外伝、続き書けたで候。
では、どうぞ∠( ゚д゚)/
ヒエンside
格闘競技専門のWGCが主催する格闘大会で優勝してから二週間後、俺は二度目の格闘大会に出場していた。
今度はスポーツメーカーが主催のUSWが開く19歳以下の男子無差別級格闘大会である。
試合のルール自体は前と同じでトーナメント戦であり、勝ち上がった者が優勝する。
ただ今回は総合格闘技戦のため、投げ技や寝技、関節技なども認められている。
そして今回の大会では、ランキング入りしている者達が総じて出揃っている。
以前の大会で優勝してから、俺の名は結構広まっているようで随分と警戒されているようだ。
「参加人数が前の大会の倍以上いる……しかもこれ、見事にランキング入りしてる人達としか当たらねぇし」
俺は展開しているトーナメント表をみながら呟く。
どうやら、俺のくじ運は悪い方へと作用しているらしい。
とりあえず、八つ当たり気味に出店で買った串焼きを貪る。
「うわぁ……本当ですね」
「厳しい戦いになりそうですね」
すると、左右からヴィヴィオとアインハルトが俺の見ているトーナメント表を覗き込んでいた。
後ろを見るとリオ、コロナ、ミウラ、ユミナちゃんまでいる。
チームナカジマ大集合である。
「……わざわざ全員で応援に来る必要あった?」
「「「「「「ありますっ!!」」」」」」
「うるさっ!?」
俺の質問に全員一言一句揃って答えたよ……。
「だって前は学校があったから来れませんでしたし!」
「休憩の合間にテレビにかじりついてたんですから!」
コロナとリオが鼻息荒く言ってくる。
そうなのだ。
前の大会はテレビ放送されていたらしく、ヴィヴィオ達は授業の合間の休憩時間や、お昼ごはんの時間などに俺の試合を見ていたらしい。
特に一回戦の試合はハラハラしながら見ていたそうな。
「ヒエンさん、見て下さいこれ」
するとユミナちゃんが一冊の雑誌を見せてくれた。
「何々……注目の優勝者候補特集?」
「ここにヒエンさん、載ってますよ」
ユミナちゃんが俺が載っている記事を指差しで教えてくれた。
「今大会一番のダークホース、ヒエン・オオゾラ。見事な受け流しとカウンター、そして神懸かり的な見切りが持ち味の選手。チームナカジマの唯一の男子選手にして、臨時トレーナーとしてもチームを支えている。年下の選手達からの信頼も厚く、指導者としての才能も感じさせる。この大会で彼が台風の目になる可能性は大いにあり得る……こんな記事出てたのか」
道理で注目されている訳だ。
「なるほどなぁ。でもまあ、打撃技以外も使えばなんとかなるか?」
今回は柔術、中国拳法、ムエタイ技も積極的に使って攻めていこうか。
いつもは空手技中心で戦ってたから、相手の意表を突くには丁度良いかもしれない。
それに今日の大会は、ヴィヴィオ達の次の段階へ行かせるためのステップアップにもなるか。
「お前達、今日は一つ課題を出す」
俺の言葉にチームナカジマの全員がこちらを見る。
「今日この大会で一つだけでいい。何か技を盗め。攻撃技、防御技、ステップでもなんでもいい。今の自分に必要だと思う技術を、俺やこの大会の参加者から盗み出せ」
「技を盗む……ですか?」
ユミナちゃんが首を傾げる。
「ああ。技を盗むっていうのは、簡単に言えば相手の動作や工夫を能動的に観察、模倣、分析して、自らのものとして習得するプロセスの事だ。ただ教わるのとは異なって、自発的に試行錯誤する事になるから、戦いの応用力も自然と身につけることが出来る」
「あ、前に言ってた見る力……ですね!」
ヴィヴィオが笑顔で答える。
「そうだ。相手の動きを全身全霊で見て、疑問を持ちながら改善工夫を繰り返す。そうする事で観察力と集中力を同時に鍛える」
「なるほど。なぜそのような動きになるのかという目的意識を作り出し、自発的に取り組ませることで戦いへの理解を深める……という事ですね」
アインハルトが呟く。
「ああ。見る力……攻撃を見切る事は実戦で多様な敵と渡り合う上で最も必要な能力の一つだ。これから先、この世界で生きていくなら必須となる。気合入れていけよ」
俺の言葉にヴィヴィオ達が頷く。
「「「「「はいっ!!」」」」」
「それじゃ、私は記録係しますね」
「頼む」
ユミナちゃんは試合の記録を残すようだ。
彼女がサポートしてくれるなら、この子達も技を盗む事に専念出来るだろう。
「……そろそろ開会式が始まるな。それじゃ、俺は下に降りてるよ」
俺は開会式に参加するために、リングへと移動を開始した。
◆◆◆
特になんのハプニングが起こる事もなく、開会式はスムーズに終了したので客席へ戻ると見知ったというより、現在進行系でお世話になっている面々がいた。
「あ、ヒエン君やっほ〜」
「開会式お疲れ様〜」
「期待してるで〜」
伝説の三提督の再来と呼ばれるエースの御三方……高町なのは、フェイト・T・ハラオウン、八神はやての三名がそこにいた。
え?
