大空の炎の力を操る転生者   作:Gussan0

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どうも(゜▽゜*)

最終決戦クライマックス編。

では、どうぞ( *・ω・)ノ


第百八十八話 心の花を守る伝説の戦士LX

ヒエンside

 

 

 

「はっはっはっ。とんだお涙頂戴(ちょうだい)だね。とっても面白かったよ」

 

 

柱の最上部でこちらを笑いながら見ているデューンの奴がいた。

 

 

「月影博士……君はいつも僕を楽しませてくれるね」

 

 

奴は楽しそうに笑っている。

 

だが見たところ髪の長さが元に戻っており、身なりも綺麗に整っている。しかも俺が与えたダメージも無くなっている……と見ていいだろう。

 

俺は歯噛みする。

 

 

(くそったれ……完全回復していやがる)

 

 

あれだけ苦労して与えたダメージが全てなかったことになっている。姿を見ないと思ったら……回復に務めていたのだろう。

 

考えてみればここは奴の本拠地だ。

 

惑星城は科学力が地球よりも圧倒的に発達している。回復装置の一つや二つあってもおかしくない。

 

だがこの展開はまずい……まずすぎる。

 

このまま正史通りの展開になれば、月影博士は確実に死んでしまう。

 

するとデューンは柱の上から飛び降り、軽やかに着地した。

 

月影博士はデューンに近づいていく。

 

 

「デューン!」

 

 

「おお、こわいこわい。怒ったってダメさ月影博士。力が欲しいと僕に頼んだのは君だよ?フランスで研究に行き詰まってた君は、自分で僕らの仲間になったんだ」

 

 

そしてデューンは半分に割れた仮面を踏み潰し、両手を広げ、赤いオーラを身体全体から放ちながら……ゆっくりと話す。

 

 

「ありがとう月影博士。君の研究の成果は『こころの大樹』を見つけるのに大変役に立ったよ。だが結局、そこにいる魔導師君に全て邪魔されてしまったけどね?」

 

 

「…………」

 

 

俺は無言で睨み付ける。

 

 

「おいおいだんまりかい?どうやったのか知らないが……君は『こころの大樹』の偽物を用意したんだろう?そのせいで僕達は君の策にまんまと嵌められたわけだけど」

 

 

「…………気付いたのか」

 

 

「そりゃあ、あれだけヒントをもらえれば当然ね?それに地球に放ったデザートデビル達もいつのまにか全滅しているようだし。まさか君達以外にプリキュアがいるとは……本当に予想外だよ」

 

 

「だったら分かるだろ?デザートデビルをいくら放とうが、地球にはプリキュアがいる。ダークプリキュアも倒したし、月影博士の洗脳も解けた。残りの幹部も時間の問題だ。諦めろデューン……お前に、いやお前達『砂漠の使徒』に、もう勝ち目はない」

 

 

俺はデューンにハッタリをかます。

 

勝ち目はない?

 

とんでもない。

 

勝ち目がないのは俺達の方だ。恐らく惑星城の規模から考えてデザートデビルはまだまだいるはず。

 

例えば100万体ほどのデザートデビルを地球に放たれたら……

 

物量で一気に攻められたら……

 

いくらプリキュアオールスターズといえど勝ち目はないだろう。

 

俺達が今こうしてここにいるのは、()()()のデザートデビルが地球に侵攻してきたタイミングに合わせて惑星城へ攻めてきたからだ。

 

加えて兵士達を指揮する幹部達を倒せば、組織内は一時的とはいえ混乱状態に陥る。

 

その混乱に乗じて、組織の長であるデューンを俺が抑え、さらにその間にハートキャッチプリキュアの面々が幹部を倒し、その後に合流し、共闘して倒す狙いだったのだが……

 

俺が苦労して与えたダメージが丸々なかったことになっている。

 

これは少々予想外だ。

 

加えて俺は身体に負荷をかけすぎたのか満足に動けない。回復魔法で多少は動けるようになったとはいえ、デューン相手に戦えるかどうか……。

 

正史通りであれば、ハートキャッチプリキュアの面々にこのまま任せれば勝てるかもしれない。

 

だが()()()()()()

 

もしかしたら負けることもあるかもしれない。

 

ここは並行世界だ。

 

確実なことは言えないのだ。

 

 

「聡明な君のことだ。もう分かっているんだろう?()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()……」

 

 

(やはり気付いてるか……)

 

 

「なんのことだ?」

 

 

「その返事は肯定とほぼ同じだよ?最後の希望『プリキュア』……君達がここにいるのは他のプリキュアの奴らに地球の守護を任せているからだろう?今、惑星城の中は君達が攻めてきたおかげで混乱状態に陥っている。

 

だが、()()()()()()()()()()を倒した後に再びデザートデビルを()()()()()()、地球など簡単に侵攻できる。いかにプリキュアといえど時間の問題さ。その後に『こころの大樹』を探しだし、枯らせてしまえば、そのまま地球はジ・エンドだ」

 

 

「ち……」

 

 

俺は舌打ちしながら構える。

 

 

「その満身創痍な状態で僕と戦うつもりかい?」

 

 

「そういうお前はすっかり元気じゃないか」

 

 

「君との戦いで少し疲れてしまったからね。休んでいたのさ」

 

 

「そうか」

 

 

文句を言ってても仕方がない。

そして戦おうとしたとき、ブロッサムが俺を手で制した。

 

 

「ヒエンさんは休んでいて下さい。そんなボロボロの状態で戦えば死んでしまいます!」

 

 

「いや、しかし……」

 

 

「貴方は下がっていなさい。ここは私達がやるわ」

 

 

ブロッサムとムーンライトが前に出る。

 

 

「最後の希望『プリキュア』……僕が直々に絶望というものを味合わせてあげよう」

 

 

するとデューンは高速でこちらに迫ってきた。

 

 

「おお!」

 

 

そのとき月影博士が俺達を庇うように高速でデューンに肉薄し、殴りかかる。

 

 

 

ドシン!

