続き書けたで候。
では、どうぞ∠( ゚д゚)/
ヒエンside
「……レベル5?」
目の前の少女が、ぽかんとした表情で俺を見つめていた。
黒髪のショートヘアが特徴的な少女、佐天涙子。
そして、その隣で携帯端末を操作している、頭の花飾りが特徴的な少女が初春飾利だ。
……うん。
まさか、こんなところでこの二人に出会うとはなぁ。
「あっ、ありました!」
「えっ、何が!?」
「新しく登録された能力者の情報です! 八人目の超能力者〈レベル5〉が認定されたって!」
「ええええっ!?」
佐天が驚きの声を上げる。
……まあ、そうなるよな。
何しろ、これまで七人しかいなかったレベル5が、突然八人になったんだから。
「名前は大空氷炎さん。能力名は氷凍炎焔〈アイスフレイム〉……」
初春が端末と俺の顔を交互に見比べる。
「……ご本人、ですよね?」
「ああ。まあ、そうなるな」
「本当に!?」
佐天がぐいっと身を乗り出してきた。
「じゃあ、お兄さんが八人目のレベル5なんですか!?」
「今日、そう認定されたばかりだけどな」
「すごいじゃないですか!!」
……近い近い。
佐天の勢いに、思わず半歩後ずさる。
すると、隣にいたアリアが小さくため息を吐いた。
「……やっぱり、こうなったわね」
「なったねー」
ロッテも楽しそうに頷いている。
……お前ら、少しは助けてくれてもいいんじゃない?
「えっと、佐天さん。少し落ち着いてください」
初春が苦笑しながら声をかける。
「だって初春! レベル5だよ!? あの御坂さんと同じレベル5!」
「それは分かっていますけど……」
「しかも八人目だよ!? 今まで七人しかいなかったのに!」
……うん。
改めて言われると、結構なことになってるな。
正直、俺としてはあまり嬉しくないんだけど。
学園都市でレベル5なんて肩書きを持ってしまえば、嫌でも注目を集めることになる。
それに、何より――
(……アレイスターに目を付けられる可能性もあるしなぁ)
学園都市の統括理事長、アレイスター・クロウリー。
この街の裏側で様々な計画を進めている人物だ。
……できれば、関わりたくない相手なんだけどな。
「……あの、少しいいか?」
「あっ、すみません!」
佐天が慌てて姿勢を正した。
「つい興奮しちゃって……」
「いや、別に怒ってるわけじゃないよ」
俺は苦笑する。
「ただ、その前に事故の後始末を済ませた方がいいんじゃないか?」
「あっ!」
初春が声を上げた。
そう。
俺達が今いるのは、歩道へ乗り上げた運搬車両のすぐ近くだ。
車両自体は停止しているが、まだそのままになっている。
周囲には野次馬も集まり始めていた。
「そうでした! 佐天さん、ちょっと待っててください!」
「うん!」
初春は腕に付けていた風紀委員〈ジャッジメント〉の腕章を確認すると、関係部署へ連絡を取り始めた。
……おお。
流石は風紀委員。
こういう時は頼りになるな。
俺も女性と子供に改めて怪我がないことを確認し、運搬車両の運転手らしい男性にも声をかけた。
幸い、全員無事だったらしい。
よかったよかった。
……まあ、車両の方は少し修理が必要そうだけど。
◇
それから十数分後。
事故の現場には関係者が到着し、車両の撤去作業が始まっていた。
俺達は初春から簡単な事情聴取を受けた後、ようやくその場を離れることになった。
「ご協力ありがとうございました!」
初春が丁寧に頭を下げる。
「いやいや。大したことはしてないって」
「いえ! あのままだったら大きな事故になっていたかもしれませんから」
「まあ、怪我人が出なくて何よりだな」
俺は頷いた。
すると、佐天が何かを思い出したように口を開いた。
「あっ、そういえば!」
「ん?」
「まだちゃんと自己紹介してませんでしたよね!」
そう言って、佐天は明るく笑った。
「私、佐天涙子っていいます! 柵川中学の一年生です!」
「初春飾利です。同じく柵川中学の一年生で、風紀委員をしています。よろしくお願いします!」
