では、どうぞ( *・ω・)ノ
第百一話 練習試合 その後
ヒエンside
「はぁ……はぁ……はぁ……」
「よし今日はここまで」
「あ、ありがどう……ござ……いました…」
「もうすぐ朝御飯の時間だから先にシャワーをすませておけよ?」
「りょ、了解…」
俺は高町家の道場に寝転がる。
マ、マジで…死ぬ…。
「ごめんヒエン君。先にシャワー使わせてもらうね?」
「どーぞー」
俺は息が整うまでしばらく寝転がる。
美由希さんとのあの練習試合から一週間の月日がすぎた。
あれから大変だった。
それはもう大変だった。
◆◆◆
あの
そして高町家の離れで寝ていたのだが…そこには薫さんがいた。黒いオーラを纏った薫さんがそこにいた。
どうやら俺が目覚めるまで側にいてくれてたらしい。
「目が……覚めたみたいだね…」
「ハ、ハイ」
俺は固まりながら返事をする。
薫さんが怖くて顔が見れない。
ウオオオオオ!!
あのときの俺のバカ!!
結構ストレスが溜まってて、しかもテンション上がってたからって
「まぁ…
「ハ、ハイ…」
「とりあえず……よく頑張ったな」
「はい!すいませんでした!!説教でもなんでも………ってはい?」
薫さんは優しい笑顔をしながら俺の頭をポンポンと叩いていた。なぜに?
「まぁ、ウチの訓練が厳しかったことはその……色々すまなかった。でも誤解しないでほしい。あれはヒエン君なら乗り越えられると思ってやってたからその……決していじめようと思ってた訳ではないんだ……」
「い、いえ!あれは俺が不甲斐なかったからで……いやむしろ鍛えてもらったのに……皆さんが見ている場であんなこといってしまい、申し訳ありませんでした!!」
俺は正座して薫さんに頭を下げた。
そうだ。
俺は一体何を言っていたんだ…。
あんなに実力差があった美由希さんとまともに戦えるようになったのは誰のおかげだ?仕事で忙しいはずなのに、二週間毎日朝早くから夜遅くまで組み手に付き合ってくれたのは誰だ?
全部薫さんじゃないか。
感謝こそすれ、文句を言うのはお門違いじゃないか。だからこそ俺はもう一度しっかり謝った。
「本当に……申し訳ありませんでした!!」
「もういいよ。顔をあげてくれ」
「いや、でも…」
「そうだな…じゃあこうしよう。タマにまた組み手に付き合ってくれ。それで今回のことはチャラにしよう」
「はい。俺でよければ喜んで」
俺達は笑いあった。
そして俺はふと気になっていることを聞いた。
「そういえば勝負はどうなったんです?」
「ああ。一応美由希ちゃんの勝利……ということになった」
「ああ……やっぱりそうですか」
え?
ってことはあれだよね?
俺賭けに負けたから女装しないといけないんじゃないの?
「でもそう悲観することはない。あの美由希ちゃんと接戦を繰り広げたんだ。あの場にいた全員が良い勝負だったと言っていたぞ?ウチも鼻が高いよ」
「あ、ありがとうございます…」
ここまで真っ直ぐに褒められると少し照れてしまうゼ(*ノω・*)テヘ
もっと褒めてくださいお願いします。うん調子に乗るな俺。ちょっと首つってくる。
「あ、そういえばなのはちゃん達と恭也君から伝言を預かってるんだ」
ピシッ
薫さんからそんな話が出た瞬間、俺は石化してしまった。あれ?もしかしてそれで封印されて、千年間人間界を漂うの?誰か月の石を下さい。もしくは心を操る魔物を連れてきてくれ。
「まずはなのはちゃん達からなんだが……何でもこの後、翠屋でパーティーをするから来てほしいだそうだ」
「なんか思ったよりも普通ですね」
なのは達ならなんか言ってくるかなと予想していたのだが……しかしなぜだろう?胸のざわつきが治まらない。
「次は恭也君が少し時間をあけといてくれだそうだ」
「わ、分かりました」
恭也君からの呼び出しって女の子なら喜ぶんだろうけど、俺としてはさっさと帰りたいというのが本音である。
「あとそれと…最後にヒエン君に聞いておきたいことがあったんだ」
「?なんです?」
なんか他にあったっけ?
