大空の炎の力を操る転生者   作:Gussan0

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どうも(゜▽゜*)

コラボ:ハートキャッチプリキュア編ラストエピーソード始まります。

文字数25,000言っちゃった。

長すぎてゴメンよ。

では、どうぞ( *・ω・)ノ


第百八十九話 心の花を守る伝説の戦士LXI

ヒエンside

 

 

 

あれから起こったことを語ろう。

 

あの『砂漠の使徒』との決戦が終わった後、俺はすぐ病院に担ぎ込まれ一週間ずっと眠ったままだった。

 

本来ならオーバードライブを使った極度の疲労、身体へのダメージの蓄積、内蔵へのダメージ、アバラ骨の骨折、全身打撲など全治一ヶ月はくだらなかったのだが、最後の聖少女様の放った(こぶし)パンチで身体のダメージや疲労が癒され、完全に治癒されたのだ。

 

 

無限の愛って凄まじい(震え声

 

 

だがそれでも蓄積された疲労は身体に溜まっていたので、完全回復するまで一週間眠りっぱなしだったのだ。

 

俺が目覚めたとき、つぼみ達が俺の知ってる人達全員に知らせたらしく、しばらくお見舞いに来る人ばかりであった。

 

さて、本題はここからなのだがあの後、『砂漠の使徒』との戦いを乗り越えたのはいいのだが、そこからが大変だったらしい。

 

あの決戦はクリスマス前に起こった出来事なので当然全世界で知られているのだが……

 

プリキュアオールスターズが全世界でデザートデビルと戦っていた映像が流されていたのだ。

 

この世界ではプリキュアの存在は認知されている。プリキュアが世界を守るために戦っているのは誰もが知っていることだ。

 

 

問題はここからだ。

 

 

なんと全世界のメディアが俺とデューンの会話や、戦闘映像をしっかりと記録に録っていたらしく、『プリキュア』と共に世界を守るために戦っていた『魔導師ヒエン』の正体は誰だ!?ということになったらしい。

 

なんで名前までバレてるんだと思ったのだが、プリキュア達が俺の名前を呼んでるシーンが普通に録られていたのと、映像の容姿から俺がアジア系統の人間、すなわち日本人だということが簡単にバレてしまったのだ。それだけでなく、俺がハートキャッチプリキュアの面々と共闘してデザトリアンと戦っている映像まで流出していたのだ。

 

最終決戦の映像に関しては、相棒にハッキングを頼んでいたおかげで戦闘映像は途中までしかなかったのでプリキュア達の正体がバレるということはなかった。だがその代わり、俺の情報は全世界に広まってしまったが。

 

全世界のワイドショーで特集が組まれるほどだ。

 

俺とデューンの会話が毎日のようにニュースとしてお茶の間に流されるのだ。

 

俺にとっては公開処刑も良いところだった。

 

テレビをつけたときに俺とデューンの会話と戦闘映像が流れてるんだよ?

 

思わず飲んでたお茶吹いたわ。

 

そして思った。

 

 

インターネット怖い((( ;゚Д゚)))ガクガクブルブル

 

 

このままでは大変なことになると知って力を貸してくれたのが、いつきの家族の明堂院家(みょうどういんけ)と、えりかの家族の来海家(くるみけ)だった。

 

俺が入院していた病院は明堂院家の息がかかった病院で俺の個人情報は完全にシャットアウトされた秘密状態であり、親しい人しか知らされていないらしい。

 

来海家に至っては芸能界のあらゆるコネを使ってインターネットに流出した俺の映像や画像が載っていた動画サイト、ホームページなどをあらかた潰して回ったそうな。

 

まぁ、それでもほとぼりが冷めるまでは二ヶ月もかかったが。その間、俺は明堂院家の屋敷でお世話になっていた。

 

うん。

そしてもう分かっていると思うが……

 

 

俺の正体普通にバレてたorz

 

 

とはいってもハートキャッチプリキュアの身内にだけだが。その関係で必然的につぼみ達も『プリキュア』だということは家族にバレていた。

 

なんでも俺が入院してるときに俺のことを聞かれた際に、家族に白状して今までのことを話したらしい。そして俺の正体についても。

 

お世話になっていた家族……特に花咲家と来海家の人達も、クリスマス前のテレビ特集を見ていたとき、いきなりデューンの姿が映ったと思ったら、俺の姿が映ったときは、思わず自分達の目を疑ったらしい。

 

そして映像が進むにつれ俺がデューンと血反吐はきながら戦っていたのを見て、これは現実だと認識したとのこと。

 

映像が途中で途切れたときは、心配で仕方なかったと言われた。本当申し訳ありませんでしたorz

 

そして俺が目を覚ましてしばらくして日が経った頃に、俺の病室に花咲家、来海家、明堂院家、月影家の家族が勢揃いで来たのだ。

 

それを見て思わず窓から逃げ出そうとした俺は悪くないと思う。

 

まぁ、そのときに瞬時にいつきとゆりの二人に取り押さえられ、つぼみに説教され、えりかには大爆笑されてしまった。

 

その様子を家族達は微笑ましい感じで見ていた。その後、なんだかんだあって話が始まった。

 

まず言われたのはお礼だった。

 

 

「世界を守ってくれてありがとう」

 

「娘達を守ってくれてありがとう」

 

 

そう言われた。そして続けて花咲家で一番お世話になっている女性、みずきさんに言われた。

 

 

「よく頑張ったわね……でもあまり無茶はしないでちょうだい?心配してたんだから……」

 

 

と頭を撫でられ、抱き締められた。

 

不覚にも少し泣きそうになった……というより実際に泣いていたかもしれない。

 

その後、つぼみ達に何やら生暖かい目線で見られていることに気付き、少し恥ずかしくなって顔を俯かせたが。

 

続いて月影一家が話をしてきた。

 

ゆりの母親である春菜さんに、父親である英明さんも一緒であった。 英明さんは髪を黒髪に戻し、髪もきってスーツを着てビシッと決めていた。

 

話を聞くと、現在は復職して薫子さんの植物園で働いているらしい。行方不明になっていた件については外国で記憶喪失になっていたと警察に説明したそうだ。

 

そして家に帰ったときに春菜さんの前で、ゆりから一発ビンタされたと苦笑いで言っていた。

 

春菜さんも、ゆりや英明さんから話を既に聞いていたらしく全てを知っているらしい。

 

二人から改めてお礼を言われた。

 

とりあえず俺は、英明さんにダークプリキュアの分まで精一杯生きるのが貴方の務めだと思うと言っておいた。あいつもきっとそれを望んでいるだろうし。

 

来海家や、明堂院家の人達からも改めてお礼を言われたので俺は素直に受け取った。

 

その後、俺の身の上話をすることになる。

 

俺は改めて簡単に説明した。

 

相棒の映像付きで。

 

並行世界の地球にある海鳴市に住む高校二年生で、そして時空管理局で嘱託魔導師として働いていること。

 

俺の家族、そして主にお世話になっている人達、高町一家や、バニングス家、月村家、さざなみ寮の人達、アースラの面々、あとはミッドチルダでお世話になった人達なども軽く紹介した。

 

まぁ、一番皆が驚いていたのが相棒がデバイスであること、久遠が妖狐であったことなのだ。

 

そしてこの世界に来た経緯も簡単に説明した。

 

俺がこの世界に来た目的は初代プリキュア、キュアアンジェに頼まれて『こころの大樹』の守護、『砂漠の使徒』を倒すことであった。

 

そしてその目的は無事達成された。

 

話が最後に差し掛かったとき……俺は皆に言った。

 

 

「もう少し経って落ち着いて、ほとぼりが冷めたら……元の世界に帰ります……」と。

 

 

そのときに部屋が一瞬シーンとして沈黙したが、全員納得してくれた。帰るときには盛大にパーティーをすると言ってくれたのでお言葉に甘えることした。

 

 

そしてその日は解散になった。

 

 

 

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そして話し合いの翌日、病室でゆっくりしながらベッドでくつろいでいたらその日も来客があった。

 

なんとプリキュアオールスターズの面々であった。

 

だがしかし……

 

開口一番、女子真面目組による説教が行われたorz

 

主に俺の無茶振りな行動について。

 

話を聞くと、相棒によって俺の戦闘映像が全部オールスターズの面々に見られていたのだ。

 

つまり相棒のハッキングで全世界への映像はシャットアウトされたのだが、オールスターズの見ていた映像だけはずっとつながったままだったのだ。

 

そのとき、相棒が知らんぷりをしていたのを見て、こいつにも心配をかけていたのだなと反省した。

 

説教は長かった。

 

主に言われたのが、「渚さんよりも無鉄砲です!」「咲よりも考えなしです!」「のぞみより無茶苦茶です!」「ラブちゃんより向こう見ずです!」である。

 

どうやらピンクリーダー四人組よりも無茶をしていた……という認識であったらしい。

 

俺は弁明として、「年下の女の子達が命懸けで頑張ってくれてるのに頼んだ張本人の俺が頑張らないとダメじゃないか。それこそ()()()でやらないと」と言ったら……

 