「ああ。改めて、大空氷炎だ。よろしくな」
俺も軽く頭を下げる。
すると、二人の視線がアリアとロッテへ向いた。
「あの、そちらのお二人は?」
「ああ、紹介するよ」
俺は二人へ視線を向けた。
「こっちがリーゼアリア・グレアムで、隣がリーゼロッテ・グレアム。俺の大切な仲間だ」
「リーゼアリアよ。よろしく」
「リーゼロッテだよ! よろしくね!」
「よろしくお願いします!」
「よろしくお願いしまーす!」
佐天と初春が揃って頭を下げる。
「……あれ?」
その時、初春が何かに気づいたように首を傾げた。
「リーゼアリアさんと、リーゼロッテさん……?」
「ん?」
「もしかして、お二人も今日の能力測定を受けられた方ですか?」
「ええ、そうだけど」
アリアが答える。
すると、初春が端末を確認し始めた。
「やっぱり……!」
「初春?」
「佐天さん、このお二人も新しく登録された能力者なんです!」
「えっ!?」
「しかも、お二人とも大能力者〈レベル4〉です!」
「えええっ!?」
佐天が再び驚きの声を上げた。
……今日、何回驚いてるんだろうな、この子。
「レベル5が一人に、レベル4が二人!?」
佐天が俺達三人を順番に見つめる。
「すごい……。何なんですか、この組み合わせ!」
「……まあ、色々あってな」
俺は曖昧に笑った。
流石に異世界から来たとは言えない。
それに、学園都市側には俺達が原石だと説明している。
余計なことは話さない方がいいだろう。
「ちなみに、皆さんはどちらの学校に通われているんですか?」
初春が尋ねてきた。
「いや、まだどこにも通ってないぞ」
「えっ?」
「学園都市に来たばかりなんだ。今日、能力測定を受けたところでさ」
「そうだったんですか」
初春が納得したように頷く。
「じゃあ、これから学校も決めるんですか?」
「多分そうなるんじゃないかな。まだ詳しい話は聞いてないけど」
実際、今後の生活については学園都市側と相談することになっている。
俺は高校三年生相当。
アリアとロッテについても、こちらの制度でどう扱われるのか確認が必要だ。
……まあ、色々と面倒そうだけど。
「それなら、これから学園都市のことを覚えていく感じですね!」
佐天が笑顔で言った。
「ああ。まだ右も左も分からないことが多くてな」
「だったら、私達が案内しましょうか?」
「……え?」
思わず聞き返す。
「学園都市のこと、色々教えられますよ!」
「佐天さん?」
初春が少し驚いたように声を上げる。
「いいじゃん、初春! せっかく知り合ったんだし!」
「それはそうですけど……」
「それに、学園都市に来たばかりなら、分からないことも多いでしょ?」
佐天がこちらへ向き直る。
「どうですか?」
「……そうだなぁ」
俺はアリアとロッテへ視線を向けた。
「二人はどう思う?」
「私は別に構わないわよ」
「私も! 色々見て回りたい!」
どうやら二人とも乗り気らしい。
なら、断る理由もないか。
「じゃあ、お願いしようかな」
「やった!」
佐天が嬉しそうに笑った。
「初春もいいよね?」
「もう……佐天さんったら」
初春は苦笑しながらも頷いた。
「私も、今日は風紀委員の仕事が終わっていますから大丈夫ですよ」
「よし、決まり!」
……うん。
何だか、あっという間に話がまとまってしまった。
まあ、いいか。
学園都市について詳しい人が案内してくれるなら、こちらとしてもありがたい。
それに――
(……原作キャラと普通に交流できるってのも、なかなか新鮮だな)
そんなことを考えていた時だった。
『ガァウ』
「ん?」
肩に乗ったヒッツが小さく鳴いた。
すると、佐天がその姿に気づく。
「あっ!」
「ん?」
「その子、さっきから気になってたんですけど……」
佐天が目を輝かせた。
「ライオンですか!?」
「おう。ヒッツっていうんだ」
『ガァウ!』
「わあっ! 可愛い!」
佐天が嬉しそうに声を上げる。
「初春、見て見て! 小さいライオン!」
「本当ですね……! ぬいぐるみみたいです!」