「美由希ちゃんとの最後の試合で……君が使った……あの神速に対抗した技のことなんだが…」
俺はそれを聞いたとき、心臓が跳ね上がった。
そうだー!?
そういえば神速に対抗するためにブリッツアクション使ったんだったー!?
「あれは……魔法だったんじゃないのかい?」
「は、はい。美由希さんの神速に対抗するためには、俺自身が加速して対抗するしかないと思いまして………つい」
やっぱりダメだったよなあ。
「やはりそうか。恐らく恭也君や、美由希ちゃんも色々聞いてくることがあると思うが……まだ魔法については語れない訳があるのだろう?」
「は、はい。いずれ言うつもりではありますが……今はまだ……その理由を語る訳にはいかないんです」
少なくとも俺はなのはが家族に打ち明けるまでは、言うつもりはない。
「そうか。それなら、彼らから聞かれたらこう答えればいい。
「へ?」
どういうことだってばよ?
「まだ魔法の事を話す訳にはいかないんだろう?だったらそう誤魔化すのが一番ではないのか?」
「そ、それは確かにそうですが…」
「君は二週間だけだったとはいえ……ウチの弟子だからね。弟子の世話をやくのも師匠の
薫さんは優しくこちらを見ている。
「その……何から何までありがとうございます」
俺は再度頭を下げる。
うぅ…
罪の意識がヤバイとです(T△T)
「それじゃもう大丈夫そうだし……そろそろ翠屋へ向かおうか?」
「はい」
そして俺達は立ち上がり、翠屋へ向かおうとするがそこで薫さんが気付く。
「そういえばそこに桃子さんが新しいジャージを置いてくれているから、着替えといてくれ」
「あ、はい」
自分の腹を見るとジャージが横に裂けていた。そういえば斬られてたな。
「じゃあウチは玄関で待ってるから」
「了解です」
そして俺は新しいジャージに着替え始めた。色は同じ黒色だった。
◆◆◆
高町家の玄関の鍵をしっかりと施錠した(薫さんが合鍵を預かっていた)あと、俺達は翠屋へと向かった。
そして無事翠屋に到着したのだが、なぜかさっきから超直感の警鐘が収まらないのだ。
だが翠屋では今からパーティーが始まる。その影響かドアには貸切中という看板がかけられている。
本音を言えば……入りたくない。めちゃくちゃ入りたくない。さっさと帰りたい。
「どうした?入らないのかい?」
俺の後ろにいる薫さんがキョトンとした顔でこちらを見ている。
だが薫さんには散々迷惑をかけたのだ。たかだか俺の直感ごときで帰る訳にはいかない。
「いえ…大丈夫です。いきましょうか」
俺達は翠屋へと入っていった。
そして気付けば俺はなぜかメイド服を着ていた。
もう一度言おう。
メイド服を着ていた。
うん。
意味が分からないよ。
翠屋に入った瞬間、いきなり目の前が暗くなったと思ったら……目の前にキレイな
髪は黒色のストレートヘアーで、大人しそうなクリクリとした優しそうな瞳、華奢な細い身体、そして幼い印象を持った顔にはほんのり薄い化粧をされてて、ピンク色の薄い口紅までしてあって……あとはメイド姉妹のノエル&ファリンがよく着ているメイド服を着ていたんだ。
思わず指をさして「あなた誰ですか?」といっちゃったもの。
するとあら不思議。
目の前の
しばらく唖然としたよね。
こんな風に (;゚Д゚)
そして向こうにいる
そこでようやく気付いたのさ。
これ…鏡やん…と。
そして同時に気付いた訳さ。
この美少女は
そのとき絶叫を上げてしまった。
「な、なんじゃこりゃあああぁぁぁ!!!!」
それはもう松田○作張りに声を上げた。
◆◆◆
女装させられていることに気付き、顔をあげたのも束の間……俺の後ろに複数人いることに気付いた。
そこにはなぜかやりきった表情をしている忍さん、ノエル、ファリン、桃子さんの4名がいた。
「ああ~ん、ヒエン君かわいい~」
すると桃子さんが勢い良く抱き付いてきた。
やべぇ!
