外伝書けたで候。
では、どうぞ∠( ゚д゚)/
ヒエンside
「ふぃ〜」
話も良いところで纏まると、俺はふと時計を確認した。
時刻は19時30分を回ったところであった。
「あ、そろそろ魔法の練習する時間だ」
すると、ヴィヴィオがそんな事を呟いた。
「え?夜練もしてるのか??」
「はい!日課なんです!!」
ヴィヴィオが元気よく答える。
この頃の年代の子は魔力を限界まで使っても少し休憩すれば、すぐに回復する。
だからこそ伸び代も凄い。
俺もヴィヴィオのような年代から魔法を使っていれば何か変わったのかなあ……?とか色々考えていると、何やらヴィヴィオが指をツンツンさせながら声をかけてきた。
え?
何この子??
めっちゃ可愛いんですけど???
俺をキュン死にさせたいのか????
「あの、ヒエンさん……少しお願いがあるのですが……」
「いいぞ」
「えっ!?いや、あの、まだ何も言ってませんけど!?」
気付いたら条件反射でOKしてた。
「んんっ!それでどうかしたのか?」
「その、お疲れのところ申し訳ないのですが……良ければ今から私とスパーリングしてくれないでしょうか?」
「いいぞ」
「えっ!?また即答!?」
「どうする?庭でやらせてもらうか??」
「しかも意外と乗り気っ!?ヒエンさん早いです!展開が早すぎて肝心の私がついていけてないです!!」
「判断が遅い」
思わず鱗滝さんが出てしまった。
「ぶぅ~。ヒエンさんが早すぎるんですー」
「わるいわるい」
俺はお詫びの意味も込めて、ヴィヴィオの頭をソッと撫でる。
勿論、調和の波動を流すことも忘れない。
「ふ、ふにゃ〜……」
すると、ヴィヴィオが頬を赤くさせてとろけるような表情をする。
リアルナデポである。
「な、なんて癖になりそうな感触……ってそうじゃないですー!うにゃあー!!」
ヴィヴィオが両手を上げて威嚇する。
俺への効果はばつぐんだ。
「もう!からかうのはやめてください!!」
「からかってるつもりはこれっぽっちもないんだが?むしろヴィヴィオが一人で空回りしてるだけなんだが??」
「もう〜!さっさとスパーリングやりますよ!!」
「へいへい」
いじけるヴィヴィオを他所に、俺達は庭へと出る。
「クリス、セットアップ!」
ヴィヴィオは大人モードになると、チームナカジマのピンクジャージ姿で構える。
「セットアップ」
俺も死ぬ気化すると同時に、黒いジャージ姿で構える。
本格的な模擬戦ではないので死ぬ気化でも十分だ。
「なになに〜?二人で何かするの〜??」
「今からスパーリングするみたいだよ」
直後、なのフェイの二人が洗い物を終えたのかリビングへとやって来る。
「ママ達、丁度良い所に。どっちでもいいから審判やって〜」
「あ、じゃあ私がやるよ」
フェイトさんが手を上げて立候補する。
というか、この人も私服姿いいな。
黒のフレアスカートに、白いスウェットを合わせた落ち着いたファッションだ。
ついマジマジと見てしまう。
「うん?ヒエンどうかした??」
「あ、いえ……なんでもないです」
フェイトさんはキョトンとしながら首を傾げる。
その表情を見た俺は、視線をサッと逸らした。
フェイトさんは、仕草のひとつひとつがあざといものの、嫌味を全く感じない。
むしろ、愛らしさまで感じるまである。
なんだろう。
物凄く守ってあげたくなる。
「スゥ……フゥー……」
俺は深呼吸して集中する。
いかんいかん。
スパーリング前に浮ついてたら、ヴィヴィオのカウンターにやられてしまう。
「二人とも準備はいい?」
「うん!」
「はい」
フェイトさんの確認に頷いて答える。
「それじゃあ、いくよ。試合開始!」
フェイトさんの合図でスパーリングが始まる。
「いきます!」
例の如く、ヴィヴィオが高速で接近してきた。
距離が4〜5メートルあるにも関わらず、一瞬で無くしてきた。
これはヴィヴィオの得意な高速のステップ。
俊足の追い足、ジェットステップだ。
「シッ!」
まずは様子見なのか、左のジャブフリッカーが繰り出される。
身体強化が効いているのか、並の相手なら目視すら出来ずに食らうだろう。
だが、自分で言ってはなんだが、俺は並ではない。
