今日は成人の日ですね。
だがあいにくの雨という。
では、どうぞ( *・ω・)ノ
ヒエンside
ザワリ……
突如、微かな殺気を感知した。
俺は流れに身を任せて跳躍する。
そして下を見てみると……
「かわしたか……」
数日前に海鳴市内で戦った白い仮面の男がいた。
「あなたはあのときの!?」
どうやら狙いは俺らしい。
俺は男に向けて速射砲撃ショートバーナーを放つ。
だが仮面の男は回避すると俺に高速で近付き接近戦を仕掛けてくる。
俺はグローブから炎を放つと後ろに下がる。
だが仮面の男は高速移動魔法を使って俺の後ろに瞬時に回り込むと、回し蹴りを放ってきた。
「く!?」
その蹴りを食らった俺は砂漠の方へと吹き飛ぶ。
ドガァアアアアアアンン!!!!!!
だが俺はグローブから炎を噴射させて衝撃を緩和させると、そのまま炎をブースターに仮面の男に突貫する。
すると仮面の男も拳に魔力を収束させこちらに放ってきた。
俺の炎の拳と、仮面の男の魔力の拳が激突する。
そこから互いに高速戦闘を繰り出すが……
「がっ!?」
純粋な格闘技術に置いては相手の方が上であった。
仮面の男は俺のパンチを受け流し、流れるようなカウンターで俺の胸に肘討ちを繰り出す。
俺も負けじと攻撃を繰り出すがことごとく受け流される。
(く……この感じ……まるでリニスと戦っているようだ!?)
俺の師匠……リニスも魔法と戦闘技術がずば抜けている。
その証拠にフルドライブを使いこなす前の俺は模擬戦でリニスに
以前、嘱託魔導師の認定試験でミッドチルダを訪れ、ナカジマ家の庭で魔法を使わない組手をしてリニスにようやく勝てた……がそれだけだ。
それ以来、模擬戦を行っていないがこの仮面の男はそのリニスと同レベルの使い手であった。
なんといえばいいだろうか?
センスや才能とはまた違った強さ……長年の経験から来る洗練された強さのように感じる。
そう。
先ほど戦ったシグナムと同じ種類の強さだ。
(さすがは管理局の英雄ギル・グレアムの使い魔……リーゼ姉妹といったところか)
リーゼ姉妹はクロノの師匠だ。
俺はクロノと模擬戦の経験がある。
通算戦績は互いに2勝2敗2引き分けだ。
戦力的に見れば互角に思える。
だがクロノは俺よりも魔力が多く、なおかつ魔力運用などの技術も秀でている。
そして攻撃、防御、補助など効率を重視した魔法を満遍なく使いこなし、特に相手の動きを先読みし無効化することを得意としている。それだけでなく近接戦闘もこなすことができる。
それらを合わせることで、あのなのはとフェイトを全く寄せ付けないほどの実力の持ち主でもある。
そんな俺がどうしてクロノと互角に戦えていたかというと……一重に戦闘パターンの把握である。
模擬戦を何度も見返すことで己の反省点を見つけ、相手の弱点や癖なども頭に叩き込んでいたのだ。
そして何度もイメージファイトを繰り返すことで改善点を見出だしていったのだ。まぁ、イメージファイトではクロノに何度も敗けていたが。
(そのクロノより……確実に強い!)
戦って分かる。
今、俺の目の前にいる仮面の男は
だとすれば今戦っているこの男は近接戦闘が得意なリーゼロッテと思われる。以前戦ったのがリーゼアリアであろう。
「ぶっ!?」
そして俺は顔面を殴られる……が吹き飛ばされながらもなんとか体勢を立て直す。
だがその内心は焦りでいっぱいであった。
(くそ……何度攻撃してもうまく受け流される!近接戦闘の技術は完全にあちらが上だ!?)
