『ぱそ……なに? それ』
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オトナ「艦これ」「提督暗殺」(みほ9ん)
:第16話<轟沈と絆:テイトクと金剛>
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さすがに周りから敬礼をされていることに気付いた美保の司令と金剛は、ちょっと気恥ずかしくなりお互いに離れた。最初、美保鎮守府のメンバーに対して周囲から腫れ物を障るような雰囲気だった。それがいつの間にか軽蔑どころか尊敬されるムードに変化していたことに二人は驚いていた。
金剛は司令に耳打ちするように小声で言った。やはり周りに配慮してか、英語だった。
『どうなっているネ?』
『わからん』
なお海軍の指揮官ともなれば、英語は当たり前のように話せるので金剛が英語で喋ったところでバレバレである。この技が使えるのは鎮守府内の艦娘か、兵学校を出ていない一般兵や職員に対してくらいである。今回のような前線基地では、ほぼ意味がない。
さすがの金剛も気恥ずかしくなったのか『じゃあネ!』と言って、司令を離れ別室へと向かった。待機していた艦娘を見に行くのだろう。そういえば前線メンバーを出迎えに出た祥高さんは、まだ戻らない。
「やれやれ」
司令は軽く伸びをすると、ため息をついて再びデスクに向かう。
美保の司令は艦娘を轟沈させない指揮官で通っていたから、まさかの事態である。しかも沈めたのは正規空母だ。艦娘とはいえ大型艦を沈めたら責任は追及されると彼は思った。
「やれやれ、まずは始末書か……」
始末書と言うのは通り名であり、要するに赤城轟沈の報告書を上げなければならない。轟沈に至った経緯と原因、そして今後二度と同じ過ちを犯さないための資料にするためである。
司令にとって轟沈の始末書を記入すること自体も久しぶりだった。だが彼が居る場所は前線の司令部だったから鎮守府の秘書艦はいるが、彼女も事務系のスペシャリストではない。そのためどうしても彼自身が書類を仕上げる必要があった。
久しぶりの轟沈、しかも正規空だからショックも大きい。とはいえ落ち込んではいられない。戦闘はまだ継続するのだ。
以前の彼は艦娘を沈めると寝込むくらいに落ち込んでいた。激しい良心の呵責に襲われるのだ。ところが今回は意外にショックは小さかった。なぜだろうか?
彼はふと轟沈直後に戦場から全速力で帰還して、すぐさま指令室に飛び込んできた金剛を思い出した。彼女はストレートな性格であり、どことなく島風に近い。だが戦艦だけあって性格的には金剛の方が大きくて深いものを感じる。
司令と金剛がやり取りをしている光景は、傍から見ればイチャついているようにも見えるだろう。だが彼自身としては彼女が決して短絡的な感情で接しているのではないことを感じていた。それは金剛独特の感覚とでも言うべきか。
そもそも彼女は他の艦娘……姉妹艦はもちろん駆逐艦たちに対しても、とても面倒見が良い。そして落ち込んでいる艦娘がいれば直ぐに気が付いて声をかける。実に良く気がつく。だから司令に何かあれば真っ先に飛んでくる。そういう艦娘なんだ。正直、たまに行き過ぎることもあるが、その気持ちはありがたい。
『そうだ、艦娘たちが私に気を遣ってくれているんだ』
彼はそう思った。ややもすれば指揮官というのは組織内で浮いてしまうことがある。司令にもそういう経験はあった。
だが美保鎮守府では、それがまったく無かった。毎日、ドタバタしていたが、良く考えたら彼自身、孤独だと感じたことは無かった。だから今回も衝撃が少なく癒えるのも早いのか?
取り敢えず感慨に耽っている暇はない。報告書は作らなければ……彼は司令部にある一台のパソコンに向かった。電源は入っているので基本的な操作から……えっと、メモがないと良く分からないな。
彼がブラウン管とにらめっこをしていると、背後から英語で声をかけられた。
『テイトクゥ、何やっているネ?』
いつの間にか金剛が戻って来ていた。チラッと振り返ると、ああ、服を着替えて手も顔も洗ったようだな。髪の毛も治っている。彼女は彼の真後ろに他の車輪つきイスをゴロゴロと引っ張ってきている。司令は前を向き直りながら応えた。
『パソコン……』
それを聞いて不思議そうな顔をした金剛。まだ英語か?
『ぱそ……なに? それ』
金剛は背もたれにアゴを乗せて逆向きにして座っている。相変わらずラフだよな、お前は。彼は思った。でも作戦指令室にはもう他には技術者くらいしか居ないから好きにしてくれ。
『コンピューターだよ』
司令はブラウン管に浮かんだ緑色の文字を追いかけつつ応えた。金剛は言う。
『はあーん。計算機か』
あながち間違いではない。
『何を計算しているネ』
しつこいな。
『お前の知能指数……あ痛ァ!』
背中から平手打ちを食らった。おいおい、戦艦が半分本気か? かなり痛いぞ。司令は痺れてしばらく動けなかった。
『もう! 最近のテイトクは意地悪ネ!』
不機嫌そうな声が響く。残っている技師たちが驚いている。
『だったら邪魔するな。英語で会話すると気が散るし疲れるんだよ』
司令は憮然として答えた。すると金剛は司令の背後から軽く腕を廻してしがみ付くと今度は日本語でこう言った。
「ごめんね。紅茶か珈琲でも入れようか?」
ヤレヤレ。
「ああ、そうして貰えると嬉しい」
このギャップ感が相変わらずだよなと彼は思う……ン? コーヒーって?
「任せるネ!」
腕を解いた金剛が何となく後ろでガッツポーズみたいな腕まくりをしている雰囲気が伝わってきた。
金剛も人の心に敏感な艦娘だ。不思議な距離感というか、気が利くようでもあるが時にはそうでない事もあるし。イマイチ解せない部分も少なくない。
もちろん不思議なのは青葉も似ている。だいたい艦娘って全般に、個々に謎めいた部分が多いよな。改めて司令は思うのだった。
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※これは「艦これ」の二次創作です。
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サイトも遅々と整備中~(^_^;)
http://www13.plala.or.jp/shosen/
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PS:「みほ9ん」とは
「美保鎮守府:第九部」の略称です。