初春も興味津々だ。
「触ってもいいですか?」
「相棒が嫌がらなければな」
俺はヒッツへ視線を向けた。
「どうする、相棒?」
『ガウ?』
ヒッツは佐天達を見比べた後、俺に何かを伝えるように鳴いた。
……ああ、なるほど。
別に構わないらしい。
「いいってさ」
「本当ですか!?」
佐天がそっと手を伸ばす。
そして、ヒッツの頭を撫でた。
「わぁ……ふわふわ!」
『ガァウ~』
ヒッツも満更ではなさそうだ。
……うん。
可愛がられるのは嫌いじゃないんだよな、相棒。
「初春も触ってみなよ!」
「えっ、いいんですか?」
「どうぞどうぞ」
「ありがとうございます!」
初春も恐る恐るヒッツを撫でる。
「……本当に可愛いですね」
その表情が自然と緩んでいく。
……何というか。
見ていて微笑ましい光景だな。
「でも、この子って普通のライオンじゃないですよね?」
佐天が首を傾げる。
「ああ。普通の動物とはちょっと違うな」
「もしかして、大空さんの能力で生み出したんですか?」
「……まあ、そんな感じだと思ってくれ」
正確には俺の相棒なんだけどな。
ただ、それを詳しく説明すると魔法の話までしなければならなくなる。
ここは曖昧にしておこう。
「へぇー! レベル5って本当にすごいんですね!」
佐天が感心したように声を上げる。
……いや、レベル5だからできるってわけじゃないんだけど。
まあ、いいか。
◇
それから俺達は、佐天と初春の案内で学園都市を歩き始めた。
「この辺りは学生向けのお店が多いんですよ」
初春が説明してくれる。
「へぇ」
「飲食店も色々ありますし、買い物にも便利です」
「ほうほう」
俺は興味深く周囲を見回した。
確かに、飲食店が多い。
ファミレス。
ハンバーガーショップ。
定食屋。
カレー専門店。
……ん?
(……カレー専門店?)
俺の視線が、ある店の看板で止まった。
「……ヒエン?」
アリアが声をかけてくる。
「ん?」
「何見てるの?」
「いや、あの店……」
俺が指差すと、そこにはカレー専門店の看板があった。
「……カレー?」
アリアが呟く。
「……食べたいの?」
ロッテが尋ねる。
「……まあ、ちょっとな」
すると、佐天が嬉しそうに声を上げた。
「あっ! そこ、美味しいですよ!」
「本当か!?」
「はい! 私も何度か行ったことあります!」
……ほう。
それは聞き捨てならないな。
「じゃあ、そこにしないか?」
「いいよー!」
ロッテが即答する。
「私は構わないわ」
アリアも頷いた。
「初春は?」
「私も大丈夫ですよ」
「よし、決まり!」
俺は満足げに頷いた。
……いやー、よかった。
ようやく飯にありつける。
何しろ、今日は朝からずっと能力測定だったからな。
腹が減って仕方がない。
「ヒエンさんって、本当に食べるのが好きなんですね」
初春が微笑む。
「まあな。美味いものを食べるのは人生の楽しみの一つだし」
「分かります!」
佐天が大きく頷いた。
「美味しいものを食べると幸せになりますよね!」
「そうそう!」
……おお。
話が分かるじゃないか。
「……意気投合してるわね」
アリアが苦笑する。
「食べ物の話だからねー」
ロッテも笑っている。
そんなやり取りをしながら、俺達は店の中へ入った。
……さて。
どんなカレーが食べられるのか。
楽しみだな。
「いらっしゃいませー!」
店内に入ると、店員の元気な声が俺達を迎えた。
昼食時の混雑は過ぎているらしく、客の数はそれほど多くない。俺達は奥のテーブル席へ案内され、それぞれ腰を下ろした。
「へぇ、結構種類があるんだな」
メニューを開いた俺は、思わず感心した。
ビーフカレーにチキンカレー、カツカレー。野菜カレーやチーズカレーもある。辛さやトッピングまで選べるらしい。
……これは迷うな。
「ヒエン、どれにするの?」
隣からロッテがメニューを覗き込んできた。
「んー、そうだなぁ。カツカレーも捨てがたいし、ビーフカレーも美味そうだ」
