続き書けたで候。
では、どうぞ∠( ゚д゚)/
ヒエンside
聖王教会での話し合いから二日後、俺はとある格闘大会に出場するために、ある場所を訪れていた。
以前、ノーヴェさんに紹介された格闘大会である。
格闘競技専門のWGCが主催する19歳以下の男子中量級のトーナメントである。
思っていたよりも大きな大会のようで、開かれる場所が物凄く大きなドームであった。
「いや、規模大きすぎでしょ……」
俺はドームを見上げながら小さく呟く。
どうしよう?
急に物凄く帰りたくなってきたんですけど……。
「家に帰りたい……って顔をしているよ?」
その時、横にいる黒髪長髪美人が俺の顔を覗き込むように見上げてきた。
「まさにその通りです。帰っていいですか?」
「駄目に決まっているだろう。一体何を言っているのかな?」
この美人の名はミカヤ・シェベルさん。
俺の一つ上の19歳で、天瞳流師範の腕前を持つ居合剣士である。
学生であり師範をしながら、ナカジマジムの顧問取締役もしているスーパーな御人なのだ。
ちなみにこちらの世界にはカナやアオ、ナヲちゃんがいなかった。
やはり並行世界だからか、存在する人物もいれば存在しない人物もいるらしい。
「お〜い!そんな所で突っ立ってないでさっさといくぞ〜!!」
「ほら、ナカジマちゃんもああ言ってるし、さっさと行くよ」
「へーい」
俺はミカヤさんに背中を押されながら、ドームの中へと入っていく。
中へ入ると、大会の準備で忙しいのか、スタッフと思わしき人達が忙しなく動いていた。
俺達は受付で手続きを済ませると、控室へと向かう。
今回はトーナメントだからか、選手一人一人に個室が用意されている。
俺は控室に入ると、鞄を置き、息をフッとはいた。
「ふぃ〜」
「緊張しているかい?」
「そりゃ当然。なんなら緊張し過ぎて、このまま貝になりたいくらいです、はい」
「貝になるな。せめて人間のままにしとけ」
俺の言葉にミカヤさんと、ノーヴェさんが笑う。
二人は冗談と思っているようだが、俺としては割と本気である。
「開会式までまだしばらくあるから、今の内に身体でもほぐしてリフレッシュしとけ」
「へい」
俺は部屋の隅に移動して柔軟を始める。
浅く呼吸を繰り返しながら、時間をかけて行っていく。
こういう大会に出るのは、インターミドル以外で初めてである。
インターミドルの時はルールは比較的緩かったが、こういう大会では明確な規則が存在する。
その内の一つが魔力制限だ。
試合の公平性を保つために、魔力の出力を制限して戦わなければならないのだ。
そうしなければ、魔力量の多い者が有利となるからだ。
そしてもう一つが、使える魔法は近接戦闘技限定である事。
こういった対人戦の大会では、近接戦闘技以外の使用は禁止されている。
武器や射砲撃の使用は勿論、捕縛魔法や防御魔法、補助魔法の類も禁止である。
だが、身体強化や魔力付与の類の技は使用しても構わない。
ただ今回の大会は打撃技しか使用してはいけない。
要は魔法版K一1である。
ちなみに今日はヴィヴィオ達はいない。
平日なので普通に学校があるのだ。
だから、今日のセコンドはノーヴェさんとミカヤさんが担当してくれる。
「そろそろ時間だ。行って来い」
「うっす」
俺は柔軟をやめて立ち上がる。
ふと今着ている青いジャージに目を移す。
胸元にはチームナカジマのロゴが入っていた。
それを見ると気合が入る。
「よし、行くか」
そうして俺は開会式へと向かった。
◆◆◆
開会式が
トーナメントの参加者は24人で、1対1の形式で行われる。
つまり五回勝てば優勝である。
俺の試合は第二試合であり、相手は有名選手らしい。
そして第一試合が終了すると、いよいよ俺の出番となる。
「セットアップ、真・スピリットフォーム」
俺は死ぬ気モードになると同時に、黒スーツのジャケットに、黒いスラックス、黒ネクタイに白いカッターシャツ、黒いベスト、黒い篭手といったスーツ型バリアジャケットに換装する。
「……凄い覇気だ。あのジークと互角に戦ったっていうのも納得だね」
「まあ、あいつ自身の強さが既に世界チャンピオンレベルだからなぁ」
二人が何やら感心したような様子でこちらを見てくるが、今はスルーしておく。
俺は二人を連れて入場する。
前の方には、プロレスやボクシングで使用されるような少し小さめのリングがあった。
『本日初出場!ナカジマジム所属の唯一の男子選手!オリジナル戦技、
周りを見渡せば、席はお客さんで埋まっていた。
やはりミッドチルダではこういった催し、大きな格闘大会は人気を誇るのだろう。
ちなみに死ぬ気モードになっても周りからツッコまれないのは、事前に能力時の仕様ということを伝えているからだ。
『対する相手は、DSAAワールドランキング五位!「
俺の相手はランキング入りしている男性、ヒューリ・コーエン選手。
正確無比なそのパンチは、まるで精密機器のように狙った所へと放たれる。
必要最低限の威力で相手を刈り取り、その意識を奪う。
ヴィヴィオと同じカウンターヒッターで、この挌闘技の世界を勝ち上がってきた技巧派だ。
身長は俺より少し高い180cm程で、スリムな体型でありながら、無駄な脂肪が少なく、適度かつ引き締まった筋肉がついている。
