大空の炎の力を操る転生者   作:Gussan0

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どうも(゜▽゜*)

今回は主人公の隠された心情をかいてみました。

では、どうぞ( *・ω・)ノ


第八十八話 戦う理由

ヒエンside

 

 

 

クロノとの話を終えた俺は少しゆっくりとしていた。

 

 

 

コンコンコン

 

 

 

すると扉をノックする音が。

 

 

「どうぞー」

 

 

俺はボーッと天井を見ながら答える。

 

 

 

ガラララ

 

 

 

「し、しつれいしまーす」

 

 

「しつれいするんやったらかえってー」

 

 

「あ、はーい……って違うでしょ!」

 

 

おお!

ノリツッコミ!!

最近、ツッコミに定評のある女の子。

 

なのはであった。

 

見る限り元気そうである。少し目が赤いが…。無性に弄りたいがまた怒られるのは目に見えているので今回は我慢することにする。

 

 

「もうー!かなり心配したんだからね!!」

 

 

「スイマセンデシタ」

 

 

もう完全に頭が上がらないでござる。

 

俺となのはの順位が完全に、俺<なのはとなっている。年上の威厳というものがなくなっている気がする。なにそれ悲しい。

 

 

「もう大丈夫なの?」

 

 

「ああ、この通りすっかり全快」

 

 

俺は力こぶを作り、回復したことをアピールする。

 

 

「あ、そういえば……」

 

 

「どうしたの?」

 

 

「今、何日だ?」

 

 

そういえば今日が何日か分からない。完全に日にちが分からなくなっていた。

 

 

「今日は5月30日だよ」

 

 

「もうそんなになるのか」

 

 

そういえばジュエルシード集めを始めたのは四月の中旬くらいだったはず。あれから軽く一ヶ月ちょいは経ってたのか。

 

 

「なのはは調子どうなんだ?」

 

 

「私?私は大丈夫だよ?今はもう家に戻って学校にいってるところ」

 

 

「そうなのか。あ、俺学校に出した一ヶ月の休学そろそろ終わるんだった…」

 

 

そうなのだ。

ジュエルシードを探すために休んだ休学がそろそろ終わるので、俺も学校に行かなければならない。

 

 

「あ、今日一日様子見て何事もなければ、明日から帰宅は大丈夫だって」

 

 

「そうなのか?」

 

 

「うん。でも三日に一回は定期検診に来ないとダメみたいだけど」

 

 

「ああ、それはクロノから聞いた」

 

 

定期検診…

それは表の理由で主な目的は、俺のデータ取りだ。リンカーコアとジュエルシードが融合した例なんて俺が初になるからな。

 

この事はクロノ曰く、秘匿されることになるらしい。下手な輩にバレれば……俺は実験動物にされてもおかしくはないとのこと。

 

時空管理局にも闇は存在する。

()()()()()()()の目に止まらないためにも今回の事件の報告書に書かないことになったらしい。

 

クロノはまたやることが増えたと嘆いていたが。……ホントスイマセン。

 

だが調べない訳にもいかず、定期検診という名でのデータ取りが秘密裏に行われるのだ。この事はアースラ組だけの最重要秘匿となる。

 

ちなみに10個のジュエルシードは虚数空間へ落ちたことになっている。ここらへんは原作ともほぼ同じとなっている。

 

 

「ヒエン君?いきなり黙ってどうしたの?もしかしてどこか痛む?」

 

 

「ん?ああ、ちょっと考え込んでただけ。あ、そうだ。なのはに頼みがあるんだけどさ、俺にもスターライトブレイカー教えてくれないか?」

 

 

「え?別にいいけど……まずは身体をちゃんと治してからね?いい?」

 

 

「へいへい。了解しました」

 

 

「返事は一回!」

 

 

「へーい。了解ー」

 

 

と俺となのはがそんな風に話していると……

 

 

 

グゥー

 

 

 

腹の虫がなった。

 

 

「そういえば……腹減った……」

 

 

今、思い出したけど三日間何も食ってないんだよなあ。

 

 

「なぁ、食堂いっちゃダメかな?」

 

 

俺はなのはに話しかける。

 

 

「ダメに決まってるでしょ?今日起きたばかりなんだよ?」

 

 

「うう……でも意識すると余計に」

 

 

 

グゥー

 

 

 

俺はそばにある机の上に置いてあったケータイを手に取る。

 

時刻は16時を回ったところだった。

 

 

「はぁー、時間も中途半端だし…」

 

 

俺はベッドにそのままポスンと寝転がる。

 

