なお青葉本人は記録に残すことを否定するが重巡または戦艦以上のみ閲覧制限を付けるなら、という条件付きでようやくオッケーが出る。
「オフレコですが……」
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オトナ「艦これ」「提督暗殺」(みほ9ん)
:第8話<チラシの裏、心の裏>
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青葉が静かな空間で実況をしている。
「はい、こちらはとても静かです」
そこにやってきた提督は彼女に声を掛けた。
「お、青葉か?」
振り向いた彼女は提督に近づくとマイクを差し出した。
「司令、一言よろしいですか?」
「ああ」
提督は答えながら近くの机に寄りかかる。
「どうですか? 初めてチラシの裏へ来られた感想は?」
「お前が今、言ってたのと同じだ。ここは静かで良いな」
彼も答えながらその空間を見ている。何処を見ても、ひっそりとしている。青葉もまたキョロキョロと辺りを見回しながら続けて言う。
「そうですね。私も、ここは初めてだったので少し驚いてます」
提督は帽子を脱いで、軽く扇ぎながら言った。
「もっと早くこっちに着たら良かったかもな」
青葉も、しみじみとした表情でその言葉を受ける。
「はい。何となく裏って言うから後ろめたいかと思ったのですが、意外と良いかも知れませんね」
チョッと間を置いて、意味ありげな表情をした彼女は手に持ったマイクのスイッチを切った。そのまま持っていたマイクやテープレコーダー、取材バック一式を机の上に置き始める。それを不思議そうに見詰める提督。
ひと揃い、取材用具類を置いた青葉は改めて彼を見た。
「オフレコですが……」
そう言いながら彼女は続ける。
「個人的見解ですが司令、この鎮守府でも、あれこれと心配し過ぎですよ? もう少し気持ちを緩めても、よろしいかと思いますが」
何が始まるかと少々構えていた提督は、安堵したように肩に手をやる。
「そうだな、お前の言う通りだ。だから最近、肩こりも激しくて。これってやっぱりストレスかな?」
青葉は笑った。
「きっとそうですよ」
提督は、なおも腕を回している。
「あ、そうだ司令!」
急に思い出したように彼女は言った。
「ちょっと、そこのソファに腰掛けてください」
不思議に思いながらも提督は、帽子を机に置くとソファに腰を下ろした。
「そのまま向こうを向いていて下さいね」
「?」
提督が彼女の言う通りにしていると直ぐに青葉はソファの背もたれの側に移動した。そして彼の双肩に、彼女の両手が添えられた。
「……あれ?」
提督が反応すると同時に、直ぐに肩揉みが始まった。思わず彼の顔から笑みがこぼれる。
「ほう」
笑みと同時に、後ろからため息。
「あー、これは確かに酷い肩こりだなぁ」
そう言いながら青葉は意外に上手に肩揉みをしている。提督は目を閉じている。
「なかなか……良いな。誰かに肩揉みしてもらうなんて初めてかも知れない」
「ええー、そうですか?」
そう応えながらも彼女は美保司令のプロフィールを思い返していた。確か、舞鶴の失敗に始まり艦娘のために陰口を叩かれ続けてきた彼。海軍内でも恐らく誤解から中傷を受け続け敬遠されて来たに違いない。
「イイねえ、上手いな青葉は」
提督は言う。
「えぇー? そうですかぁ?」
そう言いながらも青葉は想いを巡らせていた。彼の辿ってきた孤独な道。海軍でも同性の友人は、ほとんどいなかったのかも知れない。ただ一部の理解ある者を除いて……。
そんな彼が美保鎮守府では艦娘たちに少しずつ理解されブルネイでは一つの結果を出した。それらを思い起こしながら青葉は肩揉みを続けた。
「司令に褒められるとは光栄ですね、うふっ」
一方の提督は、まさか艦娘に肩揉みされるとは意外に思っていた。しかも青葉がそれをしているのもまた珍しい状況だろう。
「ねえ司令?」
「なんだ?」
二人そろって同じ方向を見ながら青葉は続ける。
「ホントに独りで悩まないで下さいね。大変だったら直ぐに秘書艦でも私でも……金剛さんでもいいですから、何でも相談してください。私たちは皆、司令の味方ですから……」
「ああ、そうだね」
良く見ているな青葉は。記者だから基本的に彼女は知的だ。英語も操り観察力も分析力も並みの艦娘以上にある。
だから……取材以外のプライベートでは、正直ちょっと近寄りがたい雰囲気があったのも事実だ。
提督がそう思っていたら、彼女は続けた。
「私も記者やっていますけど……取材以外のことは不器用なんですよ」
「そうか?」
ちょっと手を緩めた青葉。
「でも司令にはいろいろお話したいですし、司令ご自身のことだって……」
「そうか」
提督は想像していた。考えてみたら彼が彼女を敬遠するのと同じように他の艦娘たちも彼女を敬遠しているのかもしれない。そう思うと青葉も実は孤独なのだろうか?
