「おい、無事に確保したぞ」
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オトナ「艦これ」「提督暗殺」(みほ9ん)
:第44話<最期の戦い:送り人>
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島根半島の山間部を走っていたライトバンはやがて半島の北側へと出た。しばらく走ると海と港が見えてきた。夜なので人影は無い。またこの時間帯は漁船の出入りも無い。雨上がりの後で気温は高く風は無かった。
港の岸壁の周りは人家もまばらで街頭もほとんど無い……特にここ美保関地域は敵の上陸を防ぐ為に灯火管制が敷かれているため、なおさら暗いのである。
車は港湾部を滑るようにして岸壁につけた。乗っていた二人の男性は無言のまま降車すると後部扉を開けて、そこに横たわっていた美保の司令の身体を担架のまま運び出した。
ボスは手下に聞いた。
「銃は大丈夫か? そのまま海底に落下……なんてことは無いか?」
手下は応える。
「大丈夫です、きちんと結んであります。ただ海で濡れますから……弾は自前でお願いしますよ」
彼は司令の身体を軽く叩いた。ボスはフフフと笑った。
「……三途の川の六文銭みたいだな」
「何ですか? それ」
手下は不思議そうな顔をする。
「餞別ってやつだ」
「なるほど……」
やがて司令の身体を運んだ二人は船着場に着いた。司令の身体をいったん下ろして周りを警戒する。
「早く来ないかな……憲兵に見つかると厄介だ」
心配そうな手下だがボスは平然としている。
「大丈夫だ。巡回時間は調べてある。それに今夜、この辺りの憲兵は謝恩会だ」
「さすがですね……」
「当然だ」
そのとき港の中央付近の海面から不自然な波の音が聞こえ始めた……まるで人が居るような音……そこは海の上なのだが。
やがて手下が海上に何かの影を発見して小さく叫んだ。
「来ました!」
ボスは暗闇に目を凝らすと軽くうなづいた。
「よし、海に降ろすぞ」
「あの……」
手下が不安そうに確認する。
「海に……このままですか?」
「当たり前だ。良いか? ソッとだぞ……なるべく水音を立てないように」
ボスは司令の身体を起こしに掛かる。手下はまだ心配そうだ。
「そのまま『轟沈』なんてことになりませんかねえ?」
「……」
ボスは無言で作業を続けるので手下も黙って従った。そして司令の身体は水際に安置された。
「よし、降ろせ」
「ハッ」
二人はなるべく水音を立てないように慎重に司令の体を港の水面に下ろした……というより、ほとんどそのまま投げ入れたのだが。
ダブンという水音がして司令の身体は港の海へ投下された。
人体は基本的には水に浮くというが意識の無い状態の人間をそのまま海へ投下すれば、下手したら死んでしまう可能性もある。手下には、ただそれが心配だった。だがボスは全く心配していないようなので今は大人しく従うしかなかった。
手下が固唾を飲んで見守っていると司令の身体は普通の遺体のように暗い海面にプカプカ浮かんでいる。シュールな構図だなと彼は思った。
「おい、岸壁から少し離れろ……周りからも怪しまれないようにな」
「ハッ」
二人はゆっくりと車へ戻る。ふと振り返ると海面に浮いている司令の身体らしき物体と……それに近づく人影のようなもの。あれは何だ?
何となく予測はつくが果たしてボスに聞いて良いものかどうか手下は悶々としていた。そこでカマをかけることにした。
「なぜわざわざここに身体を運んだんですか?」
ボスは車に、より掛かりながらタバコを探している。
「境港周辺だと死体を発見される恐れがある。シナは当然だが美保の連中にも発見されるのはまずい。それに境水道に転落したと思わせておけば、かなり時間が稼げるだろ? あそこに落ちた死体は早い潮の流れで、なかなか上がらないんだ」
エグい……聞くんじゃなかったと手下は思った。するとボスが言う。
「おい、あれ無事に確保したようだぞ」
慌てて海面を見ると、その黒い人影が司令の身体を運んでいく。
「あれは?」
ちょっとビクつく手下。
「安心しろ。これで我々のミッションは完了だ」
手下の質問には答えずボスは安心したようにタバコに火をつけた。謎は多いが……とりあえず手下もホッとして口も軽くなる。
「まるで水葬みたいですね」
「ああ、この俗世界からはサヨナラだな……あっちへ行っても頑張れよ」
ボスは遠ざかっていく司令の身体を見送りながら機嫌よく答えた。手下は車のドアを開けて運転席に座ると、そのまま窓を開けた。少し間を置いてから彼は星空を見上げて言った。
「でも司令が羨ましいですね」
ボスは少し肩をすくめて言った。
「まあ……な。彼の場合は今回ちょっと強引だったんだが……軍人は国家の命令があれば何でもするものだ」
手下はその男にも、いろいろ突込みどころがあったのだが……敢えて黙っていた。正式な階級も分からない、ボスはすべて謎めいている。
まだボスがジッと暗い海を見詰めているので手下は何気なく無線機のスイッチを入れた。美保の無線が入る……そして大淀だろうか? 境港の戦闘は美保の勝利ですと呼びかけていた……そうか。まだ美保湾や境水道には艦娘たちが展開していたな。
その音声を聞いたボスもタバコを始末しながら言った。火の粉が散った。
「お前にはまだ使命がある。美保の提督がシナに襲われて境水道に落ちたと情報を流せ。陸海軍共同で捜索するも遺体は上がらないとしてだな。あと出来たら明日の朝刊に間に合うように中央政府から発信させろ」
ちょっと間を置いてまた続けた。
「直ぐ陸軍の憲兵にも連絡して自爆した暗殺者を調査させ、その犯人が分かっても政府の許可があるまでは公開させるな。わが国としてもこの暗殺を最大限に利用させてもらう」
だが手下は直ぐに答えなかった。ボスはちょっと不思議そうな顔をした。
「なんだ?」
手下はハンドルを握りながらニヤリとした。
「貴方も相当なワルですよねぇ」
彼も笑った。
「ああ、帝国海軍……いやこの国のためだ。そのためなら幾らでも悪人に為れるさ」
「現役引退しても続けるんですか?」
「引退なんて言葉は無いさ。生涯現役だ」
「へえ……」
手下は今度、時間があったら、またこいつの料理を食べに行ってやろうと思った。どうせ時々手伝うことになるだろうから……興味もあるし。彼は窓枠に肘をついて星空を見上げながら呟いた。
「オレの銃、六文以上の価値があるからな、大切に使ってくれよ」
そう思ったとき、どこかで司令が応えたような気がした。彼とは不思議な縁だよな。
「ああ。また、どこかで会おうぜ」
手下は思わず呟いた。
ようやくボスは振り向いた。
「そろそろ戻るか」
「ハッ」
手下はエンジンをかけた。
物語は、もうちょっと続きます。
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※これは「艦これ」の二次創作です。
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サイトも遅々と整備中~(^_^;)
http://www13.plala.or.jp/shosen/
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PS:「みほ9ん」とは
「美保鎮守府:第九部」の略称です。