「両方頼めば?」
「……それもありだな」
「ちょっと、ヒエン」
向かいに座ったアリアが呆れたように口を開く。
「さっきからお腹が空いたって言ってたけど、そんなに食べるつもり?」
「いやいや、流石に二皿は頼まないって。……多分」
「最後の『多分』が気になるんだけど」
そのやり取りを聞いていた佐天が、くすくすと笑った。
「大空さんって、本当に食べるのが好きなんですね」
「まあな。美味いものを食べるのは好きだぞ」
「それなら、ここのカツカレーがおすすめですよ!」
「おっ、そうなのか?」
「はい! カツがサクサクで美味しいんです!」
「よし、決めた!」
俺はメニューを閉じた。
「カツカレーにする!」
「決めるの早いですね!?」
初春が驚いたように声を上げる。
「地元の人のおすすめなら間違いないだろ?」
「ふふっ、そうかもしれませんね」
初春が微笑んだ。
結局、俺と佐天はカツカレー、アリアはチーズカレー、ロッテはチキンカレー、初春は野菜カレーを注文することになった。
料理を待つ間、話題は自然と学園都市の生活へ移っていった。
「そういえば、大空さん達って、学園都市に来たばかりなんですよね?」
初春が尋ねてくる。
「ああ。まだ分からないことだらけだよ」
「じゃあ、学校とかもこれから決めるんですか?」
「そうなると思う。詳しいことは、まだ相談中だけどな」
「そうなんですね」
初春は頷くと、少し考えるように首を傾げた。
「でも、レベル5の方なら、色々な学校から声がかかりそうです」
「……そうなのか?」
「はい。能力開発に力を入れている学校も多いですから」
「へぇ……」
俺は曖昧に頷いた。
……学校、か。
元の世界では高校三年生だったし、こちらでも通うことになるんだろうか。
もっとも、学園都市の学校となれば、普通の授業だけで済むとも思えない。
能力開発なんてものまであるわけだしな。
「アリアさんとロッテさんも、これから学校に?」
佐天が尋ねる。
「まだ分からないわね」
アリアが答えた。
「私達も、こちらのことはよく知らないから」
「そっかぁ。じゃあ、何か困ったことがあったら言ってくださいね!」
「ありがとう」
「私達に分かることなら、お手伝いします!」
初春も笑顔で続けた。
……ありがたい話だ。
この二人、初対面の相手にも親切なんだな。
原作での印象どおりというか、実際に話してみると改めてそう感じる。
「その時は頼りにさせてもらうよ」
「はい!」
そんな会話をしているうちに、料理が運ばれてきた。
「お待たせしました。カツカレーのお客様から失礼します」
「おおっ!」
目の前に置かれた皿から、食欲をそそる香りが立ち上る。
黄金色に揚がったカツ。
たっぷりとかけられたカレールー。
……うん。
これは期待できそうだ。
「それじゃ、いただきます!」
「いただきまーす!」
全員で食事を始める。
俺は早速、カツを一切れ切り分け、ルーと一緒に口へ運んだ。
「……ん!」
衣はサクサクで、中の肉は柔らかい。カレーも程よい辛さで、後から旨味が広がってくる。
「美味い!」
「でしょ!?」
佐天が嬉しそうに笑った。
「ここ、結構お気に入りなんですよ!」
「いやー、いい店を教えてもらったな。ありがとよ、佐天さん」
「いえいえ!」
俺達がそんなやり取りをしていると、アリアが苦笑した。
「本当に幸せそうね、ヒエン」
「そりゃ美味い飯を食ってるからな」
「分かりやすいねー」
ロッテも楽しそうに笑っている。
……まあ、否定はしない。
美味いものは美味いんだから仕方ないだろう。
と、その時。
『ガウ……』
「ん?」
肩の上から聞こえてきた声に、俺は顔を向けた。
そこには、じっとカレーを見つめているヒッツの姿があった。
「……相棒?」
『ガウ? ガウガウ!』
ヒッツは俺の顔と皿を交互に見つめている。
……ああ。
なるほど。
「お前も腹が減ったのか?」
『ガァウ!』
元気のいい返事が返ってきた。
「ははっ、分かった分かった。お前の分も何か用意するよ」