彼がそこまで考えていると青葉の手が止まった。
「疲れたのか? だったらもう良いぞ」
提督が振り向いて声をかけようとしたとき、青葉はそのまま後ろから提督の胸元に両手を回してガッシリと抱きしめた。
「……すみません司令」
この感じは、提督はブルネイの海岸での青葉とのやり取りを思い出した。
「私たち艦娘は皆、司令が頼りなんです。司令を通さないと結局、私たちは生きていく術が無い……戦闘能力だけあっても、やっぱり感情的な世界は人間である司令官や時々来られる防衛次官みたいな人と接することで初めて啓発されていくんです。人間なら誰でも良いわけじゃないんです……だからブラック鎮守府なんて最悪で」
そうか、この艦娘もいろんなものを抱えているんだ。彼は改めてそう思った。
「ごめんなさい。ホントは『私たち』っていうよりも私個人の問題かも知れませんね。司令がそうであったように私もずっと誤解を受け続けて来て」
青葉はそれ以上何も言えなかった。提督には彼女がこみ上げる物を必死に抑えているようにも感じた。彼には彼女の抱える世界が痛いほど理解できた。
他人と違う道を行く者、或いは特殊な能力を持つ者は、それと引き換えに多くのものを失う。だがそれが他から必要とされるなら敢えて自分を犠牲にすることも必要なのだ。
別にそれは軍人などの公人にはに限らない。個人であっても当てはまる。そして人であれ艦娘であれ要求されるもの、そして失われるものは等しいに違いない。そう感じるのだった。
物事には表と裏がある。そして目に見える表の顔がすべてではない。だから裏側は、なかなか常人には理解されない。でもそんな事情を汲んでくれる人は必ず居るものなのだ。
さきほどから言葉を失って涙をこらえているような青葉。彼女に提督は語りかけた。
「分かるよ青葉。お前も辛かったんだな」
提督は彼女の手に軽く触れた。青葉は、あのブルネイの海岸のときのように彼の背中に頭を押し付けてきた。
「スミマセン、司令。私もしばらく充電させて」
「そうだな。戦士にも休息は必要だ」
青葉はアタマを背中に付けたまま提督の手を強く握り返してきた。その手は暖かかった。
少し時間が経って青葉が呟くように言った。
「司令」
「なんだ?」
ちょっと間を置いてから彼女は言った。
「男女間の……いえ、男性と艦娘との間でも友情って成り立ちますよね?」
少し考えてから提督は答えた。
「ああ。私は十分にあり得ると思うよ。むしろ人間同士よりも、それは強いかも知れないな」
彼女は提督の背中で、少し顔を上げたようだった。
「……はい。青葉も、そう思います」
強そうな艦娘ほど実は内面は繊細だと思うのは、こういった瞬間だと提督は思った。青葉もそんな一人だった。思えば艦娘なんて、そんな事情を抱えている娘ばかりではないか?金剛も、赤城も、あの霞だって……。
人間社会、いや海軍内でも浮いていると感じることが多かった提督だった。しかしこの時間を通して、美保鎮守府に推挙してくれた中央の判断は、意外と的確だったのかも知れないなと。そんなことを思うのだった。
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※これは「艦これ」の二次創作です。
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サイトも遅々と整備中~(^_^;)
http://www13.plala.or.jp/shosen/
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PS:「みほ9ん」とは
「美保鎮守府:第九部」の略称です。