サーゼクスがミリキャスを連れてルシファー領土の都市に行ってしまった。
曰く『仕事』との事らしいが、俺はどうにもそれが解せない。
魔王としての仕事なのは解ったが、何故ミリキャスだけを連れていくのか。
まるでミリキャスを俺から遠ざけるようにと勘繰ってしまう程に違和感があるというか、ここに来て最初の日の食事を中断して出ていってから帰ってくることは無いが……。
「グレイフィアの事で俺を恨んでいるのか……?」
自分の嫁が取られたと思っているから……。
あのよそよそしい態度から俺は考えられる原因を推測してみたが、今の所考えられる原因としてはこれが一番しっくり来る。
原作通りであるなら、サーゼクスはグレイフィアを愛していたしな。
それが人間の男にグレイフィアの心が完全に向けられてしまったから……と思えば実にしっくりと納得できる。
「和正様?」
「ん、どうしたんですか?」
まあ、だからと言って俺は何もしないけどな。
だって惚れたのはグレイフィア自身の意思である訳で、俺は関係ない。
まあ、確かに転生神とやら曰く『俺は好かれやすくなってて、その気になれば簡単に心を手に入れられる』などと言ってたし、事実グレイフィアは俺が落とした。
今だって……くくく。
「シャワーを浴びてきますね……ふふふ」
「はい、それなら『皆』も起こしてしまいましょうか」
もう完全に俺のもんだからな。
喚いた所でどうにもなりはしないよ。
女になってるミリキャスもその内……くくっ。
羨ましいかと問われた場合、俺は迷わずこう言ってやる。
『心の底から気持ち悪い。
テメーも、恩も友情も忘れて股開いてる畜生な雌共含めて全部な』
何が楽しくて何人もの女と寝るのか、俺にはその思考回路が読めないし、羨ましいとも思わない。
寧ろ吐き気しかしない。
ステレオカセットプレーヤーのリピート再生みたいに喘いだ雌畜生共の声を聞いていい気分になる訳がないだろ? そういう訳で俺は漫画みたいに複数の女から好意を持たれてる男を羨ましいとは思わない。
「っ……来た!」
それに加えて気に食わない女の子は陥れる? とことんクズ野郎だ。
一度の失敗程度で鬼の首を獲ったみたいに無能だ無能だとクソ野郎はリアスちゃんに嘗てほざいてくれたみたいだが、俺を殺したと思い込んで生きてることに気付けもしない時点でテメーこそが無能だクソボケ。
「そう、そのまま掌の中で押さえ込むのよ一誠……」
「うっす……!」
父さんと母さんを殺しておきながらノウノウと生きていられる時点でクソ野郎の程度なんて最初から解っていたので、今更思い返す意味なんて無いけどね。
父さんと母さん……そして俺やリアスちゃん。
クソ野郎から無意味に受けた者達の痛みを遥かに超越した地獄を永遠に見せ付けてやる為に、俺は今日も飽くことなく力を研ぎ澄ませる。
「ふ、ふー……」
ドライグの力と平行して感覚を研ぎ澄ませる事で鍛えている俺自身の力。
己が獲た全てを無限に進化させ続ける異常性を応用して作り出した様々な
人間の俺が悪魔の……それも決まった血族でのみしか使えない滅びの魔力を使うとなると、種族の違いもあって中々難航したけど、
「やったよリアスちゃん! リアスちゃんより遥か劣るけど自力で出せたぜ!」
「ふふ、凄いわ一誠」
出せた結果に対して餓鬼みたいにはしゃぐ俺に、リアスちゃんも笑ってくれる。
俗っぽいかもしれないが、それだけでもっと頑張れる気になれる辺り、俺はやっぱし単純なのかもしれない。
「次は俺の番だ。
といっても俺が言えるのは、今の自分を理解してそれを受け入れるってだけど」
「それが自分の
「そそっ、我流だけどね」
そうさ、俺は確実にリアスちゃんに惹かれている。
他の誰でもない、リアスちゃん自身に……。
堕天使アザゼルによる協力と支援を獲ることでホームレス生活から脱却した一誠とリアスは、その生活に満足する事無く引き続き自身の力を高めあっていた。
「黒神めだかって女子高生生徒会長が使ってたから黒神ファントムらしいんだけど、俺はこの技術は人間以外の相手にも有効だと信じてる」
「確かにライザー達と戦った時は誰も視認出来なかったし……。
その黒神さんって子は凄いわね、並みの悪魔の動体視力でも追い付けない技術を作り出すなんて」
「会ったことも話したことも無い、安心院なじみさんから話を聞いただけだけどねー」
圧倒的な補正と力を持つ存在への復讐……。
そして繋がったかけがえのないものの為に、自分の可能性を決して疑わずに信じる。