滅茶苦茶怒られた。

 

妖精達もキレた。

 

「それで無茶して死んだら元も子もないじゃないですか!?」と言われてしまった。

 

中には半泣きになりながら言ってる子もいたことから、俺は自分の失言に気付く。

 

この言葉の意味では……()()()()前提で話していることになると。

 

だからこそ俺は必死に説明した。

 

俺の能力について、死ぬ気の炎について。

 

先程言った死ぬ気の意味は、()()()()()()という意味で言っただけであり、死ぬ前提で話した訳ではないのだ。

 

話すこと15分……なんとか全員分かってくれたのだった。

 

そこからは気分を変えるということでお土産を受け取った。

 

たこ焼きに、パン、スケッチブック、アクセサリーに羊羹(ようかん)、花束、ドーナツ。

 

炭水化物の多さに少し頬がひきつったが純粋に嬉しかった。

 

すると彼女達に預かってもらっていた使い魔達が俺に飛び移ってきた。久しぶりに会う小ライオンズに少し癒された。

 

そして俺は彼女達に遅まきながらお礼を言ってなかったことに気付く。

 

俺は彼女達に一緒に戦ってくれたこと、こいつらを預かってくれたことの感謝を伝えた。

 

彼女達は苦笑いしていた。

 

俺が首を傾げていると全員呆れたような顔に変わる。

 

なんでやねん。

 

すると妖精達から言われた。

 

満場一致で「お人好し」らしい。

 

なので俺は言った。

 

「もっと褒めてもええんやで」と。

 

すると妖精達からは余計に呆れられたが。

 

解せぬ。

 

そんなこんなで楽しい時間を過ごしていたら、もう夕方になっていた。

 

そして帰る準備をしていたオールスターズの面々に俺は言った。

 

 

「もう少しして落ち着いたら、元の世界に帰る。その時にパーティーを開いてくれるらしいから良かったら来てくれ」と。

 

 

俺の意外な告白に一瞬、病室がシーンと静まり返る。

 

すると全員が大きな声を出しながら驚いた。

 

そして質問の嵐となった。

 

全員落ち着かせるまでに実に30分の時間を要したのだった。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

新しい年に変わって早いもので二ヶ月が過ぎた。

 

三月になったばかりなのはいいものの、まだ冬の残滓が残っており時々吹く風が寒い。

 

最近になってようやく『砂漠の使徒』の決戦の騒動も落ち着いてきた。『魔導師ヒエン』のことも世間では忘れられるとまでは言わないものの……注目されることは少なくなった。

 

俺はこの二ヶ月、いつきの家にお世話になっていた。『魔導師ヒエン』の顔は、花咲フラワーショップでバイトしている大空氷炎(ひえん)とそっくり……というより、本人なので注目を避けるために姿を隠していたのだ。

 

その証拠に花屋には俺目的で来店していたお客さんも何人かいたらしい。

 

二ヶ月ほど花咲家には迷惑をかけてしまったが、騒動が収まりつつあることに内心ホッとしている。

 

だがお世話になっていた明堂院家は、俺にとってはかなり大変であったが。

 

はっきり言おう。

 

 

格闘一家はあかん。

 

 

俺が武術を(たしな)んでいる、しかもいつきに試合で勝ったと知ると兄のさつきさん、祖父の厳太郎(げんたろう)さんが指導を買って出たのだ。

 

試しに二人と試合をしたのだが、これがまた強いのなんの。

 

さつきさんは俺の攻撃をいとも簡単に受け流して合気道みたいな技をしかけてくるし、厳太郎さんに至っては俺の動きを完全に見切り、攻撃をしても全く当たらないのだ。

 

つまり何が言いたいかというと、ずっとしごかれてましたorz

 

いつきに至っては目を輝かせて嬉々として俺に挑んでくるし……もう何回練習試合させられたか。

 

当初は俺が何度も勝っていたが次第に技は覚えられるし、戦闘パターンも覚えられて負けることも多くなった。

 

ゆりとも何度か試合をした。

 

こいつとの勝率は俺の方が下回っていたが、何度か勝つこともできるようになった。

 

しかし、基本的にはゆりの方が強い。

 

ちくせう。

 

まぁ、この二ヶ月、一日中武術地獄に揉まれたおかげで実戦勘はかなり磨かれた。

 

古流武術の技もいくつか覚えられた。

 

端的に言うと少しは強くなった気がする。

 

話に戻るが、この二ヶ月で騒動も収まってきたので最近になって俺の外出許可も出されたのだ。

 

そして俺はある目的のために外出することにした。

 

 

 

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13時頃……

 

昼ごはんを食べた後、俺は明堂院家を出る。

 

そしてある程度して人がいないことを確認すると、セットアップして空を飛ぶ……と同時に姿を消すミラージュハイドを使う。

 

相棒に探してもらってた()()()()を見つけたので、今から様子を見に行くのだ。

 

しばらくして飛んでいくとまずは一つめの目的地につく。

 

そこは幼稚園であった。

 

俺は幼稚園の敷地に降りて、コソッと教室の中を見る。

 

そこには()()()()()がエプロンをつけて子供達と一緒に体操をしていた。

 

 

「こうよぉ~」

 

 

(大丈夫そうだな)

 

 

俺はそれを見た後、次の目的地へと向かう。

 

次の目的地はある山であった。

 

空から目的の人物を探す。

 

すると滝に打たれているある男性を見つける。

 

その人物は()()()()()であった。

 

どうやら精神修行をしているらしい。

 

 

「ぬ!?誰じゃ!?」

 

 

だが男性は突然、空を見上げ、()()()()()()

 

 

(やべっ!?)

 

 

俺は慌てて逃げる。

 

そして気付く。

 

 

(別に姿を消してるんだから逃げなくていいじゃん)

 

 

というか姿を隠してるのに視線に気付くってどんだけだよ。

 

気を取り直して今度はある高級街の小さな服屋さんにたどり着いた。

 

俺は窓から中を覗く。

 

店の中はシックな造りであるのか時代を感じた。なかなか落ち着きのある良い店だ。

 

すると()()()()()が机にかじりついて服のデザインを書いていた。その姿は後ろ姿であったが生き生きしているように感じた。

 

 

「できた!美しい仕上がり具合だ!!」

 

 

(こいつも相変わらずだなぁ……まぁ、元気そうで良かったけど)

 

 

俺は少し笑いながらその場を後にした。

 

 

 

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俺はバリアジャケットを解除すると、久しぶりに『こころの大樹』に来ていた。

 

こころの大樹は、すっかり元気になり、虹色の葉っぱが生い茂っている。なんというか生命力に満ち溢れている気がする。

 

今は三月初めのため、まだ寒いが、こころの大樹の中は結界が効いており温かい。

 

そんななか俺はジーっとこころの大樹を見ていた。

 

俺がこの世界に来るきっかけになった大樹。

 

正史の世界ではデューンによって枯らされたが、この世界では守ることが出来た。

 

他にもコロンを蘇らせることができたし、ゆりの父親である月影博士、英明さんを死なせずに済んだ。

 

色々できたことがあった。だが逆に色々できなかったこともあった。

 

痛感させられた。

 

いくら特殊な力があっても、原作知識なんてものがあっても……俺もやっぱり、一人のちっぽけな人間なのだと。

 

正直、デューンに勝負を挑んだときオーバードライブを使えば勝てる……こんな奴俺一人で十分だ……という(おご)りがなかったと言えば嘘になる。

 

いや、そもそも奴に負けたこと自体が悔しかったのだ。

 

半ば意地になっていた。

 

俺だって今まで遊んでいた訳じゃない。

 

二年間必死に修行して、色んな奴と戦って、新しい力だって手に入れた。

 

だけど一度あいつと戦って完膚なきまでに叩きのめされて正直、一対一で戦うことにこだわっていた節がある。

 

今回は()()()()うまくいったが、次もうまくいくとは限らない。

 

また何かのトラブルに巻き込まれて、デューンのような圧倒的な力を持つ存在と再び戦わなければならない日もあるかもしれない。

 

そんな相手と相対したとき、一人で戦うことにこだわっていては勝つことはできないだろう。

 

仲間に頼ることも覚えなければならない。

 

するとこころの大樹から声が聞こえてきた。

 

 

『どうしたのですかヒエン?』

 

 

元転生者にして初代プリキュア、キュアアンジェことアンジェ先輩だ。

 

 

「いえ、明日には元の世界に戻るので一度じっくり見ておきたいなと思いまして」

 

 

『そうですか。そういえば最近まで挨拶周りに回っていましたもんね』

 

 

「そうですね。一応お世話になった人達、知り合った人達には挨拶しておきたかったので」

 

 

お世話になったのに声もかけずにそのまま元の世界に戻るというのもおかしな話だ。だからこそ俺は騒動が収まるまでジッと待っていたのだ。

 

 

『今日は貴方のお別れ会ですものね』

 

 

「はい。でも……覚悟はしてたつもりなんですが、いざこの日を迎えるとなると名残惜しいと感じてきまして」

 

 

