東方海王宮~六人の半妖の王国~   作:如月 冬花

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プロローグ

「くっそ、もうここまで追っ手が来てんのかよ!!」

 森の中を突き進む六人の少年少女の中で、一番顔立ちの整った少年が悪態をついた。

「オレたちは半妖だからなあ・・・・・・どちらでも無い、グレーの存在こそが真っ先に排除されるのはよくある話だからなあ」

 短髪で髪を立てた少年が半ば諦念をもった口調でそう呟く。

「それにしてもここ足場悪いな-。雨降ったのもあって歩きにくいよ-」

「歩きにくいのもそうだけどオレはジメジメしてるのがやだだよ」

 野球帽を逆向きに被った少年と、背が高い少年が声を掛け合う。野球帽の少年は文句を言いながらもひょいひょいと歩いていくが、背の高い少年は顔をしかめながらゆっくり歩いていく。

「おねーちゃん、ついてこれてる?」

 小学生・・・・・・ギリギリ中学生にも見えるくらいの少女が、もう少し大人っぽい少女に声をかけた。

「みんな・・・・・・提案があるの」

「ん?どうした」

 年上の方の少女の言葉に、短髪の少年が応じる。

 

 

「幻想郷に行こう」

 

 

「それが、お前の考えついた結論か?」

「うん。私たちを見捨てたあの人が連れて行ってた場所って事には目を瞑るとしても、やっぱりここを追われた私たちには、そこしか居場所がない気がするの」

「おい、『あの人』はないだろ。一応オレたちの母親なんだぞ!」

「それは事実だけど、私はもうあの人を母親とは言えない。感情がもう拒否してるから、ギリギリ『母』としか呼べなくなったの。元々あの人のことはあまり良くは思ってなかったから」

 少女は少年の方をあまり見ずにしゃべっていた。その口調には明らかな母親への嫌悪がにじみ出ていた。

「もうそこまでにしとけよ、ことり。翔也(しょうや)兄さんも、母さんのことは今は関係ないから止めとこうよ」

 背の高い少年が言葉だけかけた。

「・・・・・・分かったよ、秀也(しゅうや)

