その日、海鳴商店街を散策していた俺は突如強烈な頭痛に襲われた。
ズキン!
いてえ!
いや痛いなんてもんじゃない!
なんだか無理矢理、知識を埋め込まれているみたいな…
ズキン!
ぐ!?
あまりの痛さに俺は思わず膝をつく。
そしてある映像が脳裏をよぎる。
『お主をそのもうひとつの地球へと新たな命として転生させる。』
『この子に名前をあげてください。この子は貴方の心から作り出した貴方専用のデバイス。いわば貴方と一心同体といっても過言ではありません』
『熱き魂……死ぬ気の炎の魂……死炎魂という意味を込めて……ヒート・スピリッツ、お前の名前はヒート・スピリッツ!愛称ヒッツだ!』『ガァウ!』
『それは
そしてあの白き場所での神様達とのやりとりを思い出した。
「ハァハァハァ…………お、思い出した」
そ、そっか。
転生したんだな俺。
今の俺からしたら前世?の知識を思い出したことになる。
だがこれといっておかしなところはなにもない。体も不調な所は特にない。
そして更なる知識が俺の脳裏をよぎる。
「魔法少女リリカルなのは……ね」
前世の俺がハマっていたアニメ、魔法少女リリカルなのは。確かこの世界、リリカルなのはの舞台となるのが海鳴市内の藤見町だ。そしてなんの偶然か俺が現在いるのも海鳴市の藤見町である。
これがエルの言っていた転生者は神の加護によって物語に巻き込まれやすくなるってやつなんだろうか?
まあ、今は前世の知識を思い出したばかりだからな。とりあえずどこかで休憩しよう。
◆◆◆
俺は商店街の近くにあった人気のない公園のベンチで休息をとっていた。
そして今、人がいないことを確認してからあることを行おうとしていた。
それすなわち…
イッツ!魔法!!
である。
いやせっかく思い出したんだから魔法使ってみたいじゃん。それに俺の相棒ヒッツにも早く会いたいし。
だが意気揚々と魔法を使おうと思ったのだが…
肝心の魔法の使い方がわかんねえorz
そして俺が絶望にうちひしがれていると脳裏にある言葉が浮かぶ。
あれ?
これもしかして超直感?
うん、わからん。
とりあえずその言葉を唱える。
「我、調和を受け継ぐ者なり」
「契約のもと、その力を解放せよ」
「炎は大空に、氷は夜空に、そして熱き魂はこの胸に。」
「この手に魔法を。ヒート・スピリッツ、セットアップ!」
俺はヒッツの起動呪文を唱える。すると俺は黒いスーツのバリアジャケットに、黒い籠手ヒート・グローブを纏っていた。
そして俺の頭の上に何かがポスンと乗っかる感触が。
俺は両手を上げ、それを目の前に持ってくる。それは嬉しそうな声で一声鳴いた。
「ガァウ」
「久しぶりだなヒッツ」
相棒と再会した。
◆◆◆
相棒ヒッツと再会した俺は早速魔法を使うことにした。が、先に気を利かせてくれたのかヒッツが軽い結界を発動してくれた。これで人に見られる心配はなくなった。
とにかく何かしようと思ったのだが、ここでヒッツから何かイメージのようなものがとんでくる。
これは…映像か?
映ってるのは沢田綱吉、ツナだ。ツナは額にオレンジの炎を灯し、敵と戦っている。
これはつまり俺も死ぬ気の炎を使えってことか?
ヒッツから「そうだよ」みたいな思念がぼんやりと流れてくる。
俺とヒッツは魂で繋がっているおかげなのか、ヒッツが話せなくとも思念がとんでくるので、意思の疎通はそれなりにとれる。
まあ、まずは死ぬ気の炎を試してみるか。
確か死ぬ気の炎は、人間の生体エネルギーを圧縮して見えるようにしたものだったはず。
原作でのツナは当初、リボーンに死ぬ気弾を撃ってもらうことで死ぬ気モードとなり、死ぬ気の炎を操っていた。
だが、俺には指導してくれるような人はいない。前世の知識を利用して手探りで何とかするしかないのだ。
あとはなんだったか。未来編でツナの友人であり、ボンゴレファミリーの仲間でもある山本武が言っていたな。確か炎を具現化するには覚悟を炎に変えるイメージだと。
俺にとっての覚悟とはなんだろうか?
俺はしばらく考え、そこで最もシンプルな回答にたどり着く。
そうだ。
簡単な話じゃないか。
死にたくない。
それが俺の根本的な理由じゃないか。
俺は前世で過労死で死んだ。正直、後悔がないといえば嘘になる。もっと趣味を楽しんでいたかったし、友人とももっとバカやって遊びたかった。それに彼女だって作りたかった。
だけどそれ以上に俺が悔しいのは、家族にお別れや今まで育ててくれたお礼の言葉を言えずに旅立ってしまったことだ。
正直、こんな思いはもうたくさんだ。
だからいい機会だ、前世の記憶を取り戻したこの日を境に持ってやろうじゃないか。覚悟ってやつを。
この世界を生き抜く覚悟ってやつを!
そのとき決意した俺の中から何かが沸き上がってくるのを感じる。身体中に力がみなぎってくるようだ。それと同時に頭の中も段々とクリアになっていく。
これが死ぬ気の炎…なのだろうか。
死ぬ気の炎を出せたということは俺は今、死ぬ気モードになってるのか?
いや、死ぬ気モードというよりはどちらかと言えば超(ハイパー)死ぬ気モードな気がする。
だって服脱げてないし…
とりあえず俺は額にオレンジの炎がついていることを確認すると、黒い籠手ヒート・グローブに炎を具現化するイメージを持ってみる。
すると右手のグローブにオレンジ色の炎がついた。
続いて左手にも同じことをすると両手に炎を灯すことに成功した。
それから俺は空中に浮くイメージをする。脳裏には自由自在に空を飛ぶツナを浮かべた。
少し空中に浮くことに成功する……がまた地面に戻ってしまった。
むむむ…なかなか難しいな。
まあ初めてにしてはこんなもんか。
とりあえず死ぬ気の炎に関してはここまでにして、次は魔法を使うことにする。
魔法はデバイスであるヒッツがいるため、必然的にヒッツから教わる形になる。
まあまずは基礎からキッチリ学びましょうか!!
こうして俺は人気のない公園でヒッツとともに魔法の特訓を開始した。
◆◆◆
魔法の特訓もキリのよいところで終わり俺はヒッツを頭の上に乗せ現在、帰宅している。
魔法とは便利なものでヒッツは少し小さな子猫に変身している。とはいっても元々ライオンなのであまり変わらないが。
ここでヒッツについて軽く説明しておこう。
本名ヒート・スピリッツ、愛称はヒッツ。俺のデバイス兼大切な相棒である。
今ヒッツは外に出て俺の頭の上でくつろいでいるが正確には、本体ではなく分身である。本体はどうやら俺の心の中にいるらしい。
これは俺の推測なのだが元々ヒッツは俺の心から作り出されたデバイスだ。そのため俺の心の中にいる方が落ち着くのだろう。本体が出てくることもできるようだが今のままでも特に不自由はないらしい。分身と視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚いわゆる五感を共有できるようなので大丈夫らしい。
「ヒッツ、今日は何が食いたい?」
『ガウ?ガウガウ!』
「俺の好きなものねえ。なら今日はカレーにするか」
『ガァウ!』
まあ今はこの相棒とゆっくりがんばっていきますかね!
こうして俺は相棒と話しながらゆっくりと自宅へと帰っていった。
早く原作キャラと絡ませたいっす( ・∀・)