大空の炎の力を操る転生者   作:Gussan0

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どうも(゜▽゜*)

今回はグロテスクな描写や、不快に思われるような描写があります。そういったものが苦手な方はブラウザバックをお願いします。

では、どうぞ( *・ω・)ノ


第百三話 久遠の過去 前編

ヒエンside

 

 

 

俺は夢を見ていた。

 

 

それはどこかの映画館で物語を見ているような感覚であった。

 

 

一匹の野山に小さなコギツネがいた。群れで生まれた一匹のコギツネは母ギツネによって大切に育てられていた。

 

 

コギツネ達は目が閉じた状態で生まれ、見えるようになるまで約2週間程かかっていた。母ギツネは彼らが食べられないように必死に他の動物から子供達を守っていた。

 

 

1ヶ月後…彼らは人間でいう離乳食つまり母親が先に噛んで柔らかくしたエサをゆっくりと食べていた。幸いなことに母親と複数の赤ん坊の元にはオスのキツネが留まっていたおかげで、大勢の子供達を養うのと、母親が食べるための餌を仕留めるのをオスが引き受けてくれており、生活を助けてくれていた。

 

 

そしておよそ7ヶ月後……コギツネ達は少し大きくなり、それぞれの冒険に出るために育った野山を巣だっていった。

 

 

しかし小さなコギツネが1匹だけまだ残っていた。その子は群れの中で唯一の女の子で一際小さかった。母ギツネと、父ギツネも心配であるのかまだ旅立たずに残っていた。

 

 

だが親達も次回の繁殖期が巡ってくるまで……あてのない旅に出なければならない。

 

 

いつまでもこの子の側にいては……この子の為にならない。それでは…野生で生きていけない。夫婦は心を鬼にして去っていった。母ギツネは心配なのか何度も女の子の方を振り返る。だがやがて……母ギツネの背中もついに見えなくなった。

 

 

「………くぅ」

 

 

残された1匹のコギツネも野山を去っていく。その背中はどこか寂しそうであった。

 

 

 

 

 

 

映像が切り替わる。

 

 

 

 

 

 

それから数年が経ったのか、ある小さな神社で1匹の小さなキツネが餌を求めて現れた。

 

 

社務所の中では、神様に(まつ)っているのか幾つか果物が置いてあった。小さなキツネは空腹からその果物をムシャムシャと食べ始めた。

 

 

すると……

 

 

「あー!!」

 

 

小さなキツネはビクッと顔をあげる。

 

 

「このキツネー!だめでしょ!それは神様へのお供え物なんだから!!」

 

 

すると15,16歳くらいの少女だろうか?

 

 

巫女服を着た女の子がホウキをもって社務所の中へと駆けてきた。

 

 

キツネはすぐに一目散に逃げさり、外へと出ていった。

 

 

そこから巫女とキツネの奇妙な関係が始まった。

 

 

その日の夜、巫女が社務所で晩御飯の用意をしていた。そして……ふと目を離すと昼間にいたキツネが彼女の晩御飯である焼き魚を食べようとしていた。

 

 

「それ、私の魚ー!!」

 

 

巫女はもっていた箸をキツネに突きつけると、キツネは怯えてフルフルと震えてしまい、思わず怯む。

 

 

「うっ…」

 

 

巫女はその怯えるキツネの可愛らしさに罪悪感が芽生えてしまった。

 

 

「あなたも食べる?」

 

 

巫女は焼き魚を少し分けると、キツネへと差し出す。するとキツネは少し警戒しながらも焼き魚をバクバクと美味しそうに食べ始めた。

 

 

「ふふっ…」

 

 

美味しそうに食べるその姿に巫女も自然と笑顔になった。

 

 

次の日からキツネはよく神社に顔を出すようになった。巫女もごはんをよくキツネに分けるようになった。

 

 

一人と一匹が仲良くなるのにそう時間はかからなかった。

 

 

巫女は小さな友達ができたようで嬉しく……キツネは巫女に母ギツネの面影を見ており……互いに良い関係であった。

 

 

ある日、巫女はよく遊びに来るキツネに話しかけた。

 

 

巫女の名は、【みつ】というらしい。

 

 

年は16歳で、小さな神社で神主と一緒に暮らしているらしい。幼いころに両親を亡くして以降神社の神主に育てられたそうだ。

 

 

みつには夢があった。

 

 

「キツネ……私、お嫁に行くのが夢なんだ…」

 

 