「えーもうそこで終わりか?もうちょっとドンパチやろ・・・・・・へぶっ!」

 顔立ちの整った少年は、いつのまにか野球帽の少年に押しつぶされていた。

「追っ手が来てるのにドンパチやってたらみんな捕まっちゃうだろ?夾也(きょうや)兄さん」

「わ・・・・・・わかったから・・・・・・どいてくれ・・・・・・瞬也(しゅんや)・・・・・・」

「あいよー」

 そう言って、野球帽の少年・・・・・・もとい瞬也は、夾也と呼ばれた少年の上から降りた。

「なにはともあれ、ことりが提案した、幻想郷へ移住するという事についてだが・・・・・・文句のある奴はいるか?」

「別にいいぜ」

「状況的にも、それが一番いい方法だと思うよ」

「追っ手に追われるよりずっといいよ!それにあそこは、半妖だとしてもここよりはいじめられなさそうだし、オレは賛成だよ!」

「みんながいいって言ってるし、お姉ちゃんが言い出しっぺだから、それでいいよ」

 ことりという名前の少女と、翔也と呼ばれていた短髪の少年以外は、めいめいにそう言った。

「よし!そうなったら、博麗神社へ行かなくちゃな!」

「場所知ってんのか?兄貴」

 夾也にそう言われた翔也は、なぜか一気に顔を曇らせた。

「おいまさか知らないなんて事は」

「忘れちまったよこんちきしょう」

 そんな兄二人のやりとりを聞いていたことりは、ため息をついてこう言った。

「仕方が無いわね。私がそこまでの扉を開いてあげるから、みんな少し止まって」

 ことりは鞄から一冊の本を取り出し、呪文を唱え始めた。

 そして本が開き、光が満ちたと皆が感じたその次の瞬間には、6人は博麗神社の前に立っていた。

 ことりが本をしまい、目を少しつぶった後、ことりはそっと呟いた。

「今はあっちの方には人はいないみたい。今のうちに幻想郷へ行こう」

 その言葉に従い、少年たちは次々に博麗神社の本殿内部へ入っていった。

「あっちへ行っても、また身を隠さなくちゃいけないの?」

 年下の方の少女は、不安げにそう言った。

 ことりは、妹である少女の方を見て、少女の前にしゃがみ込んだ。

「そうなるわね。あっちは人と妖怪の関係はこっちよりはいいけれど・・・・・・私たちは半妖だから、受け入れられないかもしれないからね」

「・・・・・・ウチと友達になってくれる子、来てくれるかなあ・・・・・・」

 妹の悲しそうな表情を見たことりは、妹の頭をそっとなでた。

「受け容れられるまでの我慢だよ。かなで」

 かなでと呼ばれた少女は、こくんと首を動かした後、姉の手を取りながら立ち上がり、博麗神社の中へ歩みを進めていった。

 六人は無事幻想郷にたどり着き、今後の住処を求めて彷徨ったが、結局どこにも居場所を見つけることができなかった。

 人間と妖怪が共存する世界とはいえども、半妖を受け容れてくれるかどうかは六人には分からず、尻込みしてしまったのだった。

「どうするんだよ。せっかくあっちの世界から逃れてきたのに、このままだと飢え死にするぞ」

 きょうだいたちはめいめいに不満を募らせ始めた。

 兄妹のリーダーとして、ここまでなるべく不満をためないようにしてきた翔也と、兄妹の中で一番頭がよく、提案をすることの多かったことりも、すでにみなをまとめることに限界を感じ始めていた。

「・・・・・・居場所が見つからないのなら、無理矢理にでも作ってやる」

「ことり?」

 予想外なほど低い声でことりが呟いたことに対し、他の五人は悪い予感を覚えた。

「私たちは何もしていないのに、みんな居場所を私たちから奪っていく。そんなことはもううんざりよ。またここのひとたちが認めないと言うのなら、力づくで奪うしかないわ」

「正気か!?お前、それが何を意味するのか分かってるのか!?」

「こうでもしなければ私たちはまた負ける。もう負けたくないの」

 そしてことりが出した提案に、他の五人はますます焦りを見せた。

「居場所を作るためだけになぜそこまで手間を掛けなければならないんだ!?失敗したらそれこそ確実に追放されるぞ!!」

「今度こそ失敗しない。それに、私たちが全員で挑めば敵なんてない」

「でも、友達はどうするの?ウチは友達ができると思ってここへ来たのに・・・・・・こんなのじゃウチと友達になってくれそうな子なんかいなくなっちゃうよ・・・・・・」

 妹の泣きそうな口調を耳にしてことりは一瞬だけ罪悪感を抱いたが、すぐに打ち消してしまった。

「私たちがここで生きられなければ、友達を作るなんて夢物語にしかならなくなるわ」

 

 後に、かなでは人々にこう語った。

「あの時のお姉ちゃんは、普段のお姉ちゃんとは雰囲気が全然違ってた。まるで、何かに取り憑かれたような・・・・・・って感じだった。ソレに急かされて、しっかり考えることなんかできてなかったんだろうね」

 と。

 

 そうして、六人は後に「蒼海異変」と呼ばれる出来事の準備をし始めた。

 その計画の全貌は、なんとも壮大なものであった。

 まず、海のない幻想郷に、ことりの能力で海を作り、海底に六人の城を作る。その間にこの壮大な計画が露見しないために、幻想郷で別の異変を同時進行で進める。その異変は秀也が実行することとなった。(この別の異変は、後に「陽炎異変(かげろういへん)」と呼ばれることとなった)そして城が完成したところで、海の周辺を夾也に警護させ、門は翔也が警護することとなった。

「瞬也兄さんには城の中を担当してもらうことにして・・・・・・かなでには、特別な役割を担ってもらうわ」

「特別な役割?この城は実質お姉ちゃんのなんだから、ウチがすることなんてないと思うんだけど」

「そのことなんだけれど・・・・・・対外的には、かなでをこの城の主ということにするわ」

「えっ!?どうしてそんな話になるの!?ウチにそんなことできないよ!」

「あくまで対外的にの話よ。それに、そうすることで私が真っ先にやられないことで、この城が攻略されるのが遅くなる。ここは実質私の城だから、その気になればなんだってできるわ。私が侵入者を潰せば、私たちの勝利になる。だから分かってちょうだい」

「うん・・・・・・分かった・・・・・・」

 

 かなでがすごすごと立ち去って行った後、ことりは独り後悔していた。

(勢いでついあんなことを言ってしまったけれど・・・・・・正直失敗だわ。紫さんに頼めば、まだ救いがあったかもしれない。なのに私は、みんなをどんどん追い詰める方向へ決断してばかり・・・・・・『頭脳』失格ね)

(だけど紫さんはあくまで『あの人』の友人だったってだけ。私たちが交渉してもどう出てくるかは分からない・・・・・・これで良かったのだ。そういう風に、思い込んでいなければ)

 そんな孤独を抱きながら、ことりは自身の能力を発動させた。




いかがでしたでしょうか。
原作設定はウィキペディアで見た内容を設定に反映しているだけなので、あまり上手くないかもしれません・・・・・・。
投稿ペースは遅めなので、もし見ていただけるならじっくり待っていてください。

2016年11月28日 加筆修正しました。
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