やっとかけたでごわす(゜▽゜*)
A's編ラストエピソード。
では、どうぞ( *・ω・)ノ
ヒエンside
空を見上げると、一筋の光がさらに光明を帯びる。
直後、爆発音のような音が小さく響いた。
「「「「「…………」」」」」
俺達は様子を見る。
「……状況終了だ」
クロノがデュランダルを待機状態に戻しながら呟く。
そして俺達の方へと向き、笑いかけた。
「協力感謝する」
どうやら無事ナハトヴァール侵食暴走体を消滅させることができたらしい。
皆が笑い合い、喜びを分かち合う。
ヴィータ、シグナム、ザフィーラ達はクロノに笑いかけ、シャマルはユーノとアルフ、リニスに微笑みかける。
なのはとフェイトは互いに拳を合わせ、笑いあっていた。
はやても穏やかに上空を見上げていた。
そして俺はというと……
「……たすけてー」
落下していた。
うまくいった安心感と達成感で気が抜けたのか、現在進行形で海へと真っ逆さまであった。
「「ヒ、ヒエン(君)ー!?」」
俺の声が聞こえたのか、俺の様子にいち早く気付いたなのはとフェイトが俺の落ちるところに既に回り込んでいた。
ガシッ
二人一緒に俺を受け止める。
「「大丈夫!?」」
二人同時に聞いてくるので答えた。
「……疲れた」
気が抜けた影響か、死ぬ気モードも解けてしまいもう身体も満足に動かせない。
疲労も溜まっているのか途端に眠気が襲ってきた。
「我が主!?」
「はやて!?」
「はやてちゃん!?」
その直後、はやての名を呼ぶ声が聞こえた。
俺は視線を横へと向ける。
そこにはリインフォースに抱えられて眠っているはやての姿があった。
恐らく力を使い果たして気絶してしまったのだろう。
「は……や……て……」
俺もそろそろ限界みたいだ。
そして俺も……ゆっくりと瞼を閉じた。
ヒエンside end
◆◆◆
第三者side
アースラ艦内へと戻ったなのは達は、まず眠ってしまった少年とはやてを医務室へと運んだ。
少年のそばにはなのは、フェイト、リニスの三名が、はやてにはヴォルケンリッター、リインフォースがそれぞれついていた。
「スー……スー……スー……」
はやては正しい呼吸を繰り返しながら眠る。
そんななかリインフォースが口火を切った。
「私の……夜天の書の破損は……やはり深刻だ。ナハトは停止したが、歪められた基礎構造は変わらない。私は、夜天の魔導書本体は……遠からず新たなナハトヴァールを生成し、暴走を始めるだろう」
「主はやては大丈夫なのか?」
シグナムが眠るはやてに視線を向ける。
「何も問題はない。ナハトからの侵食も止まり、リンカーコアも正常だ。不自由な足も時を置けば、自然に治る。……目覚めてすぐに大義を成された故、今は少しお疲れなだけだ」
リインフォースははやてに優しく微笑みかける。
それはまるで母親が娘を見守るような慈愛を帯びた視線であった。
「そう。じゃあそれなら万事オッケーね」
「ああ、心残りはないな」
シャマルとシグナムはどこか満足げに話す。
「ナハトが止まっている今、夜天の書の完全破壊は簡単だ。魔導書ごと破壊しちゃえば暴走することも二度とない。……代わりに私らも消滅するけど」
ヴィータも呟く。
しかしその声音はどこか寂しそうであった。
「…………」
ザフィーラはそんなヴィータに静かに視線を向けていた。
「ヴィータ……」
「いいよ別に!こうなる可能性があったことくらい、皆知ってたじゃんか」
ヴィータ達、ヴォルケンリッターは夜天の魔導書の守護騎士だ。
そして夜天の魔導書の一部でもある。
当然、夜天の魔導書本体を破壊されてしまえば彼女達が消滅してしまうのも自明の理であった。
だが
「いいや違う……お前達は残る。
リインフォースは静かに告げる。
その顔は穏やかであった。
しかしどこか……
哀しそうでもあった……。
────────
──────
────
「夜天の書の破壊!?」
フェイトの驚く声が、少年が眠っている個室の廊下に響き渡る。
「どうして!?防御プログラムはもう破壊したはずじゃ!?」
なのはもつい大声をあげてしまう。
「……ナハトヴァールは確かに破壊されたが、夜天の書本体が直にプログラムを再生してしまうそうだ」
クロノは手元のタブレットに映っている資料を見ながら答える。
隣にいるユーノも辛そうに答えた。
「……今度ははやてや、騎士達も侵食される可能性が高い。夜天の書が存在する限り、どうしても危険は消えないんだ」
「だから彼女は、今の内に……自らを破壊する様に申し出た」
「そ、そんな……」
二人の言葉に茫然とするなのは。
「でもそれじゃシグナムや騎士達も……」
フェイトも辛そうに呟くが……
「ううん、私達は残るの」
一人の女性の声がアースラの廊下に響く。
なのは達が視線を向けると、そこにはシャマルと獣形態のザフィーラの姿があった。
「ナハトヴァールと共に我ら守護騎士も本体から解放したそうだ」
ザフィーラが答える。
「それでリインフォースからなのはちゃん達にお願いがあるって……」
「「お願い?」」
なのはとフェイトは顔を見合わせた。
────────
──────
────
海鳴市 桜台
PM18:00
時刻は夕方……
日はすっかり暮れ、雪がしんしんと降る。
雪は積もり、すっかり冬景色となっていた。
その景色が見える高台の前で二人の人物が話していた。
「将よ、お前とはずいぶん長い付き合いのハズだが……こんな風に話したことはなかったな」
「……そうだな」
リインフォースとシグナムである。
二人の間に少し沈黙が流れる。
「…………」
「…………」