「悪いな、ヴィヴィオ。お前のスピードにはもう慣れた」
俺はヴィヴィオのジャブフリッカーを空手の手刀受けでかわすと、パンチの切り返しのタイミングを見計らって、カウンターを入れる。
「くっ!?」
ヴィヴィオは首を逸らして、間一髪でかわす。
だが、これで隙が出来た。
「
俺は古式空手の技の一つ、夫婦手を繰り出す。
この技は両手をつかず離れず同時に動かす手法で、前の手は攻撃もすれば防御もするし、敵の手を受け流し、突き入れ、さらに後の手も攻撃もすれば防御もする。
つまり相手は"前の手”のコンマ数秒後にとび出してくる"後の手”に度肝を抜かれるのだ。
両手共に万が一の保険であり、敵にとっては思わぬ伏兵となるのである。
俺はヴィヴィオのフリッカーを片手でいなしつつ、もう片方の手で攻撃していく。
これを見たなのフェイは驚く。
「両手をほぼ同時に!?」
「見たことのない型だ……」
ヴィヴィオの連撃の合間を縫うようにこちらも攻撃する。
「わっ!?」
ヴィヴィオが首を動かして俺の
「ぶっ!?」
俺の攻撃が初めてクリーンヒットした。
ヴィヴィオが一歩後ろに下がろうとするが、逃がさん。
「フッ!」
「くっ……ぐぅ!?」
それから次々と俺の攻撃がヒットする。
2発目3発目4発目と当てていく。
ヴィヴィオは動揺しているのか、動きが乱れている。
「どうしたヴィヴィオ?お前の実力はその程度か??」
「そんなこと……言われてもっ!?」
ヴィヴィオが俺の攻撃をガードしながら、ジャブを繰り出してくるが俺は化勁でそれらを受け流す。
「もっと本気を出せ。お前の力はこんなものじゃないはずだぞ」
「こ、これでも……一生懸命やって……るん……ですけどね!」
ヴィヴィオはさらにスピードを上げてくるが、いくら速かろうが今のこの子の攻撃のリズムは読みやすいため、防ぐのは容易い。
俺は攻撃を防ぎながら、思考する。
(仕方がない。以前、リニスがやってくれたみたいにアドバイスしながら戦うか)
ヴィヴィオは今、迷っている。
俺相手にどう攻めればいいか、分からないのだろう。
俺にも経験があるから分かる。
何をしても攻撃が通じない、簡単に対処されるというのは意外と心に来る。
つまり、俺はこの子に自信を持たせるようにこのスパーリングで立ち回なければならない。
今思えば、ナカジマ家でリニスと立ち合ったとき、リニスも同じ事を考えていたのだろう。
教える立場になって、初めてその気持ちが分かった気がした。
俺はマルチタスクを駆使して、ヴィヴィオに伝えるべき言葉を選ぶ。
「いいや、まだだ。お前はまだ実力の半分も出し切れちゃいない。さっきも言ったろ?お前は目が良い。もっと相手をよく見ろ。俺の動き、癖、仕草……それらを全体で見るんだ。相手の一点を凝視するのではなく、相手の身体全体をぼんやりと視界に収めることで、相手の動きを感じ取るんだ。相手の動きを見抜く力、“見る力”は戦いにおいて最も重要な能力のひとつだ」
「相手の動きを全体で……見る……」
すると、ヴィヴィオの動きが徐々に変わっていく。
「それと焦るな。落ち着いて、しっかりと目の前の相手に集中するんだ」
「落ち着いて……目の前の相手に集中……」
俺の拳を余裕を持ってかわす。
「川の中の岩の如し……だ。岩は前から流れてくる水をただ後ろへと流す。受け止めきれない攻撃は、逸らして受け流せ」
「逸らして……受け流す……」
俺は連撃を繰り出すが、ヴィヴィオは攻撃を受け流す方向にシフトしたのか、ナックルパートで拳を上手く逸らす。
「そうだ。そのまま相手の動きに合わせてひとつとなり、最後には自分の流れに乗せてしまえ」
「相手とひとつになる……」
ヴィヴィオは段々慣れてきたのか、俺の拳を真正面から打たず、絶妙な角度で力を逸らし、そして防御のパンチをそのまま攻撃に使う。
いわゆる攻防一体のパンチだ。
「おっと……」
俺は当たりそうになるパンチを紙一重でかわすが、少し掠ってしまった。
しかし、少しアドバイスしただけでこうまで動きが変わるとは……やはり彼女も天才の部類に入るらしい。
(しかもこれ……ちょっと入ってないか?)
