきている。

「お、ジュースじゃん」

 

 

 雪旗はそう言って、上条から紙コップを貰い、チビチビ飲んでいた。インデックスはその雪旗とは真逆で凄まじい速度でゴクゴクと飲んでいて、さらにおかわりを要求していた。

 

 

 

 九時間後。

 

 

 

 今、フランスの空港で一時停止している飛行機。どうやらトンネル爆破が影響しているようだ。英語でアナウンスが発せられた時に、雪旗はそれを聞いて、どうやら物資運搬サービスに協力していると、言うのがわかった。隣の上条はうん? と唸っていた。その後、日本語も発せられていた。

 

 

 それからしばらくインデックスの暴れ具合を見ていた雪旗。やはり空腹というのは人間を変えてしまうのだろう。特にそういうのにかなり敏感なインデックスの事だ、それは普通の人間の非ではないだろう、雪旗は、南無と手を合わせて、目を閉じていた。

 

 

 

 それから物資も運び終わり、やっと飛び出す。ちなみにあと二十分という言葉にさらにブチ切れるインデックス。

 時間の経過と共に、インデックスは瞳が徐々に獰猛になっていく、何度からフライトアテンダントの登場もあったが、なんとかなったので、良かったと思う。しかも機内食の前倒しまでしてもらったのだ。

 

 

「……うーん。随分と遅いな。俺、ちょっと見て来るかな」

 

 

 上条がそう言うと、インデックスも即座に反応したが、ここは雪旗とお留守番という事になった。

 

 

「ビーフオアフィッシュ……ビーフオアフィッシュ……ビーフオアフィッシュッ!!」

 

 

「ビーフオアフィッシュって、肉か魚どっちかって意味だと思うんだが、インデックスは両方食うつもりか……?」

 

 

 そんな呪詛のように何度も呟かれたビーフオアフィッシュを耳に入れながら、雪旗は上条の帰りを待っていた。

 

 

 それにしても――と雪旗は少しだけ考え込む。

 

 

(随分と時間が取られるな。あのフライトアテンダントさん……怒られてなきゃいいけど……あぁ、だから上条は見に行ったのか? なるほど)

 

 

 そんな事を考えながら、適当に暇を潰していた。

 上条も戻ってきて、随分と時間が経ったが、いまだにビーフオアフィッシュ……機内食が来る気配が見られない。

 隣ではブルジョワなヤツがクラッカーをボリボリ食ってたりと、インデックスの空腹を刺激する事ばかりだ。

 数分経ってから、雪旗がふと思い出したかのように。

 

 

「あのさ、このポンドってさ、これもイギリス行きなわけなんだし、使えないか?」

 

 

 それを聞いた上条とインデックスが雷にでも打たれたかのような反応をしていた。そして途端に歯をガチガチと鳴らすのはインデックス。命の危険を感じた上条はとっさに叫ぶ。

 

 

「お、俺を噛み殺したら、クラッカーもないんだぞっ!?」

 

 なんとか生命を繋ぎ止めると、雪旗が立ち上がり。

 

 

「俺がクラッカー持ってきてやるから、好きにしてろよインデックス」

 

 

「雪旗さぁぁぁんっ!!!?」

 

 

 そんな死の宣告をした雪旗は足早にクラッカーの場所へと向かって行く。

 

 

 クラッカー十個 3ポンド。随分なボッタクリだと思いつつも、お金を投入。日本円で大体400円ぐらいか? それで十個はふざけてる。

 そんなに貰う事はできないな……そんな事を思いつつ、さっさとインデックスに持っていこうと思った瞬間だった。一枚の扉が半開きになって

いるのが、見えた。

 

 

 そこは一言で言えば、関係者以外立ち入り禁止区間と言うべきか、おそらく掃除用具やら何やらが入っているような場所だろう。その扉が半開きになっていたのだ。

 

 

 無視しようにも、それに気付いてしまったらなんだか気持ち悪いので、雪旗はその扉をしっかりと閉めようとした瞬間だった。チラッと見えた

奥の方に、電子レンジが見えた、その電子レンジに明らかに赤黒い何かがべったりとこびり付いていた。それが何かははっきりとはわからなかったが、まあ場所が場所だ。何かのソースが零れた可能性もあるし――なんて思った瞬間だった。

 

 

「見てしまいましたね」

 

 

 後ろから声がした。女性のものだ。そして、とっさに組み伏せられそうになったのを抵抗してしまい、逆に押し倒す形になってしまった。

 

 

「あ、あぁ……すみません。とっさにやられたもんで、つい……」

 

 

 能力なしでもこれだけ戦えるようになったのは素直に褒められるところなのかもしれないが、それを使う相手を間違えたらおしまいだと思う。傍から見れば完全な犯罪者だ。

 すぐに退いて、退散しようとした瞬間腕を捕まれる。

 

 

「逃がしませんよ。あの血痕を見られたからには……!」

 

 

「け……っこん? 血痕ッ!?」

 

 

 意味がわからないまま、血痕という言葉だけが酷く重たく頭に響く。これはどうやら厄介事に巻き込まれたと考えていいのかもしれない。その後、彼女が機長にその事を伝え、どうやら彼は本格的に拘束されるようだ。

