外伝続き書けたで候。
では、どうぞ∠( ゚д゚)/
ヒエンside
ロンドンで一泊した翌日……俺達は五和と共にイギリスを発った。
彼女には、俺達は一時的な記憶喪失に陥っていると説明している。
自分の名前と能力以外、覚えていない事にしたのだ。
異世界から来た魔法使いなどといっても信じてもらえる訳ではないし、そもそもこの世界では俺達三人の身分はないのだ。
ならば、偶発的に転移事故に巻き込まれ、一時的な記憶喪失に陥り、何らかのトラブルに巻き込まれた可能性がある天然の能力者という事にした方がまだマシという結論に至ったのだ。
そして、俺達は日本に降り立ち、学園都市の巨大なゲートの前に来ていた。
ゲートを抜けた瞬間、俺達は揃って足を止めた。
「おお〜……」
「すご……」
リーゼ姉妹の気持ちは分かる。
道路を自動清掃するロボット。
大型モニター。
近未来的な建物。
学生達で溢れる街並み。
どこを見ても普通の街ではない。
「未来都市みたいね」
アリアが呟く。
「実際、科学技術は俺達の世界よりも進んでるだろうな」
「空飛ぶ車とかないの?」
「流石にまだ見てない」
「ちぇー」
ロッテが残念そうな顔をした。
俺はそんな二人を見ながら、改めて周囲を見渡す。
間違いない。
ここは学園都市だ。
前世で何度も見た場所。
アニメで。
漫画で。
小説で。
何度も目にした世界。
(本当に来ちまったんだな……)
妙な感慨があった。
だが、感動に浸っている暇はない。
今の俺達は遭難者みたいなものだ。
「まずは学園都市側の手続きですね」
五和が言う。
「住居や身分についても向こうで対応してくれるそうです」
「助かる」
正直かなり助かる。
戸籍問題はどうにも出来なくはないが、どうしても偽造する羽目になるからな。
その後、いくつかの手続きを経て、俺達が学園都市側が用意したマンションへ案内されたのは、夕方頃だった。
高層マンションで、セキュリティ完備のオートロック付き。
正直、想像していたよりずっと良い。
「広っ……」
ロッテが思わず声を漏らした。
「本当にここ使っていいの?」
アリアも少し驚いている。
案内された部屋は三人で暮らすには十分過ぎる広さだった。
リビング。
キッチン。
個室も複数ある。
しばらく生活するだけなら何の問題もないだろう。
「今回の件は特殊事例ですので」
五和が説明する。
「学園都市側も保護対象として扱っています」
「保護ねぇ」
アリアが呟いた。
「監視の間違いじゃない?」
「……否定は出来ません」
五和が苦笑する。
まあ、当然だろう。
正体不明。
身元不明。
能力不明。
そんな三人を野放しにする組織なんてない。
「別に気にしないさ」
俺は肩を竦めた。
「俺達だって立場が逆なら同じ事をする」
「ありがとうございます」
五和が少し安心したように言った。
「私も同じ建物に滞在していますので、何かあれば連絡してください」
「了解」
「分かったわ」
「はーい」
五和は軽く頭を下げると、そのまま部屋を後にした。
静かになる室内。
ようやく俺達だけになる。
「疲れたー!」
ロッテが真っ先にソファへ飛び込んだ。
「行儀悪いわよ」
アリアが言う。
「アリアも座ってるじゃん」
「私はちゃんと座ってるの」
そんなやり取りを見ながら、俺もソファへ腰を下ろした。
とりあえず、今後について話しておくべきだろう。
「さて」
俺が口を開く。
「まずは現状確認だ」
二人の表情が少し真面目になる。
「帰還方法についてだけど……」
アリアが先に切り出した。
「原因は分かるの?」
「いや、不明だ」
俺は首を振った。
「分からない」
それが正直な答えだった。
プリズムフラワーの力は正常だった。
相棒にも異常はない。
起動そのものは成功していた。
だが、転移だけが発動しなかった。
「故障じゃないの?」
ロッテが聞く。
「相棒に限ってそれはない」
俺は即答した。
今まで何度も世界を渡ってきた。
失敗した事は一度もない。
だからこそ、今回の事は異常だった。
「じゃあ何なのよ」
アリアが眉をひそめる。
「それが分からない」
沈黙が落ちた。
原因不明。
だからこそ厄介だ。
「まあ」
俺は空気を切り替えるように言った。
