「衝撃に備えてください」
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オトナ「艦これ」「提督暗殺」(みほ9ん)
:第32話<当日夕刻:来ないで!>
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司令たちが境港市の細い路地から旧道に出ると、また別の車がいた……それらはライトを点けると軍用車へと突進してきた。神通は直ぐにブレーキを踏んでシフトチェンジをする。
市役所側の旧道は片側一車線の細い道路にも拘らず2台の車が並んで向かって来る様は少々恐怖感があると司令には感じられた。やはり海ではなく地上だから距離感がつかみにくい。
一方、艦娘の神通が恐怖感を覚えるかどうかは不明だ。彼女は何かをブツブツ言いながら激しく後退しつつ必死にハンドルを切っていた。
神通は「来ないで!」と言っているらしく徐々にその声は大きくなる。
車はやがて旧道にあるバス停……道幅が広くなった場所で180度ターンをした。雨なので回転しながらタイヤがスリップして水しぶきが飛ぶ。これが日向なら『ベルトを締めてください』とか何か言ってくれそうだが神通はとにかく逃げるのが精一杯だ。日向に比べて若干、余裕の無いところがそうさせるのだろう。
車が転回する直前に相手の車を見た司令は、さっきの連中とはちょっと違うと感じた。要するに今回襲って来ている敵は単独ではなく複数いるらしい。
「司令、衝撃に備えてください」
初めて神通が何かを言ったと思った次の瞬間、彼女はいきなりブレーキを踏むと同時に車道で後退を始めた。『そう来たか』と司令が思う間もなく後続の2台が激しく軍用車の後部にぶつかる。
ガツンという鈍い音と衝撃に耐えながら司令は神通は一体どこでこんな技術を覚えたのだろうか? と不思議に思った。
「伊勢さんです」
司令の考えを悟ったかのように応える神通。伊勢? 日向ではなくて……そうか。あの姉妹は量産型であっても先天的に、そういうスキルを持っているのだろう。司令はそう考えた。
一瞬、敵の攻撃が緩んだと思うとガタンと言う衝撃があった。振り返ると後ろのスペアタイヤとその周りを固定していた部品が道路にガラガラと落ちた。あれが無かったらもっと衝撃を受けていたに違いないと彼は思った。とりあえず相手には、かなりのダメージを与えたようだ。
敵は軍用車ではないらしい。その1台はラジエターが破れたのか白煙を上げた。あれはもう駄目だなと司令は思った。神通もそれをチラッと確認しつつ素早くシフトチェンジをしてアクセルを踏み込む。
あれだけの衝撃を受けながらも軍用車は何事も無かったように旧道を島根半島方向へ走り出す。
新手の敵は一旦は押さえ込んだが、このまま逃げ切るのも限界だろう。だが美保鎮守府のクセなのか司令も神通も相手が発砲してこない限りは撃つ気にならなかった。
神通は何かを呟いていた。美保鎮守府に無線連絡を取っているようだ。援軍でも来れば少しは……と思った司令は直ぐに苦笑した。もう一台の軍用車は電チャンがエンスト中。残りはトラック……援軍には厳しいな。
「司令!」
神通が小さく叫ぶと前の道路から新手の2台の敵らしき車両が向かってくる。雨なのでハッキリとは見えないが、やはり狭い旧道を2台並んでくるから普通の車ではない。最初の連中だろうか?
神通は間髪を居れず直近の交差点を右折する。ちょっと広い直線道路で後ろから敵がもの凄い勢いで追いすがってくる。この敵も軍用車ではないが、その分足が速い。あっという間に追いつかれ左右から挟まれた。
まだ夕方なので道路には他の車も走っている。そんな中での追跡劇とは、かなり強引だ。しかも雨天……他の一般車両が避けながら気が付くと通過するそばから周りに接触事故を量産していた。また美保鎮守府の印象が悪くなるなと司令は心配した。
やがて追いすがってきた左右の車が幅寄せして接触してくる。両サイドからキリキリという金属音。だがこちらは軍用車なので簡単には壊れない。
「もう来ないでって言ったのに!」
ついに神通が切れた。ハンドルを握りながら彼女は叫ぶ。
「司令! 発砲許可を!」
「許す!」
司令が言うが早いか彼女は片手で窓を開けるとチラッと右の車を見る。窓から雨が吹き込んでくるが神通は気にしない。相手はスモークか何かだろうか? 敵の運転している車両では中の人物はシルエットしか見えない。向こうの車の足は速そうだが防弾ガラスかどうかは分からない。
神通は左手でハンドルを保持したまま右手でマシンガンをつかむと、やおら窓の外に差し出し相手の車体下部目がけて連射する。小刻みに振動するハンドルと車体。よくも片手で……さすが艦娘だなと司令は思った。そういえば秘書艦はもっと大きな機銃を素手で撃ってたよな。
神通はとにかく頭に来ているようだ。切れた艦娘は怖い。ましてや彼女のように普段大人しい子ほど切れたら何をしでかすか分からない。
飛び散る薬きょうが車内や車外にバラバラと散乱する。その弾けるような金属音がキンキンと響く。射撃の反動で軍用車は少し左へ逸れる。敵の車に左右から挟まれていたので右側の敵には連射し反対の左側の車には、こちらの車体を押し付けるような形になった。
その時ちょうど、陸橋に差し掛かる。
連射するうちに相手のタイヤに命中したらしく右側の車は突然進路を変えて中央分離帯に乗り上げた。あっという間に激しくジャンプした後に横転する。
対向車線にはみ出した敵の車に反対車線を走ってきたどこかのトラックがぶつかった。ああ……司令はゴメンナサイと思った。怪我するなよ……無理か。
射撃を止めた神通は片手運転を続けているが、左側の車はずっと道路の柵に左側を激しく擦り付けられたまま陸橋の頂上を越えてガードレールが僅かに途切れた隙間に車体前部を引っ掛けた。当然、軍用車にプレスされているから引っ掛けた勢いで激しくスピンをし、そのまま軍用車の後ろに放り出された。
ああ、またごめんなさい……司令は思った。最初の車と同じように敵の車は横転して回転したところに後続車両が何台か衝突している。
ただ激しい追跡劇に誰もが驚いているから、ぶつかった車も速度はあまり出ていないのが幸いだった。
神通はマシンガンをシートの右側の隙間に押し込みながら言った。
「司令、お怪我は?」
彼は苦笑する。
「多分、無い」
神通は微笑んだ。
「スカッとしました」
「それは良かった」
司令も笑った……が、直ぐに表情が固まった。遥か前方の広い交差点に新たな敵……今度は装甲車が現れたのだ。しかも2台も居る。
「簡単には逃がしてくれないな」
「そのようですね」
応えた神通がハンドルを切ろうとした瞬間、そいつらが発砲した。
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※これは「艦これ」の二次創作です。
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サイトも遅々と整備中~(^_^;)
http://www13.plala.or.jp/shosen/
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PS:「みほ9ん」とは
「美保鎮守府:第九部」の略称です。