『ガァウ♪』
ヒッツが嬉しそうに尻尾を振る。
すると、その様子を見ていた佐天が身を乗り出した。
「あっ、ヒッツちゃんもご飯食べるんですね!」
「そりゃ食べるさ。こいつも食いしん坊だからな」
『ガウッ!』
「……何だよ、相棒。俺に似たって?」
『ガウガウ!』
「おいおい、そこは否定してくれてもいいんじゃないか?」
俺が苦笑すると、佐天とロッテが揃って笑い出した。
「仲いいですねー!」
「いつもこんな感じだよ!」
……まあ、長い付き合いだからな。
相棒の考えていることも、大体分かる。
さて、ヒッツの食事をどうするか。
そんなことを考えていた時だった。
『きゅっ!』
「……ん?」
聞き慣れた鳴き声が耳に届いた。
視線を下ろすと、いつの間にか俺の足元に白い小狐が現れていた。
「……ナハト?」
『きゅ〜♪』
ナハトは尻尾を揺らしながら俺を見上げると、今度はテーブルの上の料理へ視線を向けた。
「……お前も腹が減ったのか?」
『きゅっ!』
……やっぱりか。
どうやら、食事の気配を察して自分から出てきたらしい。
「わっ!?」
佐天が目を丸くする。
「今度は狐!?」
「真っ白ですね……!」
初春も驚いたように声を上げた。
「ああ。こいつはナハト。ヒッツと同じく、俺達の大切な仲間だよ」
『きゅっ♪』
ナハトが小さく鳴く。
「か、可愛い……!」
初春の表情が一気に緩んだ。
……おお。
何というか、すごい食いつきだな。
「触ってもいいですか?」
「ナハトが嫌がらなければな」
俺がそう答えると、ナハトは初春の方へ近づいていった。
『きゅ〜』
「あっ……!」
初春の膝に前足をかけ、甘えるように鳴く。
「抱っこしてほしいのかな?」
「多分な。抱いてやってくれるか?」
「はい!」
初春がそっとナハトを抱き上げた。
『きゅぅ〜♪』
ナハトは満足そうに目を細め、初春の腕の中に収まった。
「わぁ……ふわふわです……!」
「いいなぁ、初春!」
佐天が羨ましそうに声を上げる。
「私にも抱っこさせてよ!」
「ちょ、ちょっと待ってください、佐天さん!」
……うん。
すっかり人気者だな、ナハト。
ところが。
『ガウッ!』
「……ん?」
今度は赤い小ライオンが姿を現した。
「……アカッツ?」
続いて、青い小ライオンがひょっこりと顔を出す。
『ガゥ』
「アオッツまで……」
さらに、黄色と緑の小ライオン。
紫、藍、桃色の小ライオンまで次々と姿を現した。
「…………」
俺は思わず全員を見回した。
「……お前ら、揃いも揃って何してるんだ?」
すると、ヒッツが代表するように鳴いた。
『ガァウ!』
その視線の先にあるのは――
俺達の食事。
「……なるほどな」
どうやら、全員同じ目的らしい。
……いや、まあ。
自分達で出てくるのは別に構わないんだけどさ。
「まさか全員、飯目当てとはなぁ……」
俺は苦笑した。
「ええええっ!?」
佐天が驚きの声を上げる。
「ライオンがいっぱい!?」
「す、すごいです……!」
初春も目を丸くしている。
……まあ、初めて見たら驚くよな。
何しろ、色とりどりの小ライオンが七匹も増えたんだから。
「ヒエン……」
アリアが呆れたように声をかけてきた。
「ん?」
「もしかして、この子達……」
「ああ。腹が減ったらしい」
「……やっぱり」
アリアが小さくため息を吐く。
ロッテは楽しそうに笑っていた。
「あははっ! みんなヒエンと一緒だね!」
「おいおい。何で俺なんだよ」
「だって、食べ物のことになると元気になるでしょ?」
「……否定できねぇ」
俺は苦笑した。
その間にも、小ライオンズ達はそれぞれ好きな場所に落ち着き始めていた。
アカッツが料理に興味を示せば、アオッツがその隣から覗き込み、キッツとミドッツもテーブルの様子を窺っている。
ムッツは仲間達の間を動き回り、アイッツとピッツも俺達の方へ寄ってきた。
……うん。
賑やかだなぁ。
「……あの、大空さん」
初春が遠慮がちに声をかけてきた。
「ん?」
