大空の炎の力を操る転生者   作:Gussan0

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どうもΣ(゚Д゚)

続き書けたで候。

では、どうぞ∠( ゚д゚)/


とある魔導の氷凍炎焔(アイスフレイム)⑥

ヒエンside

 

「……で、まだ続くんですか?」

 

思わず、そんな言葉が口から出た。

 

現在、俺達は学園都市のとある研究施設にいる。

 

理由はもちろん、能力測定だ。

 

既に基礎的な能力から身体能力、反応速度に至るまで、色々と調べられたわけだが、どうやら最後に総合測定が残っているらしい。

 

いや、まあ、必要なことだってのは分かるんだけどさ。

 

正直、そろそろ腹が減ってきた。

 

『ガウ』

 

俺の肩に乗ったヒッツも、小さく鳴いて同意する。

 

「だよなぁ、相棒。終わったら何か食べに行こうぜ」

 

『ガウッ!』

 

「ヒエン、また食べ物のこと考えてるでしょ?」

 

隣から呆れた声が聞こえた。

 

リーゼアリアだ。

 

ちなみに、先ほどまで別室で待機していた二人も、総合測定の前に合流している。

 

「いやいや、腹が減っては戦ができぬって言うだろ?」

 

「今は戦ってないじゃない」

 

「それはそう」

 

「認めるの早いね……」

 

リーゼロッテが苦笑する。

 

まあ、実際そのとおりだしな。

 

そんなやり取りをしていると、白衣を着た研究員がこちらへ歩いてきた。

 

「お待たせしました。それでは、最後の測定に移りたいと思います」

 

「了解です」

 

俺は軽く返事をして立ち上がった。

 

さて、と。

 

ここからは少し気をつけないとな。

 

何しろ、ここは学園都市。

 

科学技術が発達した巨大な都市であると同時に、色々と厄介な事情を抱えた場所でもある。

 

特に――

 

(……アレイスター)

 

頭に浮かんだ名前を、すぐに意識の奥へ押し込める。

 

あの人物がどこまでこちらを把握しているのかは分からない。

 

だが、少なくとも俺から余計な情報を与えるつもりはなかった。

 

だから、今回の測定でも使うのは死ぬ気の炎と、その応用だけ。

 

魔力を用いた魔法については極力伏せる。

 

もっとも、死ぬ気の炎だって、この世界の超能力とは根本的に異なるものなんだけどな。

 

「では、大空さん。こちらへお願いします」

 

「分かりました」

 

俺は指定された位置へ移動した。

 

正面には、先ほどまでの測定とは異なる、頑丈そうな装置が設置されている。

 

観察室には複数の研究員が集まり、こちらを注視していた。

 

「これから能力の出力と制御精度を確認します。まずは安全な範囲で能力を発動してください」

 

「了解です」

 

軽く息を吐く。

 

先ほどの測定では既にコンタクトフォームを披露しているが、現在は一度解除している。

 

俺は改めて意識を集中させた。

 

「コンタクトフォーム」

 

その瞬間、両腕に黒い籠手が展開される。

 

死炎の籠手改〈ヒートグローブ改〉。

 

全身のバリアジャケットは展開しない。

 

普段着のまま、籠手だけを装着した状態。

 

これがコンタクトフォームだ。

 

死ぬ気化と籠手の展開を組み合わせた形態であり、出力そのものは真・スピリットフォームと変わらない。

 

もちろん、だからといって常に全力を出しているわけではない。

 

今は必要最低限の出力に抑えている。

 

「……先ほどと同じ装備ですね」

 

研究員が興味深そうに端末を操作する。

 

「こちらも能力によって生成されたもの、という認識でよろしいでしょうか?」

 

「ええ、まあ。そんな感じです」

 

嘘は言っていない。

 

全部を説明していないだけだ。

 

「では、まず出力を抑えた状態で、標的に攻撃をお願いします」

 

「はい」

 

俺は右手にオレンジ色の炎を灯した。

 

大空の炎。

 

その炎を小さく収束させ、正面の標的へと向ける。

 

「フレアレイ」

 

放たれた炎弾が、測定用の標的へ命中する。

 

ドンッ!