『ふふっ。それだけこの世界が貴方にとって大切に感じられているということなのですよ?』

 

 

「そう……ですね。俺にとって大切な世界です」

 

 

『そういっていただけると幸いです。本当に貴方には感謝してもしきれません』

 

 

「いえ、でも結局デューンの奴には敵いませんでしたし」

 

 

最終手段のダブルヒートバーナーでも追い詰められなかったからな。

 

 

『貴奴は規格外ですから仕方がありません。貴方は十分……いえ十二分にやってくれました。貴方から聞いていた正史で起きた悲劇も食い止められたではありませんか』

 

 

「そう言ってもらえると助かります」

 

 

そして俺は大樹の前に座り、ボーッとする。

 

 

(あぁー……いい気持ちだなぁ)

 

 

すると次第に瞼が重くなってくる。

 

 

『パーティーの時間まで、まだまだあるので一眠りしなさい』

 

 

アンジェ先輩の声に甘えて一眠りすることにした。

 

 

 

 

 

 

数時間後……

 

 

 

 

 

 

「んあ……」

 

 

ふと目が覚める。

 

すると頭に何やら柔らかい感触があることに気付く。

 

 

「あ、起きましたか?」

 

 

「ん?」

 

 

視界がボヤけているが誰か目の前にいるらしい。

 

目をこすって誰か確認する。

 

 

「ふふっ」

 

 

すると笑顔のつぼみがいた。

 

 

「つぼみか。学校はもう終わったのか?」

 

 

「今日は短縮授業ですから」

 

 

「そっか。というかよく俺がここにいるって分かったな」

 

 

「ハートキャッチミラージュをたまたま見たおばあちゃんが、ヒエンさんがここにいるって教えてくれたんです」

 

 

「なるほど。薫子さんか」

 

 

「はい」

 

 

そしてジーっとつぼみの顔を眺める。

 

どうやら俺はつぼみに膝枕をされているらしい。

 

俺は明日には元の世界に戻る。

 

そう考えるとこの状況が少し名残惜しく感じてしまった。

 

 

「なあ?」

 

 

「なんですか?」

 

 

「もう少し……このままでもいいか?」

 

 

「ふふ。いいですよ?」

 

 

「サンキュー」

 

 

しばらくお互い無言になる。

 

 

「…………」

 

 

「…………」

 

 

するとつぼみが静かに話し始めた。

 

 

「…………なんだかこうしてるとなつかしいですね」

 

 

「そういえば一度膝枕してもらったことあったな」

 

 

「そうですね。ヒエンさん、三時間くらい寝っぱなしだったんですよ?」

 

 

「あのときはゆりに気絶させられたからな……」

 

 

「あれはヒエンさんが悪いです」

 

 

「まぁ、自覚はしてる……」

 

 

つぼみのジト目が痛いorz

 

 

「…………」

 

 

「…………」

 

 

「明日……」

 

 

「ん?」

 

 

「明日……帰ってしまうんですよね?」

 

 

「…………ああ」

 

 

「…………」

 

 

「…………」

 

 

「……私、これでもヒエンさんに感謝してるんですよ?」

 

 

「感謝?」

 

 

「ヒエンさんにとっては何気ない一言だったかもしれないですけど……私にとっては衝撃的な言葉でした」

 

 

「俺、なんか言ったっけ?」

 

 

「覚えてませんか?夏休みにヒエンさんが初めて朝食で卵焼きを作ってくれた日なんですけど……そのときに私の初恋が三分で終わってしまったって話をしてたんです」

 

 

「あー……そういえばそんな話、してたな」

 

 

「そのときヒエンさんは落ち込む私にこう言ってくれたんです。『焦る必要なんてない。少しずつ変わっていけばいいんだ』って」

 

 

「あー、言ったなそういえば。でもあれは『無理して変わる必要なんてなくね?』ってただ思ってただけで……変わるとしても『自分のペースでゆっくりでいいんだぞ?』って意味で言ったんだ。そこまで深い意味なんてないぞ?」

 

 

「はい。でもその言葉があったから……私は()()()()を乗り越えることができました。もう一人の自分を受け入れることができました」

 

 

「試練って、ハートキャッチミラージュの最終試練のことか?」

 

 

「はい。あの言葉のおかげで私は()()()()……()()()()とですけど、変われた気がします」

 

 

「そっか」

 

 

ゆっくりと穏やかに語る彼女の顔は……とても綺麗だと感じた。

 

 

すると再び眠気がやってくる。

 

 

徐々にだが瞼が重くなっていく。

 

 

「まだまだパーティーまで時間はありますから……ゆっくり寝てください?」

 

 

意識を落とす前にそんなつぼみの声が聞こえた気がした。

 

 

 

ヒエンside end

 

◆◆◆

 

第三者side

 

 

 

つぼみは再び眠り始めた少年の頭を愛しそうに撫でる。

 

 

(本当に可愛い寝顔ですね)

 

 

つぼみは眠る少年の顔をジッと見つめながら今までのことを思い返していた。

 

初めて少年と邂逅した日……

 

その日つぼみは、えりかと、いつきの三人で『こころの大樹』を初めて見にいった。だがそのときダークプリキュアが襲ってきたのだ。

 

三人で応戦したが、ダークプリキュアには敵わなかった。だがそんなとき、咄嗟に助けに入ってくれたのがこの少年だった。

 

額に炎を灯し、黒スーツを着て戦う姿を一目見たとき彼女の胸は脈打った。

 

しかし、このときの彼女は戦いの高揚感や、焦りなどと色々感情が入り混じっていたため、その感情の正体に気付くことはできなかった。

 

 

(あのときの戦う姿は……カッコ良かったです)

 

 

だがそれでも少年の戦う姿につぼみは惹かれていた。

 

見知らぬ土地に来たばかりで右も左も分からないはずなのに、自分達を助けてくれた。

 

そしてダークプリキュアをなんとか退けた後、植物園で祖母に紹介したとき、少年が住むところがないと言っていたときに、気付けば強引に家で住むように誘っていた。

 

少し話しただけなのにものの数分で少年と仲良くなっていた。自分を引っ込み思案だと思っていたつぼみ自身も内心驚いていたほどだ。

 

彼は話しやすいのだ。

 

気付けば自分からどんどん話していた。少年と話せば話すほど、彼女は段々と少年の魅力に惹かれていった。

 

そして少年が花咲家で暮らすようになってから、少年とつぼみはよく話すようになった。

 

その度に彼はつぼみをからかうことが多かった。

 

失言は多いし、デリカシーがない発言もいつもする。そのうえ女心はまるで分かっていないの三重苦である。

 

その度につぼみは彼によく説教していた。

 

その様子はご近所でよく見かけられる光景であり、有名になりつつあった。

 

『砂漠の使徒』が襲ってきたときも少年とは共闘することが多かった。

 

だがその度につぼみは彼の行動にハラハラさせられっぱなしであった。

 

よくトラブルに巻き込まれているし、向こう見ずで無茶ばかりするし、大ケガだって何度もしていた。

 

だがそんな彼と歩む私生活が彼女は楽しかった。

 

いつしか彼のことを心の底から信頼していた。

 

彼なら何があっても大丈夫だと。

 

最終決戦でも彼は自分のできることをしっかりやり、策を練って砂漠の使徒の連中を出し抜いた。

 

それだけでなく、あのデューン相手に一歩も引かずに戦い抜いた。結局無茶ばかりしていたが。

 

だがつぼみは、彼の戦う後ろ姿を見て励まされていたことも確かであった。

 

たとえどんな状況であろうと諦めず、自分のできることを精一杯やる。

 

 

''死ぬ気でやる''

 

 

彼がいつも口癖のように言っている''死ぬ気''という言葉。その言葉を言っている彼の姿が昨日のように思い出される。

 

だがそんな彼も明日には帰ってしまう。

 

気付けばつぼみは寝ている彼に呟くように話していた。

 

 

「ヒエンさん……私、()()()にずっと言いたいことがあったんですよ?」

 

 

そして話す。

 

 

「でも、()()()は私達とは違う世界から来て……明日には帰ってしまうんです。もう二度と、()()()には会えないかもしれません」

 

 

目を閉じて話す。

 

 

「私はいつの間にか()()()()……恋をしていました」

 

 

思い出しながら話す。

 

 

「でも()()()には()()()の帰る世界があって、待っている人達がいる。本心を言えば……帰ってほしくありません。このまま……ずっと一緒にいてほしいです。傍に……いてほしいです」

 

 

何かを噛み締めながら話す。

 

 

「分かりますかヒエンさん……()()()()()()()()?」

 

 

その瞳からは一筋の涙が出ていた。

 

 

「でも貴方のことですから……私が本心を伝えてもきっと……帰ってしまうでしょうね。貴方のことは傍でずっと見ていましたから……良く分かります」

 

 

涙が寝ている少年の顔にポタリと落ちる。

 

 

「私は……貴方を困らせたくありません。きっとこの気持ちを伝えれば……貴方は真剣に向き合ってくれるでしょう。真剣に考えてくれるでしょう。でも私は……貴方を苦しめたくありません。だから……今ここで言わせてください」

