大空の炎の力を操る転生者   作:Gussan0

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どうも(゜▽゜*)

久遠の過去 後編始まります。

では、どうぞ( *・ω・)ノ


第百四話 久遠の過去 後編

ヒエンside

 

 

 

映像が切り替わる。

 

 

 

祟り狐と呼ばれた……強力な力を宿した一匹の狐は封印された。

 

 

 

それから…長い時間が流れた。その封印は時が経つに連れて徐々に弱まっていった。

 

 

 

祟り狐のことが人々の記憶から完全に消え去って……約三百年の時が流れた。

 

 

 

そして……彼女の封印はまたしても解けてしまった。

 

 

 

封印から解けた祟り狐は再び雷の力を用いて、神社仏閣の破壊を始める。

 

 

 

しかし長期間封印されていた影響か、または封印が解けた直後という事もあって……彼女にかつての圧倒的な破壊力は無かった。

 

 

 

そして現代に残る退魔師の一族…神咲家の者達は…主力メンバーで再度封印に挑んだ。その結果…

 

 

 

彼女の力を再び封印することに成功した。

 

 

 

被害は最小限に収まったが……犠牲者が出てしまった。

 

 

 

神咲真鳴流(かんざきしんめいりゅう)】の伝承者であった神咲(かんざき)亜弓(あゆみ)という女性が命を落とし……

 

 

 

神咲薫の先代の【神咲一灯流(かんざきいっとうりゅう)】伝承者である和音(かずね)も引退に追い込まれてしまった。

 

 

 

まだ学生であった薫が隙を見つけて掛けた封により…辛うじて子狐形態に抑える事に成功したのだ。

 

 

 

だが……()()()()()()()()も出てしまった。

 

 

 

それは……普通の家族だった。

 

 

 

小さな神社の()()を務めていた……普通の家族だった。

 

 

 

亡くなったのはその家の…夫婦だった。

 

 

 

両親が死んでしまい、俯き悲しむ少女。

 

 

 

そんな少女に神咲家の当時の当主が話し始める。

 

 

 

「あんたの両親ば殺したんは……祟り狐と呼ばれちょる。その昔、諸国を荒らしまわり、神社仏閣を破壊し回った化け狐じゃ」

 

 

 

「ばけぎつね?」

 

 

 

「今は力封じて小狐に戻っとる……薫が……ウチの孫がどうにか封印した。ウチも力使いすぎて……もう引退じゃが……あの祟り狐も……今は力失って…ただの狐じゃ。今なら……()()()()()()。あんたの…両親の仇ば討ちたいなら討てばよか。両親殺されたあんたとその弟にはその権利があると。あの狐をどうするかは……あんた達が決め」

 

 

 

狐を生かすのも…殺すのも自分達の自由。

 

 

 

その選択を問われた幼い少女…那美は考える。

 

 

 

その問いを受けてから数日後……那美は一匹の狐の過去を夢で見ることになる。

 

 

 

そして……狐の悲しき過去を知った那美は狐に話しかけた。

 

 

 

「何年か経ったらあなたの封印…また解けちゃうんだって。だからわたし……おばーちゃんと約束したの……」

 

 

 

両親を殺された少女は…憎むべき対象である狐に静かに話す。

 

 

 

「あなたを優しい子に育てるって」

 

 

 

少女が出した答えは復讐ではなく……狐と共に歩み、その優しい心を取り戻すことだった。

 

 

 

「あなたも辛かったんだよね?大切な人を殺されて……人間に絶望して……。祟り狐なんて呼んじゃってごめんね?あなたには…弥太(やた)君がくれた…大切な名前があるんだよね?」

 

 

 

それは…今は遠い昔。売薬商(ばいやくしょう)の優しい少年がかつてキツネの少女に与えた優しい名前。少年以外に……数百年呼ばれていなかった名前…

 

 

 

()しく…()くへ。たとえ離れていても……優しいあなたがずっと幸せでいられる様に…そう願って名付けられた名前…」

 

 

 

少女はその名前を…

 

 

 

久遠(くおん)

 

 

 

呼んだ。

 

 

 

数百年ぶりに呼ばれたその名前に小狐は反応する。そして少女は小狐を優しく抱き…

 

 

 

「私は…那美(なみ)

 

 

 

少女は久遠に自身の名を告げる。

 

 

 