この神社の近所に住む源吉(げんきち)という青年のお嫁にいくのが夢らしい。みつは顔を赤くさせながらその事をキツネに話した。

 

 

キツネも尻尾をパタパタとさせ、嬉しそうにみつの話を聞いていた。みつも嬉しそうにキツネに話し続けた。

 

 

そして幾日か月日が流れる。

 

 

ある日のこと…

みつが住んでいる神社の付近では嵐が来ていた。近くに小さな村があるのだが嵐による影響か、作物も取れなくなっていた。さらに土砂崩れまで起き、村では村人達が【神の怒りだ】と嵐を恐れていた。

 

 

そしてキツネも社務所の中にて嵐が過ぎるのをひたすら待っていた。

 

 

するとそこに落ち込んだような表情をしたみつがやってくる。キツネはそんなみつに心配そうに歩み寄る。

 

 

「くぅん…」

 

 

「うん?あ、ごめんね」

 

 

みつはキツネを小さく撫でる。

 

 

キツネはみつに撫でられるのが好きだった。なぜだかとても安心するのだ。

 

 

しばらくして沈黙が訪れる。

 

 

そしてみつが小さく話し始めた。

 

 

「キツネ……私ね?お嫁に……()()()()()()()()()。だからキツネ……()()()()()()……」

 

 

「……くぅ?」

 

 

そこから先の言葉は聞こえなかった。

 

 

「ううん。ごめんねキツネ……」

 

 

「くぅ」

 

 

みつは泣いているのか、その目を赤くさせていた。

 

 

すると社務所に()()()()()()()がやってくる。

 

 

「みつ……」

 

 

「大丈夫です…じゃあまたねキツネ……」

 

 

「くぅー」

 

 

そしてみつは嵐が降る中……外へと出ていった。キツネはそれを見守る。だがその後ろ姿はかつて彼女の母親が去る後ろ姿に……()()()()()()()()()()()()()()()()()()()姿()()()()()()()()()

 

 

翌日……

嵐は過ぎ去ったのか、外の天気はすっかりと晴れていた。

 

 

だがそれ以降……

キツネが()()()姿()()()()()()()()()()()…。

 

 

 

 

 

 

映像が切り替わる。

 

 

 

 

 

 

キツネはいなくなったみつを探し求め、旅をしていた。

 

 

みつに会いたくて始めた旅もいつしか二十数年の月日が流れていた。

 

 

そんなある日、キツネは突然人型の少女に変化できるようになった。その少女は記憶にある巫女、みつの姿にとても似ていた。だが変化は不完全なのか…キツネの耳や、尻尾があり、髪の毛も金髪であった。つまりこの二十数年の間にキツネは妖狐と呼ばれる存在になっていた。

 

 

キツネの巫女は変化出来たことがとても嬉しかったのか、野山を走り回っていた。

 

 

「くぅー!?」

 

 

しかし調子に乗って走り回り過ぎたせいか、キツネの巫女は転んでしまう。

 

 

「くぅー…」

 

 

そこで足をケガしてしまい動けなくなってしまった。すると……

 

 

「大丈夫?」

 

 

キツネの巫女はある少年と出会う。

 

 

少年は売薬商(ばいやくしょう)という薬を売る仕事をしていた。少年がキツネの巫女にケガの治療を行う。少年の治療の甲斐あって、キツネの巫女は動けるようになる。

 

 

「くぅ~」

 

 

「ははは。君は動物みたいだねぇ」

 

 

キツネの巫女は少年に頭を下げる。だが人に変化できるようになったとはいえ、キツネの巫女は人の言葉が話せなかった。

 

 

すると……

 

 

 

グゥー

 

 

 

キツネの巫女からお腹が鳴る音がする。

 

 

「くぅ…」

 

 

お腹が空いたのかうずくまる少女。

 

 

「一緒に食べようか?」

 

 

少年の手には、数個の握り飯があった。少年は少女に握り飯を分け、一緒に食べ始める。

 

 

それから少年とキツネの巫女は毎日会うこととなる。

 

 

少年は薬を売りながら少女に食べ物をあげ続けた。少年は一人暮らしをしていたが、お人好しなのか危なっかしい少女のことが放っておけなかった。

 

 

そしてキツネの少女も少年から食べ物を貰い、その純粋な笑顔を向けられ、段々と暖かな気持ちに包まれていた。

 

 

いつしか少女は少年と会うのが楽しみとなっていた。少年も少女と触れ合うことが楽しみとなっていた。

 

 

「やた……僕の名前は【弥太(やた)】っていうんだ」

 