ヴィヴィオの両目がキラリと光る。
間違いない。
これは入っている。
いわゆる……ゾーンに。
ゾーンとは、極度の集中状態に入り、時間や自我を忘れ、最高のパフォーマンスを発揮できる理想的な心理状態を指す。
つまり、ヴィヴィオは今かつてないほどに最高のコンディションという訳だ。
「自分の流れに乗せる……」
すると、ヴィヴィオが先程と同じく、ジェットステップで俺の懐に潜り込んでくる。
しかもさっきより格段に早い。
「あぶねっ!?」
思わず後ろに下がるが、ヴィヴィオは構わず懐に潜り込んでくる。
ショートパンチからのガゼルパンチに、リバーブロー。
俺はそれらを空手の回し受けで、受け流しながら時折カウンターを狙うが、俺の攻撃を見切ったのか紙一重でかわしたのだ。
いや、ちょっと待って?
貴女、急に強くなりすぎちゃう??
「シッ!シッ!!シッ!!!」
「ちぃっ!?」
ヴィヴィオが連続攻撃を繰り出すので、こちらも夫婦手の連撃で対抗する。
互いに素早い攻撃の応酬をしているからか、至近距離での陣地の奪い合いのような戦いとなる。
「す、凄い……ヴィヴィオの動きがヒエン君と戦う事で……」
「うん……より洗練されていってる」
なのはさんとフェイトさんの呟きが聞こえるが、正直反応する暇はない。
俺は化勁で制空圏を築きながら、ヴィヴィオの猛攻を凌いでいた。
(まだ動きが良くなるだとぅ!?これだから天才は!?)
ヴィヴィオのような年代の子は、きっかけひとつで化ける事があるが、ヴィヴィオのこれもまさにそれだ。
恐らく、俺のアドバイスとスパーリングによって彼女の中で何かが噛み合ったのだろう。
そこで、その才能が一気に開花したのだ。
急に開花し過ぎな気もするが……。
すると、ヴィヴィオの動きがまたしても変わる。
首を高速で振り、さらに俺の懐に入ろうと体を左右に大きく揺らしながら接近してくる。
俺はその動きに見覚えがあった。
「まさかこれは……デンプシーロール!?」
デンプシーロール。
デンプシーロールは、かのアメリカンボクサー、ジャック・デンプシーの開発した必殺ブローで、上半身を∞の形のような軌道で振りながら、その遠心力と反動を利用して左右から重い連打をたたき付けるという強力なブローである。
あのボクシング漫画【はじめの一歩】の主人公・幕之内一歩の必殺技の代名詞でもあり、代表的なブローでもある。
俺の制空圏を突破するために、突発的に編み出したのだろう。
いや、本当に天才だなこの子。
ヴィヴィオを主人公にした物語を考えるなら、【ヴィヴィオの一歩】だろうか?
あれ?
