本当に楽しい旅行記か?これ。
激しい戦闘(側から見ると、相手が鮮血を噴き出して倒れていく様にしか見えない)の末、店主とタンスに隠れていた娘を助けた(そして、大量のスプラッタ映像を見せた)ケールム(なお、かっこ内だけ読むとただの外道)は、タダで宿のベッドに横になり。店主たちが寝静まった後、スプラッタ死体を全て片付け金を幾らか置いていき馬車の中のリーシャたちが異空間化させて有る所で寝ているのを確認し、馬車を仕舞う。そして、取り出したるはバイク!ドワーフの作品の様に部品や全体のバランスは調整してあるが、その実態は趣味でスカイリムとバイクいじりをしていたおじさん渾身の『試作型バイク』である。本来はブルンブルン!と激しくもマニアには堪らない重低音がアクセル時に出たり、実はエンジンが滅茶苦茶だったりするが其処はお得意の魔法でなんとかしている!
「うーむ、やっぱりイイねえ、今度の武器は工具にしよっかなぁ。」
独り言を言いつつ、エンジンを始動させほぼ一人旅状態で山中を走りマルカルス方面へ向かう。途中色々な山賊に出遭ったが何れにも漏れなくバイクでタックルをプレゼントしていくケールム、目的地のマルカルス近くでバイクを仕舞い、道まで降りて馬車を出す。
「おはようございます!」
「もう、昼近いけどな。」
起きてきたリーシャに突っ込みつつ馬を繋ぎ直しマルカルスの馬屋まで行く。
「止まれ!此処には何の用できたんだ?」
マルカルス近くに行くと小さいが関所が出来ていた、衛兵に止められ訪れた理由、目的を聞かれる。
「商売そして観光ですかね、商品は殆ど何でもですね。」
「ほうほう、では中を拝見しても?」
「良いですよ。」
そして、荷物の確認をされる、積み込んであるのはダミーの物だが武具や香辛料、酒、小麦、薬など全て本物である。気付かれて欲しく無いのは異空間の中だけである。
「ふむ、違法な物も無し、と、よし言って良いぞ。」
「どうも。」
難なくマルカルス近くの関所を越え馬屋に到着。側にはカジートの商隊もいる様だ。
「やあ、君も行商人かい?」
「ええ、貴方達もですかね?」
「ああ、南国育ちには厳しい土地だよ。これ、どうぞ。」
そう言って商隊長らしいカジートはリーシャに砂糖菓子をケールムには茶を出してきた。
此方もカジート商隊全体に行き渡る様に焼き菓子と紅茶を出す。
「いや、温かい物は助かるね。」
「此方こそ。」
これはカジートの商隊ではごく一般的で財布の紐や口を緩ませる狙いもある。互いに最近の情勢や商品の売り込み売れ行きや売れ筋などを話し合い日が暮れてしまった。
「いや、また今度の逢えると良いね。」
「ええ、何かと物騒ですから。」
そう言ってカジートの商隊は出発して行った。それを見送りケールムはマルカルス内に入ってリーシャ達は馬車の番である。主に酒とか酒とかの買い出しだが、それと他にドワーフ研究家やドワーフの遺跡に関する書籍なども豊富なのでそれも狙いではある。
「取り敢えず良質の蜂蜜酒、ワイン、エールをそれぞれ百本貰えるかね?」
「うーむ、50本ずつなら何とか出せる。それ以上は生産元の方が良いぞ。」
「判った、代金は置いておくからこの箱に詰めてくれ、金だけとって粗悪品を出したら・・・ポンッだ。」
そう言いながら道端にあった大きな石を砕いてみせると、キリキリと働き始めた。詰めるまで相当かかるはずなので本屋や薬屋、鍛冶屋を見て行く。気に入った物を買いながら、道行く人にドワーフについて調べている学者に付いて聞くと行くと揃って首長の城にいると答えるのでマルカルス首長の城『アンダーストーン砦』に行商人として進入許可証を取る、勿論生真面目な役人なら買収など要らないので適正料金、武器や装備の検査をされたら直ぐに貰えた、腐敗の匂いはするがまだマルカルスも腐りきってはいないと信じたいところだ。
(・・・ひどい目にあった!蜘蛛やら、ファルメルやらいる中を遺品を回収しながら歩くとかもうしたく無いな、ゲーム時代はもっとこう、簡単な感じに見えたんだが、ドワーフの遺跡の拡張率がやばいギリギリ端から端まで描画できてた筈なのに、今じゃもう縦も横も広がり過ぎてまともに探索しようと思ったら何年かかることやら。しかも報酬が!報酬が自分の書いた本と軽いレポート、博物館の鍵!)
