「でも信じて司令……」
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オトナ「艦これ」「提督暗殺」(みほ9ん)
:第4話<数日前:面接2>
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提督があれこれ考えをめぐらせている間にも、祥高は大井に問いかける。
「寛代ちゃんから聞いたのですが、貴女の娘さんが司令を侮辱するような汚い言葉を使っていたそうです」
目を丸くして驚いた大井。そして直ぐにオドオドした表情を見せ始める。祥高は先ほど提督が話をしていた内容……娘が提督を侮辱するような汚い言葉を使っていたという説明をした。
大井はビクビクしながら聞いていた。それはかつて艦娘たちを苦しめた無慈悲な敵だったのが、まるで嘘のようだな……と提督は思っていた。
やがて彼女は言葉を選ぶようにして聞いてきた。
「あの……それは一体どのような言葉でしょうか?」
え? まさかそれを具体的に聞くわけ? まあ、仕方ないか……提督がそう思っていると祥高はちょっと躊躇したようだった。彼女は横に居る提督にちょっと気兼ねをするように慎重に言った。
「く……そ提督です」
曙や霞ならイザ知らず、まさか真面目な祥高の口からその言葉を聞くとは予想外だったなと提督は思った。ところが大井は首をかしげている。
「スミマセン……よく聞き取れなくて。もう一度オネガイします」
改めて困惑した表情の祥高、もう一度ゆっくりと言う。
「ク・ソ・テ・イ・ト・クです」
若干控えめな口調で、わざと区切るような言い方をした。だからボーっと聞いていると分かり難いかも知れない。案の定、大井は再度リクエストしてきた。
「あの、本当にスミマセン、もう一度……」
何かに怯えて逃げ出しかねない表情の大井だから……ワザと言っている訳ではないだろう。だがさすがに何度も聞くと正直、傷つく……大井のことを想って同席したとは言うものの、これは私にとってもきつい面接だなと、改めて提督は感じ、知らず知らずのうちに額に手を当てていた。
そんな彼の仕草を見ながらも、秘書艦も腹をくくったのだろう。今度はハッキリと言い放った。
「クソ提督です!」
そう言い切った後で、さすがの祥高も真っ赤な顔をしてうつむいてしまった。だが彼女以上に大井はもっと真っ赤な顔をしている。
「あの……それはスミマセン。もうなんてお詫びをしたら良いのやら」
応接室には、しばし気まずい空気が流れた。窓の外からは、演習をする艦娘の艦載機のエンジン音が響いている。やがてポツリと大井は言った。
「でも信じて司令……私はそんなこと教えてませんから」
彼女の表情や瞳には嘘はない……提督は、その言葉を聞いただけでもホッとするのだった。祥高も安堵したようにふっとため息をついてソファにもたれかかる。
だが提督は思う。大井親子はずっと敵の勢力圏で生活していたのだ。そこから見れば帝国海軍は憎むべき敵だ。その司令官を見下すような思考で常に固まっているから、そういう発言をするのは至極当然だろう。
確かに提督自身は普通の人間であり、聖人君主でも何でもない。とはいえ普通の人間だからこそ正面からクソ呼ばわりされれば傷つく。まして、それが艦娘の幼い子供からとなれば、なおさらであろう。
実はここ美保鎮守府でも駆逐艦の曙が、たまにそういった言葉を使うことがあった。でもなぜか彼女の場合には愛嬌を感じさせる。それは個性なのか? ちょっと不思議だなと提督は思った。
ところが寛代のような表裏の無い生真面目な駆逐艦がそういう言葉を何気なく言うと、意外に傷つく。なぜか? それは考えすぎなのだろうか? 提督はちょっと腕を組んで考え込んでしまった。
秘書艦の祥高も、ちょっと考えていたようだったが……この問題には、さほど深刻な意図は無く、徐々に解決していく。今後も注意はするとしても、鎮守府の運営にはさほど大きな問題にはならないだろう。そう判断したようだ。
これで一件落着だろうか? 提督と秘書艦は互いにそう思い目配せをするのだった。
「だいたい分かりました。ありがとう、大井さん」
そう言いながら彼女は事前に準備していたメモ帳をしまい始めている。それを見た提督も、やれやれといった感じで組んでいた腕を解く。応接室には若干、安堵の空気が漂い始めた。
ところが先ほどからうつむき加減にテーブルのコーヒーカップを見詰めていた大井が、またひと言呟く。
「でも……今でも私の心の奥には司令に対する恐れの気持ちがあると思います」
「え!」
思わず声が出た提督。彼は、それはただならぬ発言だと思った。案の定、祥高も再び身を乗り出して大井に問いかける。
「それはどういうことですか? よかったら聞かせてくれる?」
秘書艦の表情は先ほどよりも柔和になっていた。大井は祥高の穏やかな表情を見ながら言った。
「はい……」
彼女は改めてコーヒーを口にした。少し間をおいてから、ポツリポツリと語り始めた。
「舞鶴に居る頃、司令と私は同じ部隊に居たことはご存知だと思います」
提督と祥高は軽くうなづく。
「あの頃は北上さんも居て……私もまだ幼くて分からないことだらけで失敗ばかり。でも楽しかった」
遠くを見るような目をした彼女はフッと明るい表情をした。本来は素直で元気な良い艦娘なんだろうな……提督も秘書艦も、そう思わずには居られなかった。
「でも作戦参謀、特に新人の彼だけは嫌いでした」
率直だなと提督は思った。
「それは……今の司令ですね」
祥高が確認すると、大井はやや微笑んでうなづく。
「はい。もちろん参謀も一生懸命にやっているのも分かりましたけど……反りが合わなかったんでしょうね。私も幼かったし」
珈琲カップに目を落としながら思い出すようにして語る彼女。窓の外からは相変わらずエンジン音が散発的に聞こえてくる。
やがて彼女は提督の顔色を伺うように続ける。
「今でもちょっと怖いんです。立場とかそういうんじゃなくて……でも娘が生まれて私も寂しくなくなったから。以前より心が安定したと思うの」
「そう……」
そう言いながら祥高は珈琲を口にした。
「でも……」
何かを言いかけて大井は口を閉じた。躊躇しているようだった。
祥高は、それに気付いて優しく声をかけた。
「大井さん、無理に話さなくても良いです。もし必要なら司令に席を外して頂いても……」
「いいえっ!」
その『司令に席を外して』という言葉を聞いたとき彼女は突然激しく反応した。提督と秘書艦は驚いた。
「その……スミマセン取り乱して」
大井自身、必死に呼吸を整えているようだった。
「でも、司令にもここに居て……その、聞いて貰いたい……です」
振り絞るようにして語り続ける大井だった。核心に迫ったか。
彼女も辛いだろう。しかし提督にとっても、それは古傷をえぐられる様な嫌な感覚があった。
だがこれを通過しないと大井の心の棘(とげ)は、永遠に抜けないのではないか? 今がその棘を少しでも抜くことができるいい機会ではないのか?
彼は、そう思うのだった。
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※これは「艦これ」の二次創作です。
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サイトも遅々と整備中~(^_^;)
http://www13.plala.or.jp/shosen/
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PS:「みほ9ん」とは
「美保鎮守府:第九部」の略称です。