 

「や……た……?」

 

 

「そう。やた」

 

 

ある時、少年は彼女に自分の名前を教えた。最初は話せなかった彼女に、根気よく文字や言葉を教えた。その甲斐あってキツネの少女は、文字を理解し、言葉も話せるようになった。

 

 

「久遠……君の名前は久遠(くおん)だ」

 

 

「く……お……ん?」

 

 

キツネの巫女は首を傾げる。

 

 

「そう。()しく()くへ。いつまでもいつまでも優しい君のままでいてほしいっていう願いを込めて考えたんだけど……どうかな?」

 

 

「くぅ……。うれしい。ありがとうやた」

 

 

「これからもよろしくね…久遠」

 

 

「うん…やた」

 

 

そしてキツネの少女は、少年:弥太(やた)から久遠(くおん)という名前をもらった。その日の夜、二人は結ばれた。

 

 

それから二人は楽しい日々を過ごした。一緒に甘酒を飲んだり、一緒に握り飯を食べたりした。遠くの山へ二人で薬草を積みに行ったり、川へ二人で釣りにも行った。

 

 

 

久遠は弥太と一緒に居るのが好きだった。

 

 

 

大好きだった。

 

 

 

愛していた。

 

 

 

ずっと一緒に居たいと思った。

 

 

 

二人はとても幸福だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし、その幸福は……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

長くは続かなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ある日、少年の住む村ではある流行り病が蔓延(まんえん)した。そのせいで倒れる者も多く出た。

 

 

流行り病によって村人が倒れていく中、薬師である弥太も懸命に村中を駆け回り、なんとかしようとするが……彼の売る薬では流行り病を治すことはできなかった。

 

 

そして……薬師であった影響か、毒に耐性がある弥太を除いて、ほぼ全ての村人が病に冒されてしまう。

 

 

パニックに陥った残りの村人達はその村の神主に助けを求めた。村人は【これはきっと神様のお怒りに違いない】と震えていた。

 

 

しばらくして…命を落とす村人まで出てきてしまった……。

 

 

弥太も諦めずに薬を売るが病は治らなかった。

 

 

しかし、村人達の頼みの綱であった神社の神主も病に侵されてしまう。

 

 

周囲が絶望に落とされる中、神主は病に侵されていない売薬商の少年:弥太を見て一つの神託を告げた。

 

 

 

 

 

 

【その少年を神に捧げる供物とせよ…。それこそがこの村を救う唯一の手段である】と……。

 

 

 

 

 

 

神主による神託と、未だに病に掛かっていない弥太に対して村人たちは疑心暗鬼に陥っていた事もあったのか…

 

 

弥太こそがこの流行り病を広めた元凶と下し、死の恐怖に怯えていた村人達もそう信じてしまった。

 

 

そして村人達の弥太を捕まえる山狩りが始まった。

 

 

弥太は自分を捕まえようとする村人達から、間一髪、久遠のいる山へと逃げ出すことに成功する。

 

 

だが村人総出による山狩りにより、徐々に弥太は追い詰められてしまう。何とか久遠と合流し、遠くへ逃げようとするが妙に()()()()()()に気付く。そして気付いてしまった。

 

 

 

 

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()……。

 

 

 

 

 

 

そして弥太は決意する。

 

 

 

 

 

 

久遠だけでも逃がすことに。

 

 

 

 

 

 

「ごめん久遠。ここでお別れだ。僕は村に戻る。だから君だけでも逃げるんだ」

 

 

「くぅ……。やた、むらにもどるの?」

 

 

「うん。でももう…帰ってはこない。だから君とはここでお別れだ」

 

 

「どうしてそんなこというの?くおん……やたとはなれたくない。いっしょににげよう?」

 

 

「…僕は君とは一緒には行けない。僕と一緒にいると君まで危険な目に合ってしまう……」

 

 

 

弥太はその事を危惧していた。

 

 

 

久遠が弥太と一緒にいれば……間違いなく()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

弥太は久遠に生きていてほしかった。

 

 

 

大切な……ずっと一緒にいようと誓った……大切なひとだから。

 

 

 

「やた…いっしょじゃないとやだ……くおんも…ここに…のこる」

 

 

「ごめん久遠。僕は君に生きていてほしい。僕と一緒にいれば君まで殺されてしまう。だから…ごめん…久遠」

 

 

「やた……」

 

 

久遠は瞳に涙を溜めながら弥太を見上げる。

 

 