 

鈍い衝撃音が響いた。

 

装置に表示された数値を見て、研究員達が何やら話し始める。

 

「出力は安定していますね」

 

「熱量だけでは説明できない衝撃も確認できます」

 

「先ほどの測定結果とも一致しています。やはり単純な発火能力ではなさそうですね」

 

研究員達が端末を操作しながら議論を続ける。

 

俺はその様子を眺めながら、内心で少し安心した。

 

(……よし。とりあえず問題なさそうだな)

 

もっとも、これはかなり抑えた出力だ。

 

こんなところで本気を出して施設を壊したら、後が面倒だし。

 

「次は制御精度を確認します。複数の標的を同時に狙っていただけますか?」

 

「了解」

 

正面に五つの標的が現れる。

 

それぞれ位置も高さも異なっていた。

 

俺は右手を構え、炎を分割する。

 

「フレアレイ」

 

五発の炎弾が同時に出現した。

 

それぞれが異なる軌道を描き、指定された標的へ飛んでいく。

 

ドンッ! ドンッ! ドンッ! ドンッ! ドンッ!

 

五つの着弾音が、ほとんど間を置かずに響いた。

 

「……全弾命中」

 

「着弾までの時間差も極めて小さいですね」

 

「五つの攻撃を同時に制御しているのか……?」

 

研究員達が端末を確認する。

 

「これほどの同時制御を、特別な補助装置なしで……」

 

(……いや、補助してくれてるんだけどな)

 

ちらりとヒッツを見る。

 

『ガウ?』

 

(何でもない。ありがとな、相棒)

 

『ガウッ!』

 

小さく尻尾を振るヒッツ。

 

相変わらず頼りになる相棒である。

 

もちろん、制御そのものを全部任せているわけじゃない。

 

俺自身の魔力操作やマルチタスク能力も関わっている。

 

もっとも、今回使っているのは死ぬ気の炎なので、魔法としての制御を見せているわけではないが。

 

それでも、相棒の補助があると細かい調整がしやすいのは確かだ。

 

その後も、いくつかの測定が続いた。

 

炎の出力調整。

 

氷の形成。

 

複数対象への同時攻撃。

 

いずれも、俺にとっては普段から使っている技術だ。

 

ただし、今回は威力よりも精度を重視している。

 

大きな力を見せるだけなら簡単だが、どれだけ細かく制御できるかも重要だからな。

 

「それでは、次は防御性能を確認させてください」

 

「防御ですか?」

 

「はい。こちらから段階的に出力を上げた攻撃を行いますので、能力によって防いでください」

 

「分かりました」

 

俺は軽く頷いた。

 

さて。

 

防御なら色々と方法はある。

 

ラウンドシールドやラウンドディフェンダーを使うこともできるが、今回は魔法を伏せている。

 

となれば、死ぬ気の炎で対応するのが無難だろう。

 

俺は右手を軽く振り、大空の炎を正面へ広げた。

 

零地点突破の応用による、エネルギーの中和。

 

大空の炎が持つ調和の性質を利用し、攻撃の威力を軽減する。

 

ただし、何でも無条件に無効化できるわけではない。

 

相手の攻撃の性質や出力によっては、対応しきれない場合もある。

 

「準備はよろしいですか?」

 

「いつでもどうぞ」

 

装置から光弾が発射された。

 

それが炎に触れた瞬間、勢いを失って霧散する。

 

「……え?」

 

研究員が目を瞬かせた。

 

「攻撃エネルギーの一部が減衰しています。熱への変換……ではない?」

 

「出力を上げます!」

 

続けて放たれる光弾。

 

しかし、結果は同じだった。

 

俺はその場から一歩も動かず、攻撃を受け止め続ける。

 

(……まあ、これくらいなら問題ないか)

 

大空の炎による調和。

 

その性質を利用すれば、相手の攻撃を中和したり、性質を変化させたりすることができる。

 

もっとも、相手の攻撃が強力であればあるほど、こちらにも相応の出力や制御が求められる。

 

今回の攻撃は、まだ十分に対応できる範囲内だった。

 

「……大空さん」

 

「はい?」

 

「今の防御は、どのような原理なのでしょうか?」

 

「えーっと……俺の炎には、相手のエネルギーを中和する性質があるんですよ」

 

「中和……」

 

研究員が考え込む。

 

その隣では別の研究員が、何やら難しそうな数式を端末に入力していた。

 

(……これ、説明が難しいんだよなぁ)

 

死ぬ気の炎と魔法は別物だ。

 

それに、学園都市の超能力とも根本的に仕組みが違う。

 

だから、彼らがどう解釈するのかは分からない。

 

まあ、そこは専門家に任せよう。

 

変なことにならなきゃいいけど。

 

◇

 

