「……なぜですか?」
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オトナ「艦これ」「提督暗殺」(みほ9ん)
:第1話<電:故障直後>
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さっきから凄い豪雨となっている。よりによって、こんな日に……と電は思った。
「夕張さんはまだかしら……」
車内で一人、取り残された電は、それでもダメもとで何度かエンジンを起動させようと試みるが、ウンともスンとも言わない。まったく反応がないのだ。
「ついさっきまでは走っていたのに……なぜですか?」
この新車の軍用車が美保鎮守府に納車されてから、ほとんど電が一人で運転を担当してきた。だから愛着があるだけに、不思議でならなかった。
そんな電も最初に別の軍用車を運転したときには、ほとんど運転できなかった。それは司令の実家を訪問したときだった。あの時は霞ちゃんも激怒していたなあと、状況が思い出されて思わず首をすくめた電だった。
「それでも司令は私にこの車を任せてくれたのです。だから最後まで責任を持つのです」
雨の中、薄暗い車内で電は一人、呟いていた。司令の期待に応えようと努力した結果、今では電も目をつぶってでもできるくらい軍用車の運転が得意になっていた。
本来は電の仕事ではなかったが、整備担当の夕張に教えてもらいながら可能な限りメンテナンスも自分でやっていた。だから、なおさら今日に限ってトラブルが起こることが不思議でならなかった。
≪電ちゃん、お待たせ。もう直ぐ着くからね≫
無線で夕張の声が聞こえ、ホッとした電。すぐに後方から車のヘッドライトが近づいて来た。鎮守府のトラックに乗った夕張と、多分……霞ちゃんも来ているなと電は思った。
やがて軍用車に並行する形でトラックが止まる。電が出ようとすると無線が入る。
≪良いよ出なくて。とりあえずボンネット開けて。こっちで見るから≫
「はい、すみません」
電はボンネットのロックを解除した。直ぐに二人の人影……一人はやや長身の夕張さんと、もう一人は小柄な霞ちゃん……傘を持っているのです……そんなことを思っていた。
無線がオープンになっているらしく、夕張の呟く声が電にも聞こえた。
≪えーっと……あれ? 何コレ≫
嫌な予感がしていた電だったが、やはり軍用車は普通ではない感じだった。夕張もちょっと考え込んでいる様子だったが直ぐに無線が入った。
≪聞こえる電ちゃん?≫
「はい……」
≪ここじゃ直せないからさ、もう引っ張るから。前のウインチ出してくれる?≫
えーっと、ウインチ……あまり使わないのでどれだっけ。そう考えていると直ぐに無線が来た。
≪左下の……信号みたいなボタンが並んでいるでしょ?≫
ああ、これだ。思い出した。緑のボタンを押すと、軽い振動があった。
≪電ちゃん、サイドブレーキ確認。あと私が良いというまでブレーキ踏んどいて≫
テキパキと指示が出てくる。この豪雨の中を申し訳ないと思いながらサイドブレーキを確認してからフットブレーキを踏む。バックミラーには、尾灯が付く気配がした。それを見て電はふと思った。バッテリーは生きているのか……あ、でも軍用車だから、いくつか予備の系統があるのかな?
いつも一緒に整備をしながら夕張さんがあれこれ教えてくれたっけ。そのときは訳が分からなくても、こういう非常時になると思い出すんだな。電は意外な効果にちょっと驚いていた。
≪お待たせ! じゃ引っ張るから、ワイパーは動くか分からないから雨で前が見にくいかも知れないけどトラックにぶつからないように注意してついてきてね≫
「わかりました……ありがとうございます」
思わずお礼を言った電。
≪良いのよ≫
夕張さんはいつも明るいよな。電は思った。
「霞ちゃん……でしょ? ありがとう」
≪……≫
反応はなかったけど霞ちゃんで間違いない。電には、そう思えるのだった。
「あの……司令は無事に戻られましたか?」
つい心配になって聞いてしまった。夕張は驚いたように答える。
≪ええ? 司令? ……まだだけど。空軍の美保基地まで行ってたんだよね。確か≫
まだ戻っていない? 空軍の定期便の出発が遅れているのだろうか? それともこの豪雨だから? なるべく良い方に解釈したいのだがダメだ。どうしても別の不安が電の心をよぎるのだった。
そもそも今日は、この車からしてオカシイ。いや、これは偶然だ。必死になって悪い考えを打ち消そうとする電。でも……ついには不安と情けなさで涙が出てきた。
≪とりあえずゆっくり出すよ。ハンドル操作とブレーキ、気をつけてね≫
夕張の声に改めてハッとする電。
「はい……なのです」
半分泣き声で答える。何となく霞ちゃんが呆れているような空気を感じる電だったが夕張は敢えて無視してくれているようだった。
軽い衝撃があって、車はゆっくりと前へ進み始める。一部の電装品は生きているようで、車幅灯や尾灯などは点灯する。電はトラックに衝突しないように慎重にハンドル操作を始める。
豪雨は激しさを増し、滝のように叩き付ける音が辺り一面に響いていた。その普通ではない音と状況が一層、電を一層不安にするのだった。
「司令……大丈夫ですよね?」
思わず呟いてしまった。無線は……閉じてるはずだけど。また涙が止まらなくなった。だめよ、しっかり前を見ないと……そう言い聞かせた。
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※これは「艦これ」の二次創作です。
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サイトも遅々と整備中~(^_^;)
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PS:「みほ9ん」とは
「美保鎮守府:第九部」の略称です。