甘え癖は残っているものの、最早折られた心に嘆くだけの弱々しい少女では無くなったリアスは、手を差し伸べてくれた人間の少年に対する想いを抱きながら、自身に宿りし神器とは違う『想いを具体化させる力』をより研ぎ澄ませる。
「聞いただけ次いでだけど、どうもリアスちゃんのスキルはその黒神めだかさんに近いものなのかもしれないんだよね」
「私が……?」
「おう、ドライグの基礎能力である力の倍加を再現して見せた時から考えてたんだけど、リアスちゃんのそれは矛神モードみたいな猿真似を完全に超越してる」
『超越してるというより、俺と一誠が目指した矛神モードそのものというべきだな』
アザゼルから渡された認識阻害装置を使い、冥界に行って今は居ない人間界の手頃な樹海内で堂々と修行している一誠は、初めて一つとなった夜に宿ったリアスの性質についておおよその考察を交えつつ、全てを喪った日に出会い教えられた話を思い出しつつリアスに教える。
「スキルを完成させるスキル……確か
『一京時代の安心院なじみのスキルの大半を覚えて完成させたとか言ってたな』
「は、はぁ……」
リアスと黒神めだかのスキル限定による性質が似通っている。
千年に一度現れる『理屈じゃなく勝利が決められた主人公』の話を安心院なじみから聞いた事のある一誠から送られたリアスは、人間の力の可能性にただただ驚愕するのと同時に、自分が同質の可能性を保持している事がちょっと信じられなかった。
「とはいえ、リアスちゃんの場合は完成とは違うんだよな。どちらかと云えば完全再現するだけだね」
「つまり、相手の力の上を問答無用って訳じゃ無い?」
「そうなるけど、逆を返せば完成で打ち止めにせず完成を越えた領域まで持っていけるかもしれない」
会ったことも話したことも無い人間と同質のスキルと腕を組んで話す一誠に、リアスは無意識に樹海の木々から射し込む陽の光照らす空へと視線を向ける。
「何と無くしっくり来る気がする……。再現……か」
それは一種のパズルだった。
足りたいピースがピッタリ嵌まった様な充足感というべきか、今までに無い感覚が自分の中で渦巻いている気がするとリアスは感じた。
「他人を理解できるという意味ではリアスちゃんが一番なのかもしれないね。皮肉になるかもしれないけど、他人を怖がるようになってしまった後になって開いちゃった境地だよ」
「………」
だが嵌められたピースを理解したと同時に、ちょっと言いづらそうに小さく呟く一誠の言葉がリアスの胸の中に軽く乗し掛かる。
裏切られ、見下され、見捨てられて他人に対して一切の信用が出来なくなったリアスの心を引き止めるかの様に発現した、他人の力を理解して吸収する異能というのは合っているのだろう。
事実リアスは赤龍帝の籠手の倍加能力を見事に再現した事があるくらいだから間違いは無いし、一誠が言った通り自分にとって皮肉な力だ。
「他人を知る……。今まで眷属を率いていた頃の私は他人を『知ったつもり』でしかなかったのね」
一誠と出会う前の自分を思い返すリアスの表情に影が刺す。
悪魔としての対価という算段も確かに考えた結果、姫島朱乃を
「……」
「…………。リアスちゃんには悪い事を言っちゃうかもしれないけど、俺はあのクソ野郎と平行してキミの元眷属も嫌いだ」
それが今はもう崩壊した。
『眷属達を知ったつもりで居た』自分の迂闊さのが遠からず招いてしまったからなのかも、今となっては反省しても遅いし、最早嘗ての仲間達は全て綾瀬和正に傾倒してしまっている現実は覆らない。
「例え洗脳でそうなったとしても、リアスちゃんにやった事は全て真実で取り返しが付かないし、アレ等はそれすら忘れて今もクソ野郎の取り合いだ。ヘドが出るぜ」
そして何より……裏切りを嫌う一誠が完全に嘗ての仲間達に敵意を抱いているのだ。
リアス自身も払拭できない裏切りの記憶という強烈なトラウマが残っているせいで、理解した所で元に戻れないと悟ってしまっていた。
「そう、ね……。
そうなってしまったのよね」
だからこそリアスは悪魔社会と袂を別ち、人である一誠と共に居続ける道を選び、二度と潰れないように強くなり続ける決心を改めて固める。
振り返ってばかりではこの先生き残れない……。
どうする事も出来ない状況だけど、どうであれ『本人達』はそれが幸せだと思っている以上、横槍を入れても仕方ない。
「お手合わせをお願いするわ」
