この話は箸休め的な話なので「このシリーズの中では」読んでも読まなくてもいい話です。ですが結構別シリーズをやるときに関係する伏線を張ってあるんですよね・・・・・・。
ちなみに少し今までと違う記述があったら、それは過去投稿した話を修正する時に合わせるので気にしないでください。
「陽炎異変」の首謀者、夜月秀也が霊夢と魔理沙に倒されてから数日後。
「大変です霊夢さ~ん!」
一人の少女の声が空に響く。
「へ?一体誰が・・・・・・なんだ、文なのね」
「なんだって言わないでくださいよ霊夢さん!」
博麗神社へやって来たのは、文屋の鴉天狗、射命丸文であった。いつもなら「文々。新聞」のネタを探しにうろちょろしているはずだが、今日はなぜか慌てた様子で霊夢のもとへ来たのだった。
「変なネタ引っ張ってきたなら私を巻き込まずに引っ込んでなさい。あんたの嘘っぱちな記事に巻き込まれるのはまっぴらゴメンよ」
「いえいえいえ!!!今回ばかりは付いてきてくれないと困ります!!今回は上がかんかんに怒っていて、私がおもしろ・・・・・・良好なネタを見つけてもまともに取り合わずにさっさとどうにかしろの一点張りで、新聞を書く暇も無いんですよ!」
いつもうさんくさい笑顔を浮かべている文が、今はとても焦った表情で話しているので、霊夢は
「そこまで言うなら聞いてあげるわ。あんたの様子から察するに、また何か起こったの?」
「はい!それも、私たちの住む『妖怪の山』のふもとで起こったんです!」
「それは本当?」
「聞くより見る方が確実です。一緒に妖怪の山に行きましょう!みなさん突然すぎてかなり戸惑っているんです!」
文の言葉に応じ、すぐさま飛び立った霊夢。しかし、
「どこへ行くんだよ霊夢~」
と、魔理沙の声が上から響く。
「あんたはなんでこんな時ほど早く察知すんのよ」
霊夢は呆れながらも、ついてくるなら勝手にすれば、と言って空に浮かび、妖怪の山へと向かい始めた。
「ちょっ、伝えに来たのは私ですよ霊夢さ~ん!」
「どんなに面白いことが待ってるんだろうな~♪」
それぞれはそれぞれで、霊夢の後を追う。
「あっ、あそこです!見て下さい!!」
そう文が叫びながら指さした方向にて、霊夢と魔理沙が見たのは・・・・・・
「湖・・・・・・?それにしては大きすぎないかしら?」
妖怪の山のふもとから、端が分からないほどに広い湖が姿を現す。
「すげー!どこまで続いてるのかわかんないぜ!」
湖の近くをみれば、かなり遠いところから、哨戒にあたっているはずの白狼天狗たちが湖をじっと見つめていた。
「ちょっと!なんであんな遠くから見張りしてるの!?もっと近づいた方が良いんじゃないの?」
「できないんですよ。椛から聞いたのですが、近づくと雷みたいな光が飛んできて、動けなくなってしまった同僚がいたとのことなんですよ。そのせいでまともに近づけないので、ああして一定の距離から見張るしかないんですよ・・・・・・」
なにも無いところから飛んでくるんだそうです、と文は呟いた。
「上からならどうなるか確かめてみようっと」
そう言って魔理沙が湖の方へと急降下していく。
「なに勝手な事やってるの!」
そう霊夢が叫ぶか否かというタイミングで、電流が
「うわっとと」
すかさず魔理沙は方向を曲げながら後ろへ飛び、雷撃を躱した。
「あ、危なかったぜ・・・・・・」
「下手したら危ないどころじゃすみませんよ!」
文も驚いてすっかりツッコミに回るほど、その攻撃はとんでもない威力を持つことがうかがい知れる。
「一昨日までは普通に近づけたはずですが・・・・・・あ、あれ?」
文の顔に困惑が浮かぶ。
