「はい、信じてください」
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オトナ「艦これ」「提督暗殺」(みほ9ん)
:第31話<当日昼過ぎ:艦娘と信頼>
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マスターが口を開いた。
「司令官、美保の秘書艦は太平洋戦線で、お前を通さないで勝手な判断をした上に、寛代まで連れて情報収集を行っていた。もちろんそのお陰で美保鎮守府としては無線連絡が容易になったという利点はあったが軍としては統制に問題があるな」
彼は司令の表情を確認するように言った。
「司令官として、それはどう思うか?」
「……」
まるで試験か尋問のようだなと思いつつ彼は一瞬考えてから答えた。
「もちろん軍の統制という面では問題です。しかしそれは私がまだ至らぬ為でもあり秘書艦にそういった行動を取らせる遠因を作った私自身の不甲斐なさを反省すべきです」
そう言いながら彼は以前、艦娘たちに押し切られて大山登山を勝手に行った自分を思い出していた。あの時は逆に司令が秘書艦に叱られていた。まだまだ指揮官として不足な自分を痛感していた。
司令官が上官の前で自らを否定することは下手すれば降格あるいは解任の恐れもある。しかし司令の性格なのだろう。秘書艦を責めるより先に自らの首を差し出したのだ。
さてどうなるのか? 防衛次官も固唾を呑んで見守っている。だがマスターは長官を見ながら言った。
「オレは現役ではないからな。長官はこれをどう思う?」
それを受けて彼女は言った。
「軍としては問題です。しかし艦娘を司令の格下ではなく同等な位置で捉えた場合、美保では参謀の位置にある祥高が判断したことは結果も含めて的確でした。そして今、司令が自分の至らなさを認めた点。これは私は個人的に評価します」
マスターは微笑んだ。
「決まりだな。司令に秘書艦は、お互いに非を認め反省するということだな。ではこの件はこれで閉めて構わないな」
「異議なし!」
突然、次官が手を叩く。相変わらず反応が良いなと司令は思った。だが彼のリアクションには救われる想いだった。それは秘書艦も同様だろう。さらに長官は続ける。
「美保はいろいろな意味で今、実験的かつ先駆的な位置にあります。パイオニアとしての二人には大変だと思います」
司令と秘書艦は顔を見合わせた。長官は続ける。
「今後も艦娘相手に今までの軍の常識を越える決断を迫られるでしょう。それでもお互いに信頼し合って艦娘と一つになり乗り越えて下さることを期待します」
『はい』
司令と秘書艦は揃って敬礼をする。マスターは長官に声をかけた。
「大体終わりで良いかな?」
「そうね」
長官もうなづく。何かを知っているらしい秘書艦を除いた男性二人は結局、この時間はキツネにつままれたような心地だった。
やがて再び軍用車が2台お店に呼ばれた。ここに来るときと同じく長官と次官は電の車に、司令と秘書艦は霞の車に分乗した。
マスターは玄関まで見送りに出て言った。彼は軽く手を上げて言った。
「また来いよ……生きてたらな」
一般の人相手であればこの言葉は失礼だろうが生死と背中合わせの日々である軍人には普通の挨拶言葉であった。司令たちは軽く敬礼をして別れた。果たしてまた来ることが出来るか? そう考える司令だった。
雨は相変わらず強い。軍用車はライトをつけて走るが、時おり激しい水しぶきを上げながら走る。帰りの車内で司令は秘書艦に聞いた。
「祥高さんは太平洋戦線に関して、まだ私に黙っていることがあるのかな?」
秘書艦はその問いに、あまり表情を変えずに応えた。
「はい司令……わけあってまだお話できないことが幾つかあります」
なるほど、と彼は思った。
「司令にもそれは言えないことか?」
このとき初めて秘書艦は苦しそうな表情をした。
「はい。姉と妹から口止めされてますので」
司令は腕を組んだ。あの二人の指示なら仕方ないか。何か考えがあるのだろう。さらに秘書艦は苦しそうに続けた。
「話せる時期が来たら必ずお伝えしますが……今はスミマセン」
彼女は頭を下げた。それを聞いた司令は応えた。
「ああ、私は君を信じているから」
その言葉に秘書艦はうつむいて少し赤くなって言った。
「はい、信じてください……壁を越えるまでは」
意味深な……だがそれは置いておいて改めて司令は確認する。
「私たちのことはまだ艦娘たちには言わない方が良いのかな?」
「はい。それも、もう少し待てと姉から……」
司令はため息をついた。やれやれ……制約だらけだな。ただ自分の背後で何か大きなものが動いている。そういう感覚だけはあった。
運転席からそのやり取りを見ていた霞は二人の関係を察した。だがそれは他の艦娘には黙っておこうと彼女は思った。勘の良い艦娘は気付いているだろうけど時期が来たら秘書艦が自ら告知するだろうと思ったからだ。
道中、彼らの車を監視する黒い車が居るのを長官や秘書艦は見逃さなかった。だが司令は気付かなかったようだ。やがて2台の軍用車は相次いで美保鎮守府に到着した。
だがその事実は最後まで司令に報告されることはなかった。また秘書艦は美保鎮守府の他のどの艦娘にもそれを伝達しなかった。寛代という例外を除いて。
寛代は執務室へ上がる司令の後姿を無言で見詰めていた。もともと表情の乏しい彼女は何かをブツブツとつぶやいていた。それが無線なのか彼女の独り言なのかは誰にも分からなかった。
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※これは「艦これ」の二次創作です。
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サイトも遅々と整備中~(^_^;)
http://www13.plala.or.jp/shosen/
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PS:「みほ9ん」とは
「美保鎮守府:第九部」の略称です。