自分は自分として……決められたレールをなぞって進む道から脱却し、最後の最後に信じた只一人の繋がりと共に飛翔する。
「む、アレは改神モード……?」
『ほう? 入ってきたか此方側に』
周りから与えられた道という名のレールから飛び出し、自分自身が作る道を歩むという覚悟を決めた時に目覚めたリアスの新たな可能性。
「黒神ファント――なっ!?」
『小娘もだと……いや違う!?』
「一誠に守られるだけじゃ駄目だから……! 私も……!」
相手を知り、相手の力を己のものへとして習得し、オリジナルとは別の進化の道へと歩むリアス自身の力。
「完全に俺より速い! これは黒神ファントムを完全に――いや改神モードの更に上!?」
一誠が好んでよく使っていた、音を置き去りにした高速移動技術と。
「
『ぬ!? 俺の力も同時に扱うかっ!』
「マジで矛神モードの完成形だせこりゃ……!」
もう一つの、一誠に宿る二天龍の片割れの力を掛け合わせる。
「これが私のスキル
完全に覚醒したスキル・正心翔銘《オールコンプリート》はリアス自身の意思に作られた道を歩ませた。
『手加減なぞ考えるな一誠! 覚醒した小娘は確実にできるぞ!』
「解ってるさドライグ!
ふふ、俺と同じく
やっぱ最高だぜリアスちゃんは……禁手化!」
『WelshDragon Balance Breaker!!!!』
鮮血を思わせる髪は黒く染まり、相手を見透す様な瞳は覚悟の光を放ち、赤きオーラと鎧を身に纏った一誠にその力を示さんとぶつかる。
その背に追い付こうと決めた強き覚悟と共に……。
弱いと言われてしまえばそれまでだけど、例え自分の性質を覚醒させたからと言っても、一誠に甘える癖だけは直せる気がしない。
「まさか滅びの力じゃなく、リアスちゃん自身の身体能力で鎧がぶち抜かれるとは思わなかったよ」
「む、無我夢中だったし、もう一度やれと言われても出来ないかもしれないわよ?」
修行が終わり、アザゼル殿から借りた家に戻った私と一誠は、汗を流そうとお風呂に入っている。
一誠が一緒なのは……私が無理を言って一緒に入って欲しいと言ったからだ。
「いや絶対強くなってるからもっと自信持ちなよリアスちゃんは………っとと」
……。まあ、見ないようにと浴槽に浸かってる間ずっと一誠は私に背を向けてるけど。
「俺も精神の修行をもっと積まないと……。
リアスちゃんの姿を見ると頭がクラクラしちゃうぜ」
「別にそこまで頑なにならなくても……」
「そうなんだけど、多分見たら飛んじゃいそうだから……理性が」
ははは、と乾いた声で軽く笑う一誠の背中には貫かれた様な古傷がひとつある。
どうやら小さい時に綾瀬和正に付けられた傷らしく、昔を思い出すと疼いてしまう事があるらしい。
そういえば私もあの男に付けられた傷が肩に残ってて未だに消えて無いけど、やっぱりずっと残るのかしら……なんてちょっと沈んだ気分のままソワソワしている一誠の背中に、私は何時もの調子でつい抱き着いてしまう。
寝る時も常に一誠を感じていないと熟睡できなくなっちゃったし……。
私って本当に一誠に依存してるわね……あははは。
直接見て改めて思った事が一つ。
……。あの男はやっぱりおかしい。
何をしても周りから肯定され、讚美される様は宗教じみてて薄気味悪さすら覚えてしまう程だ。
やっぱりミリキャスを遠ざける選択は間違いなかったよ……なんか狙ってるみたいだったし。
「そこまで子供じゃないから解っちゃうんだよ。
お母さんがあの変な人と……」
「ごめん、情けないお父さんで本当にごめんねミリキャス……」
「お父さんのせいじゃないよ! 僕悔しいよ……あんな変な人の方が良いって思っているお母さんが居ることも、あの人自身も……」
考えたくもないけど、多分昨晩もグレイフィアは――――くっ、駄目だ。考えてたら頭がおかしくなりそうだ。
「チッ、あのクソ餓鬼……。案の定キミの母親と不倫ごっこし始めたぜ」
「っ!? やっぱりですか……」
「お祖母様まで……最低すぎる」
加えて母にまで手を伸ばしたと聞いた瞬間は、思わずルシファード全域を滅ぼしそうになった。
とはいえ、最初からリアスじゃなくてあの男を賛美する言葉を口にしてたし半ば予想できてしまってた訳だけど、それにしてもあの男は見境が無さすぎる。
父が地味に心配だけど……父も父であの男寄だったからな……微妙に同情できない。
「セラフォルーももう手遅れだし、冥界が滅茶滅茶にされてしまうかもしれない」