いや、なんでここにいんの??
「あの、どうして御三方がここにいらっしゃるんでせう?」
びっくりし過ぎて、上条さんみたいな口調になってしまったのは仕方ないと思う。
「予めヴィヴィオからヒエン君が今日この大会に出場するって聞いてたんだよ〜」
「それで偶々、三人共休みの日が被ったから……」
「応援に来たっちゅ〜訳や!」
三人が順番に笑顔で答える。
相変わらず仲いいな。
こういう些細な所でも遺憾無くコンビネーションを発揮しているという。
しかし、それにしても三人共有名人だからか、周囲からの人の視線を感じる感じる。
それに加えてヴィヴィオ達も有名だし、もう一つオマケに全員美女美少女という。
おかげで俺に集中する視線の圧がヤバイ事になっている(白目。
俺はつい元凶たるヴィヴィオに視線を向ける。
視線を向けられたヴィヴィオはというと、ちょっと気まずいのか視線をソッと逸らした。
「ヴィヴィオ、お前だけ明日の特訓メニュー更に五倍追加な」
「えぇっ!?」
ヴィヴィオは驚いたのか、声を上げる。
「ただでさえキツイメニューなのに更にその五倍!?ヒエンさんに人の心はないんですか!?」
「え?なに??もっと増やしてほしいって???仕方ないな〜もひとつオマケに十倍だ」
「鬼畜!外道!極悪人!ヒエンさん!!」
「まあ、冗談はさておき人の名前を悪口みたいに言うんじゃありません」
俺がヴィヴィオで遊んでいると、そろそろ一回戦の開始時間となる。
「ヒエン、時間だぞ」
「はい」
すると、様子を見ていたノーヴェさんが声をかけてきた。
「セコンドには私とナカジマちゃん……と、思っていたけど、もうあと何人かいけるみたいだよ?」
隣にいるミカヤさんがこちらに視線を向けると、なぜか苦笑いしていた。
俺も彼女の視線の先を見ると、ヴィヴィオ達の目がキラキラと輝いていたのだ。
セコンドにいきたいと彼女達の目が物凄く語っていた。
「あー……人数の都合上、二人までだ。誰が行くかさっさと決めろ」
ノーヴェさんがそう言うと、ヴィヴィオ達は物凄い勢いでジャンケンを始めた、
結果、勝ったのはヴィヴィオとアインハルトであった。
「それじゃ、行きますか」
俺はノーヴェさん、ミカヤさん、ヴィヴィオ、アインハルトの四名を連れてリングへと降りる階段へ向かう。
「あ、お前ら。さすがに私服はあれだから、服装はチームジャージに変えとけ」
「あ、そうだね」
「分かりました」
ヴィヴィオとアインハルトは、それぞれクリスとティオを掲げて変身すると、チームナカジマのジャージ姿に変わっていた。
ついでに俺もセットアップしておく。
「セットアップ」
死ぬ気モードになると同時に、スーツ型バリアジャケットへ換装する。
グローブの感触を軽く確かめつつ、黒ネクタイをキュッと締める。
うん。
特に問題はない。
俺達はそのままリングへと向かっていく。
『皆様お待たせ致しました!一回戦第一試合選手入場です!さっそく注目選手の登場だ!前回のWGC男子中量級トーナメント優勝者!ナカジマジム所属、「
俺も注目されているからか、大勢の観客の歓声を浴びながら入場していく。
ただスポットライトがクソほど眩しい。
あとこっちの世界では二つ名がそのまま
『対する相手は、DSAAワールドランキング二位!魔力変換資質「電気」を使いこなし、素早い技で相手を圧倒!「
対戦相手であるクル・ドラ選手が入場してくる。
身長は俺よりも大きめで、格好は黒いハーフパンツに黒いラッシュガード、黒いオープンフィンガーグローブ、黒いシューズのストライクアーツの選手だ。
電気の特性を生かして、素早い連撃と破壊力のある攻撃で相手を追い込む。
そして彼の二つ名ともなっているマッハパンチがクル選手の決め技だ。
戦闘スタイルはヴィヴィオとミウラを足して二で割ったようなスタイルだ。
『両者、リング中央へ』
「よろしくお願いします」
「……よろしく」
俺達は互いに挨拶を済ませると、リングのコーナーポストへと戻る。
「相手の持ち味は素早さだ。ペースを乱されないように注意しろ」
「後、クル選手は間合いの取り方も上手いよ。用心して」
「はい」
ノーヴェさんとミカヤさんのアドバイスを受けて前を見据える。
『さあ、いよいよゴングです!』
準備を済ませた俺達は、互いに構えた。
『FIGHT!!』
そして、試合開始のゴングがなった。
『さっそく始まった第一試合!両者まずは様子見しているのか、動きません!!』
俺はいつものように防御主体の前羽の構えで迎え撃つが、相手のクル選手の構えは空手で言うヒラキ構えであった。