「今考えても仕方ない。まずは情報を集める。帰る方法はその後だ」
アリアとロッテも頷いた。
今の俺達に出来る事は少ない。
焦っても意味はない。
「それより……」
アリアが話題を変える。
「明日の能力測定だけど」
「あー」
ロッテが嫌そうな顔をした。
「面倒くさい」
「受けない訳にはいかないだろ」
俺は苦笑する。
学園都市側からすれば当然の対応だ。
「で」
アリアが腕を組む。
「どこまで見せるの?」
能力測定。
学園都市が誇る能力開発システム。
当然ながら、俺達にとっては未知の分野だ。
下手な事をすれば面倒な事になる。
「使う魔法は制限しよう」
俺は即答した。
「まあ、そうよね」
アリアも頷く。
「それは私も賛成」
ロッテも同意した。
学園都市がどういう組織かは知っている。
能力については詳しいだろう。
だが魔法については違う。
知らないものほど厄介なものはない。
とりあえず俺達は自分の得意分野で攻めることにした。
「私は主に幻影系でいこうと思ってる」
アリアが言う。
「認識阻害と幻影や分身の生成、あとは光学迷彩……それらを使えば流石に誤魔化せるでしょ」
まあ妥当だろう。
「ロッテは?」
「私は体術が得意だから、主に身体強化系かな」
ロッテが答える。
「反射神経とか、五感強化とか」
こちらも問題はない。
そして、二人の視線が俺へと向く。
「「ヒエンは?」」
俺は少し考える。
「そうだな……主に炎と氷、後は調和と安定の能力、超直感は積極的に使っていこうと思ってる」
沈黙。
「それ抑える気ある?」
アリアが真顔で聞いた。
「……やっぱり抑えてないか?」
「全然抑えてないと思う」
ロッテも頷く。
解せぬ。
「ほら、俺達は原石っていう設定だろ?だったらある程度は誤魔化せるかなって」
「それ基準がおかしいから。だいたい原石って世界中で約五十人しかいないって言われてるらしいじゃない」
アリアが即座に返した。
やっぱり駄目か?
でもこの街ってクソほど治安悪いのよ……。
制限し過ぎてやられたら元も子もないやん?
「ちなみに」
アリアが聞く。
「死ぬ気モードには絶対にならないと駄目なの?」
「能力測定でなら、多分なる」
俺は答えた。
いやだって死ぬ気の炎を使う以上、避けては通れない。
むしろ死ぬ気モードにならずに能力測定する方が不自然だ。
「まあ、言いたい事は一つね」
アリアが溜め息をつく。
「研究員さん達、頑張って」
「頑張って」
ロッテも頷いた。
何故そんな反応なのか。
本当に解せぬ。
それから俺達は数十分ほど話し合った。
それで絶対に守るべき事柄を二つ決めた。
それはそれぞれの得意分野の魔法を使用する際は、俺は必ず換装すること、リーゼ姉妹も元の使い魔の姿となっている事だ。
正直、この街は得体が知れない。
原作知識から分かっているだけでも暗部組織なんて物が幾つもあるくらいだ。
用心に用心を重ねて悪い事はない。
話し合いもキリのいい所で終わると……
ピンポーン。
突然、インターホンが鳴った。
「ん?」
時計を見るが、まだ夕方の時間帯だ。
誰だろうか。
俺が立ち上がると、モニターには見覚えのある人物が映っていた。
「五和?」
『すみません』
モニター越しに五和が頭を下げた。
『少しお話がありまして』
俺は扉を開ける。
五和はどこか申し訳なさそうな顔をしていた。
「どうした?」
「実は学園都市側から連絡がありまして」
嫌な予感がした。
「明日の能力測定なんですが……」
一拍置いて。
「予定が変更になりました」
「変更?」
「はい」
五和が頷く。
「どうやら向こうも皆さんに興味を持ったようでして」
その言葉に。
アリアとロッテが嫌そうな顔をした。
「嫌な予感しかしない」
「私も」
俺も同感だった。
そして五和は、さらに追い打ちをかけるように言った。
「どうやら通常より大規模な測定になるそうです」
沈黙。
「……何やらかした?」
アリアが俺を見る。
「まだ何もしてないぞ」
「本当に?」
「本当だ」
だがこの時、俺達はまだ知らなかった。
翌日、この能力測定が学園都市全体を巻き込む騒ぎの始まりになる事を。
次は能力測定だー。
では、またく(`・ω・´)