俺は高速で迫る仮面の男の攻撃を苦悶の表情で受け流していく。
「くっ!?」
洗練された格闘技術も脅威であるのだが……何よりこいつの攻撃の重さが厄介だ。
肉体を強化しているのか全ての攻撃……拳や蹴りの重さが半端ではないのだ。
同じ使い魔で近接戦闘が得意なアルフよりも重い。
何より……
「ぐっ!?」
(身体全体が痺れる!?)
連続で放たれるブレイクインパルスがきつい。
ブレイクインパルスは振動エネルギーを送ることにより
だが本来なら立ち止まってる相手にしか使えない難易度の高い魔法のはずなのだが……
目の前にいるこいつはそれを難なくこなす。
強化形態でバリアジャケットを纏っているため耐えられない訳ではないが……このまま近接戦闘を続けていてもこちらが不利になるだけだ。
以前戦ったリーゼアリアと思われる仮面の男には近接戦闘でつけ入る隙があったが……こいつにはそれがない。
だが魔法戦闘に限ればその限りではない。
俺はブリッツアクションを発動させて男の視界から消える。
「!?」
男は驚き一瞬動きを止める。
その隙をついて俺は男から距離を取る。
「はぁ……はぁ……はぁ」
俺は少し膝をつく。
それと同時に俺のバリアジャケットに設定されている自動治癒が発動する。
俺は今までの戦闘経験を生かし、バリアジャケットに新たな機能を追加させた。
それが自動治癒だ。
ある一定以上のダメージを受けた又は疲労などで動けなくなったときに自動発動させることで、治癒魔法を使わずとも回復できるようになった。
自動発動のため少し魔力を食ってしまうが、動けるようにするのにこしたことはない。
バリアジャケット着装と同時に発動するようにすることでタイムラグもなくせた。
そして俺はふと気付く。
丁度フェイトとシグナムの立っている地点の真ん中にいることに……。
二人も俺と奴の攻防を見て仮面の男がただ者ではないと思ったのかかなり警戒していた。
「貴様は……」
「さっき言ってた……仮面の男!?」
シグナムとフェイトが武器を向ける。
(そういえば……テレビ版A`sの7話でこいつも出てきたな)
俺は原作知識から仮面の男の目的を思い出す。
テレビ版A`sでは仮面の男はフェイトのリンカーコアをヴォルケンリッターに奪わせるのが目的であったため、フェイトを襲撃していた。
だがこの世界のフェイトは既に魔力を蒐集されているため襲撃しても意味はない。
(なるほど……だからこその俺か)
俺はまだ魔力を奪われていない。
奴らからすれば絶好のカモというわけだ。
(だがこの状況……どうする?)
俺は周囲に目を向ける。
ただでさえややこしい三つ巴の戦いから仮面の男の乱入により四つ巴の戦いという……更なる混沌な状況に変わってしまった。
俺の目的はこの場からの逃走。
フェイトの目的は俺とシグナムの捕縛。
シグナムの目的は俺の魔力蒐集。
仮面の男の目的はシグナムに俺の魔力を蒐集させること。
そこまで考えてふと気付く。
(あれ?よくよく考えたら俺、全員から狙われてね?)