 

 

「はぁ……厄介事だなぁ……」

 

 

 テロリスト……多分そういう事なのだろう。おそらくこの機内にはテロリストもしくはそれに準ずるモノが潜伏しているのだろう。それが血痕の正体だ。おそらく凄まじく危ない状況だという事はわかっている。そういえば、と雪旗はこの機内で起こる騒動を思い出す。随分と前の記憶のため、すっかり忘れていた。

 そのままおそらくこのフライトアテンダントさんの増援がやってくる。ゴツイ格好をした男もいるわけだが。おそらくその人が結構重要なポストに居る人っぽい。

 

 

「さて、どうするかコイツを、どうやら組み伏せるのには失敗したみてぇだが、そこそこ慣れてるヤツみてぇだな……まあいい。あれやこれやと騒がれちゃ迷惑だ。コイツをそこに隔離しとけ」

 

 

「で、ですが、そこまでの事をする事が私達に許されているのでしょうか……?」

 

 

 男とは反対に女性の方は酷く困惑している。それもそうだ。客一人だけこうして隔離すると言っているのだから、だが男の方は憮然とした態度で。

 

 

「大きな問題になっても、俺のせいにすればいい。そこの機内食の加熱スペースに放り込んでおけ」

 

 

 そう言われ、フライトアテンダントさんは申し訳なさそうな顔をしながら、雪旗をここに隔離した。隔離される前、フライトアテンダントにテロリストが入り込んでいるという情報を聞かされた。おそらく一切の情報もなく隔離するのを申し訳なく思ったのだろう。

 ドアがロックされる鈍い音が響く。

 

 

(さて、どうするかな。ここを出るのは簡単だが……場所の正確な位置まで覚えてないぞ。あ、そういや……確かテロリストは俺達の取った席のとこに何か細工を仕掛けようとしてたような……?)

 

 

思い出せない事に歯痒さを募らせながら、仕方なしにここに留まる雪旗は近くにあった段差に腰を掛ける。

 おそらくここで隔離されていても、誰かしらが危険に及ぶことはないだろう。最悪、上条当麻という男が居る。そう思いながら、しばらく時間が経つ。

 機内では、おそらく今もテロリストの騒動で大慌てのはずだ、一つ思い出したことがある雪旗は、飛行機が降下する瞬間を待っていた。ブザーは鳴らないはずだが、降下はするはずだ。

 

 

(確か、幻覚を見せる魔術を使っていたはずだ)

 しばらく待って、やっと急降下し始めた。その瞬間、勢い良く振りかぶってドアを前方に吹っ飛ばす。すぐさま走り出し、マイクを持っている男を探し出す雪旗。結構な広さのため、探すのが困難かと思いきやそうでもなく、フランス語で、不時着をやめろという声が聞こえた。どうやら相当焦っているらしく、周りが見えてないテロリスト。

 

 

「おい」

 雪旗はそう呟くと、男は勢い良く振り返り、それと同時に懐に忍ばせておいた動物の骨を削って作ったナイフを取り出して、こちらに迫ってくる。

 

 

「クソッ!! なんだテメエは!!」

 

 

「それはこっちの台詞だよ」

 

 

 相手からしてみれば、雪旗はただの高校生。こちらはナイフを持っているし、即座に殺す事は簡単だと思っていた。相手はこちらの存在に気づいているのは、見るからに明らか、すぐに消さなくてはと考えたテロリスト。

 

 

 だが相手が悪かった。ナイフを構え、雪旗に迫ってくるが、それを悠々と避け、そのまま殴りつけた。

 その後、テロリストを縛り付けた後、フライトアテンダントにテロリストを渡し、席に戻ろうと思ったが、再び思い出す。

 

 

(あぁ、そういや……)

 

 

 すぐさま、フライトアテンダントに話をつけて、貨物室に直行する。中にはテロリストの仲間が拳銃を持って待ち構えているが、雪旗ならば、拳銃程度どうという事はない。当ったところですぐに修復されるだろう。そもそも深い傷にすらならないだろう。だが一応、原作を考えて。

 

 

「すみません、コーヒーか、なんでもいいんで、熱湯になった飲み物用意してもらえますか? バケツ一杯分お願いします」

 

 

 特に何も言わず、フライトアテンダントさんは用意してくれて、雪旗はそれを持ちながら勢い良く貨物室に入ると、ギョッとした顔をした男の片手には拳銃が握られていた。

 即座に男は拳銃をこちらに向けるが、雪旗はその拳銃と男に、熱湯を思い切りぶっ掛ける。

 

 

「がっ……!!?」

 

 

 かなりの熱さに思わず拳銃を手放してしまうテロリスト相手に、雪旗はすぐに接近し。

 

 

「オラッ!!」

 

 

 ぶん殴って、テロリストを気絶させた。バッグなどの中に他の重火器がいろいろと入っていたが、それを使う余裕もなかったテロリスト。

 

 

(本当に熱膨張してんのかな……)

 

 

 そんな事を考えながら、着陸を待つ雪旗だった。

 

 




ここまで読んでいただきありがとうございます。



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