ものすごくやわらかい!!ものすごく良いにおい!!理性ががががが…………。
1分後……
「……で、これは一体全体どういうことですか?」
なんとか正常に戻った俺はまだテンションの上がっている4人に説明を求める。
「もちろん……罰ゲームよ♪」
うぐ…
予想はしていたが……やはりか。
っていうかいくらなんでも速すぎるわΣ(゜Д゜)
誰が負けた当日に女装すると予想できるのか!!
とりあえず俺は荒ぶる心を押さえながら話を聞くことにした。
忍さんの話によると俺が美由希さんとの試合で気絶した後、既に準備は始めていたようである。主に月村家とバニングス家の力によって。
そしてなのは、アリサ、すずかの三人の監修のもと…女装させるならとても可愛くしてあげたいとの要望があり、必然的に着せたい服No.1のメイド服を着せたそうな。
そしてこれが一番ビックリしたのだが桃子さん曰く、俺の両親には女装の写真を送ることを条件に既に許可をとっているらしい。母さん、父さんも結構ノリノリでOKしたそうな。桃子さんと母さんがメル友なんだってさー。
なぜだろう?
そういう報告を聞くと自然と涙が出てきそうだよ(´Д`)
そして両親がこういうイベント事に関しては一切妥協しないという点で物凄く血のつながりを感じた次第であるorz
でも一つだけ分からないことがある。
「翠屋に入った瞬間に…既にイスに座っていたのですが……」
あのとき俺に一体何があった…?
気付いたらメイド服ってどんなマジックだよ?それこそ変身魔法でも使わなければ無理である。
「あ、それは薫さんが協力してくれたの。ヒエン君が翠屋に入った瞬間に後ろから手刀で気絶させたの」
「薫さん!?」
まさかの薫さん!?
もしかしてあのときの超直感の警鐘はこれのことだったのか?
「薫さんも最初は乗り気じゃなかったんだけど…ヒエン君のなのはちゃん、アリサちゃん、すずかの恥ずかし思い出特集のエピソードのことを聞くと…快く力を貸してくれたわ」
忍さんが真実を語る。
うおおー!
ここ来てあのときのツケが回ってきたというのか!?
こういうの何て言うんだっけ?
そうだ。
因果応報だ。
まさに今の俺にピッタリの言葉である。
「それに美由希も言ってたわよ?女装姿見せてくれたら、あの事故の事はチャラにしてあげるって」
さらに桃子さんからの追撃。
そういえば俺、美由希さんの胸を揉んでしまったんだよな確か。
正直あのときの感触はまだ鮮明に覚えている。大変やわらかかったですΣd(・∀・´)
「あとあれを見ていた士郎さんと恭也が暴走していたんだけど、私となのはで
「ハ、ハイ…」
どうやら高町家のヒエルラキーの頂点は桃子さんのようである。あの暴走状態の士郎さんと恭也君を抑えるなんて普通はできない。なのはが魔王であるならば桃子さんは大魔王といったところか。
うん。
桃子さんには逆らわないでおこう。
そして俺はここであることに気付く。
そういえば俺……今……メイド服なんだよな?
