「ぐっ……!」
ライは剣を杖代わりに立ち上がり、アルドゥバを睨む。
(この男……強い………!)
生身の人間でありながら守護者化したライを拳のみで殴り飛ばす力。
ライは痛む脇腹を押さえながら、剣を構える。
「ライ君!」
ネプギアが今にもライの所に駆け寄ろうとしていた。
「ネプギア!」
だが、ライはそんなネプギアは止めた。
「………俺の事は気にするな。こいつは………俺が倒す」
「でも!」
「信じてくれ。ネプギアはそっちを頼む」
「ライ君………分かった!こっちは任せて!」
ライの意志をくみ取り、ネプギアはマジェコンヌを方を向く。
「女神の手を煩わせまいと言うその心掛け賞賛に値する。褒めてやろう」
上から目線なセリフに、ライはイラッとし言う。
「そんなんじゃねぇよ。お前ぐらい、俺一人でも十分なんだよ」
「………若さ故の無謀と言った所か。だが、無謀と度胸は紙一重とも言う。ここではその無謀さを度胸と言ってやろう。その度胸、買ってやろう」
次の瞬間、アルドゥバは片足を上げ、地面に向かって思いっきり踏み込む。
「なっ!?」
すると、地面が揺れ、ライは立っていられず、地面に剣を突き刺して耐える。
だが、そうした瞬間、アルドゥバはまた拳を構える。
「はああああ!!」
空気を切る音がライの耳に届き、ライは咄嗟に大剣を地面から抜き、盾の様に構える。
アルドゥバの拳は剣に当たるも、そのまま剣ごとライを吹き飛ばす。
流石に二回目ともあり、ライはなんとかそれ以上飛ばされるのを踏み止まる。
が、大剣でガードしたため、視界が塞がれてしまい、その横からアルドゥバが現れる。
アルドゥバがライの首目掛け、蹴りを放ち、ライはそのまま蹴り飛ばされ、地面を数回転がり倒れる。
「それなりに鍛えてはいるようだが、まだまだだ。しかし、このまま鍛錬を続け、良き師と出会えれば、お前はリオをも凌ぐ守護者になるかもしれないな。…………やはり………女神と守護者は消さねばならないな」
「………どういうことだ?」
フラフラになりながらも立ち上がり、ライはアルドゥバは見る。
「そう言えば名乗っていなかったな。俺はアルドゥバ。元プラネテューヌの教会職員で、お前の兄、リオと今の女神、ネプテューヌの戦闘指南役だった。つまり、お前の兄の師だ」
「兄さんの師?………なら、どうしてアンタは兄さんたちを殺そうとする!?教え子なんだろ!」
「ああ、そうだ。リオは俺が見てきた中でとても優秀な弟子だ。だが、強すぎる国の統治者は国を破滅へと導く」
アルドゥバはゆっくりと語り始めた。
「俺はリオとネプテューヌが守護者と女神になった時、プラネテューヌを離れた。理由は特にない。強いて言えば、他の国を見て見たかった程度だ。そして、気付いた。どの国も守護者と女神に頼り切っている。軍はある程度の訓練はしているも全員が一般人より少し強い程度。女神の方針によって決められる仕組み。国民の全てが守護者と女神の力に頼り切ってしまっている。それでは、国民は自ら考えることをしなくなり、やがて国は発展の道を閉ざす。そうなってはいけないのだ」
そして、目を見開き叫ぶ。
「だからこそ!守護者と女神を殺し!国民たちが自分で考え、国を発展させねばならない!だから俺は!リオとネプテューヌを殺す!プラネテューヌの為に!」
「ふざけるな!女神と守護者を殺すなんて…………そんなことしたらどうなるか分からないんだぞ!下手すればプラネテューヌの崩壊も!」
「だからこそだ!逆境だからこそ、人は生き残れる道を模索する!それも国の発展の為だ!」
「アンタの言ってることは全部アンタの独りよがりだ!」
「知っているさ!それを承知の上で、俺は!自分の道を貫く!」
アルドゥバは接近し、拳、膝蹴り、肘内と次々にライに攻撃を加える。
