とりあえず試合させてみるっていう。
では、どうぞ( *・ω・)ノ
ヒエンside
俺は美由希さん目掛けて駆ける。
女性に拳を向けるというのは少し主義に反するが、彼女は武道家である。逆に真面目に戦わなければ失礼に値する。というか手が抜ける相手ではない。
俺は彼女の顔面目掛けて右拳を放つ。美由希さんは左手の木刀でそれを受け止める。続いて俺は彼女のアゴを左アッパーで打ち抜くが、彼女は上半身を反らしてかわす。
そして俺の懐にそのまま潜りこみ、右手に持っている木刀を俺の顔に上段から叩き込んできた。
それを俺は体を僅かにずらすことでかわし、左足を軸にそのまま横から回し蹴りを放つ。しかし彼女はそれをしゃがんで回避し、俺の攻撃は空を切った。
(まずい!?)
俺は攻撃直後の隙を狙われないように即座に体勢を立て直し、バク転で後ろへと下がる。だが予想とは裏腹に攻撃は来なかった。
彼女はこちらをじっと見ている。いや観察しているといった方が正しいか。
(どういうつもりだ?)
俺は内心疑問に思いながらも再び構え、突貫する。
今度は腹に向けて
ならばと思い、連続で放つが動きが見切られているのか、当たる素振りすらみられない。他にも蹴りを放ったり、掴みかかったりするのだが二本の木刀でいなされ、的確に防御される。
「なるほど…」ボソボソ
そんな声がポツリと聞こえた。
「ヒエン君……そろそろこっちからも反撃いくよ?」
そして美由希さんからそんな声が聞こえてきたとき、超直感が警鐘を放つ。俺は即座に防御体勢へと切り替えた。
「フッ!」
ブウン!
「!?」
突如横に振るわれた木刀をしゃがんでかわす。しかしそこから攻めが激化した。美由希さんの両手から放たれる木刀の攻めがかなり速い。
だが異世界で戦ったバーサーカー程のスピードはない。あのときは文字通り息をするヒマすらなかったが、今は木刀を
美由希さんから放たれる木刀の攻撃をいなし、こちらも反撃に移ろうとする。だがこれがなかなかうまくいかない。俺が攻撃に移るタイミングがばれているのか、うまい具合にずらされるのだ。
そしてしばらく反撃に移れないまま攻撃をいなしていると突如、美由希さんの攻撃のリズムが崩れた。
(チャンス!)
それを隙と見た俺は美由希さんから放たれた右手の木刀を籠手で受け止めたあと、彼女の顔にカウンターで、
(確実に入った!)
俺はこれで勝利を確信する。
防御しようとしたとしても確実に俺の攻撃スピードの方が速い。仮に防いだとしても姿勢を崩したところを一気にたたみかける!
美由希さんは一瞬驚いた表情を見せた……が、
「残念でした♪」
笑顔で言いながら……俺の掌底を
「なっ!?」
予想外の方法で攻撃をかわした美由希さんは、俺の後方にすばやく回り込むと俺の首元に木刀を当てピタッと止めた。
「勝負あり…だね」
「ま、参りました……」
こうして前哨戦は俺の敗けで決着がついた。
だが敗けたのに俺はなぜか少し夢見心地の気分であった。
だって…
当たってるんだもの!
美由希さんが後ろにいるから当たってるんだもの!!
何がとはいわんが。
だがこれだけは言える。
大変柔らかかったです。
◆◆◆
勝負が終わって早速反省会をすることになった。
最初はもちろん俺の評価からである。
「美由希ちゃんは彼と戦ってどうだった?」
薫さんが美由希さんに意見を聞く。
「はい。突きや蹴りのスピードは早く、かなり鍛えていると感じました」
その割には当たらなかったけどね。
「そうだね。技のキレも悪くはなかったし、体幹もしっかりしていた。基礎トレをかなり積んだと見える」
まぁ、ウチの師匠がまずは徹底的に基礎からということで、かなりしごかれましたからねorz
「ただ…攻撃がワンパターンだったので凄くかわしやすかったです。途中…パンチや蹴りのスピードも上がりましたが、回避は楽でした」
「そうだね。ウチもそれは思ったよ。ヒエン君……君の攻撃は
ん?
正直すぎる?
