「海軍は……海です」
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オトナ「艦これ」「提督暗殺」(みほ9ん)
:第38話<境港市街戦:霞の決意>
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「暗くなると地上でも厄介だ。早々に帰るとしよう」
『はい』
司令の言葉に夕張と霞は応えた。そして夕張はトラックに、司令は霞の運転する軍用車に乗り込んだ。まだ作業をしている陸軍に敬礼をして美保鎮守府の車両はそれぞれの方向へ向かって走り出す。
雨は上がり気温が上昇する。むっとした気配が辺りを包む。走りながら司令は夜戦についての疑問を霞にぶつけてみた。
「お前たちにとって海の上の夜戦ってのは、どうなんだ? 何か見えるのか」
ハンドルを握る霞はちょっと考えて答えた。
「電探があれば夜でもある程度は見えますが……それでも昼間より戦いにくいことは確かです」
「感情的にはどうなんだろうか?」
その質問に霞は怪訝(けげん)な顔をした。
「感情?」
司令は質問を変えた。
「つまり恐怖心と言うか怖いって言う感覚はあるのかな……」
「……」
霞は急に黙ってしまった。
ふと司令は以前、自分の実家に泊まって電チャンと一緒に寝ていて魘(うな)されていたのが目の前の霞だったことを突然に思い出した。あわわ……まずい! 下手したら地雷を踏んでしまう。
彼は慌てて否定する。
「あー、いやいやゴメンごめん。無理に答えなくて良いから」
だがハンドルを握ったまま霞はポツポツと答える。
「いえ、個人差はあると思いますが……私は怖いです」
無表情で応える霞。
「……」
それ以上聞くまいと司令は反省した。何か深い過去を持っている艦娘は少なくないが霞もその一人に違いない。意図的に穿(ほじく)り返すことも無いだろう。
「……」
霞は押し黙ってしまった。いや……気まずい。お互いに無言のまま軍用車は港方面へ走行する。
「もうすぐ岸壁に出ます」
霞は淡々と報告する。その直後、霞は急ブレーキを踏んだ。
「な……」
声を出しかけた司令はすぐにその理由が分かった。やはり敵が居たのだ。駅前通りの向こう……ちょうど岸壁に出る通りに黒い車が3台も並列に並んで、まさに通せんぼをするような状態で停まっていた。
「まさか……?」
今回の敵は直ぐに襲ってくる気配は無い。ただ司令たちを岸壁に行かせまいとしているのか?
「やつら無線傍受していたのか」
司令が言うと霞が応える。
「その可能性はあります……とりあえず手前の道を迂回しますか?」
「そうだね……」
これが霞以外の艦娘だったら岸壁に出れば艦娘が居るわけだから強引にでもこじ開けて突破しただろうが……慎重派の霞では、ちょっと厳しい。
軍用車は岸壁の手前の道を右折して市街の幹線道路を走り出した。まだ多少は対向車がある。さすがにこの状態では襲っては来ないだろう……と思っていたが甘かった。
後ろから急速に接近してきたまた別の黒い車が突然発砲してきたのだ。慌てて伏せる司令。そして霞はハンドルを左に切って路地に入る。流れる景色を見ながら、ここは実家に近いなと司令は思った。だがこんな状態で実家に寄るどころではない。
ただ、このまま道路を直進すれば境水道の岸壁に到達するはずだ。そうすれば艦娘が待っている……と思う間もなく前方からライト。そして発砲される。
「前から……挟まれたか!」
「捕まっていてください!」
霞は必死にハンドルを切る。今度は右に……細い路地を何度かハンドルを切っているうちに、ようやく敵は撒いたらしかった。
気のせいか霞の表情が硬い……少し震えているのだろうか?
「大丈夫か?」
「……」
そう言いながら司令は愚問だったと反省した。見れば分かる。この子は運転は電よりも上手だが度胸は、さほどでもない。それは彼女の特質というよりも何か過去の体験が引っ掛かっているようだった。だからこの子は我知らずにすべてに慎重になってしまうのだろう。
「司令……」
霞が思い詰めたように言う。もともと表情が硬い子だけどさらに硬直している。
「今なら……私が囮になります。せめて岸壁まで何とか逃げてください」
こういった判断は苦手そうな霞。だが彼女なりに必死に考えた結果だろう。かすかに顔面蒼白で震えているのが分かるが……普段の霞から考えるとそれは意外でもあった。
司令は応えた。
「分かった。適当なところで停めてくれ」
「……海軍は……海です」
霞が振り絞るように言った。そうだよな……困ったことがあれば、まず海に出る。あるいは海に戻る。それが海軍の生きる道だ。
「霞よ、お前の判断は正しい」
思わず応えた司令。
「……」
少し硬直していた霞はホッとしたような表情になり肩の力が抜けたようだった。そしてハンドルを握ったまま、ちょっと司令を見て初めて笑顔を見せた。
「司令……私も艦娘ですから」
「ああ、そうだったな」
司令は反省した。この子も一途な艦娘だ。人間的に判断してはいけない。
やがて細い路地で軍用車が停車して司令はサッと降車した。ハンドルを握った霞が敬礼をした。司令も返す。
「霞……お前のためにも生き残るぞ」
「はい」
薄暗い中ではあったが彼女の瞳は澄んで綺麗だった。そうだ、生きねば。今はそれが私のミッションだ。司令は改めて決意した。
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※これは「艦これ」の二次創作です。
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サイトも遅々と整備中~(^_^;)
http://www13.plala.or.jp/shosen/
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PS:「みほ9ん」とは
「美保鎮守府:第九部」の略称です。