ヒラキ構えは、主に空手における基本的な構え方で、足を肩幅程度に開き、重心を中心に置いて正面からの攻撃に対応しやすい姿勢だ。
上半身を開き、膝を軽く曲げて前後左右の移動を重視した構えであり、突きや蹴りの攻撃や、迅速な防御への移行を目的として用いられる。
攻守のバランスが取れた構えだ。
『ここでクル選手が動き出した!』
すると、睨み合いが焦れったくなったのかクル選手が攻めてくる。
「オラッ!」
「ぬっ!?」
先手として強烈なパンチを繰り出してきた。
俺は化勁で受け流し、カウンターを狙おうとするが……
「オラァ!」
「ぐおっ!?」
残像をも見える素早い手数の多い連撃で攻めてきた。
オマケに電気をパチパチと身体に纏わせているのか、思った以上に相手のスピードが早く感じる。
「オラララララ!!!!」
「ちぃ!?」
『クル選手の凄まじい猛攻!しかし、ヒエン選手も負けじと受け流している!!』
某スタンドのオラオララッシュを彷彿させる高速パンチを化勁の制空圏を築く事で、なんとか対応する。
まさか序盤からこんな攻撃的スタイルで来るとは思わなかったからだ。
ノーヴェさんの忠告虚しく、さっそくペースを乱されてしまう。
ご丁寧にパワーもあるから、食らったらダメージも大きそうだ。
俺は超直感の感覚を最大まで引き上げ、クル選手のラッシュを凌いでいく。
そして僅かな隙を狙って、こちらも反撃する。
「ティー・ソーク・トロン!」
クル選手の胸部を狙って肘打ちを繰り出すが、見事に手刀受けで受け流される。
俺はそのまま彼の腕を取り、一本背負いをお見舞いする。
「せやあ!」
「……無駄だ!」
しかし、クル選手は上手く足から着地した反動を利用して膝蹴りを繰り出してきた。
咄嗟に左腕でガードしたものの、威力が思いのほか強く、俺は2・3m程吹き飛ばされてしまった。
そして、そのタイミングで第一ラウンド終了のゴングがなった。
◆◆◆
第一ラウンド終了のゴングが鳴り、俺は一旦自陣のコーナーポストへと戻る。
『凄い試合だあぁ!見事な技と技の応酬!勝者はどちらになるのか!?次のラウンドに注目です!!』
実況がテンション高く伝える。
思えば第一ラウンドで仕留められなかったのは今回が初めてだ。
「とりあえず飲め」
俺はイスに座らされ、ミネラルウォーターを渡される。
俺はそれを少し口に含む。
それから二度三度と飲み込み、喉を潤す。
「彼はやり辛いだろう?」
「はい」
ミカヤさんの言葉に頷く。
「素早いのもそうなんですが、何より上手い。常に自分の間合いを意識して戦っているからか、基本的に隙がなくて……」
「そりゃそうだ。クル・ドラ選手と言えば、ストライクアーツの大会で何度も優勝してる強者だからな。そこはこいつの方が詳しいと思うぞ」
ノーヴェさんがヴィヴィオに視線を向ける。
ヴィヴィオはと言うと、何か言いたげな表情で俺を見ていた。
「……どうした?」
「ヒエンさんはもっと攻めていいと思います」
「……どうしてそう思う?」
ヴィヴィオの言葉に俺は耳を傾ける。
「少し、いえ大分慎重過ぎる気がします」
「そうですね。そこは私も気になっていました」
そこにアインハルトも乗っかる。
「相手の様子を見ようという姿勢が丸わかりです」
「どうにもお前は初めてやる奴とは、相手を観察する癖があるっぽいな」
ノーヴェさんが俺の癖を指摘する。
「まあ、それは否定出来ませんが……」
以前、リニスにも同じ事を指摘された事がある。
観察に徹するが故に、突発的な事や予想外の事が起こるとその対応が遅くなると。
「もう少し気楽に構えたらどうだい?君には超直感もあるし、何か起こってもすぐに対応出来るだろう?それにあのジークと互角にやり合える腕前なんだ。それくらいで丁度良いと思うよ」
「そう……ですね」
俺は必要以上に警戒し過ぎて身体に力が入っていたのだろう。
それ故に、後手に回ってしまったのだ。
「スゥー……フゥー……」
俺は深呼吸して気分を入れ換える。
さっきよりは幾文かマシになった。
そしてインターバルが終わると、俺はリング中央へと向かう。
「よし、良い顔になった。じゃあこのラウンドで決めてこい!」
「了解です」
ノーヴェさんの激励を受けて、第二ラウンドに挑む。
『第二ラウンド開始です!』
今度はこちらから攻めていく。
「フッ!」
両手に炎を灯し、先制のパンチを繰り出す。
俺が早速攻めてくるとは思っていなかったのか、多少は驚いた表情を見せるものの、すぐに切り替えてこちらの対処をする。
俺のパンチを受け流すと、鋭い前蹴りを繰り出してきた。
さすがランキング入りしている選手だからか、返し技も上手いが……
(今だ!)
