「リオ、いるか?」
プラネテューヌの街の郊外から離れた森の中の一軒家。
プラネテューヌの教会職員であり、代々女神候補生と守護者候補生の戦闘指南役を受け持っている男、アルドゥバは現在の守護者候補生であり、弟子でもあるリオを探していた。
「あ、師匠」
家の裏側に向かうと、そこでリオが特訓をしていた。
「また勝手に戦闘訓練か。お前は随分と熱心だな」
「当たり前です。俺はいつか兄さんみたいな守護者になるんです。一分一秒でも時間が惜しいんです」
「そうか。それより出掛けるぞ。支度を知ろ」
「どちらにです?」
「プラネタワーだ。お前が弟子になって五年が経つ。そろそろ、この国の女神候補生であるネプテューヌと顔合わせすべきだと、お前の兄と、女神から言われた」
「わかりました」
リオは訓練を中断すると、シャワーを浴びて、服を着替え、アルドゥバと家を出る。
「うわぁ……五年でも随分変わるもんだな」
リオは五年で変わった街を見渡しながら、プラネテューヌをフラフラと歩く。
「リオ。あまり勝手にうろつくなよ。五年も経てば街並みも変わる。今のお前では必ず迷うだろう…………聞いているか?」
アルドゥバが振り向くと、そこにいるはずのリオがいないことに気付く。
「………………遅かったか」
「あれ?ここ何処だ?」
リオは気が付くと、見たことも無い場所に着いてしまった。
更に師であるアルドゥバも見当たらない。
「…………これはアレだな。師匠が迷子になったな」
何があっても自分の非を認めようとしない、リオだった。
「ま、その内見つかるだろ」
そう思い、またフラフラと街の中を歩く。
暫く歩いていると、公園に着き、そこで見た目的に歳の変わらなさそうな子供たちがサッカーをして遊んでいた。
「おーい!俺も入れてくれよ!」
「お!いいぜ!こっち側のチームに入ってくれよ!負けそうなんだ!」
「OK!」
リオは元気にコートの中に入り、サッカーに参加する。
守護者候補生として、将来守護者になる為、日夜訓練に励む彼も、まだまだ子供。
遊びたい盛りの子供であった。
「よし!人手が増えたぞ!こっから逆転だ!」
リーダーとおぼしき少年が声を開けると、ボールでリフティングしてる相手が声を上げる。
「え?なになに?助っ人?私は別にいいけど。どうせ、負ける気しないからねー」
その相手は少女だった。
「なんだ?女か?」
「あ!君、私が女だからって馬鹿にしたでしょ!」
「だって女だしな」
「おい、止めろって。確かにアイツは女だけど、運動神経が滅茶苦茶いいんだ」
リーダーの少年に耳打ちされるが、リオはフンッ!っと鼻を鳴らして笑う。
「大丈夫だって。こんな奴、俺の敵じゃない」
「言ったね!なら、勝負だよ!」
「受けて立つ!」
そして、試合が始まった。
リオは巧みなドリブルを繰り出し、相手を翻弄し、シュートを決める。
リオが入ったことで、負けていたチームは徐々に点を取り出し、とうとう同点まで持ち込めた。
「所詮は女だな。俺が相手になっただけでこのザマだ」
「む!」
リオは先程の少女に向かってそう言うと、少女は明らかに不機嫌になり、頬を膨らませる。
「頬を膨らませたって俺には勝てないよ!」
少女を抜き、シュートを決めようとしたその瞬間――――――――――――
「必殺!ねぷねぷスライディング!」
少女のスライディングが炸裂した。
そのスライディングはリオの踝を的確に捕え、当たった。
「イッタァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!?」
今まで感じたことの無い痛みがリオを襲い、リオは地面を転げまわる。
「あ、ごめ~ん(棒)!わざとじゃないんだよ(棒)」
少女はにやっと笑いながら少年を見下ろす。
「テメェ………!何してくれとんじゃあああああああ!」
リオは目に涙を浮かべ、蹴りを少女に放つ。
脛に。
「ギャアアアアアアアアアアア!!!」
少女も脛を抑え、地面を転げまわる。
「な……何するのさ!?」
「やられたら倍返しにしろって師匠から教わったんだよ!」
「くっ…………女の子にこんなことするなんてサイテー!」
「女の子はスライディングと称して踝を壊しには来ないんだよ!」
とうとう口喧嘩は始まり、それを見ていた他の子供たちは、サッカーする雰囲気じゃなくなったから、遊ぶのを止め、別れの挨拶をして、家へと帰って行った。
公園には、口喧嘩をするリオと少女だけが残された。
「くそっ………あの女……次会ったら容赦しねぇぞ……」
最終的に取っ組み合いの喧嘩をし出した二人は、近くにいた大人に仲裁され、最後にあっかんべーをして別れた。
「全く、喧嘩をするとは何を考えている。少しは周りの目にも気を付けろ。お前は、守護者候補生なのだぞ」
合流したアルドゥバから拳骨を貰い、説教を受けながらプラネタワーへと向かう。
プラネタワーに入り、エレベーターで最上階へと向かう。
「着いたぞ」
最上階に着き、部屋の中に入ると白いローブを着た青年が部屋の中で立っていた。
「やぁ、リオ。五年ぶりだね」
「カイ兄さん!」
カイディール。
ホワイトナイトの名を持つプラネテューヌの守護者で、リオの兄。
「訓練は怠ってないかい?」
「はい!もちろんです!」
「そうか。流石は俺の弟」
カイはリオの頭を撫でながら、アルドゥバを見る。
「師匠、弟がお世話になってます」
「礼を言われるほどの事ではない。リオは優秀だ。きっと良い守護者になるだろう」
「それはよかった」
二人が話してると奥の部屋の扉が開き、一人の女性が現れる。
「カイ。リオは着いたかい?」
黒のローブを着た、紫の髪を三つ編みにした女性。
名をネプティア。
スカイハートの名を持つ、プラネテューヌの女神だ。
「ティアさん、お久しぶりです」
「やぁ、リオ。元気そうだね。あれ?その頬の痣はどうしたんだい?」
ネプティアはリオの頬に痣があるのに気付き尋ねる。
「ちょっと転んだだけです」
「そっか。あまりヤンチャ過ぎるのもいけないよ」
「そう言えば、ティア。ネプテューヌは大丈夫だったかい?」
「うん。汚れてるだけで、怪我はしてないよ。あっても掠り傷程度。元気なのはいいけどね」
「またネプテューヌは訓練をサボって、遊んでたのだな。相変わらずのサボリ癖と脱走癖だ」
アルドゥバは溜息を吐き、憂鬱そうにする。
「それじゃ、ネプテューヌを呼んでくるよ」
ネプティアはそう言い残し、部屋へと戻る。
「リオはネプテューヌと会うのは初めてだね。仲良くするんだよ。いつか、お前はあの子を守る守護者になるのだから」
「はい」
「連れてきたよ」
ネプティアがネプテューヌを連れ、部屋から出て来る。
「こんにちは!女神候補生のネプテューヌだよ!よろしくね!」
元気に挨拶するネプテューヌ。
その姿にリオは驚愕した。
何故なら、ネプテューヌは、つい先ほどまで自分と喧嘩をしていた少女だった。
ネプテューヌもまた、リオが、喧嘩をした相手と知り、驚愕する。
「「あああああああああ!!」」
二人は互いに指を差し、そして―――――――――――――――
「「テメー、なんでここにいるんだ!!」」
胸倉を掴み合って、メンチを切り始めた。