予定変更し、実家から離れてルシファー領土の魔王城――では無くて、ルシファード領土のとある小さな宿で彼等が帰るまでを此処で過ごしている訳だけど、知ってて何も出来ない自分の無力さが憎くて仕方ない。
下手に挑んで殺されでもしたからミリキャスがあんな男にやられてしまうと思うと、どうしても足がすくんでしまう。
今現在僕たちと行動を共にしている安心院さんに後を任せれるって手もあるけど、そこまで迷惑を掛けるわけにもいかないし、何より彼女からハッキリと『今のキミじゃ確実に返り討ちだよ』と言われてる。
「どうすれば……」
「あれの補正さえ何とか出来たら、どうとでもなるんだけど……僕もこのザマだしな」
碌な人格じゃない者に力を持たせたらやっぱり碌なものじゃない。
だからこそ永遠に消すつもりで僕達は密かに同じ志を持つ者同士結託して機会を伺っているけど、次元の差というものがこれ程に辛くて歯痒いものだったなんて、今までは知っていた"つもり"だっただけに、余計僕の心は沈んでしまう。
「アザゼルはあの男の力を攻略しようとしていますが……」
「力自体はリゼヴィム君みたいな力があれば何とでもなるさ。
が、それだけで済むんだったら今頃とっくに殺してやってるね。
僕達にとって残念な事に、どっかの誰かに『造られた理屈じゃない勝利者』だというところだ」
「あの御仁の力ですか……。あんまり頼りたくはありませんね」
「いやいや頼るもなにもリゼヴィム君は既に殺られちまってるんだぜ? あれ、知らなかった?」
「は!?」
嘘だろ……? あの人格破綻者だけど力は確かだった男が既にいないって……。
そんな話、広まってもないのに……。
「コカビエル君より前に殺ってたみたいでね。ご丁寧に目撃者共々だよ」
「……」
一体何処まで僕達の事を知っているんだあの男は。
本当に薄気味が悪い……。
「が、よく分からない事に彼の血縁者は殺されてないみたいだ。
アザゼル君が拾って育てたハーフ悪魔の白龍皇た」
「!? ……。確かに不可解ですね。
こうもよく分からない男だったとは」
挙げ句血縁者の生き残りはそのまま放置してるなんて訳が分からない。
アザゼルが抱えてるというのはちょっと前にチラッと本人から聞いたことはあったけど……。
アザゼルを介してもし一誠君と出会ったら………あれ、もしかしなくてもマズイ?
「どうかな、共通の敵が居るという事で珍しく共闘したりするかもね」
「そうあって欲しいですよ。戦力はいくらあっても足りませんし」
赤と白の龍。
過去何度と無く使い手を変えては殺し合っていた二天龍が力を合わせたらこれ程心強い戦力はない。
……………。それでも勝てないのが現実だけど。
「僕も暫くは自分の腕を磨き直します。
間違った選択ばかりしてきた愚か者かもしれないけど、ミリキャスだけは絶対にあの男から守りたい」
「僕も……リアスお姉ちゃんみたいに強くなりたい」
アザゼルの下に集まった二天龍の事を――僕に力を示した赤龍帝の事を思い返した僕は決意した。
グレイフィアを奪われた愚か者で負け犬かもしれないけど、負け犬なら負け犬らしく喉元を食い千切ってやる。
「そう……ならサーゼクス君とミリキャスちゃん
その為に僕とミリキャスはこの人に付いて行こう。
「出血大サービスだぜ。無能化してる僕なりに二人を引っ張りあげて見せようじゃないか」
平等を吟ってる割りには結構面白いこの人に……。
だから一誠君とリアス、二人も頑張ってくれ――
「アザゼルさんも人……いや、堕天使が悪いぜ」
『ちっ、やっぱり気のせいでも何でもなかったか……』
「あ、悪魔……? いや、半分は違う?」
「お前が赤龍帝だな? そしてそちらがサーゼクス・ルシファーの妹と……。
早速だけどその実力を試させて貰お――いてっ!? な、何をするアザゼル!」
「バカ野郎、準備もしないままこんな所で二天龍が暴れたら奴等に勘づかれるからやめろ。
これからガブリエルも来るのに戦ってボロボロになってたら意味がないだろう」
『暫く振りだな赤いの。貴様の正気さを見て俺は一安心だぞ』
『ふん、正気じゃなければ直ぐ様殺してやるって口振りからして貴様も正気みたいだな』
君達は僕より遥かに強くなれるから。
愛していた。
立場も違うし、性格もちょっと大雑把な面もあったし誤解されやすい風体だったけど、それでも私は彼を……コカビエルを愛していた。
『すまない……コカビエルは』
『そ、そんな……!