そしてこの場で自分が一番ヤバイ状況だということにも遅まきながら気が付いた。
「…………」
「…………」
「…………」
三人は様子を見ている。
自動治癒のおかげである程度回復した俺は立ち上がる。すると三人が俺に目を向ける。
(まあいい……奴の目的が俺なら丁度いい。フェイト達いや、監視している管理局に
時期的にもクロノがそろそろ動き出しているはず。
そもそもこいつらさえいなければ俺は今頃なのは達と合流しているはずだった。
だがこいつらが俺を監視していたことで俺は自由に動くことができなくなった。
そろそろ……反撃しても悪くないだろう。
俺は仮面の男に話しかけた。
「貴方がなぜこんなところにわざわざ出てきたのか?それは私の魔力をシグナム達に奪わせるのが目的……といったところでしょうか?」
ピクリ……
仮面の男が一瞬反応する。
フェイトとシグナムも俺の話を聞いている。
俺は言葉を続ける。
「そしてなぜそんなことをするのか?貴方の行動から考えて恐らく……『闇の書を完成させること』が
「…………」
「沈黙は肯定と取ります。だがそれはどう考えてもおかしい。『闇の書を完成させること』が貴方達の目的なら……なぜそんな回りくどいことをするのか?考えられるとすれば『闇の書の力を奪い、横取りする』。だがこれも現実的ではない。なぜなら闇の書はその力の性質上……
フェイトとシグナムが驚いたように俺を見る。仮面の男の態度からも驚く感情が感じられる。
三人ともこう思っているのだろう。
『なぜそんなことを知っている?』と。
闇の書に関してはある程度だが原作知識で知っている。とはいっても本当に簡単なことだけだ。
本来の名は『夜天の魔導書』。
『夜天の魔導書』は主と共に旅をし、各地の偉大な魔導師の技術を収集し、研究することを目的として作られた収集蓄積型の超巨大ストレージデバイスだ。
しかし歴代の持ち主である誰かがプログラムの改変をしてしまったために破壊の力を使う『闇の書』へと変化してしまった。
そしてその悪意ある改変により旅をする機能が転生機能に……復元機能が無限再生機能へと……変化してしまったのだ。
これらの機能があることで『闇の書』の完全破壊は不可能とされていた。
さらに『闇の書』は
無理に外部から操作をしようとすれば、防衛プログラムが作動し、持ち主を呑み込んで転生してしまう。その関係でプログラムの停止や改変もできないので
俺は言葉を続ける。
今俺がやるべきことは
「だとすれば……それとは別の目的があると考えるのが普通です。例えば……『闇の書の
ドオン!!!!!!
そのとき仮面の男が猛スピードで肉迫し、俺に拳を放っていた。
だが俺はラウンドシールドを展開することでその拳を受け止めていた……威力が高いのか一発でヒビが入ったがorz
「貴様!!」
「その反応……どうやら当たりの様ですね。カマをかけた甲斐がありました」
「……貴様だけは生かして返す訳にはいかん」
「そんなのはごめんですね!……
俺はリヴィジョンツーとボソリと呟く。
するとリンカーコアから更なる魔力が流れ自己強化される。
リヴィジョンツーは俺のフルドライブのフルパワー形態だ。
いくらこいつが強かろうとそう簡単にやられはしない。
「
「く……」
俺はラウンドシールドを爆発させた直後に炎の拳を仮面の男に放つ。
だが仮面の男は吹き飛びながらも俺をリングバインドで拘束する。
「こんなもので!」
俺はすぐに調和の能力でバインドを破壊しようとするが……
「凍てつけ」
突如、この場全体を支配するような低い声が響いた。
そして気付けば俺は氷の鎖のようなもので拘束されていた。
「なっ……これは!?」
俺は鎖を引きちぎろうとするが、かなり魔力強化されているのかビクともしなかった。調和の効果で破壊しようにも身体全体が凍っているため時間がかかる。
「う、動けない……」
「くっ……」
周りを見ればフェイトとシグナムの二人も拘束されていた。
それだけでなく、40℃を超える砂漠地帯がまるで南極大陸の如く凍っていたのだ。
「今の内に……やれ」
そのとき俺達を見下ろすように空中に浮遊している人物が呟いた。
その人物は黒い仮面をかぶり……その手に
「はっ!」
すると白い仮面の男が猛スピードで俺に迫る。
そのとき超直感が警鐘を放つ。
【その攻撃を食らってはダメだ!】と。
(今は身動きがとれない!なら全体防御で防ぐしかない!!)