ここって魔法少女の世界だよね??……と、軽く現実逃避していると、さっそくヴィヴィオが仕掛けてきた。
ヴィヴィオが首を左右に振りながら、強力なブローを繰り出す。
ご丁寧に破壊力も上がっており、手数も多い。
見事に反撃する暇が無い。
俺はそれらをガードしながら、反撃の機会を待つ。
今、ヴィヴィオはノリに乗っている。
攻撃の手数と精度も今までの比ではない。
つーか、このデンプシーロールで繰り出されるブローがヤバイ。
前にクリスに見せてもらった戦技披露会……ヴィヴィオとなのはさんの母娘対決、その終盤で見たアクセルスマッシュの無限連打に似ている。
もし名付けるとするなら、アクセルスマッシュインフィニティってとこか?
「ん?」
そのとき、ヴィヴィオの鼻から鼻血が出る。
あー……なるほど。
ゾーンに入っている今のヴィヴィオの状態は、身体にかなりの負担を強いているらしい。
その証拠にアクセルスマッシュインフィニティの精度も段々と落ちてきた。
「今だ……ここ!」
俺はその隙をついて、ヴィヴィオの腹に肘鉄を繰り出す。
「うっ……」
直後、ヴィヴィオは気を失った。
「はぁ〜……」
俺は前のめりに倒れるヴィヴィオを支えると、ヘナヘナとその場に座り込んだ。
いや、マジ疲れたわ……。
「「大丈夫!?」」
「な、なんとか……」
急いで駆け寄ってきたなのはさんとフェイトさんに、力なく答えた。
◆◆◆
なのはさんがヴィヴィオを彼女の自室へと運んでいると、俺はフェイトさんがくれたスポーツドリンクを飲んでいた。
「生き返る〜」
「アハハハ……かなり動いてたからね」
フェイトさんが苦笑する。
「ヒエンはかなり戦い慣れているね」
「まあ、こう見えてそこそこ戦闘経験はありますから」
「……君ほどの強さを持つ魔導師なら、少しは有名になっててもおかしくないと思うんだけどなぁ」
「ミ、ミッドチルダには最近来たばかりなので……」
これ、何気なく情報収集されてないか?
だとしたら、下手な事言わないように気をつけないと……。
「ヴィヴィオ、寝かしつけて来たよ〜」
すると、なのはさんが丁度戻ってきた。
ナイスタイミング。
さすがなのはさん、略してさすなの。
「それじゃ、切りもいいですし……俺はそろそろお暇しますね」
そして俺はチャンスとばかりに席を立つ。
これ以上ここに居れば、何か失言してしまいそうで怖いからだ。
だがこういう時に限って、そうは問屋が卸さない。
「ヒエン君、泊まっていけば?」
なのはさんがそんな事を言い出した。
「え?」
俺は思わず聞き返す。
「いいね、それ。ヒエン、泊まっていきなよ」
「……え?」
俺は再度聞き返す。
フェイトさんまで同調しだした。
いや、あの……うん。
こう言ってはなんですけども、二人とも頭大丈夫?……などと断じて口には出来ないのでしっかりと断っておく。
「非常に魅力的な提案ですが、謹んでお断り致します」
「「えぇ〜」」
二人が文句を言う。
いや、なんでさ?
「……別に特に遅い時間帯でもないですし、大丈夫ですよ」
「でもこの後、天気予報じゃ嵐が来るって言ってるよ?」
「そうそう。多分、あと三十分もしない内に降り出すんじゃないかな?」
なのはさんがテレビをつけると、丁度天気予報がやっており、気象予報士が非常に大きな嵐がやって来ると言っていた。
フェイトさんも庭から空を見上げており、俺も同じく見上げると、大きな分厚い雲が空を覆っていた。
「あー……確かに降りそうですね。テント大丈夫かな……」
いや、でも一応飛ばないように防御結界張ってるし……一日くらいなら大丈夫か?
