マイ「艦これ」(第9部)「提督暗殺」   作:しろっこ

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提督や青葉のメモと関係者への取材により、遠征初参加の際に起きた赤城轟沈の合同作戦司令部での美保司令の状況が、かなり再現された。なおこの文書には閲覧制限がかけられている。同時に本件については関係者への追加取材ならびに質問は一切禁止である。


第12話<轟沈と絆、崇高なる者>

『だから提督も、絶対にワタシを待っててネ』

 

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オトナ「艦これ」「提督暗殺」(みほ9ん)

:第12話<轟沈と絆、崇高なる者>

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美保鎮守府の赤城轟沈!

 その知らせは意外な反応を以って速報として海軍内を駆け巡った。

 

 しかし正規空母が轟沈しても戦闘は終わらない。鎮守府単独の沿岸等で行われる防衛戦とは違う。これが合同作戦の特徴だ。

 実際、今回の作戦においても轟沈したのは赤城だけではなかった。他の鎮守府所属の艦艇も決して無傷では無かった。ただ後に確認したところによれば、その戦闘において正規空母が轟沈するほどの被害を出したのは美保鎮守府だけであった。

 

 戦闘はなおも継続していた。重要な艦娘が犠牲になったとしても戦闘が終結するまではウカウカ落ち込んでは居られないのが指揮官の辛いところだ。

 

 その後も美保鎮守府の艦娘たちは軒並み被弾し負傷する。その日は敵地への上陸一歩手前まで行ったので当然、敵の反撃も激しい。美保の艦娘たちが見たこともない敵機も飛んでいた。

ついには最前線に出ていた電が大破との報告が入る。さすがにこの報告を聞いた司令を始め無線を傍受できる重巡以上の艦娘たちには緊張が走った。だがここまで敵陣に食い込んだ以上もはや撤退は不可能だ。後はただ武運長久を祈るばかりだった。

 

 次第に戦況は消耗戦となってくる。お互いの艦娘や深海棲艦も傷つき他の鎮守府の艦娘にも轟沈する者が相次ぐ。辛いのは我々だけではない。ある意味、敵も辛いのかも知れない。

 

 やがて最高司令官である横須賀鎮守府の司令が撤退を決断して戦線が後退を開始する。敵も今回は被害が大きいのか追撃はしてこないようだ。本日の海上作戦行動は一時、打ち切りとなった。艦娘たちにも逐次帰還命令が出される。

 

 各部隊それぞれの旗艦である艦娘に指示が出る。観測班によれば、やはり敵からの追撃は無い。そうなれば後は司令室からは特に指示は出さなくても良い。気の早い各鎮守府の指揮官たちはヤレヤレと言った表情でリラックスしている。

 

 ただ美保鎮守府の関係者だけは緊張が解けなかった。唯一主軸空母を轟沈させ、また誰もがその重さを分かっているから。何となく周りの指揮官たちも、よそよそしい。

 

「この期に及んで主力空母を轟沈とは……」

 

美保の司令も内心、呟いていた。撤退命令が出て、それまでの緊張が一気に解けたが今度は気分が重い。正直、数年ぶりの事態に半ば放心状態だ。

 

 彼の様子を心配した呉と神戸の作戦参謀が近寄ってきた。彼らは以前、美保鎮守府に視察に来たメンバーだった。

 

「気落ちするな」

 

通称『呉おじさん』と呼ばれる参謀は軽く司令の肩を叩いた。

 

「そうですよ、私も恥ずかしながら今日2隻ほど沈めましたから」

 

これは神戸の参謀。相変わらずドライだ。しかもそれは駆逐艦だろう……とは分かっていたが誰も突っ込まなかった。

 

「有難う」

 

司令は虚ろな心ではあったが形式的に答えた。

 

 同行していた秘書艦は帰還する艦娘たちを迎えに岸壁へと向かった。別室には今回、出撃しなかった艦娘が控えている筈だが皆、司令に遠慮しているのか様子を見ているのか誰も入ってこない。

 

 やがて二人の参謀たちは会釈をして立ち去る。他の多くの参謀や指揮官たちも退出し始める。作戦司令室には数名の参謀たちと中継通信の技術スタッフが機材の調整をしているのみだ。

 