「どうしたのいきなり言葉詰まらせて」
「・・・・・・そういえば、一昨日誤ってあの湖に落っこちた時、思わず湖の水を舐めたんですが・・・・・・しょっぱかったんです。」
・・・・・・この幻想郷にある「霧の湖」でも、水がしょっぱいという事はなかったはずだ。
そう考えた途端、陽炎異変の首謀者である少年の姿を霊夢は思い出した。
「まさか・・・・・・これが『本当の異変』なの?」
「『本当の異変』!?どういう事ですか霊夢さん!」
即座に文が反応し霊夢に食ってかかる。
「待て。私も聞いたことあるから霊夢から取りあえず離れろ」
文を引っぺがし、魔理沙が話し出す。
「この前お前が『陽炎異変』って名付けて新聞を書いた出来事があっただろ?あの首謀者・・・・・・確か秀也って名乗ってたっけ。あいつ、逃げる前に『本当の異変は別にあるから覚悟してろ』みたいなこと言ってたんだぜ。もしかすると、この湖ができたことがその『本当の異変』になるのかと霊夢は思ったんだろうな」
「でもまさか妖怪の山付近でやらかすなんて、よほど度胸があるのかよほどのバカかのどっちかかしら・・・・・・」
三人は、しばらくその忌まわしい湖をじっと見つめていた。
「まったく、こんなにすぐに異変を起こさなくてもいいじゃないの。こんなんじゃあ宴を開く暇さえ無いわ」
「それは『飲む機会が無いわ』の間違いじゃないのぜ?」
次の日、二人はありとあらゆる所を巡り、異変解決の鍵を見つけようとした。しかしこれといって有力な情報は見つからず、断片的に情報が集まるだけであった。
「あれは『海』っていうものなのね。随分大がかりなことするのねあいつら」
「それが見つかるだけでも有り難いぜ。私なんか、外の世界の話しかわかんなかったぜ。『メアリー・トワイライト』っていう謎の大妖怪の噂と、『夜月派』っていう陰陽師の派閥とそこの天才『夜月創真』ぐらいしか分かんなかったぜ」
「『夜月』はまだ分からなくもないけど、メアリーとかいう大妖怪は何で出したのよ」
口げんかに発展しかけるとき、どこからとも無くスキマが出現し、紫が現れた。
「あらあら。なんの話をしているかと思ってのぞいてみたら、結構面白いことになってるじゃない」
「紫あんた、面白がるくらいなら知恵貸しなさいよ」
「話を聞かせてくれなきゃ貸せる知恵も見つからないわよ」
紫に窘められ、渋々といった感じで霊夢は洗いざらい話し出す。魔理沙も時々話に加わる。
「・・・・・・それで、パチュリーのとこで本を漁ってたら、『メアリー・トワイライト』っていう大妖怪が出てきたんだぜ。まあ、この異変に関係あるかは分からない・・・・・・」
霊夢と魔理沙は、メアリーの名を出した瞬間、紫の顔がこわばったのを見てしまった。
「なぜ、メイが・・・・・・」
「紫?・・・・・・もしかして、メアリー・トワイライトを知っているの?」
「知っているも何も・・・・・・私の元親友よ」
二人は一瞬驚いたが、紫ほどの大妖怪が、本に名前が載るほどの大妖怪と親友であるというのもおかしくはないという結論に達し、すぐに黙った。
「メイ・・・・・・どうして」
「あ、あと、『夜月派』の陰陽師とか出てきたんだけど・・・・・・陽炎異変の首謀者の名字も『夜月』だったのよ。まあ関係ないとは思うけど・・・・・・」
その霊夢のセリフに反応し、紫が鋭い目つきで問い詰める。
「本当に?本当に、夜月の一族なの!?名前は!?」
「あ、え、えーと確か・・・・・・『夜月秀也』っていう名前だったわ」
「秀也・・・・・・あの四つ子の一人・・・・・・ならメイは?創真さんは?あの四つ子は?かなでちゃんはどうしたの?ことりは一体どこに・・・・・・」