それからしばらくして。

 

「以上で、大空さんの総合測定は終了となります」

 

「おお、終わった!」

 

思わず両手を上げる。

 

長かった。

 

いや、本当に長かった。

 

「お疲れさま、ヒエン」

 

「お疲れー!」

 

リーゼアリアとリーゼロッテが声をかけてくれる。

 

「ありがとな。いやー、腹減った!」

 

「結局それなんだ……」

 

「だって腹減ったもん」

 

そう言うと、二人は顔を見合わせて笑った。

 

「では、続いてお二人の最終確認を行います」

 

「分かりました」

 

「はーい!」

 

リーゼアリアとリーゼロッテが研究員に続いて移動する。

 

俺は邪魔にならない位置まで下がり、二人の測定を見守ることにした。

 

まずはリーゼアリア。

 

彼女の得意分野は、幻影を利用した攪乱だ。

 

後に学園都市側から『幻影黒猫〈ファントムキャット〉』という能力名を与えられることになる。

 

「それでは、開始してください」

 

「分かりました」

 

アリアが軽く頷く。

 

次の瞬間。

 

測定用の空間に、複数の彼女の姿が現れた。

 

「……三人?」

 

「いや、四人です!」

 

「待ってください。こちらのセンサーでは五人と表示されています!」

 

研究員達が驚いたように画面を確認する。

 

俺は思わず笑みを浮かべた。

 

(……おお、やってるやってる)

 

幻影は、ただ姿を見せるだけじゃない。

 

相手の認識を惑わせ、どれが本物なのか判断しづらくする。

 

さらに、光学迷彩や認識阻害を組み合わせれば、視覚情報だけを頼りに見破るのは困難だ。

 

もっとも、俺の場合は超直感があるので、見破ること自体は難しくない。

 

だからといって、彼女の技術が低いわけじゃない。

 

実戦では、一瞬の判断の遅れが勝敗を分けることもある。

 

そういう意味で、実に厄介な能力だ。

 

「続いて、リーゼロッテさん」

 

「はい!」

 

今度はリーゼロッテの番だ。

 

彼女の得意分野は、速度と機動力。

 

こちらも後に『迅影黒猫〈シャドウキャット〉』という能力名を与えられることになる。

 

「それでは、開始してください」

 

「はーい!」

 

測定開始の合図とともに、彼女の姿が視界から消えた。

 

「速い!」

 

研究員の一人が声を上げる。

 

次の瞬間には、離れた位置に設置された標的の前へ移動していた。

 

そして、軽やかな動きで次々と指定地点を通過していく。

 

壁を蹴り、空中で身体を捻り、着地と同時に方向転換。

 

その動きには、ほとんど無駄がない。

 

(……相変わらず身軽だなぁ)

 

あの二人は、それぞれ得意分野が違う。

 

アリアは幻影や認識阻害による攪乱。

 

ロッテは速度と身体能力を活かした近接戦闘。

 

だからこそ、互いの長所を活かした連携もできるわけだ。

 

やがて、リーゼロッテの測定も終了した。

 

「お疲れ、二人とも」

 

「うん!」

 

「ヒエンもね」

 

「よし! じゃあ飯に――」

 

「まだ結果発表が残ってるでしょ」

 

「……そうでした」

 

リーゼアリアに指摘され、俺は肩を落とした。

 

ううむ。

 

飯への道のりは遠い。

 

◇

 

それから、さらにしばらく待たされた後。

 

俺達は別室へと案内された。

 

そこには先ほどの研究員達が集まっており、正面の大型モニターには測定結果が表示されていた。

 

……何というか。

 

皆さん、少し疲れてません?

 

いや、原因は何となく分かるんだけどさ。

 

「それでは、今回の測定結果についてご説明します」

 

代表らしい研究員が口を開いた。

 

「まず、リーゼアリアさんとリーゼロッテさんについてですが、お二人とも非常に優秀な能力をお持ちです」

 

「ありがとうございます」

 

「えへへ」

 

「総合的な評価として、お二人は強能力者――レベル4に相当すると判断しました」

 

モニターに二人の名前が表示される。

 

リーゼアリア・グレアム。

 

レベル4『幻影黒猫〈ファントムキャット〉』。

 

リーゼロッテ・グレアム。

 

レベル4『迅影黒猫〈シャドウキャット〉』。

 

「レベル4って、結構すごいんですよね?」

 

ロッテが尋ねる。

 

「はい。学園都市でも上位に位置する能力者です」

 