「ラウンドガーター!」
俺は防御結界魔法ラウンドガーターを展開させると同時に死ぬ気の炎で強化する。
球上の結界が俺を包むが仮面の男は俺の真後ろに回り込み、拳に魔力を収束させると結界にぶつけた。
「おおおおおおおお!!!!」
仮面の男が雄叫びをあげながらバリアブレイクの魔法で結界を壊そうとする……がビクともしない。これでもリヴィジョンツーでパワーを底上げしているのだ。
そう簡単に破壊されてたまるか!
「なかなかやるようだな。ならばこうする」
すると俺のさらに後方にいつの間にか移動したのか、黒い仮面の男が立っていた。そして白銀の杖をサッと横に振る。
すると……
ピキキキキッッッ…………
「な!?結界事凍らせた!?」
なんと黒い仮面の男はラウンドガーターを凍らせた。
そして凍って脆くなった防御結界は……
パリィイイイイン!!!!!!
呆気なく破壊された。
「おおおおおおおお!!」
そして白い仮面の男の攻撃が俺の身体に炸裂したとき……
「あああぁっ!?」
俺は突如心臓をわしづかみされたかのような……強烈な痛みに襲われた。
「「キュアヒート!?/さん!?」」
シグナムとフェイトは思わず声を上げる。
仮面の男の腕は俺の胸部を貫いていた。
そして仮面の男がゆっくりと拳を開くと、そこにはオレンジ色の小さな球体、俺のリンカーコアがあった。
(ま、まずい……)
すると黒い仮面の男の手元に闇の書が現れる。
「あ、あれは!?」
「闇の書!?なぜ貴様らがそれを!?」
フェイトとシグナムの二人は目を見開かせる。
そして闇の書に俺の魔力が蒐集されていく。
「あああああああっっっ!?」
俺は激痛でさらに叫ぶ。
ページはどんどんと埋まっていき、約20ページ程で終わった。
そして俺は乱雑に降ろされる。
だが激しい痛みで俺自身はそれどころではなかった。
「く……くうぅぅ……はぁ……はぁ……はぁ……」
顔から流れる汗が止まらない。
痛みにはある程度慣れていると思っていたが……それでも泣きそうになるほど痛い。いや、今まで受けた痛みの種類が違う。
まるで身体の中から直接攻撃されたかのようだ。
変身が解除されていないのがほぼ奇跡に近かった。
「さて……貴様はもう用済みだ。それに貴様を生かしておけばさらに厄介なことになるのは目に見えている。ここで消えろ」
すると白い仮面の男が倒れている俺に手を向けてトドメを刺そうとする。
(や、やべぇ……)
万事休すかと思われたそのとき……
《Plasma Lancer》
《Schlangebeißen(シュランゲバイセン)》
「ファイア!」
「はぁあ!」
「「!?」」
バインドを解除したフェイトとシグナムの二人が仮面の男達に攻撃を放っていた。
仮面の男達はフェイト達の攻撃を余裕を持ってかわす。
そしてフェイト達は倒れている俺を庇うように奴らの前に立ちはだかった。
「この人はやらせません!」
「貴様らが何者かは分からんが……これ以上好きにはさせんぞ!」
仮面の男二人は視線を合わせると……踵を返し、俺達に背を向け、歩きながら告げた。
「まぁいい。当初の目的は達成した。貴様を消すことなどいつでもできる」
「忠告しておこう。貴様が平穏無事に過ごしたいなら……この件にはもう首を突っ込むな」
そして二人は転送魔法を発動させたのかその場から消えた。
「く……」
それを見届けた俺はダメージの限界がきたのか気を失おうとしていた。
「大丈夫ですか!?」
「しっかりしろ!!」
俺に声を上げて叫ぶ二人の声がどこか印象的であった。
そして俺は気絶してしまった。
ついに恐れていたことが起こってしまう。
闇の書に魔力を蒐集されてしまった主人公。目覚めることなく医務室で眠る。
そして変身も解けてしまう。
当然その正体も皆に……
では、また(・∀・)ノ