マイ「艦これ」(第9部)「提督暗殺」   作:しろっこ

26 / 49
エンストした電のもとにやってきた軍用車を運転していたのは司令だった。電は驚く。


第25話<電と神通:乗換え>

「へえ。そりゃ慕われたものだな」

 

------------------------------------------

オトナ「艦これ」「提督暗殺」(みほ9ん)

:第25話<電と神通:乗換え>

------------------------------------------

 

 ほどなくして雨の中を代車がやってきた。車の無線が感応する。

 

「こちら美保司令、代車として到着しました」

 

一瞬ビクッとした電。内心『なぜ司令が直々に……?』と思った。

 

「了解しました」

 

助手席の神通が車内の無線で応える。ミラーでもハザードランプを点けた軍用車が後方につけているのが見えた。

 

 電は疑問に思ったが車内の誰も司令が直接来たことについては別に不思議とも何とも思っていないようだった。相手がVIPだから? 電はそう思った。

 

幸い雨が少し小康状態になった。神通が言う。

 

「じゃ電チャン、私たちは移動するから……あとは夕張さんが来るはずだから」

 

電はうなづいた。

 

「分かったのです。司令にもよろしくお伝え下さいなのです」

 

【挿絵表示】

 

 

それと同時に全員が、きびきびと動き車の移動を開始する。

 

「ありがとうな電チャン」

 

出掛けに次官は軽やかに言うが『女王』はちょっと微笑んだのみ。電は一瞬『あれ?』という違和感を感じた。ただそれは今朝から天候が悪いせいで、ずっと自分が不安に思っていたからだろうと自分に言い聞かせた。

 

 やがて電の車の横を司令の運転する軍用車が通り過ぎた。その尾灯が遠ざかるのをみながら電はなぜか胸騒ぎがしていた。

 

「ここからなら空軍基地までは10分と掛かりません」

 

ハンドルを握りながら司令は言う。

 

「済まなかったわね、あなた直々に出させて」

 

長官は詫びた。司令は答えた。

 

「いえ……ただ、艦娘たちが異常に私を引きとめたので参りましたけど」

 

この話題に食いついたのは次官だった。

 

「へえ、例えば誰が?」

 

司令はちょっと恥ずかしそうに応える。

 

「あの大人しい寛代と金剛……こいつに至っては背中に妖怪の『コナキジジイ』みたいに張り付いて比叡や祥高さんと引き剥がすのが大変でしたよ」

 

それを聞いた次官は喜んでいる。

 

「羨ましい……もとい、へえ。そりゃ慕われたものだな」

 

そして長官も微笑んでいた。

 

「それは良かったわ。あなたはもう立派な司令官ね」

「いえ、恐縮です」

 

 だが無責任に喜ぶ人間たちとは裏腹に艦娘である神通は違和感を覚えていた。さっき車庫で覚えたあの変な感覚だ。

 

人間がどういった感情を持っているのか彼女には正直、良く分からない。だが艦娘には人間の感情に反応する部分だけでなく、超自然的な現象の前触れに対しても人間以上に敏感なことが多い。個体差はあるが平均値では人間以上だ。

 

この司令に対する不穏な空気。重圧というのだろうか? ドス黒いもの感じたのは神通だけではなく寛代や金剛も感じていたのだと……特に金剛は普段の言動から大雑把な印象が強いが実際に彼女は人や艦娘の感情の動きにとても敏感な艦娘だ。

 

『金剛さんがそこまで司令を止めようとするのは、何かあるに違いない』

 

そう思った神通は自然に腰のホルスターに手をやるのだった。

 

『出来れば、これは使いたくないけど……』

 

 そうこうしているうちに空軍美保基地のゲートに到着。既に連絡してあるのでナンバープレートと顔パスだけで通過できた。

 

「空軍基地の本館玄関で降ろしてもらえば後は良いわよ。すぐに戻って」

「ハッ」

 

 車は滑るように本館前の正面玄関に到着。そこには庇があるので長官と次官を見送るために司令と神通も一旦車を降りた。玄関前には美保基地の司令も顔を出していた。彼と長官は簡単に挨拶をしていた。

 

「そうだ」

 

 長官を見ていた次官が急に司令に何かを手渡した。

 

「俺の愛用の銃だが……念のために渡しておくよ。お前、今丸腰だろ?」

 

神通が居るからと言いかけて司令はハッとした。丸腰もそうだが寛代や金剛のあの止め方だ。ひょっとしたら何かを察知したものか? 鈍感な彼もさすがに不安が脳裏をよぎった。

 

「お前にくれてやっても良いし良心の呵責があるなら今度来るときに返してもらっても良いよ」

「有り難う」

 

二人のやり取りを見ていた神通はホッとした。彼女もずっと不安を抱いていたが、さすがに寛代や金剛ほど激しく止めることはしなかった。ただ司令が丸腰なのは事実であったし正直、自分ひとりでは司令を守りきれない。そんな不安があったのだ。

 

 この次官はやはり信頼できる人だわ。神通はそう思うのだった。空軍司令と話をしていた長官が振り返る。

 

「フライトはちょっと遅れるみたいだから一旦上に上がるわ。あなたたちここで良いわ。雨の中、本当に有り難うね」

 

長官は敬礼をした。司令と神通も敬礼をした。そして二人は敬礼を直ると、軽く会釈をしてから車に乗り込んだ。

 

それを見送りながら次官も、言い知れぬ不安を感じていた。あの短銃は特注品だから精一杯、美保の指令を守ってくれ。そんなことを考えていた。

 

 




--------------------------------------
※これは「艦これ」の二次創作です。
---------------------------------------
サイトも遅々と整備中~(^_^;)
http://www13.plala.or.jp/shosen/
---------------------------------------
PS:「みほ9ん」とは
「美保鎮守府:第九部」の略称です。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。