「お互いに……悲しい事や……辛い事いっぱいあったけど……友達に……なれるよね?久遠?」

 

 

 

少女は瞳に涙を溜めながら久遠に優しく笑いかけた。

 

 

 

その様子を見た久遠も変化し、話し始めた。

 

 

 

「な……み……?」

 

 

 

「うん」

 

 

 

「くおんと……なみ……ともだち?」

 

 

 

「うん。友達だよ久遠」

 

 

 

「くおんも……なみと……ともだちになりたい」

 

 

 

ここで映像は途切れた。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

「………君!ヒエン君!」

 

 

ここで俺は飛び起きる。

 

 

「っは!」

 

 

キョロキョロと見回すと、ソファーの後ろに那美さんがいた。

 

 

「晩御飯できたから食べよう?食べて帰るでしょ?」

 

 

「は、はい」

 

 

そして起きようとすると、久遠が俺の膝の上で寝ていることに気付いた。俺が動いたのもあるのだろう。久遠も目を覚ましてしまった。

 

 

「くぅ」

 

 

そして目を覚ますと俺の頭の上に乗ってきた。

 

 

既にそれに慣れた俺はまだ寝ている相棒を起こしてから、晩御飯をご馳走になった。

 

 

相変わらず耕介さんの料理はプロ級にうまかった。

 

 

というかさざなみ寮でも結構お世話になってる気がするorz

 

 

 

 

 

 

そして晩御飯を食べ終わった俺は、そろそろ良い時間だったのでさざなみ寮をおいとました。

 

 

暗い夜道を一人帰りながら先程見た()について考えていた。

 

 

那美さんに聞いてみようと思ったが……食事中であったため聞けなかった。また今度聞いてみよう。

 

 

話に戻るが……あれは間違いなく()()()()()()()()だろう。

 

 

とらいあんぐるハート3での原作知識でも確かそのことについて言及されている描写があったはずだ。

 

 

(確か……夢移(ゆめうつ)し…だったか)

 

 

久遠は他人に自分の夢を見せる、夢移しという不思議な能力を持っていると。

 

 

恐らくその夢移しで俺にも久遠の過去の記憶が見えたのだろう。だが久遠の夢移しの能力は、久遠の意思に関係なく勝手に発動することがあるらしい。つまり久遠自身もこの能力を上手く操れないのだ。

 

 

久遠の夢では二人の人物がでてきた…。

 

 

【みつ】と【弥太(やた)

 

 

久遠の心に残る大切な人達。

 

 

俺はこの二人の事は知識だけだが軽く知っている。

 

 

 

【みつ】

 

 

 

彼女は親を幼い頃になくしてから、神主に育てられた女の子である。近所に住む源吉(げんきち)と言う青年の事が好きであり、その青年のお嫁に行くことを夢見ていた。

 

 

実を言うと……その源吉もみつの事が好きであり二人は想いが通じ合っていたのだが……その夢が叶うことがないことを…みつ自身痛いほど理解していた。そして実際に……彼女が源吉と結ばれることはなかった。

 

 

孤児であるみつが不自由なく暮らしていけてたのは、神主によって()()()()()()()()()()()()()()に育てられていたからだ。

 

 

後にみつは、嵐が原因による土砂崩れの災害を鎮めるために……濁流の川に神の供物として身を投げる。

 

 

つまり……

久遠があの嵐以降……みつを見なくなったのは……彼女は……()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

弥太(やた)

 

 

 

久遠の名付け親にして恋人だった少年。

 

 

元々、薬師として活動していた少年は知識も十分にあり、いつも山菜や薬草を取りに山にも登るため心身共に丈夫な少年であった。

 

 

家族については不明なのだが……恐らく一人暮らしだったはずだ。

 

 

久遠と幸せに過ごしていたが、流行り病によって全てを奪われてしまった。薬師であったために病気に耐性があったせいで流行り病を流行らせた元凶として……神に捧げる供物として殺されてしまった。

 

 

そしてそれが原因で久遠が祟り狐として神主達に恨みを持つことになってしまった。

 

 

 

俺は改めて夢の内容を思い返した。

 

 

 

(とてもじゃないが……やりきれないな…)

 

 

 

そもそも人間達がみつや、弥太を殺した理由……それは自然災害や、疫病といった流行り病から村を救うための生贄としたからだ。

 

 

今だからこそ……人間の技術や医学など……目覚ましい発展を遂げている。

 

 