次々と人名を呟き、自分の世界に入り込んでしまった紫。
「ちょっと、私たちの話聞く気あるの?」
霊夢の言葉をきっかけに、紫ははっとした表情になる。
「ああ、ごめんなさいね。つい、昔の事を思い出してしまって・・・・・・」
そう言うと、紫は二人の目を正面から見つめる。
「もう一度聞くわ。先の異変の首謀者は、『夜月秀也』という少年で間違いないのね?」
「間違いないわ」
「この耳でしっかり聞いたんだ。間違えるはずがないぜ」
「そう・・・・・・」
やがて、紫は二人の前で土下座した。
「はあ!?」
「ちょ、顔を上げてくれなのぜ!」
「お願い、あの六人兄妹を、ことりを救ってあげてちょうだい」
紫は顔を下げたまま、二人に話し続ける。
「どうしてこうなったかは分からないけれど、メイの子供たちが、きっとこの異変の首謀者になっているのよ。世界有数の力を持つ大妖怪だったメアリーと、人間・・・・・・陰陽師一族の中で一番の才能と「程度の能力」を持っていた創真さん。この二人の子供は、どうなのか・・・・・・分かっているわよね」
「「半妖・・・・・・」」
二人の声が、重なる。
「六人とも、外の世界では酷い目に合っていたわ。人間にも、妖怪にも忌み嫌われる存在・・・・・・半妖に生まれついてしまった六人のなかで、誰よりも世界を恨み、復讐したがったのは一番賢かったことりだった。そして幻想郷に移住してからも、人間と妖怪双方を恨んでいるかもしれない。・・・・・・それに影響されてしまったのか、秀也はもう、動いてしまったわ。でも、ほかの四つ子・・・・・・翔也、夾也、瞬也はまだ止められる。もしかしたらまだ幼くて、友達が欲しいって言っていたかなではあなたたちに協力するかもしれないわ。退治という表現は今回は嫌なのだけれど・・・・・・あなたたちに、六人を止めて欲しいわ。妖怪と人間との間にできた絆の象徴に、あの六人は必要なのよ」
そう語る紫の声は、いつもとは全く違う雰囲気のまま、少し震えている。
「メアリーがどうしていなくなったのか、創真さんがどうしてあんなことになってしまったかは私も分からない。でも、せめて二人の絆を、半妖の恨みで塗りつぶしたくないの・・・・・・私からの、頼みよ」
いつもと完全に違う紫の様子に、二人とも戸惑っていた。だが二人とも異変の解決者として、その兄妹が起こした異変を解決することを紫が望んでいることだけは分かった。
「分かったわ。紫がそこまで気にしているその半妖たちが起こした異変は、しっかりと解決させるわ」
「おっしゃ、久しぶりに大暴れしてやるぜ!」
「そんなに気合い入れるようなものでもないと思うんだけど」
二人が言い合う中、紫はまたさらに言葉を紡ぐ。
「貴女たち、そんな様子であの子たちに向かうのは危険よ」
「なんでなのよ。いくら大妖怪の子供だからといっても、人間の血が半分入ってるんでしょ?その大妖怪よりは弱体化してるんじゃないの?」
「大妖怪の子供だから、よ。それに、その『人間の血』も強力な力を持つ人間の物よ。見くびっていたら確実に足元を掬われることになるわ」
一拍おき、紫はあることを告げる。
「特に、一番復讐心を持つことりは、能力もかなり熟達している上に、二種の『程度の能力』を持っているのよ」
「どういうことなのぜ、それ」
「あの子は水と氷を操れる・・・・・・それだけならまだ危険は少なかった。でもあの子は真実を完全に知る事ができるのよ」
「真実!?」
「その気になればありとあらゆることを知る事ができる、強力な能力・・・・・・直接的に攻撃できるような能力ではないけれど、最強の能力の一つになりうるほどの影響力を持つわ」