 

 

 

デューンと月影博士は拳をぶつけ合う。

 

デューンは続けて回し蹴りを放つと、月影博士は後ろに一歩下がりかわす。

 

博士は続けてパンチや蹴りを繰り出すがデューンは笑いながらかわし、カウンターを繰り出していく。

 

 

「あははははは!!」

 

 

「く…………ぐわぁ!?」

 

 

月影博士も人間離れしたスピードやパワーでデューンに迫る。その破壊力や敏捷力はダークプリキュアと大差なかった。

 

いや、むしろそれ以上であった。

 

恐らくサバーク博士として仮面で洗脳された際に、身体も強化されたのだろう。その力がまだ残っているのかもしれない。

 

だがその強化された力ですらデューンの圧倒的なパワーには敵わない。

 

 

「ぐぁああ!?」

 

 

そして吹き飛ばされた月影博士にデューンは赤いエネルギー弾を放つ。

 

 

「ふっ!」

 

 

だが間に入ったムーンライトがシールドを展開することでそれを防いだ。

 

そしてムーンライトも果敢に攻めるがやはり動きを見切られているのか、デューンに攻撃をことごとく受け流される。

 

 

「はぁあああ!」

 

 

「あはは!ほら、プレゼントだ!!」

 

 

蹴りを受け流した後、デューンはムーンライトの背中に高密度の赤いエネルギー弾をぶつける。

 

 

「あぁ!?」

 

 

ムーンライトは吹き飛んでしまう。

 

だがデューンの後方からブロッサムが迫っていく。

 

 

「はぁあああ!」

 

 

「君も僕が憎いのかな?」

 

 

デューンはブロッサムに右手を向け無数の赤いエネルギー弾を放つ。

 

 

「ふっ!はぁああ!」

 

 

ブロッサムは一度かわしたあと、マントでそれらのエネルギー弾を打ち返す。

 

 

 

ドガァアアアアン!!!!!!

 

 

 

エネルギー弾を逆に食らったデューンであったが……

 

 

「あはははは!すごいすごい!!」

 

 

特にダメージを負ってはいなかった。

 

そして実に楽しそうな笑顔を浮かべながら三人を相手にしていく。

 

 

「はぁあああ!」

 

「はぁあああ!」

 

「……はぁあ!」

 

 

対してこちらの三人……ムーンライト、月影博士、ブロッサムも果敢に攻めていく。

 

だが俺は観察して次第に危機感を感じていた。

 

 

(三人とも……焦っている!?)

 

 

思うように攻められないからか、特にムーンライトと月影博士の二人から焦りを感じる。

 

ブロッサムも二人の様子に少し気後れしている節がある。

 

 

「君達は弱すぎる!!」

 

 

そしてデューンは軽く左手を振るう。

 

すると、赤いオーラが横全体に打ち出され、そのオーラに触れた三人の動きが止まる。

 

 

「はぁあああ!」

 

 

そして右手にエネルギーを圧縮させ、それを勢いよく解き放った。

 

 

 

ドガァアアアアン!!!!!!

 

 

 

「「キャアアア!?」」

 

「ぐわぁ!?」

 

 

三人は直撃を食らい吹き飛んでいく。

 

俺は咄嗟に補助魔法ホールディングネットで三人を受け止める。

 

しかし……凄まじい破壊力だ。

 

ブロッサムとムーンライトに至っては一発食らっただけで変身が解除され、光のドレス姿になってしまった。

 

 

(まずい!このままでは!?こうなったら……)

 

 

俺は回復魔法で多少動くようになった身体を引きづり、近くにいたコッペ様の元へ近づいていく。

 

するとコッペ様の側で悔しそうに戦いを見ていた薫子さんが俺の様子に気付き、コッペ様を連れて近付いてきてくれた。

 

 

「どうしたの!?」

 

 

「はぁ……はぁ……コッペ様にお願いがあります。えりかといつきの奴を至急ここに連れてきて下さい。でないと……デューンの奴に勝てません」

 

 

「どういうことか聞かせてくれる?」

 

 

薫子さんが聞いてくる。

 

俺は手短に説明する。

 

 

「デューンの奴は完全回復していて、俺の与えたダメージも全て無くなっています。皆で挑まなければデューンの奴には勝てません。このままでは全滅するのも時間の問題です……はぁ……はぁ……」

 

 

「大丈夫!?」

 

 

「は、はい」

 

 

ちくしょう……回復魔法で多少は動くようになったとはいえ、身体に力が入らない。

 

するとその様子を見た薫子さんがコッペ様に言った。

 

 

「コッペ、回復してあげて」

 

 

コッペ様が俺の頭に手を置く。

 

すると手に光がかざされると、消耗していた体力がある程度戻っていた。

 

 

「どう?」

 

 

「い、今のは……?」

 

 

「コッペの体力を貴方に分けたのよ。完全回復はさすがに無理だったけど……」

 

 

「いえ、十分です」

 

 

そのときデューンの話し声が聞こえた。

 

 

「強い者が弱い者を食らう。何か問題あるかな?」

 

 

見ると右手に再び赤いエネルギー弾を圧縮させていた。

 

 

(野郎!?またあれを撃つつもりか!?)

 

 

今はつぼみ達も変身を解除されている。

 

生身の状態であんな密度の濃いエネルギー弾を食らえば一瞬であの世行きだ。

 

するとそれを見た月影博士が走って赤い圧縮弾に近寄っていく。

 

正史ではあれを食らって月影博士は死んでしまったのだ。

 

このままでは正史と同じ通りになってしまう。

 

急いで俺はコッペ様に言った。

 

 

「じゃあコッペ様お願いします!時間稼ぎは任せてください!!」

 

 

そして俺はソニックムーブを発動させ、圧縮弾へと急いで向かったのだった。

 

 

 

ヒエンside end

 

◆◆◆

 

第三者side

 

 

 

ゆりは赤い圧縮弾に向かう父を見て声をあげる。

 

 

「お父さん!」

 

 

ゆりの父である月影英明(ひであき)は、今にも破裂しそうな圧縮弾を両手で無理矢理押さえつける。

 

そしてゆりの声に、英明は振り返り、笑みを浮かべ……

 

 

「ゆり……お母さんを……頼む」

 

 

静かにそう告げた。

 

 

「はぁあああ!」

 

 

「お父さん!」

 

 

ゆりは必死に走っていく。

 

 

 

父は身を挺して守るつもりだ。

 

 

 

本能でそれが分かってしまった。

 

 

 

ゆりは必死に走る。

 

 

 

だが間に合わない。

 

 

 

既に圧縮弾の膨張が始まっていたのだ。

 

 

 

そして……

 

 

 

巨大な爆発が襲い英明は命を落とした……

 

 

 

 

 

 

()()()()()

 

 

 

 

 

 

「させるかあああぁぁぁぁ!!」

 

 

 

 

 

 

()()()()……。

 

 

 

 

 

 

だがそれは一人の転生者の介入によって防がれることとなる。

 

 

 

第三者side end

 

◆◆◆

 

ヒエンside

 

 

 

俺はソニックムーブで月影博士の真ん前にいき、両手に『調和』の炎を灯し、月影博士の手の上から膨張する圧縮弾に触れる。

 

そして破裂しそうだった圧縮弾を()()()()押さえつける。

 

すると目の前にいる月影博士が驚いた声をあげた。

 

 

「き、君は一体何をしているんだ!?」

 

 

「見れば分かるでしょう!爆発を押さえつけてるんです!!」

 

 

「そんなことを聞いているんじゃない!なぜここに来た!?君も爆発に巻き込まれて死んでしまうぞ!?」

 

 

「今はそんなことを言ってる場合じゃないでしょうが!?というか黙っててくれ!気が散る!!」

 

 

こちとらただでさえ爆発しないように神経使ってんじゃコラアアアァァ!!Σ(゜Д゜)

 

っていうか何が悲しくて中年親父の両手に上から触れなきゃいけない!?

