「この駄女神候補生が!」
「そっちだって駄目守護者候補生のクセに!」
今日も今日とて、喧嘩をするリオとネプテューヌ。
暮らし始めて数ヶ月。
二人は一向に仲良くなる気配は無く、未だに犬猿の仲が続いている。
そんな二人にティアはいつも頭を悩ませていた。
いずれ二人はプラネテューヌを守護する女神と守護者になる存在。
もし女神と守護者が犬猿の仲ともなれば、シェアの低下は確実だった。
最も女神や守護者の話を抜きにしても、二人には仲良くなってほしいのがティアの想いだった。
二人の仲の問題に加え、反女神派の問題もあり、ティアは毎日頭を悩ませていた。
そんなある日、カイはリオとネプテューヌを呼び、ある物を渡した。
「はい、リオ、ネプテューヌ」
「兄さん、これは?」
「最近できた遊園地のチケットだよ。偶には二人で遊んでくるのもいいだろ」
「「えええええええええ!!?」」
そう言うカイに、リオとネプテューヌは大声を上げる。
「なんでコイツと一緒に行かないといけないんだよ!」
「それはこっちの台詞だよ!なんで、君なんかと!」
カイは額をくっ付ける勢いで吼え合う二人の頭を掴み、引き離す。
「これは仕事だよ。遊園地の視察も兼ねて遊んでくるだけだ。全てのアトラクションを回って、詳しいことを後で教えてくれ。じゃ、期待してるよ」
そう言い残し、カイは執務室へと移動する。
残された二人は渡されたチケットを見て、そして、互いの顔を見た。
「「フンッ!」」
結局カイの言うことに逆らえない二人は遊園地へと向かった。
プラネランドパーク。
最近オープンした大型テーマパークで、子供から老人まで幅広く楽しむ事の出来る施設として人気となっている。
「なんで、こんな奴と……どうせなら、兄さんと行きたかったし………」
「隣に居るのがコイツじゃなくて、お姉ちゃんなら良かったのに………」
二人はぶつぶつと文句を言いながら、テーマパーク内に入る。
二人が最初に向かったのはジェットコースターだった。
ネプテューヌが、遊園地って言ったら、やっぱコレだよね!っと言い、乗ることになった。
身長制限で乗れないかと思ったが、なんとか乗れた。
「ジェットコースターでのこの時間が一番緊張するね」
ネプテューヌは安全バーをしっかり掴みながらそう言う。
「はぁ?意味分かんねぇ。位置エネルギーを運動エネルギーに変換するために、最初にこう昇って行くのは当たり前のうぉおおおおおおおおお!!?」
リオが喋ってる途中で、コースターは一気に下り、リオは生まれて初めて絶叫アトラクションを味わった。
「あははははははは!凄い声!うぉおおおおおおおお!だって!あははははははははは!」
アトラクションを降りると、ネプテューヌは腹を抱えて大笑いをし、リオは初めて体験するジェットコースターの所為で、足がガクガクと生まれたての小鹿の様な状態になっていた。
「こ、この程度全然へっちゃらだし………!別に、怖いわけじゃねぇから………!」
「じゃ、次はアレだね」
そう言ってネプテューヌが指さしたのはコーヒーカップだった。
「ひゃっほ~い!」
「ちょっ!はやっ……………」
ネプテューヌは調子に乗ってカップをガンガン回転させ、その勢いは従業員ですら驚いていた。
そして
「おええええええええ!!」
リオは盛大に吐いていた。
「汚いなぁ~もう………」
ネプテューヌはリオの背後でエチケット袋に向かって吐いてるリオにそう言う。
(くっそ………誰のせいだと思ってるんだよ…………)
袋の口を縛りながらリオは背後のネプテューヌに怨みを募らせる。
(この借りは絶対返してやるからな…………)
エチケット袋を処分し、リオが振り向くと、そこにネプテューヌはいなかった。
「あれ?アイツ…………何処行きやがった?」
辺りを見渡しながらネプテューヌを探していると、突然背後から冷たい何かがリオの頬に触れる。
「うおっ!?」