だが、そんな俺の呟きをこの二人が見逃すはずもなく……
「えっ!?ヒエン君、もしかしてテント暮らしなの!?」
「えぇ!?そうなのヒエン!?」
「えっ?……あ」
やってしまったと気付いた時には、時既に遅し。
二人から根掘り葉掘り聞かれ、渋々答える事に。
未だに住む場所を見つけていないので、人気のない郊外のビルの上でテント生活をしていることを話した。
そして、話を聞いたなのはさんが一言。
「ヒエン君、住む所ないなら家に住めば良いよ!!」
その一言で、俺の高町家への居候が決定した。
だが、俺としてはテント生活はソロキャンプの延長線上なので、実はかなり楽しんでいたりする。
焚き火を眺めたり、自分のペースで料理や読書、散策などを楽しめることを熱弁すると、二人とも興味があるのか、熱心に聞いていた。
それから俺は事情を説明するために、ノーヴェさんに再び連絡。
案の定、事情を説明したらブチ切れられた。
『困った時は素直に頼れ!このバカ野郎が!!』……と。
ノーヴェさんの後ろではナカジマ家の面々もおり、公開説教を受ける羽目になった。
ちなみにこの世界の大人ギンガと、大人スバルとも顔合わせは既にしていたりする。
二人とも美人なお姉さんに成長していた。
後は、ヴィヴィオとの先程のスパーリング映像も見せた。
ノーヴェさんに説明するとき、俺は言った。
『ヴィヴィオが化けた』と。
ノーヴェさんが怪訝な顔をしていたが、映像を見てから俺の言葉の意味が分かったらしい。
ノーヴェさん曰く、ヴィヴィオがゾーンに入った状態は、感覚が研ぎ澄まされ、身体の動きが自然に最適化、自分の意識が行為そのものに溶け込み、高い集中力と没入感を伴う無我夢中の状態だったらしい。
だがその分、幼いヴィヴィオには反動も凄まじく、疲労が蓄積し、脳がオーバーワーク状態になった事で鼻血が出たそうな。
つまり、あの状態は今のヴィヴィオには負担にしかならないのだ。
現時点では、まだ何とも言えないようで様子を見る事になった。
そんなこんなで俺の激動の一日は終了するのであった。
余談ではあるが、次の日、ヴィヴィオが俺が高町家に泊まっていた事に驚いた時のリアクションは最高だった。
◆◆◆
それからというもの、高町家で居候する身になった俺はなのはさんや、フェイトさんの訓練や任務に同行する事が多くなった。
そしてこの二人、非常に優秀であった。
空戦ランクS+──即ち、管理局内でも最強クラスの魔導師の実力を持っている。
そんな俺の役回りは、主に二人の助手であった。
時にはなのはさんの助手として武装隊の訓練を補助したり、またある時にはフェイトさんの助手として事件の捜査に協力したり……。
勿論、そんな事をしていると二人以外からも声をかけられる事もある。
その内の一人が、二人の親友でもある八神はやてさん、大人はやてである。
身長は約150cm程だが、茶髪のショートカットのおしとやかな美女となっていた。
俺の事は二人から聞いていたようで、『よろしゅうな〜』と柔らかい関西弁で自己紹介してくれたのは記憶に新しい。
そんな彼女の役職は特別捜査官。
一言で纏めるなら
各部署から頼られる特別な人材、より簡単に言えば超強力な助っ人のようなものである。
そんな彼女の元でもこき使われるのは当然の帰結であった。
特に彼女には書類仕事が多い。
元の世界でも俺はアースラでリンディさんやクロノ、エイミィ、地上本部でもクイントさんやメガーヌさんの書類仕事を手伝っていたのだ。
書類を捌くのはお手の物であった。
かなり、いや滅茶苦茶感謝された。
特に彼女の秘書を努めるリインフォース
自分で言うのもなんだが、俺は結構優秀な部類に入ったりする。
でもだからって
ちなみに初めて会った時に、相棒とナハトを紹介したのだが、例の如く
まあ、話に戻るが、そんな優秀な三人の助手をしていると学べる事は非常に多い。
なのはさんの死ぬギリギリのラインを見極めた教導に的確な助言、フェイトさんの事件捜査時の注目すべき事柄に資料証拠集めのコツ、はやてさんの特別捜査官としてのスキルである交渉術や、部隊指揮など……勉強になる事は多かった。
そんな三人の元を数週間行ったり来たりしていると、噂にはなる訳で。
