「今日は妙に慎重だね?」
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オトナ「艦これ」「提督暗殺」(みほ9ん)
:第18話<電:不安と欲望>
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雨が激しい。車庫の屋根にも叩き付けるように降り注いで、轟音を立てている。しかし電は、なぜか車庫から上がる気がしなくて、さっきからずっと軍用車の運転台に居た。
その様子を見て最初は「変なの」と言っていた夕張だったが、電のただならぬ気配に以後は何も言わなくなった。そして心配して声を掛けてくれた。
「外に出てから何かあったら、すぐに連絡するんだよ」
夕張の声かけが嬉しかった。軍用車は、ほぼ毎日使っているから問題はないと思ったけど念のために電は、車と自分自身の無線機もチェックした。
やっぱり心配した夕張が声をかけてきた。
「どうしたんだい? 今日は妙に慎重だね?」
「……」
電は『何となく』と言おうと思ったが馬鹿にされるかと思って黙っていた。でもそれを察したのか夕張は言った。
「そういう理由も無く心配になるとき。私も時々あるけどさ」
夕張は、隣の軍用車に寄りかかりながら言った。
「でもさ、そういう時って大概、何も無いんだけどね」
夕張は笑ってくれた。電もホッとしたけど……でも不安は消えなかった。車が故障するとか、その程度なら良い。何かもっと大きなこと。鎮守府にとって大変な事件が起きるのではないだろうか? それだけが心配だったのだ。ただ自分ではどうしようもないから仕方無しに運転台に座っているだけだった。
夕張もそんな電を心配して、ずっと車庫に居てくれる。電は『もういいのです』と言ったが夕張は『良いよ、付き合うよ』と応えてくれた。
そのうち天気はどんどん悪くなり空は真っ暗。雷鳴と同時に滝のような雨が降り注いできた。屋根の轟音と雨どいから流れ出る水の音が続いていた。
「大荒れの海を連想するね……」
フッと夕張が言った。
「そう……なのです」
電はボーっとしながら応えた。でも、どんなに大変でも海の嵐よりは陸の大雨の方がよっぽど良い。そんなことを考えていた。ただ艦娘である自分が海を否定するようなことを考えても良いのだろうか? そんな罪悪感があった。
「もし何なら運転、私が変わろうか?」
夕張が提案してくれた。でも電は断った。
「いえ、でもやっぱり私の任務なのです」
電は必死に応えたのだが、それを聞いた夕張はなぜか笑顔になった。
「うん任務か……そうだよね。私たちが生きる意義は、まさにそれだよね」
夕張は腕を組んだまま噛み締めるように言った。
「任務……」
言った電、本人が繰り返して呟いた。
「そうなのです。私には『にんむ』があるのです」
ハンドルを握ったまま呟く電を見て安心したような表情になる夕張だった。
「16:00か……」
壁の時計を見て夕張が呟いたとき、神通がやってきた。
「電チャンは、ここに居る?」
彼女が声をかけると電は返事をした。
「はい!」
「そろそろ出発だけど……」
神通は出かける雰囲気だが……彼女の腰に拳銃のホルスターが下げられているのを電や夕張は見逃さなかった。二人は改めて緊張した。だがそんな二人を見た神通は言った。
「うふふ、大丈夫よ。中央の長官クラスに随行する場合は規定で短銃の所持が義務付けられているだけだから」
VIPの送迎機会が多い電もそれは知っていた。だが……そういう神通ですら、いつもよりも緊張している雰囲気があるのだ……昼間よりも。
「電チャン、そんなに緊張しなくて良いわよ」
そういう神通自身もまた妙な胸騒ぎがしていた。いつもと違うVIPだから? それとも初代の提督だから? ……いや違う。そういう自分が緊張する類の胸騒ぎではない。なんだろうか?
その時ふと彼女は思った。これはきっと『人の想い』なのだ。
艦娘である神通には人間の気持ちが分かるはずがない。ただ彼女は最近秘書艦と話した際に『人の想い』について説明を聞いたのだ。どちらかといえば受身が多い艦娘には人間の『主体的な気持ち』言い換えれば『欲望』というものが分かりづらい。
ところが秘書艦が言うには艦娘でも欲望は持て居るし人の気持ちを理解できるという。
実はあの深海棲艦は欲望が強い。しかも人間の欲望に近い感情を持っているという。それはどちらかといえば反抗心として現れるため彼らは攻撃的であり侵略性を持つという。
なぜ秘書艦はそんなに詳しく知っているのか? 単なる知識ではない雰囲気があった。そういえば秘書艦は普通の艦娘とは違う。だからだろうか? ちょっと疑問に思った神通だったが彼女の説明には納得がいった。
そしてあの戻って来た大井にも、その感情が強いことも何となく分かっていた。だから避けるとか仲間はずれにすることは無かった。それにあの娘は、まったく普通の少女だ。そんな感情は全く感じられない。
「でも……」
その『欲望』という感情は紙一重の相反する心そのものではないだろうか? 神通はそう思った。
そしてちょうど今、自分が感じているこの不安がまさしく戦闘中に深海棲艦の群れの中に居るのと似た感覚なのだ。ただ、これはまったく同じではない。もっと強い、そして深い。
きっとこれは『人間』の誰かが何か考えている。しかもそれは、かなり強いレベルだ。何となくそう思った。ただ、いろいろな種類があるようで単独ではないのかも知れない。その多さと深さは、もはや自分独りでは太刀打ちできない。
もっと早く気付いていれば秘書艦に相談できたのだけれど。彼女は後悔した。だが今は時間がない。何事も無く無事に帰れたら秘書艦に報告しよう。彼女はそう思うのだった。
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※これは「艦これ」の二次創作です。
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サイトも遅々と整備中~(^_^;)
http://www13.plala.or.jp/shosen/
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PS:「みほ9ん」とは
「美保鎮守府:第九部」の略称です。