本部に着き、忍田本部長から人型近界民の出現の報告を受けた。
レーダーに映らない敵。
これは、厄介だ。
相手の目的がわからない以上、待ち伏せもできない。
「前途多難ってこのことだよな…。」
桜奈健吾はそう呟いた。
考えていてもしょうがない。
そう思い、街の中を散策することにする。
街には特に変わった様子もなく、平和なことを安心すると同時に手掛かりがないことに落胆する。
公園の時計を見ると針は8時半を指していた。
少し休憩しよう。
そう思い、入ったのはMから始まる某ファストフード店。
チーズバーガーとアイスコーヒーを注文し、商品を受け取ると席を探す。
帰宅途中のサラリーマンやOLが多くなかなか空席がない。
テイクアウトにして、外で食べればよかった。
そんなことを思っていると、
「席がないなら、一緒にどうだね?」
背後から声を掛けられる。
その声はやけに幼い。
振り返ると、そこにいたのはよく知る5歳児だった。
「誰と来てんだ?」
席に着きながら、目の前のお子様に問う。
「陽介と来た。今はトイレだがな。」
少し気取って答える目の前のお子様は林藤陽太郎。
玉狛支部のお子様隊員だ。
陽太郎が言う陽介というのは三輪隊の攻撃手、米屋陽介のことだろう。
米屋は玉狛の宇佐美と親戚であり、よく陽太郎の面倒を見ている。
「おっ、健吾じゃん。ランク戦しようぜー。」
軽い調子で話しかけながら、米屋がトイレから帰ってくる。
「よぉ、米屋。久しぶりだな。」
「ランク戦やるだろ、いつ?明日?何本?10本?100本だな。」
「うるさい、槍バカ。」
戦闘狂はほっといて、食事に専念する。
その間に米屋と陽太郎は会話を楽しんでいる。
5歳児と話が合う高校2年生。
……。
米屋凄いな。
俺もたまに会話に入りながら食事をし、食べ終えたときには9時をもう過ぎていた。
それから、陽太郎を玉狛支部まで送り米屋と一緒に帰宅する。
米屋とは家が近いので時間が合うときは一緒に帰っている。
下らない会話をしながら警戒区域の中を歩いて帰っていると、1つの人影が見えた。
なぜか、俺はそこから目を離せなかった。
理由はわからない。
あえて言うなら、これまでの経験から来る勘だ。
そして、次の光景に目を疑う。
人が跳んだ。
その高さが普通じゃない。地面から二階建ての民家の屋根まで跳んだのだ。
「おい、健吾。あれ。」
米屋が話しかけてくる。
「普通の人間じゃないな。トリオン体に換装してる。」
「ボーダーの隊員か?」
「違うな。俺たちに話しかけてこなかった。」
ボーダーの隊員であれば警戒区域にいる人間をスルーすることはないない。
注意を促して他の道を行かせるだろう。
「人型近界民か?俺始めてだよ。」
見るからにテンションが上がる米屋。
それを横目に本部に連絡を取る。
「忍田本部長、予定通り人型近界民らしき人間を発見。今は見失いましたが、まだ近くにいるものと思われ三輪隊の米屋と共に探索します。」
「こちら本部。了解した。防衛任務中の混成部隊を合流させる。」
混成部隊というのは、防衛任務のシフトを増やしたい隊員だよたちで組んだ部隊だ。
「桜奈、了解。合流までに、混成部隊に説明をお願いします。」
通信を切る。
「予定通りってどういうこと?」
米屋が話しかけてくる。
迅とのやり取りを手短に説明する。
今はそれで充分なはずだ。
「トリガー起動。」
トリオン体に換装して、敵の探索を始める。
レーダーに反応がないということは、やはり敵はバッグワームのようなものを使用しているのだろう。
探索を始めてすぐ混成部隊と合流した。
混成部隊のメンバーはガールズチーム那須隊の射手、那須玲。
同じく射手でA級1位太刀川隊の1人、出水公平。
A級3位風間隊の攻撃手、菊地原士郎。
そして、嵐山隊のオペレーター綾辻遥。
この4人に俺と米屋を合わせたメンバーで人型の相手をする。
「綾辻、ここら辺の狙撃ポイントを洗い出してくれ。」
「了解だよ。」
「那須と出水の射撃を合図に攻め込むぞ。」
合流後すぐに作戦をたてに入る。
この特殊な状況にも、みんな適応できている。
力もあるメンバーが集まっている。
このまま、冷静にいけば人型もやれる。
そう思っていたときだった。
「えっ……。」
戦闘体活動限界 緊急脱出
いきなり、菊地原の首が飛んだ。
別に菊地原が嫌いなわけじゃないんですよ。
なぜか首チョンパしないといけないと思った。