「久遠……僕は君の亭主にはなれなかったね。でも…できればだよ?君はその名前の様に…いつまでもいつまでも……僕の好きなきみでいて。そして、僕の分まで幸せに…。約束だよ?久遠」

 

 

「やた……やたあぁぁぁ!!!」

 

 

少年は少女を抱きしめる。

 

 

その小さな体が愛おしくてたまらない……。

 

 

離れたくない。

 

 

離したくない。

 

 

少女も泣きながら少年を抱きしめ返し……二人はしばらく抱きしめ合うのだった。

 

 

 

 

 

 

そして弥太は村へと戻っていった。

 

 

 

 

 

 

しばらくして……

 

 

 

 

 

 

久遠はどうしても村に戻った弥太のことが気になり、村へと戻ってしまった。

 

 

 

 

 

 

そして彼女は見てしまった。

 

 

 

 

 

 

彼の……弥太の()()()()()()()()()()姿()()……。

 

 

 

 

 

 

弥太の()()が久遠の足元に転がってきた。その表情は苦悶に満ちており、彼の()()()()()()()()()も人の原型を留めていなかった。

 

 

 

 

 

 

「うあ……や……た……」

 

 

 

 

 

 

久遠は弥太の生首を持ち、泣きながら抱き締める。

 

 

 

 

 

 

「この供物によって、死の病は取り除かれる!」

 

 

 

 

 

 

すると神主と思わしき()()()()()()()が村の中央で叫んでいた。

 

 

 

 

 

 

その周りでは流行り病に侵された村人達が集まり、一心不乱に祈り続けていた。

 

 

 

 

 

 

「これで皆は救われる!!」

 

 

 

 

 

 

神主はどこか狂気を帯びた表情で叫んでいた。そして村人達も祈り続ける。そして久遠は……

 

 

 

 

 

 

「あ…ああああああ!!!」

 

 

 

 

 

 

少女は雄叫びを上げる。

 

 

 

 

 

 

少年の優しい表情が頭をよぎる。

 

 

 

 

 

 

言葉を教えてくれた。名前をくれた。一緒にごはんを食べてくれた。一緒に遊んでくれた。ずっと一緒にいようと言ってくれた。

 

 

 

 

 

 

そして……愛してくれた。

 

 

 

 

 

 

しかしそんな少年の…変わり果てた姿を……少女は見てしまった。

 

 

 

 

 

 

少女の胸の中にあった温かい気持ちは悲しみへと変わる。

 

 

 

 

 

 

少女の胸の中にあった優しい気持ちは怒りへと変わる。

 

 

 

 

 

 

少女の胸の中にあった未来への希望は……過去を憎む憎悪へと変わる。

 

 

 

 

 

 

「あああああぁァァッアアア!!!!」

 

 

 

 

 

 

少女は伏せていた顔を挙げ……天に向け叫んだ。

 

 

 

 

 

 

すると……遥か天空から……一筋の雷が落ちた……。

 

 

 

 

 

 

ドオォォンン!!!!!

 

 

 

 

 

 

そして激しい複数の雷が村へと降り注いだ。

 

 

 

 

 

 

村人達や神主は逃げ惑う。

 

 

 

 

 

 

やがて少女は…身体から黒き塊を放出する。

 

 

 

 

 

 

それは……(たた)りとよばれるモノであった。

 

 

 

 

 

 

そして……

激しい雷撃を……幾つも村へと落とした。

 

 

 

 

 

 

その後()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

 

そして……

村があったと思われる場所は抉れ、焼け野原となり……草木が生えぬ死の大地となった。

 

 

 

 

 

 

その後……

白い服を着ていた男達……()()と呼ばれる神職という存在に激しい怨念を抱いた久遠は……

 

 

 

 

 

 

理性を失い、全国の神社仏閣を雷撃で無差別に破壊して回った。

 

 

 

 

 

 

やがて……

全てを燃やし全てを破壊する化け狐がいるという噂が全国に流れ…

 

 

 

 

 

 

久遠は人々から【(たた)(ぎつね)】と呼ばれ…恐れられることになる……。

 

 

 

 

 

 

しかし……

 

 

 

 

 

 

それもいつしか終わりが訪れる。

 

 

 

 

 

 

強大な力を持つ久遠の前に、退魔師という霊力を用いて戦う者達が現れた。そして退魔師との死闘が繰り広げられる。

 

 

 

 

 

 

やがて多くの犠牲の上を払った後……久遠は封印されたのだった。

 




次回は久遠の過去 後編。

では、また(・∀・)ノ

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