 

 

そして涙を流しながら……つぼみは笑顔で寝ている少年に告げた。

 

 

 

 

 

 

「好きですヒエンさん……」

 

 

 

 

 

 

そして寝ている少年に徐々に顔を近付け……キスをした。

 

 

「…………これくらいは許して下さいね?私も初めてなんですからおあいこです♪」

 

 

そして彼女は少年の頭を撫でながら呟いた。

 

 

「また……失恋しちゃいました」

 

 

しかしその顔はどこか晴れ晴れとしていた。

 

彼女は彼女なりに……自分の気持ちに決着をつけたのだ。

 

そんな彼女と少年のことを『こころの大樹』は優しく見守っていた。

 

 

 

第三者side end

 

◆◆◆

 

ヒエンside

 

 

 

「…………ください」

 

 

声が聞こえる。

 

 

「……きてください」

 

 

聞き覚えのある声だ。

 

 

「起きてください」

 

 

そして俺は意識を浮上させた。

 

 

 

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「おはようございます……とはいっても、もう18時ですけど」

 

 

つぼみが苦笑いでこちらを見る。

 

 

「お、おはよう。もうそんな時間なのか」

 

 

俺はヨッと起き上がる。

 

そして後ろに座っていたつぼみの顔を見る。

 

少し目が赤い。

 

もしかして泣いてたんだろうか?

 

 

「つぼみ、少し目が赤いけど……泣いてたのか?」

 

 

するとつぼみはドキン!といった効果音が聞こえてきそうなリアクションをとると飛び上がった。

 

 

「い、いえいえ!ちょっとスギ花粉で目がかゆかっただけです!ええ!とてもかゆかったんです!!」

 

 

「そ、そうか」

 

 

もう三月だし花粉も出てくる季節だわな。

 

するとつぼみがゴニョゴニョと何か呟いていた。

 

 

「……まったく……して……こう……ときはは……るどい……ですか」

 

 

「ん?なんかいったか?」

 

 

「いえ!なんでもありません!ありませんとも!!」

 

 

「そ、そうか」

 

 

するとつぼみが俺の手を取り走る。

 

 

「さあ、植物園にいきましょう。皆、待ってますよ!!」

 

 

なんだかこの子……最初に会ったときに比べて積極的になったなあ。

 

そう考えるとなんだか感慨深いものがある。

 

そして俺達はハートキャッチミラージュの力によって植物園へとワープしたのだった。

 

 

 

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俺達が植物園へワープすると、中には既にえりかや、いつき、ゆり、薫子さんや、妖精達、プリキュアオールスターズの面々が揃っていた。

 

どうやらパーティーの準備を手伝っていたらしい。というか中が凄いことになっているんだが。

 

植物園とは思えないほどの飾り付けがされていた。

 

するとえりかが何やら号泣しながらつぼみに抱きついた。

 

 

「うええぇーーん!つぼみー!良く頑張ったねえぇ!!」

 

 

「うわわわ……い、いきなりどうしたんですかえりか!?」

 

 

「いいよ!今は何も言わなくていいよ!お姉さんの胸の中で今はいっぱい泣きなさい!!」

 

 

「意味が分かりません!!」

 

 

するといつきがつぼみに近付き、ゴニョゴニョと何かを耳打ちすると、つぼみの顔が()(だこ)の如く真っ赤になっていく。

 

 

「な、ななななな…………」

 

 

一体どうしたというのだろう?

 

 

「み、皆さん!も、もしかしてずっと見てたんですか!?」

 

 

するとオールスターズの面々が何やら顔を赤くさせながら俯いていた。

 

それに代表してゆりが答えた。

 

 

「その……つぼみがハートキャッチミラージュでこころの大樹にワープする瞬間が見えたから……どうしたんだろうって思って様子を見てたら……その、皆悪気はなかったのよ?」

 

 

「ち、ちちちちちち…………違うんです!!ちがうんですうぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!!」

 

 

そしてつぼみは顔を赤くさせながら、ウサ○ン・ボルトもビックリなスタートダッシュで植物園の外へと出ていった。

 

 

「どうしたんだ一体……」

 

 

するとえりかが俺の方にやってくる。

 

その瞳はどこか炎を灯していた。

 

え?

君、死ぬ気の炎使えるの?

 

 

「ヒエンさん……あたしは貴方ほど罪作りな男を知らないよ。つぼみが自分の気持ちに決着つけたから、もう何も言わないけどさ」

 

 

「そうですよ?あんなに一途に相手を想ってくれる子はそういませんよ?」

 

 

「本当に貴方という男は……その超直感の能力を少しは私生活にも役立てなさい」

 

 

するといきなりえりか、いつき、ゆりから説教のようなものが始まった。

 

待てお前ら……

俺が一体何をしたというんだ。

 

 

「そうですよ?ヒエンさんは乙女心というものをもう少し理解するべきだと思います」

 

 

「鈍感なのも……罪だということですよ?」

 

 

「はぁ、あの子一途だわ」

 

 

「恋する乙女の鏡ね……」

 

 

すると小ライオン達を抱いたひかり、舞、りん、祈里(いおり)にまで言われる始末である。

 

そして俺のお別れ会が始まるまで女性陣からチクチク小言を言われた。

 

5gogoチームのこまちに至っては、猛烈な勢いで何かをメモしていた。呟いていた声を聞き取ると、こんな声が聞こえた。

 

 

「異世界の少年と、文系少女の淡い恋物語……。いける!いけるわ!!」

 

 

ちょっと怖かったのでそっとしておいた。

 

 

 

 

 

 

閑話休題

 

 

 

 

 

 

そんなこんなで始まった俺のお別れ会。

 

植物園への飾りつけは花咲家が主に主導で手伝い、来海家は参加者全員のコーディネート、明堂院家は執事や家政婦の皆さんが主に料理を担当し、月影家は全体的な企画担当らしい。

 

俺の想像してたお別れ会と違う。

 

どこかの企業パーティーといっていいほどの豪華さであった。

 

参加者は主に花咲家、来海家、明堂院家、月影家、プリキュアオールスターズの面々……俺が主にお世話になった人達であった。

 

というか皆、豪華な服……パリコレのモデルが着るような服を着ている。

 

しかもオールスターズに至っては全員美少女なので、かなり似合っている。

 

そして俺も執事服みたいな服を着せられ、食事を楽しんでいた。

 

立食パーティー初めてです。

 

妖精達や、相棒、久遠、小ライオンズも美味しそうに食事を取っていた。

 

ミニゲーム大会や、プレゼント交換なども行った。

 

俺はつぼみからオレンジの花形のペンダント、えりかからはオシャレなネクタイ、いつきからは新しいジャージ、ゆりからは相棒をもした人形をもらった。

 

プレゼント交換をするなど聞いていなかった俺は何も用意をしていなかった……いや、用意していないこともないな。

 

その後も色んな人達が声をかけてくれた。

 

お別れは寂しいと泣いてくれる人もいれば、身体には気を付けてねと心配してくれる人もいた。

 

そしてある程度声をかけ終わると、この世界で一番共に戦った面々の元へと向かう。

 

つぼみ、えりか、いつき、ゆりは綺麗に着飾っていた。それぞれ自分達のイメージカラーを基調にしたワンピースを着ていた。

 

 

「よう、よく似合ってるなお前達」

 

 

「あら、貴方にも人を褒める甲斐性というものがあったのね」

 

 

「お前、()()()()()()()のにそんなことばかり言うから未だに彼氏の一人もできない……「何か文句でもあるのかしら?」……イエ、ナンデモアリマセン」

 

 

 

ギロリ!!

 

 

 

ゆりさんの眼光がとても怖いですorz

 

すると他の面子は俺とゆりのやり取りをなつかしいものを見るような目で見ていた。

 

 

「ヒエンさんだけですよ?ゆりさんに面と向かってそんなこと言えるのは……」

 

 

「このやり取りも、もう見られないと思うと残念っしゅ……」

 

 

「あははははは……」

 

 

俺は残念そうにしている皆の側にいくと料理を一口食べる。そして思ったことを話す。

 

 

「なあ、皆で写真撮らね?」

 

 

「「「「はい?」」」」

 

 

「いや、皆と思い出残したいなあって」

 

 

すると四人はポカーンとした顔をしたあと、笑顔で答えた。

 

 

「じゃあ撮ろっか!」

 

 

「写真なら私に任せたまえ!!」

 

 

するとえりかの父である流之介さんが笑顔で撮りにきた。

 

貴方さっきまで別のとこで写真とってませんでした?