 

同じような作業なら以前ジュエルシードが暴走したとき、フェイトと一緒に封印作業をしたが……

 

だがあのときはフェイトという可憐な美少女だったから、手の上から触れるのにもなんの躊躇(ためら)いもなかったのだ。

 

だが月影博士!

テメーはダメだ!!

 

正直こんなおっさんの両手を上から触れるなんて嫌だあああぁぁぁぁ!!!!

 

俺はアベさんじゃない!!

 

くそったれ……

そもそもデューンの奴がこんなものを放たなければこんな状況になることもなかったのだ。

 

というか、奴が地球に攻めてこなければこんなことにはならなかったのだ。

 

そうだ。

全てはあいつが悪い。

 

この世の全てはあいつが悪い。

 

もう全ての悪いことはあいつのせいでいいと思う(小並感

 

 

「ぐぐぐぐ!!」

 

 

そして俺は額の炎の出力をあげて押さえつける。

 

段々、圧縮弾は小さくなっているが……

 

 

(ダメだ!これじゃ俺の体力が持たない!?)

 

 

このままでは、圧縮弾をなくすよりも前に俺の体力が尽きる方が早い。

 

 

(こうなったら一か八か……()()を使うしかない!!)

 

 

そして俺は圧縮弾を押さえつけながら……

 

ゆっくりと右手と左手を組み合わせ、四角形を作る独自の構えを行い、ある技を発動させた。

 

 

「零地点突破・改」

 

 

すると圧縮弾の赤いエネルギーが俺にどんどんと吸収されていく。

 

 

「これは!?」

 

 

それを見た月影博士の目が見開く。

 

そしてエネルギーを吸収し終わると……

 

俺の額の炎は未だかつてないほどに大きく燃え上がっていた。

 

 

(力が沸き上がってくる……)

 

 

すると後ろで見ていたデューンが呟いた。

 

 

「僕のダークエネルギーを吸収した?」

 

 

「ああ。うまくいくかどうか正直賭けだったが……どうやら上手くいったみたいだ」

 

 

そのとき……

 

 

「ヒエン君!身体はなんともないの!?」

 

 

薫子さんが何やら慌てるように俺に声をあげた。

 

俺は少し疑問に思いながらも普通に答える。

 

 

「はい。むしろ体力も回復して絶好調です」

 

 

「へぇ、絶好調ねぇ。さっきまで僕の攻撃に四苦八苦していたのに?」

 

 

「うるせぇ。俺の策に嵌められたうえに、さっきまで無様に隠れてた王様がいばるな」

 

 

「言うねぇ。人間風情が本当に僕に勝てると思ってるのかい?」

 

 

「人間なめるなよ半笑い野郎。そのにやけ(づら)をすぐに泣きっ面に変えてやるよ」

 

 

そして俺は後ろを振り返り、呆然としている月影博士に言った。

 

 

「危ないから下がっていてください」

 

 

「あ、ああ」

 

 

そして俺はさらにその後ろで同じく呆然とこちらを見ているドレス姿の二人に言った。

 

 

「…………二人とも……その……なんというかいつまでもそんな格好でいるのは……年頃の女の子として、どうかと思うぞ?」

 

 

そしてつぼみとゆりは俺の言いたいことを理解したのか、顔を赤くさせ、何を勘違いしたのか胸元を隠しながら反論してきた。

 

 

「こ、こんなときに貴方は一体何をいってるんですか!?」

 

 

「…………貴方という男は……時と場所を考えなさいよ」

 

 

「ねぇ?おかしくない?なんで俺が怒られてんの?いつまでもそんなハレンチな格好でいるお前達が悪いんだろうが。俺はそれを注意しただけだ。つまり俺は悪くない」

 

 

「ハ、ハレンチ!?私達がハレンチ!?失敬な……好きでこんな格好になった訳ではありません!!」

 

 

「つぼみ変身よ。まずはデリカシーのないこの男を浄化するわよ」

 

 

「はい!」

 

 

何やら元気が沸いてきたのか勢いよく立ち上がるお二人さん。

 

あれ?

ここって確か正史じゃ二人力を合わせてデューンに立ち向かうところだよね?

 

なんで俺が浄化される立場なんだよ。

 

そこはデューンでいいだろうがよ。

 

するとつぼみはゆりに、ダークプリキュアが落としたプリキュアの種の欠片を渡す。ゆりのプリキュアの種はくっつき綺麗に一枚に戻った。

 

そして二人はプリキュアの種を構え変身した。

 

 

「「プリキュア・オープンマイハート!」」

 

 

「大地に咲く一輪の花、キュアブロッサム!」

 

「月光に冴える一輪の花、キュアムーンライト!」

 

 

そして二人は()()()()()()とデューンを睨み付ける。

 

 

「さっきまで思い詰めてるような表情してたのに()()()()()()()()()()()?なんだったらもう少し休んでてもいいけど?」

 

 

俺は軽口を叩くように言う。

 

 

「甘く見ないでちょうだい。()()()()()()()()()。それに貴方……このまま放っておいたら一人でまた突っ走るでしょ?」

 

 

「それはほら……誰かさんが泣きそうになってお父さんお父さん言ってるのを見てられなかったから、助けてあげようという俺の優しい配慮……「黙りなさい」……ハイ」

 

 

なんやねん。

もういつも通りじゃないか。

心配して損したぞクラァーヽ(゚Д゚)ノ

 

 

「はぁ。ヒエンさんはどこへ行ってもマイペースで変わりませんね……」

 

 

ブロッサムが苦笑いで言うので俺は言った。

 

 

「そんな褒めるなよ」

 

 

「褒めてません!それにさっきの行動についても後できっちり問いただしますからね!!」

 

 

「えぇー……」

 

 

そこはスルーでいいじゃない。

 

 

「あとはさっきの……ハ、ハレンチ発言についても問いただしますから!!」

 

 

そして二人声を揃えて言った。

 

 

「「この戦いが終わったら覚悟しておいてください!/おきなさい!」」

 

 

とりあえず二人とも元気そうで何よりですorz

 

どこか吹っ切れたような表情してるし、もう心配はいらないだろう。

 

そして俺達は駆け出した。

 

 

「いくぞ!」

 

 

「はい!/ええ!」

 

 

まずは俺が目の前にいるデューンに突っ込む。

 

 

 

ドオン!

 

 

 

俺の剛の炎の拳とデューンの拳がぶつかり合う。

 

そして高速で殴り合いを開始した。

 

 

「おおおおおおおおお!!」

 

 

「あはははははははは!!」

 

 

こいつに小細工は通用しない。

 

ならば攻撃あるのみ!