「この子達って、全員お名前があるんですか?」
「ああ、もちろん」
俺は順番に紹介することにした。
「赤いのがアカッツ。青いのがアオッツ。緑がミドッツで、黄色がキッツ」
名前を呼ばれた小ライオンズ達が、それぞれこちらを向く。
「それから紫がムッツ、藍色がアイッツ、桃色がピッツだ」
「へぇー!」
佐天が感心したように声を上げる。
「みんな名前があるんですね!」
「ああ。俺の大切な仲間達だからな」
『ガァウ!』
ヒッツが嬉しそうに鳴いた。
すると、ナハトも初春の腕の中から顔を上げる。
『きゅっ!』
「もちろん、ナハトもな」
『きゅ〜♪』
満足そうに尻尾を揺らすナハト。
……うん。
こういうところは可愛いんだよな。
「それにしても……」
佐天が小ライオンズ達を見回した。
「これだけいると、何だか大家族みたいですね!」
「ははっ、確かにな」
俺も笑って頷いた。
実際、長いこと一緒に過ごしてきた仲間達だ。
今更、家族みたいだと言われても違和感はない。
ただし。
「……さて、問題はお前らの飯だな」
俺はヒッツ達を見回した。
『ガウ?』
『きゅっ?』
「いや、そんな期待に満ちた目で見られてもな……」
普通の動物とは違うとはいえ、香辛料の強いカレーをそのまま食べさせる必要はない。
それ以前に、店内で勝手に食事をさせるわけにもいかないだろう。
「ちょっと店員さんに聞いてみるか」
俺は店員を呼び、事情を説明した。
当然ながら、最初はかなり驚かれた。
……そりゃそうだ。
いきなり小さなライオンが何匹も現れたんだからな。
ただ、ヒッツ達が騒がず大人しくしていることや、他の客に迷惑をかけないことを条件に、今回は特別に対応してもらえることになった。
「ありがとうございます。助かります」
俺は店員へ頭を下げる。
そして、ヒッツ達に向き直った。
「というわけだ。お前ら、店の中では大人しくしてろよ?」
『ガァウ!』
『きゅっ!』
ヒッツとナハトが返事をする。
小ライオンズ達も、思い思いに反応を返してきた。
「よしよし」
俺は満足げに頷く。
その後、店員さんと相談して、香辛料や味付けを避けた食事を用意してもらった。
ヒッツ達はそれを嬉しそうに食べ始める。
「わぁ……!」
佐天が目を輝かせた。
「みんなでご飯食べてる……!」
「可愛いですね……!」
初春も微笑んでいる。
……うん。
こうして見ると、なかなか微笑ましい光景だ。
アリアとロッテも楽しそうに眺めていた。
「本当に賑やかね」
「みんな嬉しそう!」
そんな中、俺はふとヒッツへ視線を向けた。
「……相棒?」
『ガウ?』
「ちゃんと自分の分を食べろよ?」
『ガァウ!』
ヒッツは元気よく返事をすると、再び食事を始めた。
……うん。
いい返事だ。
その隣では、ナハトが初春に撫でられながら満足そうにしている。
『きゅ〜♪』
「ふふっ、可愛いですね」
初春が微笑む。
……すっかり懐いたなぁ。
「……ねえ、初春」
「何ですか、佐天さん?」
「ナハトちゃん、私にも抱っこさせてよ」
「えっ? あ、はい!」
初春がそっとナハトを佐天へ渡す。
『きゅっ!』
「わぁ……!」
佐天が嬉しそうに声を上げた。
「本当にふわふわ!」
……うん。
どうやら、二人ともすっかり気に入ったらしい。
そんな様子を眺めながら、俺は残っていたカレーを口へ運んだ。
……美味い。
やっぱり、ここのカレーは当たりだな。
そして、ふと思う。
異世界に飛ばされて。
学園都市に来て。
色々と面倒なこともあるけど。
こうして仲間達と美味い飯を食べられるなら、それだけでも悪くない。
……まあ。
今後、何が起きるかは分からないけどな。
◇
食事を終えた後。
俺達は店の外へ出た。
「いやー、美味かった!」
俺は満足げに息を吐いた。
「結構食べたね、ヒエン」
ロッテが笑う。
「まあな」
「お腹いっぱいになった?」
「とりあえずは」
「……とりあえずなんだ」
アリアが呆れたように呟く。
……いや、満腹にはなったぞ?