「へぇー!」

 

嬉しそうに声を上げるロッテ。

 

アリアも満足そうに微笑んでいる。

 

「二人とも、おめでとう」

 

「ありがとう、ヒエン」

 

「ありがとー!」

 

俺も素直に祝福する。

 

レベル4。

 

学園都市でも相当な実力者として扱われる階級だ。

 

もちろん、二人の本来の力がそれだけで測れるわけじゃない。

 

だが、こちらの世界で生活するうえでは、十分な評価だろう。

 

「それでは、続いて大空氷炎さん」

 

「はい」

 

研究員がこちらへ向き直った。

 

「あなたの測定結果についてですが……正直に申し上げて、非常に特殊です」

 

「……はあ」

 

「炎熱、凍結、身体能力の強化、エネルギーの中和。それらを高い水準で扱いながら、同時に精密な制御を行うことができる」

 

研究員はモニターを操作した。

 

「通常の能力分類では、説明が難しい部分もあります。しかし、今回確認できた出力と応用性、そして今後の研究価値を含めて総合的に評価した結果――」

 

画面が切り替わる。

 

そこに表示された文字を見て、俺は思わず固まった。

 

超能力者〈レベル5〉。

 

第8位。

 

氷凍炎焔〈アイスフレイム〉。

 

「…………」

 

「ヒエン?」

 

「…………」

 

「ヒエン、大丈夫?」

 

アリアが心配そうに覗き込んでくる。

 

俺はゆっくりと口を開いた。

 

「……あの」

 

「はい?」

 

「レベル5って、七人じゃありませんでしたっけ?」

 

「これまでは、そうでした」

 

研究員が頷く。

 

「しかし、今回の測定結果を受け、あなたを新たな超能力者として認定することが決定しました」

 

「……マジですか」

 

「はい」

 

……いやいやいや。

 

ちょっと待て。

 

レベル5って、そんな簡単に増やしていいものなの!?

 

確かに、能力測定を受ける以上、ある程度の評価は覚悟していた。

 

でも、まさか八人目になるとは。

 

(……これ、絶対面倒なことになるやつじゃん)

 

学園都市のレベル5。

 

第一位の一方通行。

 

第二位の垣根帝督。

 

第三位の御坂美琴。

 

第四位の麦野沈利。

 

第五位の食蜂操祈。

 

第六位は……まあ、色々と謎が多い人物。

 

そして第七位の削板軍覇。

 

そこに俺が加わるって?

 

(……勘弁してくれよぉ)

 

もっとも、レベル5の順位は単純な戦闘力だけで決まるわけじゃない。

 

学園都市側の研究価値や応用性など、色々な事情が絡んでいる。

 

今回、俺が第8位になったのも、既存の七人とは別枠で新たに認定されたからなのだろう。

 

……それにしたって、目立ちすぎだろ。

 

そんな俺の心境など知らず、ロッテが嬉しそうに声を上げた。

 

「すごいじゃん、ヒエン!」

 

「おめでとう!」

 

「……あ、ありがとう」

 

いや、嬉しくないわけじゃないんだけどさ。

 

それ以上に、嫌な予感がするんだよなぁ。

 

特に、あの窓のないビルの住人に関しては。

 

「なお、大空さんについては、通常の能力開発によらない能力者――いわゆる『原石』として扱う方向で調整されています」

 

「原石、ですか」

 

「はい。削板軍覇さんと同様、非常に珍しい存在です」

 

なるほど。

 

そういう扱いになるのか。

 

少なくとも、魔導師だの異世界だのと説明するよりは都合がいい。

 

もっとも、これで全部をごまかせるとは思っていないけど。

 

「それと、もう一つ確認させてください」

 

「何でしょう?」

 

研究員の視線が、俺の肩へ向けられた。

 

「その小さなライオンについてですが……」

 

『ガウ?』

 

ヒッツが首を傾げる。

 

「ああ、こいつですか?」

 

「はい。測定中もずっと一緒にいましたが、能力によって生み出された存在なのでしょうか?」

 

「ええ。俺の能力の副産物みたいなものですね」

 

「なるほど……自律して行動できるのですか?」

 

「できますよ。相棒、挨拶」

 

『ガウッ!』

 

ヒッツが前足を上げた。

 

「おお……!」

 

「可愛い……」

 

研究員の何人かが思わず笑みを浮かべる。

 

……うん。

 

やっぱりヒッツは可愛いよな。

 