だったら……
俺は冷や汗を流しながら桃子さんへと話しかける。
「桃子さん」
「どうしたのかしら♪♪」
桃子さんノリノリである。
「あの……俺は一体どうやって着替えたんでしょう?」
「それはこの二人がやってくれたわ」
桃子さんはメイド姉妹のノエル&ファリンを俺の前に連れてくる。
「お手数ながら私達がヒエン様の服をしかえさせていただきました」
「ヒエンさん結構鍛えてるんですねー」
ノエルは少し頭を下げながら、ファリンは少しのんきに言っていた。
だが俺は少し顔を青くさせながら聞いた。
「あの……俺の服ってもしかして
するとノエルは俺の危惧していることに気が付いたのだろう。少し考えてから返答した。
「正直に答えますと……その通りです。ですが安心してください。
「そうですよー。だから安心してください!!」
二人の言葉を聞いたとき、俺の思考はあまりの衝撃にストップしていた。
何があったかは聞かないでください。
死にたくなるからorz
「ア、アハハハハ。ソウカー。ソレハドウモアリガトー」
俺はそこから死んだ魚のような目になっていたらしい。
「さて、それじゃ準備も出来たしそろそろいきましょうか?」
「皆、ヒエン君の姿見たら驚くわよー!!」
「ハハハハハ。ソウデスネー」
俺は桃子さんと忍さんに手を繋がれ、翠屋の表に連れていかれる。どうやら店の裏手で俺の着替えやら、メイクやら一時間程で済ませたらしい。
イヤハヤ、ホントスペックタカイヒトオオイワー。
そして俺は簡易ステージの裏手みたいなところに連れていかれた。表ではドラムロールみたいなものまで流れている始末である。
そしてその幕が開かれ、俺は女装姿を見せたのだった。
◆◆◆
俺はモクモクと前にある料理を食べている。
今の俺は無だ。
無の境地へと突入している。
決して女性陣達が目を輝かせながら写メをとったり、デジカメやカメラで写真をとっている姿なんて知らない。知らないったら知らない。
「キャー!ヒエちゃんこっち向いてー!!」
「ヒエちゃんこっちもよろしくー!!」
しかし桃子さんと、忍さんの声には反応せねばなるまい。
カシャカシャカシャΣp[【◎】]ω・´)
この人達は一体何枚取っているというのか。ステージに出てからカメラ放してないんだが……。だがこの二人は俺にとっては逆らってはいけないツートップの二人だからな。波風立てて怒らせたら後々面倒だ。
「はぁ~ヒエン君かわいいの~」
「こ、これはちょっと予想外ね…良い意味で」
「キレイ……」
小学生三人組がこちらをウットリしたような目で見ている。
やめて!そんな目で見ないで!死にたくなる!
それからも、なのはは俺を見ながらずっとビデオカメラを回している。それ違うよね?フェイトに送る用じゃないよね?
「わ、私より女の子っぽいorz」
「み、美由希さん……そ、そんなことないですから!美由希さんも十分女の子ですから!!」
落ち込んでいる美由希さんを、那美さんが必死になぐさめている。だがな美由希さん……一番落ち込みたいのは俺なんだよ?
「はぁ~」
溜め息をはきながら俺は翠屋の中を見回す。
見たところ各々好きな様に過ごしているようだ。さざなみ寮の面々も楽しくやっている。
そう考えるとあれだな。
今日はもう切り替えて楽しんでしまった方が得かもしれない。主に俺の精神の安寧のためにも。
「ヒエン……いやヒエちゃん」
「やあ」
そのとき恭也君が俺に話しかけてきた。その隣には薫さんもいた。珍しいコンビである。
「ヒエンでお願いします。薫さんもどうも」
「うむ。分かった」
「すまないね」
恭也君と薫さんは俺の席の前に座ると、ある提案を持ちかけてきた。
「ヒエン……お前さえよければ都合のつく日で構わん。俺達とも訓練をしてみないか?」
「うん?訓練?恭也君達と?」
「お前は薫さんとの訓練は続けるつもりなのだろう?」
「うん」
一応そのつもりではいる。
この先に待っているA's本編のストーリー……いずれぶつかるであろう守護騎士ヴォルケンリッター、闇の書の管制人格との激突に備えて、武器戦闘の経験もさらに積んでおきたいと思っていたからだ。
「俺としてはありがたいから大丈夫だけど」
「そうか。薫さんと俺で予定は話し合っておく。また決まり次第連絡する。ではな」
「今はしっかり休むんだよ」
「了解です」
恭也君と薫さんはさざなみ寮の面子のいる所へと行ってしまった。
さて、俺もデザートをいただこうかな。今のこの荒んだ心を回復するには甘いものが一番である。という訳でデザートを食べまくる!!
「ヒエンくーん、フェイトちゃん達にも女装姿見せてあげてもいい?」
「モウスキニシテクダサイ」
パーティー終了後、俺は久しぶりの我が家で枕を濡らしたのだったorz
次は少し時間飛びます。
では、また(・∀・)ノ