ちなみに相棒も同じくグデーとしている。

 

それを見かねたのか、突然なのはが立ち上がった。

 

 

「仕方ないなあ。リニスさんに何か作ってきてもらえるよう頼んであげる」

 

 

「ん?いいのか?」

 

 

「うん。私も学校終わって暇だったし」

 

 

「なんかすまん」

 

 

「じゃあちょっと待っててね?」

 

 

「おう」

 

 

 

そして待つこと三十分後……

 

お盆をもったリニスと、相棒のごはんのキャットフードを持ったなのはが病室へとやってきた。お盆の上には少し小さいお鍋と、漬け物がおかれていた。

 

 

「調子はどうです?」

 

 

「ん?モーマンタイ」

 

 

リニスが尋ねてきたのでかなりリラックスした状態で答える。リニスは少し呆れた目をしながら、お盆を机の上においてくれた。

 

鍋のふたを開けると、中身は卵粥(たまごがゆ)であった。

 

 

「お、うまそう」

 

 

「いきなり胃に負担をかけるのはまずいですからね。消化のよいお粥にしました」

 

 

「食べていいか?」

 

 

「どうぞ」

 

 

「いただきます」

 

 

そして俺は側にあったスプーンでいただく。

 

 

「うま」

 

 

適度な卵の甘さと、柔らかいお米が非常に合っている。熱すぎずかといって冷たすぎずの丁度良い温度であり、スプーンが止まらなかった。備え付けにあった漬物もパリパリと食べる。

 

隣ではなのはが相棒にキャットフードをあげていた。

 

そしてあっという間に食べ終わったのだが……俺には少し不満があった。

 

 

「まだ食えるのだが…」

 

 

そう。

まだ腹六分目といったところなのだ。

 

 

「今は適度な量でいいのです。まずはしっかり身体を休めなさい。あなたは()()()()()()()()()()()使()()()()()()()()当然です」

 

 

「そうだよ?今はしっかり休まないと。ただでさえダメージも大きかったんだよ?」

 

 

「むむむ…」

 

 

リニスから厳しい視線をいただき、そしてなのはに諭され、俺は渋々納得した。

 

というかリニスも知ってるんだよなあ。俺と相棒のジュエルシードの件。

 

 

「それでは私は食器を片付けてくるので、しっかり休むのですよ?なのは、ヒエンのことよろしくお願いしますね?」

 

 

「任せて下さい!」

 

 

なのはが元気よく返事をする。そしてリニスは食器を持って病室を後にした。

 

 

「ふぃー」

 

 

俺は再びベッドに寝転がる。

 

 

「ねぇヒエン君?」

 

 

「んー、どうしたー?」

 

 

なのはからの呼び掛ける声に、再びリラックスモードとなった俺はなんとか返事をする。

 

 

「異世界であった出来事ってまだクロノ君達に言わない方がいいかな?」

 

 

ん?

ああ……なるほど。

 

 

「今はまだ言わない方がいいだろうな……」

 

 

「え?どうして?」

 

 

「あれはフェイトも一緒に巻き込まれただろ?さすがに俺達だけの判断で決めちゃダメだ。ちゃんとフェイトにも意見を聞かないとな?」

 

 

「言われてみれば……そうかも」

 

 

「それに……今はバタバタしてるし、言うとしても問題が収まった後の方がいい。だから今は誰にも言わないこと。いいか?」

 

 

「うん。分かった」

 

 

そして俺となのはは、そのあと一時間ほど話した。するといつの間にか、18時を過ぎていたことに気付く。高町家では晩ごはんの時間なので、なのはは帰ることとなった。

 

 

「じゃあ今日はもう帰るけど…しっかり寝るんだよ?」

 

 

「おう」

 

 

「夜更かしもしちゃだめだからね?」

 

 

「お、おう」

 

 

「それと……」

 

 

「もう大丈夫ですから!」

 

 

俺は子供か!Σ(゜Д゜)

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

そして俺がベッドで相棒のことを弄っていると扉をノックする音が聞こえた。

 

 

 

 

コンコンコン

 

 

 

「どーぞー」

 

 

 

ガラララ

 

 

 

扉が開くとそこにはリンディさんがいた。

 

 

「ヒエン君、元気そうで良かったわ」

 

 

リンディさんの声を聞くと自然と俺の背筋も伸びる。

 

 

「は、はい!元気です!!」

 

 

そんな俺の調子を見ると、リンディさんはクスクスと笑っていた。

 

 

「もう……そんなに緊張しなくても別に取って食べたりしないわよ」

 

 

「は、はあ」

 