俺はタイミングを見計らって八卦掌の
「ぐあああっ!?」
クル選手が悲鳴を上げる。
自慢ではないが、俺の身体はリニスによる二年間の地獄の修業によって半端ない程の
身体の強固さは、そんじょそこらの格闘選手には負けない。
「ティー・カウ・コーン!」
俺はそのままムエタイの回し膝蹴り、クル選手の首を両手で押さえ込み、ティー・カウ・コーンを食らわせた。
「がっ!?」
頭への攻撃でフラフラするのか、二歩三歩と後ろに下がる。
「これで決める!
俺は決め技に太極拳の一手、双風貫耳を繰り出す。
この技は相手の頭を挟むように頭側面に拳を打ち、鼓膜を空気圧で破ると同時に、脳を固定して揺さぶる太極拳の妙技である。
クル選手は白目を剥くと仰向けに倒れてしまった。
『試合終了ォオ!ヒエン選手、クル選手にKO勝利だああぁぁ!第一ラウンドとは打って変わって、攻めに攻めた第二ラウンド!その猛攻によって勝利を掴んだああぁぁぁ!!』
特にあれこれ考えず感覚に任せて戦ってみたが、意外と上手くいくものだな。
それから調子が上がった俺は、試合を次々と勝ち進めていく。
二回戦……
「
「ぐあっ!?」
『ヒエン選手の勝利です!』
三回戦……
「
「がはあっ!?」
『ヒエン選手の勝利です!』
四回戦……
「
「ひでぶっ!?」
『ヒエン選手の勝利です!』
五回戦……
「
「ぴえんっ!?」
『ヒエン選手の勝利です!』
そんなこんなで六回戦、決勝まで勝ち上がってきた。
そして肝心の対戦相手は、ワールドランキング一位の春光拳使いであった。
さすがにランキング一位という事もあって、第一ラウンドと第二ラウンドは攻め切れずに終わってしまう。
「ほれ、水だ」
「ありがとうございます」
「……そろそろいけそうか?」
「そうですね。なんとなくですが、もういけると思います」
春光拳は変幻自在な技が多い事で有名だ。
同じ技でも、使い手によって多種多様な技へと変化するからだ。
だが、以前インターミドルで戦ったボンちゃん程の使い手は居らず、正直この決勝で戦ってる相手も脅威という程ではない。
つまり、俺の敵ではない。
その日、俺は無事優勝を勝ち取った。
ヒエンside end
◆◆◆
第三者side
閉会式が終わった後、なのは達は帰路についていた。
車の運転はフェイト、助手席にはなのはが座っている。
後ろの席では少年とヴィヴィオが肩合わせで眠っており、爆睡していた。
「二人ともよく眠ってるねぇ」
「まあ、ヒエンは頑張ってたし、ヴィヴィオも必死に応援してたからね」
なのはが後ろで眠る二人を面白そうに見る。
フェイトも苦笑いしながら、ルームミラーで二人を見る。
「しかし、ヒエン君は凄いね。特に苦戦する事もなくあっさり優勝しちゃったし」
「うん。正直、同世代の子でヒエンに勝てる子はいないんじゃないかな?
「やっぱり……
「ううん……
「……どういう事?」
「ヒエンという人間がいたっていう記録は確かにあったけど……現地の人達は見たこともないって」
「それってやっぱり……」
「うん……
「ヒエン君は……一体何者なのかな?」
「少なくとも……私達の敵ではないと思うよ。だって、ヴィヴィオがあんなになついてるもん」
「……そうだね」
しかし、フェイトはある違和感を感じていた。
(でもヒエンの戦ってる姿を見たら、どうしてあの人の姿と重なって見えるんだろう?)
フェイトの脳裏には、ある山猫の使い魔の姿がよぎる。
(リニス……)
今はもういない彼女の魔法の師匠であった。
次回は多分、異世界合宿編。
では、また( ゚д゚ )クワッ!!