「あの、どういうことですか?」
よく分からないのでとりあえず聞いてみる。
「つまりヒエン君の戦い方は真面目で、バカ正直ってことだね」
美由希さんがかわりに答えてくれる。
「要は攻撃が読みやすいから、反撃やカウンターを受けやすいってことさ」
なるほど…
あ、そういえばあのとき……
「じゃあ最後に俺が美由希さんに攻撃したときも……」
「いいところに気が付いたね。そう……君は美由希ちゃんの罠にはまってしまったのさ」
「ヒエン君があまりにも防御がうまいから隙をあえて作って……攻撃を誘ったってわけ♪」
「それに俺がまんまとはまり、カウンターを食らったと……」
「そういうこと♪」
美由希さんがウィンクしながらこちらを見てくる。
うん。
可愛らしいけど……純粋にしてやられて悔しいぞコノヤロウ。
「それにしてもヒエン君……防御が
「そんなに?」
というか少ししか本気だしてないのかよ。
「そりゃそうだよ!こっちの攻撃当てようと思っても、まるでくるのが分かってるかのようにスイスイかわすし!!フェイントいれて攻撃しても綺麗に受け流されるし!!」
「そりゃ当たったら痛いし」
それに攻撃の感知は超直感があるおかげですぐに分かるし。
「だからってあんなに簡単にかわされたらこっちの立つ瀬がないよ!!」
美由希さんは態度を一変させ、ツーンとすね始める。
そりゃこっちも曲がりなりにも命懸けの戦いを乗り越えてきたからなあ。
攻撃を受け流すのが上手くなったのは……たぶん近接戦闘で攻撃されたとき凌いだり、受け流すことばかり意識していたから
「次は美由希ちゃんの評価にいこうか。ヒエン君は実際に戦ってみてどうだった?」
「かなりやりづらかったです。途中からこっちの攻撃を見切られてる感じがしたので、攻めるスピードを上げたんですけど……全部キレイにかわされて防がれました」
「だろうね。最初、美由希ちゃんは君の動きを見るためにずっと観察に徹していたからね。そうだろう美由希ちゃん?」
そこに那美さんに泣きついていた美由希さんが答える。
「はい。ヒエン君の実力が不明だったので……」
やっぱりか。
最初俺に隙があったのに攻撃をしてこなかったのも……どう動くか観察するためだったんだろう。
だがこの勝負でハッキリしたことがある。
「ヒエン君……でもこれで分かっただろう。今のキミと彼女の
そう。
このままでは俺は二週間後の勝負に
「さらに残念なお知らせがある。君も気付いているとは思うが……美由希ちゃんはこれでも
「それは……まあ」
薄々感じてはいた。
少し本気を出したとも言っていたし。
「だが……このままで終わらせるつもりはないんだろう?」
薫さんがこちらを見ながらニヤリと笑う。
俺はそれに力強く答えた。
「当然!!」
「という訳だ美由希ちゃん。今から二週間後……楽しみにしておくといいよ」
薫さんが、未だに那美さんにじゃれついている美由希さんに話す。美由希さんはこちらに気付くと楽しそうに笑顔で返した。
「望むところです!!」
そして今日はもう遅いということで解散となった。……俺と薫さん以外は。
「さぁ、ヒエン君!今日はウチが付きっきりで特訓につきあってやる!まずは組み手50本だ!!」
「キャーΣ(゜Д゜)」
ちなみに解散したのはそれから4時間たった21時頃でしたorz
ヒエンside end
◆◆◆
美由希side
ヒエンと組み手を終えた美由希は、帰ってから高町家の道場にて恭也と稽古を行っていた。
二人は木刀をカンカンと打ち合いながら会話する。
「そういえば恭ちゃん。今日……ヒエン君と戦ったんだ…よ!……っと」
「ほう?どうだった?」
恭也は美由希の攻撃を木刀一本で軽くいなすと、カウンターを入れる。
「
「ほう?」
美由希は
「せい!」
そして恭也の背後を取り、技を放った。
「御神流
美由希は
虎切とは高速で放つ抜刀術である。
だが恭也は
「もう……恭ちゃん、少しくらい手加減してよ?」
「悪いな。段々手を抜けなくなってきたんだ。許せ美由希」
恭也は美由希の頭を撫でる。
「神速も段々安定してきたな。奥義の方も鋭くなってきたんじゃないか?」
「うん。でも他の奥義はまだ使えるレベルじゃないから」
「そうか。そういえば……」
「なに?」
恭也はアゴを押さえながら話す。
「ヒエンはこの二週間で……
「う~ん。今のままなら
「ほう」
「それと彼……面白いんだよ?防御だけは異常に裁くのがうまくてね……私の攻撃が一撃もかすりもしなかったんだ」
「そうか…」
すると美由希は恭也が静かに笑っていることに気付く。
(あ…これ…ターゲットにされちゃったかも……ごめんヒエン君)
練習試合まであと二週間をきっていた。
やべぇ。
御神流の技の種類がありすぎて漢字が読めませぬorz
とりあえずvs美由希戦早く終わらせたい。
では、また(・∀・)ノ