この幻想郷の誰も、これに勝る感知系、調査系の能力を持ってはいないわ。真実の領域に到達するのは不可能に近いもの。そう紫は呟き、話し終わった。
一方、妖怪の山近くの湖・・・・・・いや、「入らずの海」の底にある城、「海王宮」の最深部にある部屋。そこに少年少女が集まっている。
「そーいや今日の昼ごろに術式が自動発動したみたいだぞー」
「まじか。また誰か侵入しようとしたのかよ」
「まーどっちにしろオレの術は最強だかんな!っておい何やる!?」
「おうおうおうここで喧嘩して誰が強いかここで決めるか?火もそれなりに強いぞ?」
「いやいや戦闘ではオレの方が強いっしょ。なんてったって原子操れるから核爆発もできるし」
わーわーと男共が叫ぶ中、押し黙る乙前。
「お姉ちゃん・・・・・・」
そこに近寄るのは、兄妹の末っ子かなで――今は海王宮の(名目上の)主、
「これで、本当に良かったって、心から思ってるの?」
乙前の気持ちは揺らぐ。もっと穏便に許容される方法ならいくらでもあるという思いと、異変を起こさなければ自分たちが迫害されるという黒い強迫観念が渦巻き、頭がぐらつく。
何かがおかしい。そんな感覚がするのに、自分はその嫌な感覚に流されるまま、妖怪と人間双方への恨みを垂れ流していく。
妹が、昔の兄たちや自分が望んでいた「本当の楽園の秩序」に近い箱庭の楽園の秩序を、自分が少しの恨みで壊してしまいそうになるのが、何よりも腹立たしく、悔しい。
「・・・・・・わからない」
そう答えるのが、「半妖の一人・夜月ことり」として答えられる限界であった。
乙前が能力を使って霊夢と魔理沙の様子を探っていたとき、彼女が体感した衝撃的な光景――それは、紫が二人に対して土下座しているところだった。
紫から流れる思いも、「真実の一部」として理解してしまった。
――なんで、あの子たちが異変を起こそうとしているの。一体どんなことをあの子たちは味わってしまったの?メアリーや創真さんは?――
あの三人が六兄妹と「異変の首謀者」として対立しようとしている以上、もう六兄妹には「逃げる」という選択肢は許されない。後悔もできる訳がない。
「こうなった以上は、しっかりと役目を全うしなくてはね」
そう静かに決意の言葉を述べた乙前の目には、どこか悲しげな表情が浮かんでいた。
「魔理沙、ちゃんと準備はできてるの?あんた足引っ張るのだけは止めなさいよ」
「霊夢こそ準備はしっかりしたのか?異変解決ぐらいしか霊夢の見せ場なんてないんだから、失敗したら赤っ恥だぜ」
「なんですって!?」
六兄妹の「異変」を止めるべく立ち向かう、巫女と魔法使い。
「門の守は大丈夫だ。ゴーレムたちにかかればオレもあまり力使わなくても済むしな」
「だれか入ってきてもオレが色々『作って』入れないようにできるからだいじょうぶ!」
「・・・・・・お姉ちゃん、行ってくるね」
「みんな・・・・・・ごめんね。こんなダメな『長女』で」
様々な思い巡らす中、解決者の対処に当たり始める者。
「さあ、かかってこいよ。オレがめいっぱい『遊んで』やるよ!」
ゲスな笑みを浮かべて迎え撃つ者。
「蒼海異変」、今ここに真の始まりを迎える。
さて、私はこれまで別シリーズと交互に投稿してきた訳ですが・・・・・・
私の創作意欲ではこの方式でやると投稿速度が酷い事になりそうです。
そこで、この話をもって交互に投稿するのでは無く書き上がったシリーズから投稿していく方式に変更します。
こちらは結構考えをひねり出さなければいけないので速度は遅くなりそうですが、連載打ち切りにだけはさせません。絶対です。
では、また次の話まで、ゆっくりと待っていて下さい。