 

だが油断してはいけない。

この人はなのはと同じく、逆らってはいけないと俺の本能に刻み込まれているのである。

 

リンディさんはイスに座ると俺の顔をジッと見てきた。

 

 

「あなたとプレシアの戦い……サーチャーを飛ばして……ずっと見ていたわ」

 

 

「そ、そうですか…」

 

 

やはり見られていたらしい。

戦いに夢中で全く気付かなかった。

 

 

「いろいろ言いたいことがあるけど……一言だけ言わせてちょうだい」

 

 

「は、はい」

 

 

そしてリンディさんは静かに言った。

 

 

 

 

 

 

「よく……がんばったわね」

 

 

 

 

 

 

するといつの間にか抱き締められていることに気が付いた。

 

 

 

そしてなぜか急に視界が滲んでいることにも気が付いた。

 

 

 

「あ、あれ……」

 

 

 

訳が分からなかった。

 

 

 

なんで俺は泣いている?

 

 

 

なんで俺の身体は震えている?

 

 

 

「怖かったでしょ?痛かったでしょ?」

 

 

 

怖くなんてない。痛くなんてない。

 

 

 

「辛かったでしょ?キツかったでしょ?」

 

 

 

辛くなんてない。キツくなんてない。

 

 

 

「虚数空間」

 

 

 

ビクッ

 

 

 

その言葉を聞いたとき体が突如、震えてしまった。

 

 

 

虚数空間……

 

 

 

あそこには何もなかった。

 

 

 

文字通り何もなかった。

 

 

 

分かりやすいほど何もなかった。

 

 

 

あそこを一言で表すなら『無』と言えるほど……何もなかった。

 

 

 

あのときは……

 

 

 

死ぬ気モードであったからいけた。死ぬ気モードだったから飛び込めた。死ぬ気モードであるからこそプレシアとアリシアを助けられた。

 

 

 

死ぬ気モードがあったからこそ……()()()()()()()()()()()()

 

 

 

「ずっと見ていて分かったわ。ヒエン君あなた、時の庭園にいるとき、いえそれだけじゃない。戦うときは()()()……()()()()()()()()()()()()?」

 

 

 

「………」

 

 

 

「あなたは普段から……お調子者で、前向きで、明るくて……」

 

 

 

「………」

 

 

 

「そして……()()()()()()()()()()()()。だからこそ……本気でフェイトさんや、アリシアさん、プレシアさんを助けたかったのよね」

 

 

 

「………」

 

 

 

「普段あなたは戦うとき……死ぬ気モードになって冷静沈着に戦っているように見えるけれど……それは本当は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?」

 

 

 

「………」

 

 

 

「泣きたいほど痛かったはずなのに……叫びたいほど怖かったはずなのに……それでも歯を食い縛って、必死に耐えて我慢して……よく…がんばったわね」

 

 

 

「………」

 

 

 

「今は私しかいないわ。だから……()()()()()()()……()()()()()()()()()()()()?」

 

 

 

「………」

 

 

 

怖かった。

 

 

 

怖くないはずなんてなかった。

 

 

 

プレシアの攻撃が怖かった。

 

 

 

虚数空間の暗さが怖かった。

 

 

 

色々なことが怖かった。

 

 

 

転生者という特別な力を持った者になったって……怖いものは怖かった。

 

 

 

俺は本当は臆病だ。

 

 

 

死ぬほど臆病だ。

 

 

 

だけど……それを我慢してでも助けたい人達がいた。

 

 

 

原作キャラだからじゃない。

 

 

 

ヒーローになりたいからじゃない。

 

 

 

悲劇を食い止めたいとかそんな高尚な理由でもない。

 

 

 

ただ泣いてほしくない人がいたから……。

 

 

 

ただそれだけだった。

 

 

 

あのときフェイトが泣いていた。

 

 

 

あのときなのはが泣いていた。

 

 

 

だから頑張れた。

 

 

 

必死に頑張れた。

 

 

 

怖くても歯を食い縛って耐えられた。

 

 

 

怖くても震えてるヒマなんてなかったから…。

 

 

 

泣いてるヒマなんてなかったから…。

 

 

 

でも……事件はもう終わった。

 

 

 

皆、助けることができた。

 

 

 

死者だって誰一人いない。

 

 

 

だから……今は…

 

 

 

少しだけ……

 

 

 

泣かせてもらおう……。

 

 

 

俺は無言でリンディさんの背中に腕を回して静かに泣いた。

 




とりあえずあれです。
主人公も人間だということを書きたかった。

では、また(・∀・)ノ

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