「電……頑張れ」
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オトナ「艦これ」「提督暗殺」(みほ9ん)
第34話<当日夕刻:電と霞と夕張と>
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神通は思わず急ブレーキを踏む。軍用車は陸橋の下り坂の途中でスリップしながら停車し若干スピンをした。それが幸いして装甲車の放った砲弾は直撃はせず軍用車の手前と横の道路に相次いで着弾した。
司令たちの目の前に一瞬、火柱が立ち上った。同時に激しく揺れる地面。辺りは水しぶきと白煙と舞い上がった土砂で混沌とした。
車にはバラバラとコンクリートや砂やら色々なものが降り注ぐ。周りの車も相次いで急停車している。その後続車が軒並み接触事故を起こす。
ハンドルを保持したまま神通が呟くように言う。
「あれは確かシナの上陸艇だったと思います」
確かにどこかで見た形だと思った。さすがに国籍は隠しているがシナ単独か、あるいはこの嵐に乗じて深海棲艦と手を組んで強襲をしてきたか?
だがいくら豪雨とはいえ高尾山の電探にも一切引っ掛からなかったところを見ると敵は航空機で上陸したのではないだろう。やはり海から……深海棲艦だろうな。
しかしブルネイでも上陸まではしなかったシナも思い切ったことをするな。以前、境港に上陸した戦車も、ひょっとしたらシナの車両だったかも知れない。いずれにせよ装甲車まで持ち出されると、もはや機銃如きでは太刀打ちできないな……そう思う司令だった。
時間はその少し前に戻る。
境港市の旧道を鎮守府に向けて走っていた軍用車とトラックは2台の黒い車に強引に追い越された。前を走るトラックも少し驚いている様子だが、その車を見た電は胸騒ぎを覚えた。
それから数分後。電の無線には神通の声が入ってきた。極秘の軍用周波数ではなく緊急支援要請だった。これはきっと司令と神通が襲われているのだと彼女は直ぐに悟った。だがこの軍用車は動かないから悔しい。
でも一部の電装品が生きていると言うことは、もしかしたらまた走るかもしれない。そんなことを思った電はダメもとでエンジンの再起動を試みる。
同じ無線は夕張や霞も聞いていた。
「どうするの?」
霞は夕張に聞いた。
「どうって……まだ鎮守府から命令が無いからねえ」
夕張はバックミラーを見ながらわざと悠長に応えた。でも彼女には分かった。
電……あなた行く気なのね。彼女にはそう思えた。だが敢えて車のことは黙っておこう。電の軍用車のエンジンにはちょっとした小細工がしてあったけど……なぜか完璧ではなかった。つまりその気になればエンジンが再び掛かる可能性がある中途半端なものだった。
だから夕張は電の事故直後にそれを見ても手を触れずに置こうと思った。何となく何か意図があってこんな細工をした者が居るのだ。その中途半端さに彼女は悪意と言うよりは、なぜか善意を感じた。
誰が何のために?
そこまでは洞察できなかったが、彼女は自分でも理由は分からずに放置した。ただ事故の振り……実際エンジンは動かなかったし、だからこそ、騙された振りをして救援隊として出てきたのだ。
「電……頑張れ」
思わず呟く夕張。
「……」
いつもなら直ぐに厳しい突っ込みを入れるはずの霞も、このときばかりは何も言えなかった。なぜか黙って見ておこうと思ったのだ。
鎮守府からはまだ何も言ってこない。無線は届いているはずだ。秘書艦は何をしている? イラつく霞。
その時バックミラーに突然、明るい光が反射した。後ろの軍用車のライトだ。ああついにエンジンが再起動したんだな……夕張は思った。同時にトラックには何かに激しく引っ張られるような反動が来た。
夕張は無線で小さく叫んだ。
「……ワイヤー……」
わざと断片的に……誰に聞かれても、分かりづらいように呟いた。
「あ……」
電の何かに気付いたような叫びが入り、あとは無音……無線を切ったらしい。夕張と霞は顔を見合わせた。あの子は意図的な命令違反をするつもりだなと。
やがて何かの操作をした電が徐々にトラックから離れていく。ワイヤーを逆転させて切るつもりか?
「ああ……じれったいね」
そう呟くと夕張はトラックのギアをシフトダウンさせて急加速した。一瞬、衝撃があり続いて何かがゴンと言う音と衝撃と共に勢いよく外れる反動があった。
ワイヤーが切れた電の軍用車は一瞬まごついたような動きをした後で、直ぐにトラックの右側から急加速をして追い抜いていった。その時、一瞬敬礼をしながら電がこちらを見たことに夕張は気付いた。
「電……頑張れよ」
夕張は減速しつつ微笑んだ。
「どうするの?」
霞は夕張に聞いた。
「どうって……やっぱり鎮守府から命令は無いけどねえ……」
そう言いながらも霞が葛藤していることを彼女は見抜いていた。
何かを言いかけて、でも止めて……霞は悩んでいた。電に付いて行きたい自分と規律を守りたい自分が激しく心の中でバトルをしていた。
そんな霞を見ながら夕張は思った。私独りなら直ぐにでも電の後に付いて行くんだけどねえ……霞は真面目だから。そして微笑んだ。
霞ちゃん早く決断しないともう直ぐ鎮守府に着いてしまうよ……夕張は霞を見ながらそう思っていた。でも判断は霞に任せようと。
美保の司令は幸せ者だよね。彼女はふと、そんなことも考えていた。ほとんどの艦娘たちが自らを省みずに司令を守ろうと一斉に動き始めている。
それはただ単にプログラムされた機械のように反応しているだけだろうか? 否、命令違反は本来、艦娘にとって絶対にあってはならないことだ。それを超える力とは何だろうか?
さすがにそれが何であるかは夕張にも分からなかった。でも今は霞自身の判断に任せよう。彼女はそう思ってハンドルを握っていた。
「ねえ……」
ようやく霞が聞いてきた。
「なあに?」
相変わらず間延びした返事をする夕張。しかし霞は思い詰めたような表情をしたまま前を見据えていたが、やがて決意したように言った。
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※これは「艦これ」の二次創作です。
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サイトも遅々と整備中~(^_^;)
http://www13.plala.or.jp/shosen/
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PS:「みほ9ん」とは
「美保鎮守府:第九部」の略称です。