 

俺は額の炎の出力を上げる。

 

 

 

ドオン!!

 

 

 

ドオン!!!!

 

 

 

ドオン!!!!!!

 

 

 

すると段々とデューンの動きも早くなり、パワーも上がってきた。それに比例して髪も伸びてきた。

 

 

「ぶ!?」

 

 

そして俺は吹き飛ばされる。

 

 

「「はぁあああ!!」」

 

 

だが俺の後方からブロッサムとムーンライトの二人がデューンに迫る。

 

今の二人は先ほどあった固さはない。

 

ムーンライトがまずは斬り込みデューンに蹴りを入れる。その後ろからブロッサムが連続パンチを放つ。

 

デューンは的確にガードしていくが連撃のためか、僅かに姿勢を崩した。

 

 

「「はぁあああ!!」」

 

 

そして二人は手を合わせるとそこからハート型のエネルギー弾を放つ。

 

 

 

ドガァアアアアアアアアン!!!!!!

 

 

 

デューンは直撃を食らい、吹き飛ぶ。

 

その間に奴の後方に回り込んでいた俺は、形態変化を使いビッグバンアクセルを放った。

 

 

「ぐぁああ!?」

 

 

再度吹き飛ぶデューン。

 

その間にブロッサム達はパートナーの妖精をマント姿に変えて上空へと飛んでいく。

 

デューンはその後を追いかけ高速で飛んでいく。

 

そして俺はあることを確信した。

 

 

(やはり……奴は髪が伸びるほど力が増している!)

 

 

それに対抗するように俺も炎の出力を最大限にまであげデューンに迫る。

 

 

「おおおおお!!」

 

 

「ふん!!」

 

 

だがさすがはデューンなのか俺の攻撃をかわし、蹴りを入れる。その間にブロッサムに迫り、空中で格闘戦を繰り広げる。

 

だがブロッサムもデューンに負けず劣らずの格闘戦を展開している。

 

今の彼女は迷っていた先ほどとは違い動きにキレがある。

 

それもダークプリキュアを超えるほどのパワーやスピードでだ。だがそんな彼女でもデューンにダメージを与えられない。

 

それをカバーするのがムーンライトだ。

 

ブロッサムの攻撃を補助するように動いている。

 

ブロッサムが攻撃して攻めればデューンが防御した隙を狙って攻撃を仕掛け、デューンがブロッサムに攻撃を仕掛けたときは、タイミングを見計らって邪魔をする。

 

即席とは思えないほどのコンビネーションをあのデューン相手に発揮していた。

 

 

(これならいける!)

 

 

その証拠にデューンの表情からも余裕がなくなっていた。今の二人は急激に強くなっている。

 

 

「「はぁああ!!」」

 

 

そしてデューンに二人が飛び蹴りをかました。

 

 

「く…………おお!」

 

 

すると奴は苦し紛れに赤いエネルギー弾を放つ。だがその攻撃はある人物によって防がれた。

 

 

「サンフラワー・イージス!」

 

 

ブロッサム達の前にはマリンとサンシャインがいた。

 

俺がコッペ様に視線を向けると、薫子さんの側で立ってイケメン形態でサムズアップをしている彼に気付いた。

 

ポーズ決めるだけで絵になるとかなにそれずるい。

 

そして一言、言いたい。

 

攻撃を防いだのはサンシャインなのに……なぜマリンがドヤ顔をしているのか。

 

 

こんな感じで……

 

 

 

( ・`д・´)ドヤァ!!

 

 

 

みたいな。

 

 

そしてマリンとサンシャインの二人もデューンへと突っ込んでいく。

 

二人とも怒濤の連続攻撃でデューンにダメージを与えていく。っていうか二人とも物凄く強くなってない?

 

プリキュアには相乗効果でもあるのだろうか?

 

 

「「「「はぁあああ!!」」」」

 

 

そして四人のコンビネーション攻撃でデューンを追い詰めていく。

 

それを見ていた俺はふと思った。

 

 

(あれ……俺いらなくね?)

 

 

なんか皆、急激に強くなってるし、俺いらない子やん。

 

そしてふと気を抜いたのがいけなかったのだろう。

 

 

 

ギロリ!!

 

 

 

デューンの視線が俺へと向く。

 

そして気付けば攻撃をされていた。

 

 

「うお!?」

 

 

なんとかかわすが、ターゲットを完全に俺へと代えたのか怒濤のラッシュで攻めてくる。

 

 

「おおおおおお!!」

 

 

「はぁああああ!!」

 

 

こちらも対抗して殴り合いを行う。

 

 

 

ドドドドドドドッッッッッ!!!!!!

 

 

 

どちらもダメージを度外視して殴る。ひたすら殴る。

 

 

「貴様さえ……貴様さえいなければ僕の悲願の砂漠化は叶っていた!」

 

 

「いきなりなんだこの野郎!?」

 

 

というかキャラ変わってないかこいつ!?

 

しかし、今のこいつからは焦りや不安というものが色濃く感じられた。

 

 

「貴様さえいなければ……貴様さえいなければあああああぁぁぁぁ!!!!」

 

 

「ぶっ!?おごっ!?」

 

 

俺は腹や顔面を連続で殴られ、思わず下がる。なんとかガードして防いでいくが防戦一方となる。

 

 

「たかだか人間風情が、僕の復讐の邪魔をするな!」

 

 

「ど、どうしたんだよ?やけに感情的だな」

 

 

「黙れえぇぇ!!」

 

 

「ぐっ!?」

 

 

そして俺は勢いよく吹き飛ばされ、壁に叩きつけられる。

 

 

「そもそも貴様のような格下が……僕に一対一で勝とうというのが無理な話なんだよ」

 

 

「そ、そんなこと端から分かってんだよ。こちとら、あんたみたいな格上と戦うのには慣れてんだ。今まで死にそうになったことだって何度もあった。この程度の危機……俺にとっちゃ日常茶飯事なんだよ!」

 

 

そしてガントレットへと変え、勢いよく殴りかかるが簡単にかわされ、赤いエネルギーを凝縮したパンチを腹にくらい勢いよく吹き飛ばされてしまった。

 

 

「ぐふぅ!?」

 

 

 

ドガァアアアアアアアアン!!!!!!

 

 

 

すると腹に激痛が走る。

 

 

(まずい……こんなときにアバラが!?)