う、嘘でしょう?』
『嘘じゃない……神羅万象の器を扱う人間の餓鬼に不意打ちをされたんだ』
出会い、戦い、負けて……。
強くなって挑んでこいと生かされたあの日から、私はコカビエルの背を追い続けた。
ただ強く在りたいと自分を磨いていたその在り方に習って私は何時しかコカビエルのもとに訪れる事が多くなり、何時の日かコカビエル自身に惹かれていた。
それはとても心地よくて、大切な日々だった。
このままずっとこんな時間を過ごせたら良いなとも思っていた。
それなのに、何時もの様にコカビエルのもとへと訪れた私を待っていたのは彼の親友のアザゼルと、彼の黒い羽……。
『すまねぇ……俺が下級堕天使の人間界での変死の調査を頼まなければ……すまねぇ!』
『………』
死んだ。
あの人が死んだ……コカビエルと二度と会えない。
コカビエルの形見とも言える漆黒の羽を渡された後、どうやって帰ったのか覚えておらず、気付いた時には自室でずっと泣いていた。
『む、今日も来たのかガブリエル? セラフ連中も存外暇なんだな』
『ちょっと待ってろ。今小僧と遊んでいるんだ……その後で修行に付き合って貰おう』
あの人が何をしたんだ。
ただ強くなるために修行ばっかの修行バカなのに、何が気に入らなかったからその人間はコカビエルを殺したんだ。
あの人は――周りが何と言おうが私にとってのあの人は――
『約束しようガブリエル。互いに強くなったら、全力で戦う約束を』
『それってアナタだけしかメリットが無いのでは?』
『まぁそうなるが……。
もし納得できる戦いとなったら……うむ、もうお前を修行に付き合わせるのは止める。
止めて今度は普通に――ええっと、何だ? トモダチ同士として会うか?』
二人だけで交わした約束。
コカビエルとの思い出が次々と思い起こされる度に溢れる涙が抑えられず、嗚咽を漏らしながら哀しみと――天使としてはあるまじき憎悪を募らせる。
『コカビエル……アナタの仇は必ず獲ります。
そうしたら私もそちらに逝く――アナタを独りにはさせない』
そして心に刻み込んだのは復讐。
愛した
例え己の身が堕ちようとも構わない。
愛したひとを奪った者を許せるほど、私は崇高でも何でもない。
「コカビエル……。
アナタの敵討ちの為の同志が増えました。
あの子……ヴァーリとアザゼルもアナタの為に今日も全力です」
その日から私は天使としての地位を捨てた。
堕天覚悟で力を研ぎ澄ませ、コカビエルを理解してくれた仲間と共にその爪を磨ぐ。
「だからもう少しだけ待っててコカビエル」
愛した人を奪った人間に報いを受けさせる為に、今日も私は中々堕ちない身を突き動かす。
ガブリエル
元セラフ・スートハートリーダー
備考…愛した男を奪われた事により、聖書の神のシステムの理を超越した事により堕天化を免れている、唯一の最強の天使。
補足
リアスさんが完全に覚醒をしました。
どうでも良いけど、長い髪だしアホ毛だし、改神モード化したらめだかちゃん……いやなんでもねぇ。
その2
実の所、戦闘力だけ見るなら現状ガブリエルさんが最強だったりする事実。
それ即ち神のシステムの理すら超越してるので、堕天化が全く起きない。
まあ、本人は転生者を称賛し始めている天使は嫌になっててコカビエルと同じく堕ちたがってたりする皮肉ですけど。
というか、前回の後書きにもありましたけど、此処でのコカビエルさんとガブリエルさんはマジでいい関係してました。
それが余計にガブリエルさんを突き動かしてます。
最後
リゼヴィムさんはアウトされました。
理由はやはり原作万歳思考の転生者に消されました。