半死半生に成るまでの経緯を話そう、
まず、彼はアルドゥインを退けホワイトランに帰って来てから会議中でも何でも頭の片隅でシャウトの強化を図っていた。
そして、時間が無いと思ったのかセーブロードを繰り返し、大体千を超えるちょっと手前で相手の位置を固定するシャウトと魂を複数持つ者を大幅に弱体化するシャウトを創り、「ちょっと出かける!」と言って、ミルムルニルも置いてソブンガルデに飛び込んだのだ。
さて、そこで待っていたのは・・・
「フハハハハハハ!こいつは良いぞドラゴンボーン!」
「いや、ちょ、ナニコレ?」
何だか劇的にビフォーアフターされた、最早アルドゥインというより、一端の邪神染みた黒い塊が待ち構えていたのである。
一見、的が大きくて当てやすそうに見えるが、実際は、巨大な川のような黒い流れの中に小さな本体が高速移動していて、もしケールムが半人外化して無ければ見ることすら出来ない様な面倒な相手に変貌していたのであった。
大きさはゆうに世界のノドを超えており、このままタムリエルに降り立たれるとその質量だけで世界が半壊位するだろう。また、御察しの通り死人や英雄の魂を吸い込み肥大化するのでそれも考慮すると抵抗する間もなく世界滅亡待った無しである。
しかも、取り込んだ魂の持つ有らゆる力を振るってくるので、幾ら唯の魔法や武器は効かないとはいえ、其処に貫通系や即死効果系、次元ごと磨り潰す系が入ってくると流石に死んでしまう。
「ヤバイな、最近にしては珍しく苦戦しそうなんだが?」
「安心しろ!苦戦する間もなく、捻り潰してやるわ!」
こうして、ケールムの地獄(二回目)が始まったのである。
先ず、基本、攻撃は総て本体以外に当てても意味が無い、マグナスの目でもアルドゥインが何のチートかしらないが幾つもの未来の幻影を出す為、攻撃察知も難しく、本体なんて持っての他であった。
次に、位置を固定するシャウトだが、確かに固定は出来た、しかし持って二、三秒、この間は黒いナニカを攻撃し破壊できるが、本体にたどり着けず、また、どれぐらいあるか判らないが黒いナニカは魂によって補填される様で地道に続けても何年かかるかわかったものじゃ無い、恐らく、どこから来たかは知らないが兆単位で保有しているだろう。
(別に、続けても良いんだが、三週間ぐらいやってると強制的にロードされてるから、なんかあるんだろうなぁ)
つまり、出来れば1日、かかっても一週間以内にこの醜悪な化け物を殺さなければならないと訳で。
(弱らせる方は、一発で決めないと俺も相当弱体化しちまう筈だ。)
当然焦ればあっさりと死ぬ。第4,000回目も輪切りになりながら死亡中。
何か手は無いかと、必勝パターンを探りに行くが相手にまともに近ずくことすら出来ない。
避け、いなし、弾き、走り、斬り飛ばす、こうして単調なリズムの動きを刻み懐に潜り込んでも、何処からか来た本体の顎に体を砕かれ、時にはビーム的な何かを防ぎ切れずけし飛ばされ。
シャウトや魔法を使うも、相手もシャウトは得意だし、魔法にいたっては黒いナニカに飲み込まれ無効化された。
アイテムに斬り飛ばした部位を詰めても馬鹿みたいな速度で再生された。
ロード回数が10万を超えたあたりで転機は来た。いや、それが転機なのかは判らないが、確実にケールムの使う『セーブロード』が変異した。
先ず、死ななくはなった。死んだ瞬間別のセーブからケールムをロードすることによりダメージについては気にしなくても良くなった。しかし。
(があああああ、痛ってえええええ!体に無理矢理上書きしてっから、いちいち死んだ時の痛みとそれを無理矢理くっつけていく素敵な感覚ががががががが!)
皮肉を言う余裕があるのは結構だが、実際は相当な痛みの筈だ。例えが思いつかないが、グチャグチャに引きちぎられたぬいぐるみがいたとしよう、それを急いで乱暴に修復し、また引き裂く。これが人体で起こっていたとしたら?少なくとも、何度も死んでいるケールムだから耐えられるとだけ言っておく。
だが、これによって大幅に戦術が広がった、先ず、弱らせる方のシャウトを乱発できる様になった。
此れは、自身の弱体化はキャンセルしつつ、本体を弱らせることができる様になったという事だ。
しかし、此れもタイミングを誤れば即死である、正真正銘死んでしまう可能性がある。
他にも、シャウトの間隔が無くなったとか、ノーモーションで斬撃が打ち出せる様になったとか色々有るが、
このゾンビ戦法が一番の収穫だろう。
其処からは地道な詰将棋だった。
固めて弱らせて斬る。固めて弱らせて斬る。此れが出来るだけでアルドゥインの山の様な体は瞬く間に削る事が出来た。
「此れで、終わりだ!」
「まだだ、まだ終わらんよ!」
あと、一歩の所でアルドゥインは体を凝縮させ巨大な龍と成った。
「まさか、たかが人外にここまでされるとは思わなかったぞ!」
龍は嗤う。
「こっちも、世界を滅ぼされない様に色々してんだよ!クソトカゲが!」
竜狩りも笑う、しかし、既に刀を杖にその満身創痍の体をやっとの事で立たせている様な状態である。
なんと、『セーブロード』が連続して発動出来なくなったのである。
「なあに、この戦いももう直ぐ終わりだが、世界が滅ぼされるのも、お前がここで死ぬのも明白よ!」
アルドゥインは、確信した様にニヤリと口を歪め、ケールムに突進する。
そして、ケールムが取った行動は、紙切れを出し、渾身のマジカで陣を描き込み、其れを半身に食いつかれながらアルドゥインに叩きつけた。
「一体、何を、!?」
皆さんは覚えているだろうか、神様からの手紙の事を。
神界から送られて来たケールムのアイテムの中にあった、『メモ』の事だ。
勿論それ自体は、神界では一般的な唯の紙に過ぎない。
そう、神界では!無意識のうちに放出されている、紙たちの圧倒的存在感や威圧などをたっぷりと吸ったその紙は、ケールムがこの世界を旅するに当たっての安全を神自身が祈り書き上げた手紙である。
この力の向きを変えて、たかが現世の邪竜の一匹や二匹消し飛ばせない筈が有ろうか?
「あー、思い出せてよかった。流石に人外レベルの違う相手の力を無効化出来ないからな。良く、こんな即死武器忘れられてたな、俺、ゴッふ!」
「カッ!キ、キサマ!ナニヲ!」
「あらら、外装がぶっ飛ぶと唯の蛇だな。」
そう言いながらアルドゥインにとどめを刺し、瀕死の重体などという生易しいものではない状態だが辛くも勝利を収め、アルドゥインの持つ総てを吸収し、ソブンガルデの幻想的な光景の中崩れ落ちた。
「オッフ、この血だまり俺のか〜、まずいな、ここで死ぬと相当マズイ・・・・」
なんとか刀を振って、意識を失ったケールムが最期に見たのはホワイトランの大広間で今にも泣き出しそうな顔の仲間達だった。
とあるデイドラ、
「やってくれたなぁ、ドラゴンボーン、しかしこっちにも策は有るんだぜえ。」
そう呟く彼女の後ろには磔にされた『本物の』ドラゴンボーン、ゴーストが死んでいた。
「さあ!一世一代の大改造!始めようか?」
世界は未だ混沌の中らしい。
シ、シリアス?