ビックリして飛び退いたリオが振り向くと、そこには紙コップを持ったネプテューヌがいた。
「はい、コーラ。気分が良くなるよ」
そう言ってリオにコーラを渡すと、ネプテューヌは自分の分のコーラを飲む。
「お前………俺の分まで買ったのか?」
「そうだよ。この後も、まだまだアトラクション乗るし、こんな程度でダウンされちゃ、こっちが萎えるからね」
「………コーラよりお茶の方が良かったんだが……」
「分かってないな~。気分が悪い時にこそ、冷たい炭酸は飲むものだよ。すっきりするし、良いから飲みなよ」
そう言われ、リオは渋々コーラを一口飲む。
すると、気持ち悪かった感じが一気に消えたような感じがし、口の中に残っていた酸っぱい味や不快感も一気に消えていた。
リオは今まで飲み物はお茶や水しか口にしておらず、甘い物はチョコ以外口にしたことはなかった。
と言うより、基本お菓子などはあまり食べない。
リオにとってはこれが初めての体験だった。
「どう?」
そんなリオに気付いたのか、ネプテューヌはニヤニヤしながらリオを見つめる。
「ま………まぁまぁだな」
リオはそう言い、コーラを一気に飲んでゴミを捨てる。
「次行くぞ!」
「あ!ちょっと待てよ!」
ネプテューヌも慌てて飲み干し、リオの後を追い掛ける。
その後も、色々と絶叫系のアトラクションを周り、そしてゴーカートやメリーゴーランドなど、遊園地だなっと思わせるアトラクションを巡った。
「あ、ダーツだ!」
次のアトラクションに乗ろうと、園内を歩いていると、ネプテューヌがダーツの店を見つけ、近寄る。
「いらっしゃいませ!」
「すみませ~ん!一回、お願いしまーす!」
「一回二百円です。あの的に向かってダーツの矢を投げてください。的に当たった合計点に応じた商品をプレゼントします。ダーツの矢は五本ですので、頑張って下さい!」
「よ~し!いっくぞ~!」
ダーツを受け取り、ネプテューヌは投げる。
だが、残念ながら最後の矢が外れ、満点を逃した。
「ああ……もうちょっとだったのに………」
ネプテューヌは景品コーナーにある、満点で貰える景品を見つめる。
「どけ。次は俺がやる」
リオがネプテューヌを押し退け、ダーツをやる。
すると、見事全ての矢は真ん中に刺さり、満点となる。
「おめでとうございます!満点です!」
従業員からそう言われ、リオはそのまま景品コーナーからある物を取る。
「ねぇ、何貰ったの?」
「お前に教える理由はないだろ」
貰った物をコートのポッケに仕舞うと、リオはネプテューヌに背を向ける。
「ちょっとトイレ行ってくる。迷子になったら探すのが面倒だから、勝手に動くなよ」
「子供じゃないんだし、一人でふらふらしないよ」
「あっそう」
リオはネプテューヌがベンチに座っていることを確認し、トイレへと向かう。
用を足し終えて、トイレから出るとリオはネプテューヌの居る所へと戻る。
しかし、ベンチにネプテューヌの姿はなかった。
「アイツ……言った傍から迷子かよ……」
溜息が尽きたくなる様な気持ちになりながら、リオはネプテューヌを探し出そうと歩き出す。
その時、何かが足に当たり、ふと下を見る。
それはゴムの髪留めだった。
そして、それにリオは見覚えがあった。
それはネプテューヌのモノだった。
前に一度、ネプテューヌと喧嘩した際、その髪留めが外れた時、ネプテューヌは慌ててそれを拾い上げ、髪につけ直した。
なんでも、その髪留めはティアから貰ったモノでネプテューヌの宝物らしい。
だからこそ、ネプテューヌがその髪留めを落としたことに気付かないのは変だと、リオは思った。
そして何より、ゴムの部分が引き千切られた様になっていることに気付いた。
嫌な予感をリオは感じた。
「ネプテューヌ!」
園内を走り出し、ネプテューヌの名前を呼ぶ。
だが、その言葉に返す声は聞こえず、他の入場者の声によってリオの声はかき消された。
「そんな……何処に行ったんだよ………ネプテューヌ………!」