 

 

それでも歯を食い縛り、なんとか体勢を整えようとすると誰かに受け止められる。

 

 

「大丈夫ですか!?」

 

 

「ごほっ……ごほっ……す、すまん。完全に足を引っ張ってるな……」

 

 

なんとブロッサムであった。

 

 

「一人で無茶ばかりしないでください!デューンは一人で戦って勝てるほど甘くありません!!」

 

 

「す、すまん」

 

 

いや、あのときは気を抜いてた隙を狙われて一気に攻められたのだが……決して一人で戦ってた訳では……あ、でも最初一人でデューンにケンカ売りにいってたわorz

 

するとプリキュアの面々がデューンに再び攻めていた。

 

 

「ここで休んでいてくださいね?」

 

 

「あ、ああ」

 

 

そして俺はデューンから見えないところに移動し、座らされた。現時点では俺はデューンにターゲットにされているための緊急処置だ。

 

ブロッサムは再び戦いにいくとき心配なのか何度もこちらを気にしていたが。

 

 

「「「はぁあああ!!」」」

 

 

「ぐ……」

 

 

その間にもマリン、サンシャイン、ムーンライトの三人が攻めていく。

 

そしてブロッサムが合流すると、それぞれの武器を構えてそれぞれの光弾をぶつけた。

 

 

「「「「はぁあああ!!」」」」

 

 

四人の光弾の直撃を食らったデューンはよろめく。

 

その間に四人は追撃をしかけていく。

 

マリン&サンシャイン、ブロッサム&ムーンライトが武器を重ね合わせ、叫んだ。

 

 

「「「「プリキュア・フローラルパワーフォルテッシモ!!」」」」

 

 

水色と金色の光、ピンク色と紫色の光が空を駆ける。

 

 

「ぐるるるるああぁぁぁ!!」

 

 

デューンも獣のような声を出しながら、赤いオーラを纏い空を駆ける。

 

夜空……いや宇宙の空を色とりどりの光が駆け抜ける。その中でも赤色が全体的に動き回っていた。

 

だがパワーでは敵わないのか何度も弾かれていた。

 

そして地面へと吹き飛ばされる。

 

 

「ぐうぅぅぅう!?」

 

 

すると四色の光がそのままデューンに迫り、直撃した。

 

 

「「「「ハート……キャッチ!!」」」」

 

 

 

ドガァアアアアアアアアン!!!!!!

 

 

 

「今、万感の思いを込めて!!」

 

 

その間にブロッサム達はそれぞれの武器を込めてある物を呼び出した。

 

 

「「「「ハートキャッチミラージュ!!」」」」

 

 

ハートキャッチミラージュを呼び出したということはハートキャッチオーケストラで決める気なのだろう。

 

しかし正史ではそのハートキャッチオーケストラもデューンには効かなかった。

 

()()()()()()()()()()()

 

考えてみれば、俺もデューンには何度も痛い目に合わされた。アバラを折る重傷を二度も負わされたのだ。ここでやり返してもバチは当たらないだろう。

 

何より最後くらい皆の力になりたい。

 

俺は心の中にいる相棒に()()()()を頼む。

 

 

『ガァウ!』

 

 

相棒は快く快諾してくれた。

 

そうと決まれば俺も準備しよう。

 

俺は腹の激痛に耐えながらなんとか立ち上がり、両腕をクロスに構えて静かにワードを唱えた。

 

 

「オペレーション……ダブルヒート」

 

 

「皆!いきますよ!!」

 

 

その間にブロッサム達はハートキャッチミラージュにパワーアップの種を装填した。

 

四人のプリキュアは、祈り始める。

 

 

「「「「鏡よ鏡、プリキュアに力を!!」」」」

 

 

そして全員の姿が白色の衣装に変わり、羽衣を身に着けた天女のような姿へと変身した。

 

 

「「「「世界に輝く一面の花、ハートキャッチプリキュア!スーパーシルエット!!」」」」

 

 

続けて四人はそのままハートキャッチミラージュを上へと放つ。

 

 

「「「「花よ、咲き誇れ!プリキュア!ハートキャッチオーケストラ!!」」」」

 

 

四人の呼びかけに応えるように、目を閉じた巨大な女神のシルエットが姿を現わす。

 

そして四人の叫びに呼応するように巨大な女神のシルエットから、デューン目掛けてエネルギーが凝縮された愛の拳が振り下ろされた。

 

 

「「「「ハアアァァ!!!!」」」」

 

 

四人が叫びながらタクト、タンバリンを回し、デューンを浄化させていく。

 

 

「ぐぁあああああああ!?」

 

 

だがデューンは悲鳴をあげながらもハートキャッチオーケストラを()()()

 

 

「く……ぐうぅぅぅう!?」

 

 

ハートキャッチプリキュアの面々も驚いている。

 

まさかハートキャッチオーケストラを耐えるとは思っていなかったのだろう。

 

このままでは破られるのも時間の問題だ。

 

だったら……

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

「これでも食らって大人しく浄化されとけ……ダブルヒートバーナー!!」

 

 

そして俺は相棒に頼んでいた転送魔法トランスポーターでブロッサム達の前に()()()()()()と、勢いよくダブルヒートバーナーを放った。

 

 

「な、なにいいぃぃぃ!?」

 

 

「「「「ヒ、ヒエン(さん)!?」」」」

 

 

ここで俺が出てくるとは誰も予想していなかったのだろう。皆、驚いていた。だが俺は気にせず今込められる気力・魔力を全て込めて放った。

 

 

 

 

 

 

ドォオオオオオオオオオン!!!!!!

 

 

 

 

 

 

横からダブルヒートバーナー、上からハートキャッチオーケストラの鉄拳を食らったデューンは悲鳴をあげる。

 

 

「ぐぁあああああああああああ!?」

 

 

「今だ皆!」

 

 

「「「「はい!/ええ!」」」」

 

 

「「「「「はぁあああ!!」」」」」

 

 

そして俺達は雄叫びをあげながらデューンを浄化したのだった。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

「はぁ……はぁ……はぁ……」

 

 

俺は膝を抱えたまま息をあげる。

 

今撃てる全力のダブルヒートバーナーを撃った。威力だけなら、なのはのスターライトブレイカーにも引けを取らない。

 

デューンの奴はダブルヒートバーナーと、ハートキャッチオーケストラの直撃を食らったが……どうなっただろうか。

 

土煙が晴れる。

 

 

「…………」

 

 

するとデューンのやつは直立不動のまま、白目を向いていた。

 

 

「やった……?」

 

 

マリンが呟くが……

 

 

 

ギョロリ!!!!