ただ、また美味いものを見つけたら食べたくなるかもしれないだけで。
ヒッツ達も満足したらしく、今はそれぞれ思い思いにくつろいでいる。
ナハトは俺の腕の中で丸くなり、ヒッツはいつものように肩の上。
小ライオンズ達も、いつの間にか姿を消していた。
……まあ、腹も膨れたしな。
そんなことを考えていると、初春が携帯端末を確認した。
「あっ、そろそろ時間ですね」
「ん?」
「私、少し用事があるんです」
「ああ、そうなのか」
「はい。佐天さんも一緒に行く予定でして」
「そうそう」
佐天が頷く。
「本当はもう少し案内したかったんですけど……」
「いやいや、十分助かったよ」
俺は笑って答えた。
「美味い店も教えてもらったしな」
「そこなんですね……」
初春が苦笑する。
「もちろん、それだけじゃないって」
俺も苦笑した。
「色々教えてくれてありがとな」
「いえ!」
「こちらこそ、楽しかったです!」
佐天が笑顔で答える。
すると、彼女が何かを思い出したように口を開いた。
「あっ、そうだ!」
「ん?」
「よかったら、連絡先交換しません?」
「連絡先?」
「はい! また一緒に遊べたらいいなって!」
……なるほど。
それはいいな。
せっかく知り合ったんだし、これきりというのも寂しい。
「いいぞ」
「やった!」
佐天が嬉しそうに端末を取り出した。
俺も学園都市側から支給された携帯端末を取り出す。
まだ使い慣れていないが、基本的な操作は問題ない。
連絡先を交換すると、初春も遠慮がちに声をかけてきた。
「あの、私もよろしいでしょうか?」
「もちろん」
「ありがとうございます!」
こうして、二人との連絡先を交換した。
ついでにアリアとロッテも交換している。
……うん。
これで、また会う機会もできそうだな。
「それじゃ、またね!」
佐天が手を振る。
「またお会いしましょう!」
初春も頭を下げた。
「おう。またな!」
「またね」
「ばいばーい!」
俺達も手を振り返す。
二人の姿が人混みの中へ消えていくまで見送った後、俺は小さく息を吐いた。
「……ふぅ」
「どうしたの?」
アリアが尋ねる。
「いや、まさか初日から友人が出来ると思わなくてな」
「ふーん?」
アリアが少し不思議そうな顔をする。
……危ない危ない。
余計なことを口走るところだった。
俺は軽く咳払いして話題を変える。
「それより、そろそろ帰るか」
「そうね」
「うん!」
ロッテも頷く。
こうして俺達は、マンションへと戻ることにした。
……それにしても。
まさか、こんな形で佐天と初春に出会うとはなぁ。
この世界での生活も、少しずつ賑やかになってきた気がする。
まあ、できることなら平和な日常を送りたいものだ。
……もっとも。
この学園都市で、それがどこまで叶うのかは分からないけどな。
次も投稿しますー。