「三人のエースを誑かしているクソ野郎みたいに言われてるんですが……どうしたらいいですかね?」
「大変だなお前も……」
ナカジマジムの会長室にて、ノーヴェさんに愚痴っていた。
基本、俺はナカジマジムの臨時トレーナーとして働いている。
ジムの業務の他、ヴィヴィオやコロナとの模擬戦に、最近ではアインハルトやリオ、ミウラにも技のコツを教えていたりする。
アインハルトには発勁を、リオには太極拳の化勁を、ミウラには空手の回し受けなどを教えている。
各々の今必要なスキルは何かと考えた時に、こうなった。
あの三人の助手をしているときは、基本的にジムの仕事が終わってからである。
まあ、ジムと三人の予定が合わさった時は苦肉の策で分身を使って事なきを得たが。
「あの三人って人気じゃないですか。そこにぽっと出の俺が出てきた事で、やっかみを受けるというか、男性局員からの射殺すような視線が激増した訳なんですよ」
「あー……嫉妬か」
「多分……」
三人共に有名でそれも美人である。
そんな三人の助手をするどこの馬の骨とも分からない奴がいきなり現れたのだ。
そりゃ嫉妬もするか……。
噂じゃ、ファンクラブまであるみたいだしなぁ。
「つまり、そのやっかみをどうにか出来りゃいいのか?」
「はい。三人は気にするなと言ってくれるんですが……どうにも居心地悪くて」
「うーん……そうだな。実績を作ってみるってのはどうだ?」
「実績……ですか?」
「ああ。要はお前が、あの三人も認めるスゲェ奴だって事を周囲に認知させりゃいいんだよ」
「はぁ」
でもどうやってそんな事を?
「そこでこれだ」
ノーヴェさんが空中モニターにある映像を展開させる。
「WGC主催の19歳以下の挌闘大会だ。これに出場して軽く優勝してみせろ」
「格闘大会……?」
「ああ。この大会を皮切りに、開かれる格闘大会に片っ端から出る。で、その大会全部優勝かっさらっちまえ」
「はあっ!?」
いやいやいやいや!?
何言ってんの!?
何言っちゃってんの!?
「どれだけ無茶言ってんのか自覚あります!?」
「あるに決まってんだろ。そのうえで言ってんだ。お前の実力なら問題ねぇ」
「えぇー……」
「はぁ……あのなぁ、自覚ないようだからこの際言うけどな、ウチのジムの選手は才能のある奴ばかりだ。早くて今年中、遅くても来年辺りにはチャンピオンだって狙えるレベルになってるだろう。お前は臨時トレーナーとはいえ、日々そんな奴らの特訓相手をしてるんだぞ?お前の実力は既に世界チャンピオンレベルなんだよ」
「う、うっす……」
ちなみに言っとくと、世界チャンピオンレベルじゃなくて、元の世界では既に世界チャンピオンなんだけどね?
「あと、お前が活躍すればウチのジムの宣伝にもなるからな。お前には期待してるんだぜ。なんせ、あのエースオブエースとも引き分けた期待のホープなんだからな!」
「シヌキデガンバラセテイタダキマス」
少なくとも給料に見合うだけの活躍はしないといけないなぁ。
「……ってなことになったんですよ」
『格闘大会か〜。ノーヴェも大胆な事考えるね〜』
『でもごめんね、ヒエン。余計な気を遣わせちゃったみたいで……』
『そこら辺は私らにも責任の一端はあるなぁ』
俺は件の三人に格闘大会に出る旨をモニター通話で報告していた。
「いえ、別に気にしないで下さい。この話は俺にメリットもありますし」
俺が有名になれば行方不明中のリニス達の目にも留まるかもしれないからな。
こっちの世界に来て、そろそろ約一ヶ月が経とうとしているが、相変わらずリニス達の情報は入ってこない。
独自に色々調べてはみたのだが、何も分からずじまいだった。
もしかすると、まだこちらの世界には来ていないのかもしれない。
とにかく、今は自分のやれる事をやるしかない。
「それよりはやてさん、言われた通り聖王教会についたんですけど……俺に会いたがっている人って一体誰なんです?」
『あ、そういえばまだ言ってなかったなぁ。騎士カリム言うて、聖王教会の最高責任者や』
「……今すぐ帰っていいですか?」
『ついた途端に帰るのは時間の無駄やから、覚悟決めてさっさと会いに行きぃ』
予想はしてたけど、やっぱり騎士カリムかいぃ!?