本人に言ったら、どういう反応をするか分からんけど。

 

「他にも同様の存在がいるのでしょうか?」

 

「まあ、何体かは」

 

「もしよろしければ、後日詳しい検査を――」

 

「あー、すみません」

 

俺は研究員の言葉を遮った。

 

「こいつらにも意思がありますし、負担になるような検査は遠慮させてください」

 

口調は穏やかに。

 

だが、断る意思だけははっきりと伝える。

 

ヒッツ達は研究材料じゃない。

 

俺の大切な相棒であり、仲間なんだからな。

 

「……承知しました。無理にお願いするつもりはありません」

 

「ありがとうございます」

 

研究員が引き下がったのを確認し、俺は小さく息を吐いた。

 

……よし。

 

とりあえず、これで一段落かな。

 

◇

 

研究施設を出た頃には、すっかり時間が経っていた。

 

「終わったぁー!」

 

俺は大きく伸びをする。

 

外の空気が気持ちいい。

 

「お疲れさま、ヒエン」

 

「二人もな。いやー、長かった」

 

「でも、レベル5だって!」

 

ロッテが楽しそうに笑う。

 

「八人目なんでしょ? すごいじゃん!」

 

「いや、すごいのは分かるけどさ……」

 

「けど?」

 

「……絶対面倒だろ、これ」

 

俺がそう言うと、二人は揃って笑った。

 

「ヒエンらしいわね」

 

「せっかくなんだから、もう少し喜べばいいのに」

 

「いやいや、喜んでるよ? 喜んでるけどさ」

 

俺は頭を掻いた。

 

「……まあ、なるようになるか」

 

『ガウッ!』

 

「おう、相棒。そうだな」

 

ヒッツの頭を軽く撫でる。

 

まあ、今から心配していても仕方がない。

 

それよりも――

 

「……あ」

 

「どうしたの?」

 

「大事なこと忘れてた」

 

「何?」

 

俺は真剣な顔で二人を見た。

 

「飯、食いに行こうぜ!」

 

「「……あはははっ!」」

 

何故か二人に大笑いされた。

 

……解せぬ。

 

◇

 

それからしばらくして。

 

俺達は学園都市の街中を歩いていた。

 

道路を走る清掃ロボット。

 

建物に設置された大型モニター。

 

行き交う学生達。

 

見慣れた日本の街並みに似ているのに、どこか未来的な雰囲気が漂っている。

 

「それにしても、すごい街だよね」

 

ロッテが周囲を見回しながら言う。

 

「だな。科学技術だけなら、こっちの世界も相当なもんだよ」

 

「ヒエン、あれ何?」

 

「ん?」

 

アリアが指差した先には、自動で道路を清掃するロボットがいた。

 

「ああ、清掃ロボットだな」

 

「へぇ……」

 

二人とも興味津々だ。

 

俺も最初に見た時は驚いたけど。

 

(……そういや、あれって確か)

 

原作のことを思い出しかけた、その時だった。

 

「きゃあっ!」

 

少し離れた場所から、悲鳴が聞こえた。

 

「ん?」

 

視線を向ける。

 

どうやら、荷物を積んだ小型の運搬車両が制御を失ったらしい。

 

車両が歩道へ乗り上げ、その先には買い物袋を抱えた女性と小さな子供がいた。

 

「危ない!」

 

アリアが叫ぶ。

 

だが、その時には既に俺は地面を蹴っていた。

 

(……間に合う!)

 

魔力による身体強化は使わない。

 

死ぬ気化によって高めた身体能力だけで十分だ。

 

瞬時に二人の前へ回り込む。

 

両腕には、先ほど解除したばかりの死炎の籠手改を再び展開する。

 

「コンタクトフォーム!」

 

迫ってくる車両。

 

俺は正面から力任せに受け止めるのではなく、車体の側面へ手を添えた。

 

足を踏み込み、進行方向をずらす。

 

同時に、大空の炎を薄く纏わせ、車体にかかる衝撃を和らげる。

 

ギギギギッ!

 

車輪が地面を擦る。

 

車両は横滑りしながら進路を変え、歩道の端で停止した。

 

「……よし」

 

周囲を確認する。

 

巻き込まれた人はいない。

 

車両も横転していない。

 

どうやら、上手く止められたようだ。

 

「大丈夫ですか?」

 

「あ、ありがとうございます……!」

 

女性が何度も頭を下げる。

 

隣の子供も、驚いた顔でこちらを見上げていた。

 

「怪我は?」

 

「だ、大丈夫です」

 

「そっか。よかった」

 

俺は笑って頷いた。

 

その時だった。

 

「ちょっと! 何があったんですか!?」

 

背後から声が聞こえた。

 

振り返る。

 

そこには、二人の少女がいた。

 

一人は、頭に花飾りをつけた少女。

 

もう一人は、肩までの黒髪をした少女。

 

……ん?