いわゆる細マッチョだ。
『両者、リング中央へ』
「……よろしく」
「よろしくお願いします」
互いに挨拶を済ませると、リングのコーナーポストへと戻る。
「反則技や減点行為には気を付けて!」
審判の注意事項をよく聞く。
事前に聞いていた物と変わりない。
『ベテラン対無名の新人!ヒエン選手の善戦に期待がかかります!!』
「お前なら心配いらねぇと思うが油断するなよ!」
「はい」
ノーヴェさんの激励を受けて前を見据える。
『さあ、いよいよゴングです!』
準備を済ませた俺達は、互いに構えた。
『FIGHT!!』
そして、試合開始のゴングがなった。
「ハッ!」
先に仕掛けてきたのはコーエン選手だった。
流れるようなフットワークでこちらへ近付いてきた。
まずは様子見なのか、左手でジャブを繰り出してくる。
鋭いが、その手のパンチは既にヴィヴィオとの試合で経験済みだ。
俺は化勁でそれらを受け流していく。
『ヒエン選手!コーエン選手の攻撃を上手く受け流していく!!』
「シッ!」
様子見は不要と判断したのか、コーエン選手が更に仕掛けてきた。
サイドステップからのターンで、俺の横を取りボディブローを繰り出してくる。
俺は後退しながら、コーエン選手を見失わないようにかわしていく。
身のこなしからして完全にボクサーだな。
制空圏を築きながら、カウンター狙いで攻めていくが間合いの取り方が上手い。
こちらの攻撃に合わせて、バックステップで下がったり、俺の拳をいなすのだ。
さすが技巧派と呼ばれるだけの事はあるな。
しかし、それならそれでやりようはある。
俺はコーエン選手のパンチを化勁でいなしながら、少しずつ下がっていく。
そして、遂にリングのコーナーまで追い詰められてしまった。
『ヒエン選手!コーエン選手の攻撃を上手くいなしていたものの、遂にコーナーまで追い詰められてしまった!このまま万事休すかあぁぁぁぁ!?』
コーエン選手も俺を追い詰めたと思ったのだろう。
僅かに彼の攻撃が大振りになった。
(ここだ……!!)
俺は右拳に炎を灯すと、一歩踏み出す。
「
彼のパンチを紙一重でかわし、そのまま拳を振りかぶると、コーエン選手の顔面を打ち抜く。
「があっ!?」
彼は倒れると、ピクリともその場を動かなくなった。
『き、決まったああああ!クロスカウンターだああぁぁ!ヒエン選手、コーエン選手にクロスカウンターを決めたあああぁぁぁ!!!』
ここで試合終了のゴングが鳴る。
こうして俺の初試合は勝利で飾る事が出来たのであった。
◆◆◆
そこからトントン拍子に勝ち上がると、あっという間に決勝戦へと駒を進めた。
「
そうして始まった決勝戦であったが、特に苦戦する事もなく、勝利を収めた。
いやだって、全部一撃で決まるんだもの。
ぶっちゃけ、ヴィヴィオ達とスパーリングしてる方が練習になるまである。
そんな俺は現在優勝インタビューを受けていた。
「ヒエン選手、全ての試合をKO勝ちし、新人選手とは思えない程の圧倒的な強さを見せつけました。その強さの秘密は一体何なんでしょう?」
「強さの秘密……ですか」
俺の強さの秘密……そりゃ勿論、死ぬ気よ。
「どれだけ本気でやれるか……でしょうか?」
インタビュアーがマイクをさらに近付けてくる。
「俺には魔法や武術の才能がありませんでした。人の何倍、何十倍も練習してやっと……人並に出来るようになる。そんな絵に描いたような……不器用な男でした。だからそんな奴が強くなるには一つしかなかった。基礎を……徹底的に磨く事です」
思い出す。
修業時代のあの日々を……。
「俺には魔法と武術の師匠がいるんですが、その師匠に二年間魔法と武術の基礎だけを徹底的に叩き込まれたんです。リンカーコアに出力リミッターをかけるのは当たり前。魔力運用、飛翔、索敵、捕縛、回復、魔力付与、防御、射撃、砲撃、幻術、召喚、操作、補助魔法などの基礎魔法は一通り覚えさせられて、最大魔力値を増やすために毎日魔力を限界まで使わされましたし……体力を鍛えるための基礎トレはもちろん、近接戦闘の訓練では攻撃技、防御技の技術、あとは剣術や棒術、拳銃などの武器の使い方もキッチリカッチリ叩き込まれました……あとはそうですね……デバイスマイスターになるための講習、座学も最低限の知識を一通り叩き込まれましたし……その他にも
「もう大丈夫!もう大丈夫ですから!!そんな死んだような目で話さなくても!!!もう大丈夫ですから!!!!」
途中インタビュアーが必死になりながら止めてきた。
「すみません。修業時代の事を思い出したら、思わず身体が震えてきてしまって……」
「苦労なさってるんですね……」
これもう完全にトラウマもんだよね……。
でもだからって、そんな涙目になってこっち見るのやめない?
なんだか惨めになってくるんだけど??
そんなこんなで、あたふたしながらも幾つか質問を受けてから、俺の優勝インタビューは終了したのであった。
ちなみにアインハルトや、ヴィヴィオ達のスパーリング相手をよくしている話になったら、なぜか一番盛り上がった。
少ししたら異世界合宿しつつ、フェイトそんと模擬戦しやす。
では、また( ゚д゚ )クワッ!!