マイ「艦これ」(第9部)「提督暗殺」   作:しろっこ

49 / 49
夜の海へ出た金剛たちは、寛代の行動に驚きながらも……。


第48話<フィナーレ:いつか戻る約束>

「私は信じるのです」

 

-------------------------------------

オトナ「艦これ」「提督暗殺」(みほ9ん)

:第48話<フィナーレ:いつか戻る約束>

-------------------------------------

 

「何か……星空って久しぶりだネ」

 

 川べりで立ち止まった金剛が夜空を見上げて言った。同じく星空を見上げた青葉もそれに応える。

 

「そうだね。アタシたち、ずっと正面ばっかり見て突っ走って来たんだね」

 

二人の真ん中を歩いている寛代は相変わらず無言だった。

 

 しばらく三人で川縁を歩いていると、やがて受付の人が言っていた小さな港のある海辺に出た。早速、岸壁から海に下りようとする金剛を青葉は呼び止めた。

 

「ねえ金剛さん」

「なぁに?」

 

珍しく金剛は立ち止まって振り返った。いつもなら海を向いたまま背中で返事するよね……と青葉は思った。

 

「さっきは何か感じたんでしょ? だから海から帰ろうって……」

 

暗くて分かり難いけど多分金剛は笑っているだろうと青葉は思った。案の定、明るい声で返事をする金剛。

 

「そういう青葉も感じたんだよね?」

「うん……」

 

ちょっと間を置いてから金剛は急に言った。

 

「コラっ! 寛代も隠してないで白状しな!」

 

 寛代が返事するはずないと青葉は思っていたが、この時ばかりは意外にも寛代は無言のままサッサと岸壁から海へ入って行った。これには金剛も青葉も慌てた。ただ寛代は別に怒っているわけでも無さそうだった。

 

 事実を一番知っているはずの寛代が率先して海へ行くということは、やはり何かあるのだ。二人はそう確信した。金剛は両腕を擦りながら青葉に言った。

 

「ねえ青葉……ワタシ鳥肌が立っているヨ」

「うん、それ分かる……」

 

返事をした青葉も同様だった。二人は一瞬暗がりで顔を見合わせた。

 

「早く行こう……あの子、珍しく先に行っちゃうから」

「そうだね」

 

 二人は慌てて岸壁から海へ降りた。寛代は迷うことなく夜の海を進んでいく。まるで水先案内人だな。人は見かけに拠らないしアタシも記者だけど、まだまだ知らない事だらけなんだ……青葉はそう思った。

 

 三人が小さな港の外郭のテトラポットを越えると直ぐに夜の美保湾に出た。暗く広がる外洋では電探かコンパスが無ければ本当に空間の感覚を失う。逆に言えば星が降って来るような夜の海は、まさに三次元の宇宙空間をも思わせた。

 そして今夜の海は、まるで吸い込まれるような感覚に陥った。思わず絶句する金剛と青葉。

 

「ワタシ、この夜空を忘れないヨ」

「うん」

「……」

 

考えたら不思議な取り合わせの三人だ。でも、これも司令を中心とした縁だよな。青葉はそんなことを考えていた。

 

そういえば司令は必ず戻るって言ってた。せめてアタシだけでもそれを信じよう。

 

「ワタシ今でも信じるよ。司令は必ず戻るって」

「あ……」

 

金剛も同じことを考えていたんだ……青葉は暗闇でうなづいた。

 

「そうだね……そうだよね」

 

なぜか自分に言い聞かせるように繰り返す青葉。

 

二人の少し先を行く寛代……この子は最新の通信装置に電探を装備しているけど、それ以上に何かの確信があって暗闇を率先して進んでいるんだ……そうだ。信じるものがあれば、どんな暗闇でも、無知であったとしても決して迷うことが無いんだ。そしてこの子が先導するだけで、私たちはどれだけ進み易いことだろうか?

 

先導する者、すなわち水先案内人か……あ、それは司令や秘書艦の姿じゃないか?

青葉にはそう感じた。きっと金剛も同じことを考えているに違いない。だから二人は決して寛代を追い越そうとはせず大人しく少し後ろから付いて行くのだった。

 

(中略)

 

その後、金剛たちは無事に鎮守府に到着した。二人にしては珍しくボーっとしていたので周りの艦娘たちからは『寛代が写った』と笑われた。ただ、そう言われても金剛も青葉も苦笑するばかりだった。

 

 

 その後、海軍省主催で司令の葬儀が執り行われた。彼は二階級特進で最終的に大将となった。秘書艦の祥高が少将に昇進し再び提督代理としての任についた。

 

 シナから日本を護った司令の功績を称え美保鎮守府では以後司令の位置は永久空席となり代理の艦娘が実質の司令の任を勤めることになった。だから、ことあるごとに電は言うのだった。

 

「司令は絶対に死んでいません。私は信じるのです。司令の席が空席なのは、いつか戻る……そのためじゃないのですか?」

 

 その頃、鎮守府では祥高より大井と秋雲は転属したと発表された。もちろん誰も信じなかった。大井は行方不明で秋雲は脱走では無いか?

 

だが一部の艦娘は知っていた。それは正しい発表なのだ。

 

「だってね……」

 

言いかけて慌てて口を塞ぐ金剛と青葉、そして寛代は相変わらず無口だった。

 

「いつか……分かる日が来るよね」

「うん」

 

二人はそう語り合うのだった。

 

 

 美保鎮守府のストーリーはこれでいったん終わる。

 

 

以下:オフレコ by 青葉。

 

 報告書は以上です。

 

……で。

 

祥高さんのチェックが入って、大井さんに関する記述は後に削除。

 

あの夜、陸軍病院へ見舞いをした後にアタシと金剛さんで、実に信じがたい意外な体験をしたのです。

(中略)と書いてある部分ですよね。そこも削除されました。

 

そこで驚いていたのはアタシと金剛さんだけ。寛代チャンやっぱり知っていたんです。もちろん秘書艦にも、やられた! って感じ。

 

でもこれは海軍の最重要機密事項であり冒頭ではあんなこと書いてましたけど表向きはそう演じています。これは金剛さんとアタシと秘書艦の約束……ごめんね電チャン。

 

対外的な防衛……金剛さん的に言うと諜報戦ですね。それも必要だと学習しました。だからしばらく表では書きません。その話題にも触れません。

 

でも記者魂がうずくのか……何らかの形で残しておきたいです。

 

人物の名前も舞台(部隊)も入れ替えて発表するかも知れません。もちろん秘書艦の許可を得てから……。

ある程度、文書がまとまったら上申して許可を求めるつもりです。それまでのお楽しみ……かな?

 

 

(みほ9ん完結)

 




--------------------------------------
※これは「艦これ」の二次創作です。
---------------------------------------
サイトも遅々と整備中~(^_^;)
http://www13.plala.or.jp/shosen/
---------------------------------------
PS:「みほ9ん」とは
「美保鎮守府:第九部」の略称です。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(必須:25文字~500文字)
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10は一言の入力が必須です。また、それぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。