 

 

「はーい。じゃあ皆笑顔で頼むよ!」

 

 

そして俺が真ん中に座り、右につぼみ、左にゆり、後ろにえりか、いつきと並んだ。

 

 

「撮るよー!!」

 

 

 

パシャリ

 

 

 

その後も何枚か撮ってもらい、他の人達とも撮った。

 

そしてお別れ会も終わりに差し迫ったとき、司会をしていた薫子さんがこちらを向いた。

 

 

「じゃあここで主役のヒエン君に最後に挨拶してもらいましょう。ヒエン君頼むわね?」

 

 

「え、聞いてないんですけど……」

 

 

「いいからいいから」

 

 

そして俺はマイクを渡される。

 

 

「えーっと……」

 

 

やべぇ。

何を喋ればいいんだ。

 

すると会場にいる仲間、お世話になった人達がほぼ泣きそうな顔で見ていることに気付く。

 

 

(とりあえず……言いたいことを言おう)

 

 

「えっと、今日は俺なんかのためにこのような盛大なパーティーを開いていただきありがとうございます。正直、泣きそうです」

 

 

そして俺は話し始めた。

 

 

「ここにいる皆さん、既にお聞きだと思いますが……俺はこの世界の人間ではありません。向こうの世界、並行世界の地球で学校に行きながら魔導師として活動していました。向こうにいるときも摩訶不思議なことにはよく巻き込まれるんですが……なんの因果か、並行世界の地球、この世界にやってきました」

 

 

俺は周りを見渡す。

 

 

「最初は正直、どうすればいいか分かりませんでした。見たことも聞いたこともない場所……同じ日本のはずなのに俺の知っている町がないと知ったとき、もう流れに身を任せていました。なるようになるだろうと。でもそんな自暴自棄な俺に声をかけてくれた子達がいました」

 

 

俺はつぼみ達を見る。

 

 

「その子達は優しい子達でした。行く場所のない俺に住む場所を与えてくれたり、笑顔でいつも接してくれました。突然現れた俺に怪しむ素振りも見せずに接してくれる花咲家や、来海家の皆さんには特にお世話になりました。だから……」

 

 

声を少し大きめに出す。

 

 

「だから……その子達が大切なものを守るために戦っていると知ったとき、力になりたいと思いました。そして彼女達と共に戦っていると俺がこの世界に来た理由……いえ()()()()()()もわかりました。俺がこの世界に呼ばれた理由、それはプリキュアの敵である『砂漠の使徒』の壊滅、『こころの大樹』の守護をすることでした」

 

 

俺は思い出しながら話す。

 

 

「ですが俺が思っていた以上に『砂漠の使徒』の力は脅威的でした。特に……砂漠の王デューン……奴は規格外の強さを持っていました。俺は奴に勝負を挑まれ戦ったことがあるのですが……完敗しました。それも圧倒的な強さを見せつけられて。そして思い知ったんです。俺とハートキャッチプリキュアの面々だけでは……世界を守ることはできないと。だから……助けを求めました」

 

 

そしてオールスターズに目を向ける。

 

 

「その子達は俺の助けを聞き入れてくれて……俺達に力を貸してくれました。そのとき、共に戦ってくれる仲間が大勢いたことに心が救われました。そしてあのクリスマスの決戦で、俺達はついに『砂漠の使徒』に打ち勝つことができました」

 

 

そして視線を戻し、皆を見つめながら言った。

 

 

「俺の第二の故郷……希望ヶ花を守ることができました」

 

 

そう言ったとき目元が潤んでいることに気付く。

 

ダメだ。

 

もう少し我慢だ。

 

 

「今ではこの世界に来れたことに感謝しています。こうして俺が守りたいと思える大切な人達と……出会えたので」

 

 

しかし我慢できず目元から涙を流していた。

 

 

「本当に……この世界に来れて良かったです」

 

 

そして俺は声をあげながら……

 

 

「今まで……本当に……本当に……

 

 

 

ありがとうございました!!」

 

 

 

頭を下げた。

 

 

 

パチパチパチパチ

 

 

 

パチパチパチパチ

 

 

 

すると皆が温かい拍手を送ってくれた。

 

顔をあげると涙を流してくれている人が大半であった。

 

だが……このしんみりした空気は俺好みではないため皆へ一つのプレゼントを送ることにした。

 

俺はマイクを再び持ち話す。

 

 

「というわけで俺から皆さんに感謝を込めて一つの思い出をプレゼントしようと思います」

 

 

そのとき相棒が俺の肩の上に現れる。

 

 

「相棒……じゃあよろしく」

 

 

「ガァウ」

 

 

するとある巨大なモニターが投影される。

 

そこにはこう書かれていた。

 

 

『プリキュアオールスターズ戦闘シーンベストセレクション集』

 

 

それを見た皆の目が点になる。

 

 

「「「「「…………へ?」」」」」

 

 

そしてある歌が流れ始めた。

 

 

『プリキュア プリキュア プリティでキュアキュア ふたりは プリッキュア~!』

 

 

まずは変身しながらデザートデビルと戦うなぎさとほのか、ひかりの映像が映っていた。

 

そして曲に合わせて勇猛果敢に攻めて戦っている。

 

他のプリキュア達もテーマソングに合わせて技名を叫んでいた。

 

Splash Starチームや、5gogoチーム、フレッシュチーム、ハートキャッチチームの戦闘シーンのベストセレクション映像である。

 

小ライオンズから何か思い出に残る物を送りたいと相談を受けたときに、俺が思い付いたものだ。

 

ちなみにそのとき小ライオンズにこう言ったのだ。

 

『じゃあ実際に思い出を送ればいいじゃない』と。

 

編集自体は小ライオンズに任せたのだ。

 

俺は前世で歌われていたプリキュアのオープニングを挿入しただけである。

 

我ながら曲を入れるタイミングが完ぺきだ。

 

フハハハハハハハ(゜▽゜*)

 

 

『ブラックサンダー!』

 

『ホワイトサンダー!』

 

『プリキュアの美しき魂が!』

 

『邪悪な心を打ち砕く!』

 

『『プリキュア・マーブル・スクリュー……はぁあ!!』』

 

『『マックスーーーー!!』』

 

『『スパークウゥ!!!!』』

 

 

『光の意思よ!私に勇気を!希望と力を!』

 

『ルミナス・ハーティエル・アンクション!』

 

 

(みなぎ)る勇気!』

 

(あふれ)る希望!』

 

『光輝く絆とともに!』

 

『『『エキストリーム・ルミナリオオオオオオオオオォォ!!』』』

 

 

「「「きゃあああああ!?」」」

 

 

渚、ほのか、ひかりが技名を勢いよく叫んでいるところが再生され悶絶している。

 

 

 

『精霊の光よ! 命の輝きよ!』

 

『希望へ導け! 二つの心!』

 

『『プリキュア・スパイラル・ハート・スプラーーーッシュ!!』』

 

『『プリキュア・スパイラル・スター・スプラーーーッシュ!!』』

 

 

「「恥ずかしいからやめてー!?」」

 

 

咲&舞が声をあげる。

 

 

 

『邪悪な力を包み込む、(きらめ)くバラを咲かせましょう!』

 

『ミルキィローズ・メタル・ブリザード!!』

 

 

『プリキュア・プリズム・チェーン!』

 

『プリキュア・ファイヤー・ストライク!』

 

『プリキュア・エメラルド・ソーサー!』

 

『プリキュア・サファイア・アロー!』

 

『プリキュア・シューティング・スター!』

 

 

『5つの光に!』

 

『『『『勇気をのせて!』』』』

 

『『『『『プリキュア・レインボー・ローズ・エクスプロージョン!!』』』』』

 

 

「すごいねうらら!」

 

「そうですねのぞみさん!」

 

「のぞみ!うらら!あんた達、なに暢気にみてんの!?」

 

「私達ってあんな風に技を放ってるのねぇ」

 

「こまちはいつも通りね……」

 

「やってくれたわねヒエン!」

 

 

のぞみ、うらら、こまち、かれんはマイペースに話している。

 

りんは相変わらず突っ込んでいる。

 

くるみが何か言っている。

 

フハハハハハハハ~聞こえんなぁ!!

 

 

 

『吹き荒れよ!幸せの嵐!プリキュア・ハピネス・ハリケーン!』

 

 

『『『悪いの悪いの飛んでいけ!』』』

 

『プリキュア・ラブサンシャイン……』

 

『プリキュア・エスポワールシャワー……』

 

『プリキュア・ヒーリングプレアー……』

 

『『『フレーーーッシュ!!』』』

 

 

『ハピネスリーフ!セット!パイン!!』

 

『プラスワン!プレアリーフ!ベリー!!』

 

『プラスワン!エスポワールリーフ!ピーチ!!』

 

『プラスワン!ラブリーリーフ!!』

 

『『『『ラッキークローバー・グランドフィナーレ!!』』』』

 

 

 

「私達の技ってあんな感じなんだねみきたん!ブッキー!せつな!」

 

「完璧だわ」

 

「いい感じ!」

 

「三人とも……そういうことではないと思うのだけど」

 

 

フレッシュチームにはおおむね好評のようである。

 

 

 

『花よ輝け!プリキュア・ピンクフォルテウェイブ!』

 

『花よ(きらめ)け!プリキュア・ブルーフォルテウェイブ!』

 

『花よ舞い踊れ!プリキュア・ゴールドフォルテバースト!』

 

『花よ輝け!プリキュア・シルバーフォルテウェイブ!』

 

 