 

あれ?

 

(……ちょっと待て)

 

見覚えがある。

 

いや、ありすぎる。

 

「初春! こっちこっち!」

 

「佐天さん、待ってください!」

 

少女達がこちらへ駆け寄ってくる。

 

俺は思わず目を瞬かせた。

 

(……初春飾利と、佐天涙子?)

 

まさか、こんなところで出会うとは。

 

いや、学園都市にいるんだから、会う可能性は当然あるんだけどさ。

 

それでも、いきなり遭遇するとは思わなかった。

 

「すみません! 何か事故があったみたいですけど、大丈夫ですか?」

 

初春が心配そうに尋ねてくる。

 

「ああ、もう大丈夫。怪我人もいないみたいだし」

 

「そうですか。よかったぁ……」

 

ほっと胸を撫で下ろす初春。

 

一方、佐天は停止した車両と俺の籠手を交互に見ていた。

 

「……あれ?」

 

「ん?」

 

「もしかして、お兄さんがあの車を止めたんですか?」

 

「まあ、一応」

 

「ええっ!? すごいじゃないですか!」

 

佐天が目を輝かせる。

 

「それって能力ですか!?」

 

「んー、まあ、そんな感じかな」

 

「へぇー! どんな能力なんですか?」

 

……おお。

 

なかなか積極的な子だな。

 

原作どおりというか、何というか。

 

「えっと、炎と氷を扱う能力かな」

 

「炎と氷!?」

 

佐天が驚いた声を上げる。

 

「それって二つの能力を使えるってことですか!?」

 

「いや、一つの能力の応用って感じ」

 

「へぇー!」

 

その隣で、初春がふと何かに気づいたように顔を上げた。

 

「……炎と氷?」

 

「ん?」

 

「もしかして……」

 

初春は俺の顔を見つめる。

 

そして、少し戸惑いながら尋ねてきた。

 

「あの、失礼ですけど……お名前を伺ってもいいですか?」

 

「ああ。大空氷炎っていうんだ。よろしく」

 

「大空……氷炎……」

 

初春の目が大きく見開かれた。

 

「ええええっ!?」

 

「うおっ!?」

 

突然の大声に、俺は思わずのけぞる。

 

「ど、どうしたの!?」

 

佐天も驚いている。

 

初春は俺を指差しかけ、慌てて手を引っ込めた。

 

「さ、佐天さん! この人、もしかして……!」

 

「え?」

 

「新しく認定された、八人目のレベル5の……!」

 

「…………え?」

 

佐天の動きが止まる。

 

そして、ゆっくりと俺へ顔を向けた。

 

「……レベル5?」

 

「あー……」

 

俺は頬を掻いた。

 

……うん。

 

どうやら、もう情報が出回り始めているらしい。

 

(……早くない!?)

 

思わず空を仰ぐ。

 

とはいえ、初春は風紀委員〈ジャッジメント〉の一員だ。

 

一般にはまだ知られていなくても、能力者に関する情報が関係部署へ伝わっている可能性はある。

 

……いや、それにしたって早いだろ。

 

「えっ、ちょっと待ってください!」

 

佐天が慌てて声を上げる。

 

「お兄さん、レベル5なんですか!?」

 

「……まあ、今日そう言われたばかりなんだけどな」

 

「今日!?」

 

佐天がさらに驚く。

 

初春も、こちらを見つめたまま固まっている。

 

……ああ、うん。

 

何となく分かってきた。

 

これ、絶対に話が長くなるやつだ。

 

『ガウ』

 

肩に乗ったヒッツが小さく鳴いた。

 

(……相棒)

 

俺は心の中で呟く。

 

(なんか、早速面倒なことになりそうだぞ)

 

『ガウッ』

 

……何でそんなに楽しそうなんだよ。

 

こうして俺は、学園都市に来て早々、思いがけない出会いを果たすことになったのだった。

 

……いや、まだ何も起きてないけどな?

 

多分。

 

きっと。

 

そうだといいなぁ……。

 




また投稿しやすー。
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