 

 

 

デューンは意識を取り戻し、こちらを勢いよく睨み付けた。

 

 

「おいおい……どこまでしつこいんだよ」

 

 

化け物だとは思っていたが、まさかここまでとは……。

 

 

「やってくれたねプリキュア……それに魔導師。でもね、この程度じゃ僕は倒せない。僕の憎しみは消えないよ」

 

 

「そういえば……デビルの像に願って無限の力を手に入れたとか言ってたな」

 

 

「ああ、そうさ。僕の力の根源は憎しみだ。憎しみが上がればあがるほど僕の力は強くなる」

 

 

「完全にプリキュアとは対極の力だな」

 

 

「「「「あ、あわわわ」」」」

 

 

妖精達は完全に震えている。

 

 

「……お前達は下がってろ」

 

 

「僕の憎しみは増殖し、全てを破壊し、奪い尽くすまで……消えることはない。君達がよく口にする愛など、僕の前ではゴミだということを教えてやろう!」

 

 

そして力を込め始めたのだが……俺は()()()()()()()()()を呟いていた。

 

 

「本当にそう思ってるのか?」

 

 

「なに?」

 

 

デューンは俺に目を向ける。

 

 

「本当に……お前は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()と聞いたんだ」

 

 

「なにがいいたい?」

 

 

「お前は言っていたな?父と義母と腹違いの弟をこの手で切り刻み殺したと。お前の憎しみは、家族から命を狙われたことが始まりだ」

 

 

デューンの過去は悲惨だ。

家族から命を狙われ殺されかけた。しかし……

 

 

「だがこうも言っていた。乳母(うば)が城の外へ脱出させてくれた……と」

 

 

デューンの側にも()()になってくれている人はいたんだ。

 

 

「……確かにお前の家族はお前を殺そうとした。だけどお前のことを()()()()()()()()()()()()()()()()()のも確かだ」

 

 

「…………」

 

 

()()()はお前のことを大切に思っていたんだ。お前のことを必死に守ろうとしていたんだ」

 

 

「…………れ」

 

 

「だから()()()()()()()()()()()()()()()……命をかけてお前を城から逃がしたんじゃないのか!?お前に生きていてほしいから!!

 

 

 

「…………まれ」

 

 

 

「その人はお前を小さな頃から育ててくれた乳母だったんだろ!?その人はお前のことを()()()()()()()()()()()()!!その人にとっちゃ、()()()()()()()なんて、それだけで十分だったんだ!!」

 

 

「…………だまれ」

 

 

「なのにデューン……お前はこんなところで何をやってるんだよ!?お前のやってることは何なんだよ!?他の星を攻めて砂漠化させて……命を奪う?そんなことをして……その人が喜ぶと思ってんのか!?その人はお前にそんなことをさせるために……命懸けでお前を助けたと本気で思ってるのかよ!?」

 

 

「…………だまれええぇぇ!!!!」

 

 

デューンが高速で接近し、俺の首を片手で持ち上げる。

 

 

「おごっ!?」

 

 

 

メキメキメキメキ……

 

 

 

「さっきから黙って聞いていれば、ペラペラペラペラ好き勝手なことをいってくれるね!!」

 

 

そして俺は壁に叩きつけられた。

 

 

 

ドガァアアアアアアアアン!!!!!!

 

 

 

「…………ごぼっ!?」

 

 

「「「「ヒエン(さん)!?」」」」

 

 

口から勢いよく吐血し、俺はズルズルと壁をずり落ちる。

 

 

「はぁ……はぁ……はぁ……」

 

 

壁に手をかけなんとか起き上がるが、身体に力が入らない。

 

 

「君達に今から見せてあげよう。圧倒的な絶望というものを。はぁああああああああ!!!!」

 

 

そしてデューンは雄叫びをあげると足元から紫色の不気味な雲を発生させながら、身体を巨大化させていく。

 

そして雲は帯状に広がり、瞬く間に地球を覆った。

 

俺はそれを見ながら苦い感情に囚われていた。

 

 

(ちくしょう……結局、巨大化を防ぐことができなかった……)

 

 

そしてデューンの巨大化によって惑星城も壊滅していく。

 

俺はなんとかなけなしの体力と魔力を振りしぼり、飛翔魔法を発動させて飛ぶが……意識が既に朦朧としつつあった。

 

すると身体を支えられる感触がする。

 

 

「はぁ……はぁ……はぁ……」

 

 

何事かと目を向けると、四人が俺の身体を支えてくれていた。

 

 

「大丈夫ですか!?」

 

 

「なんでいつもそんなボロボロになってんの!?」

 

 

「デューン相手に無茶しすぎですよ!?」

 

 

「全く……」

 

 

「はぁ……はぁ……わ、悪い」

 

 

四人が俺に心配そうに声をかけてくる。

 

周りを見ると惑星城は跡形もなくなっていた。

 

すると……

 

 

『ヒエン!大丈夫ですかヒエン!?』

 

 

ん?

この声は……

 

 

「みんな!こっちよ!!」

 

 

そのとき薫子さんの声が聞こえた。

 

目を向けるとそこには、()()のこころの大樹に薫子さん、コッペ様、月影博士、そして俺の使い魔のピッツと久遠の姿があった。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

こころの大樹の上に下ろされた俺は、倒れるように姿勢を崩してしまった。

 

 

「はぁ……はぁ……はぁ……」

 

 

するとコッペ様が再度俺の頭の上に手をかざすと、体力を少し回復してくれた。

 

 

「あ、ありがとう……ございます……」

 

 

そのおかげで額の炎も少しだけ大きくなる。

 

そのとき……

 

 

「グルルルルルアアアァァァ!!!!!!」

 

 

巨大化したデューンが雄叫びをあげていた。

 

見たところ地球の半分ほどの大きさがあった。

 

 

「あれがデューンの……真の姿……なのでしょうか?」

 

 

ブロッサムが尋ねると薫子さんが答えた。

 

 

「少なくとも私が戦ったときはあそこまで大きくなかったわ」

 

 

「あれがデューンの真の憎しみの大きさを具現化した姿……だと思う」

 

 

俺が憐れみを込めて言う。

 

すると奴はさらに雄叫びをあげた。

 

 

「マドウシ……マドウシイイィィィ!!!!」

 

 

そして思わず全員が俺の顔を見た。

 

 

「…………え?狙われてるの、俺?」

 

 

そんな狙われるようなこと……そういえばいっぱいしてきたああああああぁぁぁぁぁぁ!?Σ(゜Д゜)

 

例えば……

 

偽物のこころの大樹を用意したり……

 

デザートデビルを他のプリキュアオールスターズに討伐をお願いしていたり……

 

一対一(サシ)で戦うときに挑発いっぱいしたり……

 

ブレイカークラスの砲撃を食らわせたり……

 

さっきだってあいつに説教みたいなことしてたなそういえば(゜-゜)

 

 

「…………」

 

 

ド、ドウスレバイインダ。

 

あ、あんなゴ○ラよりも圧倒的に大きい化け物倒せねぇよorz

 

惑星並みに大きいって……こんなのグレン○ガンでもない限り勝てないって。

 

やはりここはプリキュアになんとかしてもらうしかない。

 

そのとき……

 

 

 

ゾワリ……

 

 

 

全身を針で刺されるような激しい殺気が俺に向けられる。

 

すると巨大化デューンの視線がこちらへ向いていた。

 

そして奴のおでこにエネルギーが収束される。

 

それに気付いた俺は声をあげた。

 

 

「アンジェ先輩!!」

 

 

『お任せを!!』

 

 

 

 

 

 

ドゴオオオオォォォォンン!!!!!!