『『『『花よ、咲き誇れ!プリキュア!ハートキャッチオーケストラ!!』』』』

 

 

 

「あ、あの人は……なぜ普通に良い感じで終われないんですか」

 

「やっぱりあの人のやることは予想がつかないっしゅ……」

 

「あはははは……でもヒエンさんらしいよ」

 

「はぁ……最後の最後まで何をやっているのかしら……」

 

 

ハートキャッチチームに至っては最後まで呆れていた。

 

 

5分ほどの動画が終わると、拍手が起きた。

 

一般の人には映画を見ているみたいで好評だったようだ。

 

そして俺はプリキュア達にマイクで言った。

 

 

「どうだ!?オールスターズ戦闘シーンベストセレクションは!?DVDが欲しいなら安心しろ!このお別れ会の記念特典として帰りにもらえるぞ!!」

 

 

『『『『『ブーブーブー!!』』』』』

 

 

だがブーイングの嵐だった。

 

ちなみにDVDは炎の物(ファイアオブジェクト)で出したので材料費はかかりません。

 

つまり0円(プライスレス)

そして俺は言ってやった。

 

 

「だがこれで分かっただろう。俺はな、お前達……記録より記憶に残る男を目指しているのだあああぁぁ!!」

 

 

『『『『『もう十分残ってます!!』』』』』

 

 

そんなこんなでお別れ会は幕を閉じた。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

翌日……

 

俺はこころの大樹の前にいた。

 

俺を見送るためにプリキュアオールスターズや、妖精達が来てくれていた。

 

俺はセットアップして黒スーツ姿になると振り返る。

 

そして小ライオンズを出しお礼を言わせる。

 

 

「ほらお前達……皆にお礼を言え」

 

 

「「「「「ガァウ~」」」」」

 

 

そして小ライオンズはオールスターズの面々に頭を下げる。すると皆、涙を流しながらミニッツ達を抱き締めていた。

 

まぁ、五ヶ月ほど預かってもらってたからな。そりゃ家族みたいに思うよな。

 

 

「ほら、お前達も」

 

 

俺は肩に乗っている相棒と久遠にも挨拶するように言う。

 

 

「ガァウ/くぅ」

 

 

すると二匹達もハートキャッチプリキュアの面々の所に寄っていった。

 

俺はその間に皆から貰ったお土産を精神世界(アンダーワールド)へと入れていた。

 

さっき改めて挨拶はしたし、皆で撮った写真も受け取った。昨日のうちにハッキングで戸籍も消去したし、PHSの契約解除も済ませた。

 

つまり俺の痕跡はこの世界には残っていない。

 

もう後腐れなく帰れる。

 

 

『ヒエン』

 

 

うん?

この声はアンジェ先輩?

 

 

『貴方を元の世界に返す前に、どうしても伝えたいことがあります』

 

 

こころの大樹から聞こえてきた声に他の皆も静かになった。

 

 

『本当に貴方には感謝してもしきれません。半ば拉致のようにこの世界に連れてきたにも関わらず、貴方は泣き言一つ言わず私のお願いを叶えてくれました。本当に……ありがとうございました』

 

 

「いえ、昨日も言いましたが結局デューンの奴には、一対一(サシ)では勝てませんでしたし。勝てたのはここにいる皆のおかげです」

 

 

『はぁ、相変わらずですね。ですが貴方らしいです。そんなヒエンに贈り物があります』

 

 

「贈り物?」

 

 

なんぞや?

 

 

『これを見てください』

 

 

すると空中にモニターのような物が現れ、プリキュアパレスが映し出された。

 

すると中は部屋が映っていた。

 

そこには石像があった。

 

だが俺はその石像を見たとき言葉を無くした。

 

 

『特別に作りました!キュアヒートの石像です!』

 

 

何をしてくれやがってるんですかこのキュア天使(笑)はああああああぁぁぁぁぁ!!!!????

 

 

『良かったですねヒエン!これで貴方も名実共にプリキュアです!史上初の男の()プリキュアですよ!!』

 

 

「よし帰る前に……あの石像をぶち壊しにいくか」

 

 

『なぜですか!?私の渾身の力作なんですよ!?』

 

 

「何がなぜじゃボケぇ!!こっちがなぜといいたいわこの残念プリキュアがあぁ!!しかもこれあんたの手作りかよ!?」

 

 

『徹夜で作りました!!』

 

 

「もっと他にやることあるだろうがあぁぁ!?」

 

 

そして俺はグローブに炎を灯し、こころの大樹を焼こうとする。

 

 

「ちょ、ちょっと待ちなさい!」

 

「お、落ち着いてください!」

 

 

するとゆりとつぼみの二人が俺を羽交い締めにする。だが俺の怒りは収まらない。

 

 

「離せえぇぇ!元はと言えば……このキュア天使(笑)のせいで俺は……俺は……女装してプリキュアにならなければならなくなってしまったんだああぁぁぁ!!もうこころの大樹なんぞ、焼き払ってやるううぅぅぅ!!あの石像も破壊してやるううぅぅぐるるるあぁぁぁ!!!!」

 

 

「なんか怒りの余りに獣にまで落ちてるんですけど!?」

 

「あれだけ必死にこころの大樹を守ったのに自分で焼いてどうするんですか!?とにかく落ち着いてくださいいぃ!!」

 

 

えりかといつきも俺を(なだ)めるために必死に抑えたのだった。

 

 

 

三分後……

 

 

 

チーン……

 

 

 

俺はゆりといつきの二人によって気絶させられていた。

 

そしてすぐに目覚めた。

 

皆の説得によってなんとか落ち着いたが、怒りが再燃しそうになる度に、相棒の調和の咆哮で怒りの感情を打ち消された。

 

そして俺はアンジェ先輩から更なる贈り物を受け取っていた。

 

 

『これです』

 

 

「……虹色の種?」

 

 

するとこころの大樹から虹色に光る種のようなものが俺の両手に落ちる。

 

ん?

虹色の種?

まさかこれは……

 

 

「ねぇアンジェ先輩?もしかしてこれ……()()()()()()()()()()では?」

 

 

『はい。プリズムフラワーの種です』

 

 

うおおおぉぉぉい!?

なにやってんだこの不思議天然系プリキュア!?なんてものを渡しやがる!?Σ(゜Д゜)

 

 

分からない人のために話すが……

 

プリズムフラワーは、存在しているだけで世界と世界を繋ぐことができると言われている。いわゆる()()()()()を有している。

 

もっと簡単に言うと、これを持っているだけで並行世界や、異世界などに簡単に行ける……いや行き放題というとんでもない代物なのだ。

 

ちなみにプリキュアオールスターズDX3の映画ではこれが敵に狙われて世界滅亡の危機に陥っている。

 

 

『実は先日、プリズムフラワーから新しい種が生まれたので貴方にお渡ししたかったのです。プリズムフラワーはその力の強大さから悪しき者に狙われ、悪用されることがあります。ですが、貴方になら預けても大丈夫だと確信したので、差し上げた次第です』

 

 

「ア、アリガトウゴザイマス」

 

 

やべぇ!?

全然嬉しくねぇ!?

厄介なことに巻き込まれるフラグじゃないだろうな!?

 

 

『ですがこれで()()()()()()()()()()()()()()()()()()()になりましたよ?また遊びに来るときでも家族や、他の皆さんも連れてくると良いでしょう』

 

 

「「「「「へ?」」」」」

 

 

余りの予想外の内容に俺と他の面子も思わず声を出す。俺はアンジェ先輩に念のために確認を取る。

 

 

「あのアンジェ先輩……俺ってもうこの世界に()()()()()()()のでは?」

 

 

『そんなことはありませんよ?そもそも貴方は私がプリズムフラワーの力でこの世界に連れてきたのですよ?一度これたのですから()()()()()に決まっているでしょう?』

 

 

「「「「「…………」」」」」

 

 

そして沈黙する。

 

 

『皆さんどうしたのですか?そんな鳩が豆鉄砲を食ったような顔をして……』

 

 

「じゃあ……じゃあ……私のしたことは……」

 

 

 

ボン!