 司令はまだボーッとしていた。彼にとっても久し振りの最前線である。美保鎮守府には荷が重かったということか。十分に訓練を重ねたつもりでも実戦は何もかも違う。ちょっと見通しが甘かったかと彼は反省していた。

 

 ただ正直言って周りの鎮守府の艦隊が華々しい戦果を上げているのを見ると、どうしても焦りの気持ちが出て来る。慢心もあったか。

 

ふっと本土出発前に防衛次官が寄こした私信を思い出した。

 

「無理はするな」

 

まったくその通りだった。あいつは、おちゃらけてはいるが言うことは的を得ている。だてに本省勤務ではないなと司令は思った。

 

 そのとき急に誰かが凄い勢いで廊下を走って来る。そして半分開いていた作戦司令室のドアから脱兎の如く駆け込んできた。室内に、ちょっとしたざわめきが広がる。それでも司令は反応せずボーッとしていた。

駆け込んだ者は司令に接近すると彼の背後からガバッと抱きついた。周りの者は何事かと思って振り返る。彼女は前線帰りらしく服はボロボロ、髪はボサボサだった。

 

司令は後ろに居る者の硝煙と潮の香りを感じた。

 

「金剛……お前か」

 

胸に回された手を取りつつ彼は言った。彼女は司令の背中でモゴモゴ言った。

 

『ワタシね全速力で戻ってきたんだよ。そうしたら、こっちで待機している彼女の呟きがうるさくてネ……』

 

英語だった。何かを悟ったように司令も英語で聞き返した。

 

『彼女は何て言ってた?』

『私が出ていれば……って』

 

そこまで言って金剛は、何かがこみ上げてきたのか後が続かなかった。

 

司令は言った。

 

『あいつもそのうち、ここに顔を出すだろうけど』

 

途中まで聞いて金剛は彼の言葉を遮るように首を振った。

 

『ウン分かってる、分かってるヨ! ワタシ怒ってるンじゃないから』

 

彼女にもその声の主が一番苦しんで居ることが分かっていた。

 

 しばらくジッとしていた二人だったが、やがて金剛は言葉を選ぶようにして話し始めた。

 

『提督? 今後何があっても……他の全員がもし轟沈してもネ、ワタシは貴方を信じているから。だからワタシ絶対に、絶対に沈まないから。向こう側にも行かないで絶対に戻ってくるから……だから提督も絶対ワタシを待っててネ』

 

彼女は頬も服も手も真っ黒だ。いつしか司令のカッターシャツも黒ずんでいる。だが彼もまったく気にしていない。

 

『私もお前を信じているよ金剛。いつまでも待つよ』

 

彼も彼女の手を握って英語で答えた。

 

『うん』

 

そう言うと金剛は、再び司令をしっかりと抱きしめるのだった。

 

 ボロボロの艦娘と受け止める司令……周りに残っていたスタッフも彼らの姿を咎めるものはいなかった。いやむしろ作戦当初には周りの参謀たちは美保の弱小ぶりを嘲笑さえしていた。

 

赤城を轟沈させ他の艦娘たちも危うく沈めそうになった美保。ブルネイで響いたあの武勇は結局偶然だったのか。一見、良さそうに見える指揮官や艦娘たちの関係もとどのつまり単なる仲良しクラブ程度に過ぎなかった。

 

ところが今、この二人の様子を見た彼らは、その判断が間違っていたことに気付いた。

 

 ブルネイでシナを追い返し本土帰還の際にも数々の絶望的な状況を打破してきた彼ら。そこにあるのは数字だけの外的な戦力ではない。艦娘量産化で、ややもすると見失ってしまいがちな何か。それは今ここにある。

 

司令と艦娘との絆。それは単なる男女の関係を越えた絶対的な信頼感。

 

ああ、これが噂の美保鎮守府の真の姿なんだ。

 

その結びつきを軍人である周りの者たちは、むしろ羨ましいとさえ思うのだった。

 

 残っていた他の軍人たちは我知らず敬礼をしていた。崇高なるもの、その前に人は自然に頭を垂れるのだ。

 

 

 




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※これは「艦これ」の二次創作です。
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サイトも遅々と整備中~(^_^;)
http://www13.plala.or.jp/shosen/
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PS:「みほ9ん」とは
「美保鎮守府:第九部」の略称です。
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