あれか!?
預言か!?
預言に俺の事が書かれているのか!?
「……なんで聖王教会の最高責任者が俺に会いたがってるんですかね?」
『そこは私も聞いてへんのよ。カリムが頑なに教えてくれへんからね』
『そうなんだ。ってことはヒエン君自身に関係がある事なのかな?』
『そうなんじゃない?カリムさんなら、何かあれば私達にも教えてくれるだろうし』
なんだろう?
無性に嫌な予感しかしないのだが……。
『あ、ごめんね。そろそろ休憩時間が終わるや』
『私もそろそろ取り調べの続きに戻らないと……』
『私も会議の続きや。じゃあヒエン、カリムとの話が終わったらまた連絡してな〜』
『じゃあね、ヒエン君』
『またね、ヒエン』
「あ、はい。また」
そして俺は三人との連絡を終えると、聖王教会に入っていく。
「綺麗な所だな……」
聖王教会には初めて来たが、敷地が広く、中も綺麗に整えられている。
何より印象的なのが、花壇に咲いている色取り取りの花である。
大切に育てられているというのが良く分かる。
辺りを見回せば、シスター達が歩き回っている。
そして俺もとりあえず建物の中に入ろうとしたのだが……
「あっれ〜?ヴィクターどこいったんかなぁ?」
黒い髪のツインテールをした美少女がキョロキョロと周りを見回していた。
「あの子は……もしかして……」
気になった俺はつい彼女に話しかけていた。
「どうかしたのか?」
「え?」
「何か困り事か?」
「あ、ああ……ええと、ウチの友達とはぐれてしもーて」
「通信端末やデバイスで、その友達と連絡は取れないのか?」
「その、通信端末は忘れちゃって……」
「なるほど……。ヴィヴィオ達に聞いてた通りのうっかり具合だな。ジークリンデ・エレミアさん」
「え?ヴィヴィちゃん達を知っとるの??」
「知ってるも何も、俺はあの子達の臨時トレーナーだからな」
「へぇ、そうなんや。なら、知ってるやろうけど、ジークリンデ・エレミアや。親しい人はウチのことをジークって呼ぶんよ」
「俺はヒエン、ヒエン・オオゾラだ。一ヶ月前からナカジマジムで臨時トレーナーとして雇ってもらってる。よろしくな、ジーク」
「ヒエン……じゃあヒエヤンやね」
「ヒエヤン」
なんだそのカミヤンみたいな感じは……。
俺の右手に
「それにしてもヒエヤン……ふーん」
するとジークが意味ありげに、ジロジロと見てくる。
え?
なに??
「ヒエヤン……あんた相当強いやろ?」
「いやまあ、どうだろうな……」
直後、超直感が軽く警鐘を放ってきた。
最近、このパターン多くない?
「謙遜せんでもええよ。立ち振る舞いだけでも、実力はある程度は分かるし。ウチの経験からして、ヒエヤンはかなり強い部類や。それも世界代表戦に出てきてもおかしくないくらいのレベルやな」
「…………」
本当、なんでこの手の拳系女子って戦いの嗅覚が凄まじいんですかねぇ!?
すると、ジークから予想外の提案がされる。
「ヒエヤン、時間あるならでええんやけど、そこでちょっと組手でもせえへん?」
世界チャンピオンからの組手のお誘いであった。
本編も出来上がり次第、投稿しますのでしばしお待ちを。
では、またく(`・ω・´)