 

 

 

 

 

 

アンジェ先輩がこころの大樹を瞬間移動させたおかげで巨大なビームを回避できた。

 

まだ幸運なのは地球に攻撃対象が向いていないことだ。あんなものが地球に向けて放たれてみろ。

 

地球そのものが爆散してしまう。

 

 

(くそ……このままでは……)

 

 

そこで俺はつぼみ達に頼んだ。

 

 

「すまん皆。力を貸してくれ。あいつの狙いは俺だ……だがはっきり言って、俺だけじゃあんな化け物に勝てる訳がない。だけど……」

 

 

「私達なら……勝てるでしょ?」

 

 

えりかが話す。

 

 

「あんなデカブツから命を狙われるなんてヒエンさんもとことん運がないよね……でも安心しなさい!私達が絶対に助けてあげる!この14歳の美少女に任せなさい!!」

 

 

「お、おう」

 

 

「美少女はビミョーですぅ」

 

 

コフレが突っ込む。

君、可愛い見た目して結構いうね。

美少女じゃなくて……微少女ってか?

 

 

「ヒエンさん何か失礼なこと考えなかった?」

 

 

「イエ……ベツニナニモ」

 

 

するとえりかが飛び出し、皆に言った。

 

 

「さっさとあいつをなんとかしにいこう。そのついでにヒエンさんも地球も救っちゃおう」

 

 

「はい!」

 

 

一緒に飛び出したいつきが、えりかに言った。

 

 

「えりか!ゆりさんは17歳だよ!!」

 

 

「あぁ!?そうだった!?ゆりさんごめんなさい!!」

 

 

するとゆりは穏やかに笑いながらえりかに言った。

 

 

「行きなさい」

 

 

「はい!」

 

 

えりかが元気よく答えたたあと、飛んでいく姿を見届けると、俺は思ったことを言った。

 

 

「お前、()()()()()()()意外と穏やかに笑えるんだな」

 

 

「…………どういう意味かしら?」

 

 

「すいません。ちょっと口が滑っただけなんです。だからそんな威圧感出さないで下さい死んでしまいます」

 

 

「ふふっ」

 

 

すると俺達のやりとりを側で見ていたつぼみが笑った。

 

 

「それじゃ行きましょう」

 

 

そしてゆりが行こうとしたとき……

 

 

「ゆり……気を付けてな」

 

 

「…………はい」

 

 

月影博士がゆりに一言、言った。

 

それを受けたゆりは、穏やかに笑いながら飛んでいった。

 

 

「それじゃおばあちゃん!いってきます!!」

 

 

「いってらっしゃい」

 

 

そしてつぼみも俺の手を取って高速で飛んでいった。

 

うん。

でもねつぼみさん、ちょっと飛ぶの抑えてくれない?

 

アバラが風圧で痛むのおおおぉぉ!!??

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

そしてデューンは俺達の存在に気付くと、巨大な……いや巨大すぎる拳を放ってきた。

 

つぼみが手を引いてくれるおかげでなんとかかわせているが、今の体力と魔力を消費している俺ではかわすのには厳しいものがある。

 

再度、ビームやエネルギー弾が放たれるがなんとかかわす。俺はアバラの痛みもなんとかこらえるorz

 

つぼみ達はハートキャッチミラージュを構えながら、俺を守るように前に並ぶ。

 

そしてつぼみがデューンを慈愛に満ちた表情で言った。

 

 

「デューン……貴方の悲しみが終わらないのは私達の力が足りないから。憎しみが尽きないのは私達の愛がまだ足りないから。だから……だから……」

 

 

「だから私達は力を合わせましょう」

 

 

そのとき隣にいたゆりがつぼみの手に重ねる。

 

 

「あたしも合わせる!」

 

「私も!」

 

「コフレも!」

 

「シプレも!」

 

「ポプリも!」

 

「僕もだ!」

 

 

プリキュアと妖精の面々が元気よく答えた。

 

すると全員の視線がこちらを向く。

 

えーっと……これは俺も言わなきゃいけない雰囲気なんですかね?

 

 

「お、俺も……」

 

 

気持ちだけね?

 

 

「「「「皆で力を合わせるですぅ(しゅ~)(んだ)!!!!」」」」

 

 

そして四人のプリキュア達と四匹の妖精達の手が重なり合い、心が一つになると、ハートキャッチミラージュが上空に浮き、その鏡が輝き出した。

 

 

「「「「宇宙に咲く大輪の花!」」」」

 

 

皆が同時に叫ぶと、ハートキャッチミラージュはさらに光り出し、その輝きを増し、全員が聖なる光に包まれた。

 

光はさらに増していき、どんどん膨張していく。

 

そしてデューンと同じくらいの大きさになって光が消えると、純白の衣を纏った少女が現れ、涼やかな声で言った。

 

 

 

 

 

 

「無限の力と無限の愛を持つ星の瞳のプリキュア、ハートキャッチプリキュア!無限シルエット!!」

 

 

 

 

 

 

そして俺はいつの間にか少女の肩の上にいた。

 

少女は聖なる光を纏っている。

 

言葉にするとすれば『聖少女(せいしょうじょ)』と言ったところか。

 

俺は聖少女の横顔を見る。

 

その顔はどこかつぼみといつきに似ている。髪はえりかのようにウェイブがかかっており、髪の色はゆりと同じである。

 

首に巻かれているマントは妖精達が変化した物に似ていた。

 

デューンは憎しみを込めた拳で殴ろうとするが、聖なる力によって弾かれてしまう。

 

 

「憎しみは自分を苦しめるだけ」

 

 

聖少女は静かに言った。

 

だが、デューンは耳を貸さず、雄叫びをあげながら何度も拳を打ち付けるが、全て弾かれてしまう。

 

するとデューンの表情に変化が見え始める。

 

憎しみや憎悪に満ちていた目は次第に畏怖の表情へと変わっていく。

 

対してデューンを見つめる聖少女の双眸(そうぼう)は、優しさに満ち溢れ、澄みきっていた。

 

デューンは恐れているのか、一歩二歩と後退した。

 

聖少女は穏やかに微笑みながら言った。

 

 

「食らえ……この愛!」

 

 

右拳に聖なる光のエネルギーを収束させデューンに放った。

 

 

 

 

 

 

「プリキュア・(こぶし)パーーンチ!!」

 

 

 

 

 

 

デューンの胸に優しくポスンと聖少女の拳パンチが当たる。

 

するとデューンの身体から邪悪なエネルギーが一瞬の内に弾け飛び、爆発が起こる。

 

俺は聖少女の肩の上にいるため、前方にシールドのようなものが働き、俺にまで届かない。

 

だがその爆発はまるでビッグバンを思わせた。

 

そしてデューンの姿が元の青年の姿に戻り、少年の姿に変わっていく。その姿はエネルギーを封印されていた時の姿だった。

 

デューンの表情は柔和になっていた。

 

もう彼の表情には憎しみや憎悪といった感情は感じられなかった。

 

するとデューンの視線が聖少女の肩の上にいる俺の方へと向く。

 

俺は飛翔魔法を使い、デューンの元にまで飛んでいこうとするが……

 

 

 

ズキン!!