 

 

 

「は、はううぅぅぅ……」

 

 

するとつぼみが何やら顔を赤くさせて座り込んでしまった。

 

つぼみのことをえりかや、いつき、ゆりが声をかけていた。

 

だが俺は内心ほっとしていた。

 

また遊びにくることができると聞いたからだ。

 

 

「は、ははははは……」

 

 

しかし、この結果に俺は苦笑いすることしかできなかった。

 

 

 

ヒエンside end

 

◆◆◆

 

第三者side

 

 

 

一騒動あった後、改めて少年は元の世界へ帰ることとなった。だがその顔は少し疲れているようであった。

 

少年の様子を見ていた面々は苦笑いしていた。

 

だがその顔に悲壮な感じは見当たらない。

 

また会えるということが分かったからだ。

 

 

『では貴方を元の世界へ送りますよ。準備はいいですか?』

 

 

「はい。お願いします」

 

 

『貴方がいた場所をしっかり思い浮かべて下さい。そうするとその場所へ飛ぶことができますので』

 

 

「分かりました」

 

 

少年の頭の上に小狐が乗る。

 

そして少年は振り返り、言った。

 

 

「じゃあもう行くよ」

 

 

つぼみは笑顔で見送る。

 

 

「お元気で。また……会いましょうね?」

 

 

「ああ、また会おう」

 

 

そして簡単に言葉をかわしたあと、少年は皆に言った。

 

 

「今度は俺の街を案内してやる。次は皆で遊びにくるといい」

 

 

『そのときは私が皆さんをお連れしましょう』

 

 

皆も嬉しそうに反応し、笑顔になった。

 

少年も笑顔だった。

 

 

「じゃあな皆。また会おう」

 

 

そして少年は光に包まれてこの世界からいなくなった。

 

 

「いっちゃったね……」

 

 

「はい」

 

 

つぼみの隣にえりかが歩み寄る。

 

 

「本当に嵐みたいな人だったね」

 

 

「はい」

 

 

「でも……また会えるよね?」

 

 

「はい!きっとまた会えます!!」

 

 

少女達は笑顔であった。

 

最後の最後までマイペースを貫いた少年の行動に呆れているものもいたが。

 

だがその顔に悲壮感はなかった。

 

全員信じているからだ。

 

''また会える''と。

 

そのとき……こころの大樹の周りを優しい風が吹き抜ける。

 

だからか、一人の女性の呟きは誰にも聞こえなかった。

 

 

『あ、少し座標がずれてしまいました……』

 

 

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 ̄ ̄ ̄ ̄

 

 

 

四ヶ月後……

 

 

 

「お待たせしましたあぁー!!」

 

 

つぼみが元気よく玄関へといくと、外にはえりかと、母みずきが待機していた。

 

 

「ふへへ、ふへへへ」

 

 

「…………♪♪」

 

 

だがえりかは先月生まれたつぼみの妹、ふたばの頬をつつくのに夢中になっていた。

 

 

「えりか?」

 

 

「はっ!おお、つぼみ!」

 

 

「おお、つぼみ!じゃありません!いくらふたばがかわいいからってほっぺたつつきすぎです!私だってつつきたいのを我慢してるんですぅ!!」

 

 

「えへへ~つい~」

 

 

だが二人は笑顔になる。

 

二人にとってはこの程度のやりとりは日常茶飯事なのだ。

 

 

「じゃあふたば、いってきますね?お母さんいってきま~す」

 

 

「じゃあねふたばちゃん~」

 

 

「おぉー♪」

 

 

そして二人は元気に登校していく。

 

 

「妹っていいよねぇ」

 

 

「いいですよねぇ」

 

 

「私、妹だから妹の良さって分からなかったけど……妹っていいよねぇ」

 

 

「ふふっ」

 

 

えりかの言葉につぼみはおかしいのか、少し苦笑いする。

 

 

「でもさぁ、つぼみがお姉ちゃんだなんて、な~んかへ~ん!!」

 

 

「むぅ~」

 

 

「おねえちゃ~ん!千円ちょうだい!!」

 

 

「もう!えりかー!!」

 

 

既に季節は夏であり、ひまわりが綺麗に咲いていた。

 

そして二人の友人であるいつきの家につく。

 

執事に案内されると、いつきは兄と組手を行っていた。

 

 

「おーい、いつき~!学校いくよ~!!」

 

 

「やぁ、おはよう!」

 

 

「おはようございます」

 

 

挨拶をかわす三人。

 

 

「お兄さんもおはようございま~す」

 

 

「うん。おはよう」

 

 

えりかは兄のさつきにも挨拶した。

 

そんななか、つぼみはあることに気付く。

 

 

「ん?」

 

 

「今、支度してくるから待っててね?」

 

 

そしていつきが準備するために去っていくと……その後ろで座禅を組んでいる()()()()()()()()に気付く。

 

その男性は、()()()()をしていた。

 

えりかもその男性に気付き、二人一緒に目を見開いた。

 

 

「「クモ…………ジャキー!!??」」

 

 

そこにはクモジャキーの元となった人物がいた。

 

 

「いつきいつき!」

 

 

「あの方は一体!?」

 

 

「あー、紹介してなかったね。昨日からこの明堂院流に入門した熊本さんです」

 

 

「くま?」

 

 

「くも?」

 

 

二人はしばらく唖然としていた。

 

 

「チョービックリしたよ」

 

 

「朝からすごいサプライズです」

 

 

「昨日、たのもぅー!ってクモジャキーっぽい人が来たときは、僕もワァーって言っちゃったよ」

 

 

「「ふふっ」」

 

 

三人は笑い合う。

 

 

「やっぱり元に戻っていたんですね!」

 

 

「ずっと病院にいてここ何年かの記憶がないんだって……」

 

 

「じゃあ他の二人も!サソリーナっぽい人や、コブラージャっぽい人も戻ってるかもね!」

 

 

えりかが嬉しそうに答える。

 

 

「そうだね」

 

 

「きっとそうですよ!」

 

 

「じゃあスナッキーたちも?」

 

 

「そうです!みんなです!み~んなです!!」

 

 

そして三人は思い出の丘にいく。

 

この丘はある少年が逃げようとしていたときに見つけた場所で……少年が魔法の練習によく来ていた場所だ。

 

三人は丘から見える街を眺める。

 

するとえりかが大きな声で話し始めた。

 

 

「私達はすごいことをしてしまった!」

 

 

「「あぁー」」

 

 

「世界が輝いているのも私達のおかげ!たった14歳の美少女が地球を守ってしまったー!!」

 

 

えりかは腰に手を当て威風堂々と構えていた。

 

 

「私、もう聞き飽きて堪忍袋の緒が切れそうです……」

 

 

「毎日毎日……よく飽きないよねぇ」

 

 

どうやら世界を救ってから毎日行っているらしい。

 

 

「えりかは皆で無限プリキュアになったのが衝撃的すぎて、調子が戻らないんですねぇ」

 

 

「無限の力とか……無限の愛とか……えりかにはまだ早すぎたんだねぇ」

 

 

二人は呆れるように呟くが、当のえりかは納得いかないらしい。

 

 

「お子ちゃま扱いしないでよ!つぼみだって、いつきだって、皆だって……」

 

 

『『『『我々は凄いことをしてしまった!!』』』』

 

 

「って、こないだまで言ってたじゃん!言ってたじゃん!言ってたじゃーーーーーーーーん!!」

 

 

えりかが鼻息荒くフンス!と吹きながら腕を組む。どうやらご立腹らしい。

 

 

「無限の力だよ!?無限の愛だよ!?地球を救っちゃったんだよ!?あぁーーー!あたしの人生これ以上何があるっていうのよおおぉぉぉ!!悩んじゃうなあぁぁぁ!!」

 

 

ちなみにではあるが、元の世界へ帰った少年に至ってはさらにトラブルに巻き込まれることになる。

 

人生とはこれいかに(無慈悲

 

 

「えりか」

 

 

そんなとき一つの凛とした声が響く。

 

チーム最年長の月影ゆりであった。

 

 

「まだそんなことを言っているの?いつまでも終わったことにこだわっていてもしょうがないわよ」

 

 

「スイマセン……」

 

 

えりかは大人しく頭を下げる。

 

どこかで見たことある光景だなあとつぼみと、いつきは遠い目をしていた。

 

少年がいなくなってから、ゆりから注意を言われるのはえりかの役目となっていた。

 

 

「そうですぅ!えりかは過去の栄光にこだわりすぎですぅ」

 

 

パートナーの妖精に呆れられるえりか。

 

 

「人生は風の中……振り向くな、振り向くなですぅ!」

 

 

そんななかポプリはというと、いつきに抱きついていた。

 

 

「いちゅき~久しぶりでしゅう!久しぶりのいちゅきも超ラブリーでしゅ~!!」

 

 

「ありがとうポプリ」

 

 

「シプレ……こころの大樹はお元気ですか?」

 

 

「はいですぅ。今日もこころの大樹は元気いっぱいですぅ」

 

 

「コフレ達とキュアアンジェが見守ってるから大丈夫ですぅ」

 

 

「ポプリもお守りしてるから大丈夫でしゅ~」

 

 

「元気に育ってるよ」

 

 

妖精カルテットは嬉しそうに答える。

 

 

「今まではこころの大樹が私達を見守ってくれていたわ。でもこれからは私達が……私達の心が……こころの大樹を育てて見守っていくのよ」

 

 

ゆりは空を見上げながら話す。

 

 

「だからいつまでも無限の力とか、無限の愛とかに頼っちゃダメ。自分の人生なんだから……」

 

 

「「「…………」」」

 

 

三人はゆりの言葉に聞き入っていた。

 

 

「「「はい!!」」」

 

 

そして元気よく返事をした。

 

 

「しかし人生とは……なんともはや、奥が深いっしゅ……」

 

 

「自分の精一杯の力で夢に向かいなさいってことだよ。えりかはプロのファッションデザイナーになるんでしょ?」

 

 

いつきがえりかに話しかける。

 

 

「おおぉぉ、そうだった!」

 

 