どうやら、学者に会いに行くといったときに役人の口の端が微かに上がったのは気のせいではなかった様だ。折角なので、と博物館に向かい衛兵に鍵を貰ったので入れてくれ、と言うと断られたケールムは少し機嫌が悪くなったが仕方ないので、酒を回収し馬車に戻った。
「散々だった、隠密使えば入れるだろうけど、多分それは観光では無い。」
「まあ、仕方ないですよ。」
馬車にはリーシャと寝ているミルムルニルが残っていた、周囲には魔法による罠や認識遮断が張り巡らされこの美少女と美女のセットは注目を浴びることなく過ごしていた様だ。
「今日は夜移動じゃ!しゅっぱーつ!」
積み込みが終わり、そろそろ出発しようと思うと既に御者席にハルメアスが座っており、手綱を持っていた。そして、何事もなく出発、知識のデイドラというだけあって操作や馬の機嫌取りも上手く、見ていて安心できた。
「うまいものだな、やはり知識としては有るのか?」
「勿論じゃ!幾ら分体といえど其処まで分割されては居らんわ。そんな事より結構暇じゃな、これは。」
二、三時間程だが既に飽き始めたデイドラの分体にケールムは苦笑しつつバッグから牛肉ジャーキーを取り出し渡した。
其処からは酷かった、いく先々に山賊、蜘蛛、熊に虎、果てはドラゴンまで、普通の商隊なら軽く潰れそうな苦難が続き、ろくな街も見当たらない山沿いの街道だった。
「そろそろ、ドラゴンブリッジが見えてきそうなんだが。」
ケールムは地図を見ながら唸る。
「此処から先に人の気配が感知出来ました。ですが、此れは・・・」
ミルムルニルが感知したのはドラゴンブリッジだったものと僅かに生き残った孤児であった。
「吸血鬼、か。」
(確かこの近くでイベントがあったっけ?最近は記憶がぼやけてきて厳しいなぁ。)
「と、取り敢えず子供達を!」
とにかく、手分けして探し出した子供達は七人、親の方は既に事切れていた。しかもその七人も状態は良く無い。
「栄養剤、それに俺はもう使わないけど大量の薬品、魔法薬、疾病系もいるな。」
馬車から出してきた大型のテントを張り、毛布をひく、その上に子供達を寝かせていく、多少強引だが薬を一式飲ませ状態を見る。
「私は周囲の警戒、残っている人の捜索をして来る。」
「おう、リーシャ!お粥作っといて!後アウラ起こして!」
ミルムルニルはマジカの反応や反響で反応しない、敵か村民を探しに行った様だ。ケールムはリーシャとアウラと共に看病、メファーラは念の為、鋸を取り出し戦闘態勢に、ハルメアスは状況の読み取り調査をしている。
しばらくして村民は少なくとも此処の周囲には子供達七人しかいない事が判り、調査の完了、子供達容態も安定した、陽は既に落ち全員一度集まる事に。
「取り敢えず、此処で何があったのか、についてじゃ。どうやら二日前帝国から流れてきた聖蚕会のメンバーが此処を通りその際その集団を狙った吸血鬼達がこの村で襲撃、幾人かの僧侶と生き血の供給源として村人の半分を攫い、残りを殲滅した様じゃ。」
「あー、なんでこう行く先々で苦難が待ち構えてるかなぁ。」
「それは、御主がそういう星の下に生まれたからじゃよ。」
「私からも報告です。子供達はみんな馬車からお家の方に送りました。しかし、まだ危険な状態なのは確かなのでモラ子さん達以外に誰か家にいる必要があります。」
「二、三日って所か・・・メファーラ、頼めるか?」
「まあ仕方無いか、何かあれば刀に喋りかけてね。」
「グヘヘへ、わ、儂も「お前はダメ。」何故じゃ!」
こうしてメファーラは『鋸刀』を残し一旦離脱。ハルメアスは駄々を捏ねるが、変態はお断りである。
「主どの、探索中妙な反応が有りました。」
ミルムルニルがかなり自信なさげに報告をし出した。
「妙?」
「はい、人間と吸血鬼が従属関係、魅了、魔術魔法的契約そう言ったものなしで一緒に歩いている反応がモーサルからこちらに向かっているのです。」
「そりゃ妙じゃの、吸血鬼の体臭や瞳、声にすら魅了補正がかかるのに魅了されていない人間が側にいるとは。」
「・・・吸血鬼の方、もしかして背中に凄く大きな反応が無かったか?」
「有りました、心当たりが?」
「ちょっとあって見よう、多分それでわかる。」
「はあ?」
そう言ってケールムは刀を抜き、マグナスの目で特定した座標にまで続く空間の亀裂を造る。一行は荷物をしまうとそこに入っていった。
セラー・・・・げふんげふん!