だがほんの数百年ほど前までは病気や自然災害は……祟りや悪霊の仕業、もしくは神の怒りによるものだと信じられていた。

 

 

よって生贄や供物などと言う猟奇的な行為が平然と行われていた。

 

 

それが正しいと信じられていたから……。

 

 

それを表だって非難する者も居なかった。それは許されない行為であったから……。むしろそんなことをすれば周りから殺されただろう。

 

 

久遠が祟り狐となってしまった原因。

 

 

そこに悪い者はいない。いや…いたとしてもそれは時代を含めて全てが悪かった。

 

 

だから言えることはたった一つだ。

 

 

(時期が悪かった。タイミングが悪かった)

 

 

運が悪かった。

 

 

みつが嵐を抑えるために供物になったのも、弥太が流行り病のために生贄にされてしまったのも、久遠が祟り狐になってしまったのも……

 

 

すべて偶然の不運が積み重なってしまったのだ。

 

 

(だが…たったそれだけで……それだけのことで……あんな……悲劇が起こってしまった……)

 

 

みつや、弥太が生まれた時代が俺達と同じ現代であったなら……もう少し後の時代であったなら……あんな悲劇は起こらなかったかもしれない。

 

 

だが悲劇は起こってしまった……。

 

 

そして巡りめぐって……那美さんの両親も久遠に殺されることになってしまった。

 

 

昔の久遠……祟り狐を封印するために数多くの退魔師が犠牲になったのだろう。その争いに巻き込まれて死んでしまった一般人も大勢いただろう。

 

 

誰もが悪く……誰もが悪くなかった。

 

 

そして数多くの人々が死に……純粋な小狐に癒えない深い傷跡を残してしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして俺はそこまで考えてあることに気付いた。

 

 

それは()()()()()()だ。

 

 

久遠があの夢を見るということはだ……もしかして久遠に施された封印がもうすぐ解ける()()()ではないのか?

 

 

恭也君を主人公とする恋愛アドベンチャーゲーム……とらいあんぐるハート3では那美さんはヒロインの一人であったのだが……

 

 

当然ストーリー展開として久遠が祟り狐として復活するという展開が待っている。

 

 

ストーリーを簡単に説明すると、封印が弱まっていることに気付いていた薫さんは再び久遠の祟りを再封印することができるか……自信がなかったのだ。

 

 

久遠は全盛期から力を抑えられている状態とはいえ……人一人を楽に殺せる力の持ち主だからだ。

 

 

過去に退魔師のエリートであった薫さんのご家族も何人か亡くなっている。

 

 

そしてある日、霊剣・十六夜を片手に薫さんは久遠の暗殺を決行する。

 

 

そこに偶然居合わせた那美さんと恭也君が薫さんを止めたのだが……そこで二人に邪魔されている間に封印の効果が切れ、久遠は再び祟り狐として復活してしまう。

 

 

一同はなんとか抵抗するものの久遠の圧倒的な強さに次第に追い詰められてしまう。だが奮闘の末あって、最後は久遠との絆を信じた那美さんによる鎮魂術(ちんこんじゅつ)を駆使した結果…久遠から祟りを分離させることに成功する。

 

 

そして祟りだけを浄化させ、久遠を救うことができたのだ。

 

 

これがとらいあんぐるハート3の那美さんをヒロインとした大まかな流れである。

 

 

そしてこの出来事が起こるのが、丁度この世界でいう一年前なのだ。

 

 

時系列でいえば、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()なのだ。

 

 

那美さんは今、高校三年生であるため順当に考えればこの出来事は終わっていると考えた方が良い。

 

 

だがこの世界は()()()()だ。

 

 

全てがゲーム通りに進む訳がない。

 

 

もしも…もしもだ。

 

 

まだ久遠の封印が()()()()()()()()()()

 

 

その封印が()()()()()()()()()()()()()

 

 

そう考えたとき超直感が警鐘を放った。

 

 

これは……少し……調べた方が良いかもしれないな。

 

 

久遠や那美さん、薫さんには色々助けてもらった借りがある。その借りを返すためにも早目に動き出した方がいいかもしれない。

 

 

俺はさっそく帰って準備を始めるのだった。

 




嫌な予感がしたのか色々準備を始める主人公。

そして次第に様子がどこかおかしくなる薫さん。

次回からいよいよ物語が動き出す。

では、また(・∀・)ノ

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