「私はえりかの夢、精一杯応援させていただきます!!」

 

 

「コフレも応援するですぅ!」

 

 

「ポプリも!」

 

 

「僕も!」

 

 

「シプレもですぅ!」

 

 

「わぁあああ!!」

 

 

盛り上がる中学生組。

 

ゆりはそんな三人を優しく見守っていた。

 

するとつぼみが話しかける。

 

 

「ゆりさんは?」

 

 

「え?」

 

 

「ゆりさんの夢はなんですか?」

 

 

「私の……夢?」

 

 

ゆりは少し考え答えた。

 

 

「私も自分の人生、考えなくちゃいけないわね」

 

 

「ゆっくり考えればいいさ」

 

 

コロンが優しく言う。

 

 

「人生……」

 

 

「僕はそうだなぁ。明堂院流の武術を続けながら色んなことにチャレンジしてみたいなぁ」

 

 

いつきが語る。

 

 

「例えば?」

 

 

「それは秘密」

 

 

「教えてくれたっていいじゃん。つぼみは?」

 

 

いつきの言葉にいじけるえりか。だがすぐに気を取り直し、つぼみへと聞く。

 

 

「私はもう一度宇宙に行きたいです!今度は自分の力で!!」

 

 

「それって宇宙飛行士だね?」

 

 

「さすがあたしの親友!夢がでっかいねぇ!!」

 

 

「いいえ、私達は親友じゃありません。私達は大親友です!!」

 

 

つぼみの言葉に一同はさらに笑顔になった。

 

 

(そして……そしてできるなら……草も花もない宇宙に……少しでも花を咲かせたい)

 

 

つぼみの脳裏にデューンと少年の会話が思い出される。

 

デューンの過去は悲惨だった。

 

だが少年はいくらボロボロにされようと、デューンに説得して呼び掛けたこともあった。

 

結局、その説得はデューンの怒りをさらに買っただけであったが。

 

 

(せめて……そうすれば……デューンだって)

 

 

そしてつぼみは暗い気持ちになりそうだったのを自覚すると、首を横にブンブンと振る。

 

するとここでコロンがつぼみ達にとって、予想外なことを語った。

 

 

「そういえば……キュアアンジェが言ってたんだけど、もう少しでヒエンの世界にいけるらしいよ?プリズムフラワーのエネルギーがもう少しで溜まるんだって」

 

 

「「「えぇ!?」」」

 

 

コロンのさりげない爆弾投下に驚く三人。

 

 

「なんでももうすぐインターミドルっていう魔導師で競い合う大会があるらしくて、それに出るんだって」

 

 

「インターミドル……」

 

 

「なんか凄そうな大会の名前っしゅ」

 

 

「10代の若い魔導師たちが、魔法戦で覇を競い合うらしい。ヒエンはその中でもチャンピオンを目指してるみたいだよ?彼の夢、目標が『史上最強の魔導師』になることらしいから」

 

 

「「「ほへぇー」」」

 

 

「チャンピオンって……また大きく出たわね?」

 

 

「そのために今、猛特訓してるらしいよ?」

 

 

「そうなんですか。そういえば……ヒエンさんと出会ったのも去年の今頃でしたね」

 

 

つぼみが思い出しながら話す。

 

 

「相変わらずぶっとんだ生活送ってるんだろうねぇ」

 

 

「あははは……簡単に想像できるよ」

 

 

「また何かトラブルに巻き込まれているのでしょうね」

 

 

四人は懐かしむように話す。

 

 

「でも……あの人なら何があってもきっと大丈夫です。『死ぬ気でなんとかする!』とか言ってるはずです」

 

 

「だねぇ」

 

 

「そうだね」

 

 

「そうね」

 

 

四人は空を見上げながら、仲間だった一人の少年の姿を思い浮かべる。

 

彼女達は彼から一つのことを学んだ。

 

それはなにがあっても諦めず、死ぬ気(本気)でやりきるということ。

 

彼自身、特に何かを狙ってやったことはない。

 

彼はいつも通り、自分のできることを全力でやっただけだ。

 

だが彼のやってきたことは無駄ではなかった。

 

少なくとも彼の後ろ姿を見て影響を受けた少女達が四人……ここにいるのだから。

 

本来ならあり得なかった伝説の戦士達と、一人の転生者の邂逅。

 

だがその邂逅がもたらせた奇跡は……正史で起こるいくつもの悲劇を回避した。

 

そして少女達は今日も元気に日常生活を送っていく。

 

だがこの先、彼女達の生活を脅かす更なる脅威や敵が襲ってくるかもしれない。

 

だが彼女達ならきっと大丈夫だろう。

 

 

彼を支える炎……死ぬ気(覚悟)の炎があるように……

 

 

彼女達の中にも()()()()が宿っているからだ。

 

 

彼女達の芯……心を支える花……

 

 

何があっても枯れることのない……こころ(想い)の花が宿っているのだから。

 

 

 

第三者side end

 

◆◆◆

 

ヒエンside

 

 

 

俺は光に包まれる。

 

この世界に来る前に来た……同じ光で包まれた。

 

つぼみ達は俺を笑って見送ってくれた。

 

その気持ちが嬉しかった。

 

思えばこの世界に来て、約九ヶ月の時を過ごした。

 

離れるのに少し寂しかったが……俺には俺の住む世界がある。

 

俺を待ってくれている人がいる。

 

だから俺も笑顔で彼女達と別れた。

 

''また会える''と信じて。

 

 

「…………」

 

 

そして俺は一度目を閉じて……再び開けた。

 

思考を切り替える。

 

ここに来る前の時間は確か11月の中旬で、俺の家にいたはずだ。

 

だとすれば自分の家を思い浮かべればいい。

 

すると、ふとここである少女達の顔が思い浮かんだ。

 

 

(なのはにフェイト……元気かなあ)

 

 

俺の体感時間では約九ヶ月ぶりに会う。

 

あっちの世界の時間軸で言えば、もう少しで12月なので時系列が正しければ、久しぶりにフェイトに会えるだろう。

 

そして帰還に思いを馳せていると、アンジェ先輩の呟きがポツリと聞こえた。

 

 

『あ、少し座標がずれてしまいました……』

 

 

は?

 

今なんといったのだろうこの先輩は?

 

座標が……ずれた……だと?

 

そして俺は現状を理解したとき、アンジェ先輩に思念で話しかけていた。

 

 

『おいいいぃぃぃ!?あんた一体なにやってんだ!?座標がずれたってなにやってんだ!?』

 

 

『い、いえ少し時間の座標がずれてしまいまして……すいません。向こうにつくと一週間や二週間のずれがあるかもしれません』

 

 

『……そうですか』

 

 

まぁ、いいか。

これで一年や、二年のズレとか言われてるよりはましか。

 

 

『さあ、もうすぐでつきますよ!』

 

 

『了解です』

 

 

そして白い光が終わるとそこは見知った俺の部屋……

 

 

 

()()()()()()

 

 

 

「は?」

 

 

俺がいたのはビルのような廃墟の中であった。

 

 

 

俺は辺りを見回す。

 

 

 

見たところ誰の姿もなかった。

 

 

 

俺は現状を把握するため、ビルの窓から外の景色を眺める。

 

 

 

そして目を見開いた。

 

 

 

そこには仲間がいた。

 

 

 

久しぶりに会う大切な妹分の二人がいた。

 

 

 

だが二人は()()()()()()()()

 

 

 

小さなクレーターのようになった地面から這い出したのか、傷ついて倒れたフェイトと……

 

 

 

破壊された噴水らしきものの側で……倒れ伏したなのはの姿があった。

 

 

 

そして彼女達の側では、()()()()()()()()()()がいた。

 

 

 

一人はピンク髪のロングストレートの髪をポニーテイルにくくっている凛々しい美女であり、もう一人は赤い髪の幼い少女だった。

 

 

 

二人は黒い表紙に金色の十字架の装飾が施された一冊の本を持っていた。

 

 

 

俺の見つめる窓から……

 

 

 

『闇の書』の守護騎士ヴォルケンリッター『烈火の将』シグナムと、『紅の鉄騎』ヴィータの姿が確認できた。

 




~祝~

コラボハートキャッチプリキュア編無事完結!!

製作期間約3ヶ月。話数61話。
まさかこんなにかかると思わなんだ!?Σ(゜Д゜)

ちなみに色々伏線はってます(震え声

もうしばらくコラボはしたくない。パトラ○シュ……僕もう眠いんだ……燃えて燃えて……燃え尽きたんだorz

安直にいえば疲れたっていう((((;゜Д゜)))

ちなみに相棒は空気を読んで、つぼみが主人公に寝ている間に告白したことを伝えていません。むしろ一度後ろから刺されればいいとすら思っています。

さらにちなみにハートキャッチプリキュアの世界では数年後『魔導師ヒエン』という漫画の連載が始まります。作者は……主人公の弟子になったあの漫画家君。カテキョーの作者さんに弟子入りする予定。

そして次回からAs編後編の開始なり。

キュアヒートが活躍します(ネタバレ

では、また(・∀・)ノ

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