 

 

 

「ぐっ!?」

 

 

アバラが痛み飛翔魔法の制御が取れず、姿勢を崩し落下してしまう。が、聖少女が咄嗟に手を入れてくれたおかげで落ちることは免れた。

 

俺は彼女の顔を見てお礼を言う。

 

 

「す、すまん」

 

 

物凄く心配そうな顔をされた。

 

罪悪感が半端ないorz

 

そして俺はデューンに話しかけた。

 

 

「よお、気分はどうだ?」

 

 

「君か。これが……プリキュアの愛か。完全に僕の負けだよ」

 

 

「そうか。でもまぁ、良かったな。お前の中の憎しみや憎悪が消えて」

 

 

「……まぁ、そうだね。君もいろいろ悪かったね」

 

 

「本当だよ。自分でもよく無事だったなと誇りたい気分だ。あんなに痛めつけやがって……今だってアバラが折れて腹に激痛がしてるんだぞ」

 

 

俺がスーツをあげて腹を確認すると、青白いアザができていた。

 

 

「それは……すまなかった」

 

 

「もういいよ。慣れっこだ」

 

 

そして俺はデューンに手を出し言った。

 

 

「次は良い奴に生まれ変わって……良い人生歩めよ?」

 

 

「ふっ。僕が言えた義理じゃないが……君もあまり無茶はするなよ」

 

 

「ああ」

 

 

俺達は握手した。

 

そしてデューンは踵を返し歩いていく。

 

その身体からは金色の粒子が出ていた。

 

 

「もう行くのか?」

 

 

「そろそろ時間みたいだからね。あ、そうだ」

 

 

するとこちらを見て言った。

 

 

「君の使っていた技、オーバードライブといったか。あれ……まだ未完成なんだろう?」

 

 

「あ、ああ。そうだけど……」

 

 

「今のまま、あれを使い続けていたらいずれ身体を壊すよ?もっと身体に対する負荷は軽くした方がいい」

 

 

「…………分かった。忠告感謝する」

 

 

そしてデューンは片手をあげながら、金色の粒子になって宙へ舞い上がっていった。

 

俺は黙ってそれを見送るのだった。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

「はぁ……いってぇ」

 

 

デューンの旅立ちを見送ると、俺はその場に座り込む。もうアバラの痛みが限界を迎えていた。

 

というか今気付いたんだけど俺、雲の上に座ってるんですけど。雲が金色に輝いてるんですけど。

 

 

「大丈夫ですか?」

 

 

すると聖少女が俺の首根っこを持ってから、両手で支え、顔の前まで持ってくる。

 

なんだろう?

進撃○巨人で補食されるのってこんな気分なんだろうか?

 

そして俺はずっと気になってたことを聞いた。

 

 

「なあ、その無限シルエットってどんな感じなんだ?皆が融合してる状態なんだろ?」

 

 

すると聖少女は少し考えつつ答える。

 

 

「えーと、なんと言えばいいでしょうか?皆の意識が一つになっている状態といえば分かりますか?」

 

 

「要はフュー○ョンみたいなもんか?」

 

 

「えっと、はい。良く似たようなものです」

 

 

彼女は苦笑いで答える。

 

そして俺は彼女の顔をマジマジと見つめる。

 

 

「ど、どうしましたか?」

 

 

そして俺はずっと言いたかったことを言った。

 

 

「いや、さっきのデューンに放った技なんだけどさ、(こぶし)パンチというネーミングはいかがなものかと。そこはほら……もっと凝ろうぜ」

 

 

「いきなり技名にダメ出しですか!?なんでですか!?いいじゃないですか拳パンチ!!」

 

 

「ううむ。ぶっちゃけそのネーミングセンスには、つぼみが色濃く出てるな」

 

 

「そ、そうですか?」

 

 

「うん。というか声がつぼみのままだからな……その、『無限プリキュア』と言われてもぶっちゃけ『巨大化したつぼみ』にしか見えないっていうか……」

 

 

「し、失敬な!?誰が巨大化ですか!?」

 

 

「それにこれだけ巨体だと体重とか1000tは楽に超えるんだろうなあって思ったり……あ」

 

 

そのとき超直感がかつてないほどに警鐘を放つ。

 

そして俺は自らの失言に遅まきながら気付く。

 

なぜなら……

 

 

「へぇ。誰の体重が1000tなんですかヒエンさん?」

 

 

 

聖少女様の目のハイライトが消えていたのだから((((;゜Д゜)))

 

 

 

「よし、落ち着けつぼみ。話せば分かる」

 

 

「『巨大化した体重が1000t以上あるつぼみ』ってさっき言ってたじゃないですか」

 

 

「いや別にそこまでいってないというか、あれは言葉の綾というか、冗談というか、決して悪意があったわけじゃなく口がちょっと滑っただけで、機嫌を治していただけたら、わたくし嬉しいといいますか、ホントナマイッテスイマセンデシター!!」

 

 

言い訳しようと思ったが無駄だと思い、流れるような土下座を敢行した。

 

プライド?

 

え?

なにそれおいしいの?

 

 

「そういえばあのとき……デューンと戦う前に私とゆりさんのことをハレンチとかいってましたね?他にも勝手に一人でデューンに戦いに挑みにいったり、無茶しないでくださいって言ったのに転送魔法でこっちにやってくるし、あげくの果てにはアバラがまた折れたとかさっきデューンに言ってましたし……」

 

 

やべぇ。

そういえばアバラ折れたことまだ言ってなかったorz

 

 

「ヒエンさん、少しオシオキが必要なようですね」

 

 

「ねぇ、ちょっと待って。あなた様のサイズでオシオキなんてされたら俺なんてミンチになるのは目に見えてるんですけど!?」

 

 

「大丈夫です。加減はします」

 

 

「いや全然大丈夫じゃねぇから!?っていうかオシオキって全然無限の愛ねぇじゃん!?」

 

 

「無限の愛の鞭です。一種の愛情表現です」

 

 

「そんな歪んだ愛はいらない!!」

 

 

しかし聖少女様は俺を片手で絶妙な力加減で拘束すると、右拳にエネルギーを収束させる。

 

 

「食らえ……この愛!」

 

 

そして右手が引き上げられ……

 

 

「プリキュア・ちょっと(こぶし)パーーンチ!!」

 

 

「キャーΣ(゜Д゜)」

 

 

俺に技が放たれ……そこで俺の意識はブラックアウトしたのだった。

 




次回後日談。

では、また(・∀・)ノ

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