ライは大剣という武器の性質からこれだけ接近されると、取り回しが難しく、反撃に出れなかった。
「…………さて。これで終わりだ」
ライの胸倉を掴み、拳を手刀にする。
「これにて稽古は終わりだ。永遠の暗闇に落ちろ」
そして、手刀がライの首に向かって打たれる。
その時、ニアが鎌を手にアルドゥバの背後から攻撃をする。
アルドゥバはその殺気を咄嗟に感知し、ライを離し、下がる。
先程までアルドゥバが居た所に鎌が突き刺さり、ニアはアルドゥバを睨みつけた。
まるで獣の様な瞳で……………
「まさか、ここまで接近を許すとはな。俺も耄碌したか」
するとまたしても背後に殺気を感じ、横に躱す。
今度はニヤがトンファーを手にアルドゥバに攻撃を仕掛ける。
アルドゥバはトンファーを片手で受け止め、拳を放つ。
ニヤは拳が当たるより早く後ろに下がり、ニアの隣に立つ。
「これ以上、俺達の友達を………!」
「僕たちの仲間を………!」
「「傷つけるな!」」
二人の叫びにアルドゥバは驚きの表情になり、一歩下がる。
「俺達の仲間は俺たちが守る!」
「傷つけさせやしない!」
「「俺たちも!アンタを倒す!」」
その瞬間、ニアとニヤの体が光り出す。
「これは………!」
アルドゥバは二度目の驚きと同時に、心が躍るのを感じた。
ニアとニアは守護者化し、兄のアイクと同じチャイナ服を見に着けていた。
長くなった髪をニアはポニーテールにし、ニヤは三つ編みにしていた。
手にはそれぞれの武器、鎌とトンファーがあった。
スカーレットエクスワイヤ。
二人の変身だ。
「グレイブロード!」
ニアの鎌を∞の字に振り、切り刻む攻撃と――――
「ツェアシュラーゲン!」
ニヤの敵の四肢にトンファーを叩き込み、最後に心臓を打つ技が放たれる。
此処に来て、アルドゥバは初めて剣を抜き、二人の攻撃を裁く。
「双子の守護者候補生か。息が合ってるな。だが、所詮はいたずら小僧レベルだ」
次の瞬間、アルドゥバの姿がぶれたかと思うと、ニアとニヤの後ろに居た。
そして、二人の手と足が斬られ、腹部に衝撃が走る。。
「がっ!?」
「くっ!?」
二人は思わず武器を落とし、その場に蹲る。
アルドゥバは今の一瞬で二人の手と足を剣で斬り、そして、腹部に拳を叩き込んだ。
瞬きをする程度のスピードでアルドゥバはそれをやってのけたのだ。
「もう止めろ。これ以上やっても結果は見えている。これも運命だと思って諦めろ」
「誰がそんな運命認めるか!」
アルドゥバの言葉に異議を唱えたのはライでもニアでもニヤでもない。
それはヴァイスだった。
「運命ってのは決められて、受け入れるものじゃない!自分で見つけて勝ち取るのが運命だ!」
ヴァイスは双剣を握りしめアルドゥバに向かって走る。
「国の発展妨げ?守護者と女神に頼りっきり?十分結構だよ。それはつまり、女神と守護者がそれだけ国民に慕われてるってことだ!俺はそれを誇りに思う!」
飛び上がり、双剣を高く掲げる。
「俺は兄さんとノワールさんが作った国を護る!そして、女神になったユニが作る国を護る!そのためになら!俺は!今足掻いてでも!お前と戦う!」
「哀れな」
アルドゥバも剣に手を掛け、振る。
その一撃はヴァイスの首を狙っていた。
誰も目で追うことの出来ない一撃。
誰もが息を飲んだ。
だが、次の瞬間、金属音が響いた。
そのことにアルドゥバは三度目の驚きを見せた。
ヴァイスの体が光り、そして、その光がヴァイスを包んだ。
そして現れたのはスワルトと同じデザインの黒い軍服に紫の外套を斜め掛けした姿。
守護者、バイオレットエクスワイヤ。
ヴァイスの守護者化だった。
「アンタに一ついいこと教えてやるよ」
双剣をの内、一本の切っ先をアルドゥバに向け、ヴァイスは高らかに言う。
「ヒーローってのは!遅れて登場するんだ!」