「……すまない。言葉が見つからん」
「謝るな。胸を張ってくれ」
二人は向き合う。
リインフォースは穏やかに笑いながら言った。
「我らが主のことを……よろしく頼む」
「ああ……」
ザッザッザッ…………
そのとき小さな足音が響く。
シグナムとリインフォースが視線を向けると、こちらに向かってくる小さな人影があった。
「来てくれたか」
なのはとフェイトだ。
「リインフォース……さん?」
「そう……呼んでくれるのだな」
「うん……」
リインフォースは優しく微笑みかけるが、なのはは少し辛そうであった。
「あの少年の様子は……どうだ?」
「……今は体力や魔力を限界まで使った影響で眠ってるけど、休めば元気になるって」
「そうか……良かった」
「うん……」
リインフォースの質問にフェイトが答える。
「「…………」」
「…………」
そして今度はフェイトが聞き返した。
「あの、貴方を空に還すの……本当に私達でいいの?」
「お前達だから……頼みたい」
続いてなのはも質問する。
「はやてちゃんにお別れの挨拶……しなくていいんですか?」
「主はやてを……悲しませたくないんだ」
リインフォースの答えになのはは俯く。
「でもそんなの……なんだか悲しいよ……」
見れば彼女の目には涙が溜まっていた。
「お前達にもいずれ分かる。海より深く愛し、その幸福を守りたいと思える者と出会ればな……」
「「…………」」
ザッザッザッ…………
再び足音が響く。
三人が視線を向けると、こちらに向かってくるヴィータ、シャマル、ザフィーラの姿があった。
「そろそろ始めようか」
そしてリインフォースは空を見上げ呟いた。
「夜天の魔導書の……終焉だ」
────────
──────
────
「ん……」
少女、八神はやては目を覚ます。
彼女は周りを見回す。
そこは自分の寝室であった。
時計に目を向けると、時刻は既に17時30分を指していた。
すると彼女は突然胸騒ぎのような感覚を覚える。
「リイン……フォース?」
そして、
「あかん……いかな」
はやては無性に焦る感情に囚われる。
少女は側にあったコートを着ると、急いで車イスに乗り、心の赴くままに向かい始めた。
彼女がいると思われる方角に向かって……。
────────
──────
────
「…………」
リインフォースは静かに目を閉じる。
彼女の足元には白銀の三角形の魔方陣が展開されていた。
そして彼女を中心に、左方になのは、右方にフェイト、後方にヴォルケンリッターの四人の姿があった。
なのははレイジングハートを構えながら……
フェイトもバルディッシュを構えながら……
目を閉じて集中する。
二人は夜天の魔導書を空へと還す、儀式魔法の構築を行っていた。
「「「「…………」」」」
ヴォルケンリッターはそれを静かに見守る。
《Ready to set.》
《Stand by.》
バルディッシュとレイジングハートが儀式の術式を組み終えたのか、合図を出した。
「ああ……短い間だったが、お前達にも世話になった」
《Don't worry.》(お気になさらず)
《Have a good journey.》(よい旅を)
「ああ……ありがとう」
リインフォースは二機にお礼を言う。
バルディッシュとレイジングハートも旅立つリインフォースへと、返事を返した。
(できればあの少年にもお礼を言いたかったが……)
リインフォースは最後まで自分に立ち塞がった少年のことを思い浮かべる。
あの少年には、特に言葉に言い表せぬ程の恩がある。
主のためとはいえ世界を滅ぼそうとした自分を止め、なおかつ、自分の目指すべき道をも教えてくれた。
だが少年は限界まで力を行使した結果、現在も眠っているらしい。
「お前達に頼みがある……」
「「え?」」
なのはとフェイトは首を傾げる。
「あの少年に伝えてくれないか?『世話になった。ありがとう』……それと『ちゃんとした礼も言えず、申し訳ない……』と」
リインフォースの言葉になのはとフェイトは頷く。
「分かりました」
「必ず伝えます」
「ありがとう……さあ、始めようか」
そして光が強まり、儀式が開始されようとしたとき……
「リインフォースーーーーー!!!!」
彼女の主……八神はやてが現れた。
────────
──────
────
「リインフォース!!」
はやてがリインフォースに呼び掛ける。
思わずヴィータが駆け寄ろうとするが……
「動くな!」
リインフォースが一喝する。
「動かないでくれ。儀式が止まる」
そしてはやては必死に車イスをこいで彼女達に近付いていく。
「あかん!やめてリインフォース!やめて!破壊なんてせんでえぇ!私がちゃんと抑える!大丈夫や!こんなんせんでえぇ!!」
「主はやて……良いのですよ」
リインフォースは穏やかに答える。
だがはやてにとって、その行為が逆に彼女を必死にさせた。
「いいことない!いいことなんか……なんもあらへん!!」
「……ずいぶんと長い時を生きてきましたが、最後の最後で……私は貴方に綺麗な名前と心をいただきました。ほんの僅かな時間でしたが、貴方と共に空を翔け、貴方の力になることができました」
「…………っっ」
「騎士達も貴方のお側に残すことができました。心残りはありません」
「心残りとか……そんなん……」
「ですから、
「あかん!私がきっとなんとかするっ!暴走なんてさせへんて約束したやんか!!」
「その約束はもう立派に守っていただきました」
「リインフォース!!」
はやてはリインフォースを必死に呼ぶが、彼女は穏やかに笑うだけだった。
「主の危険を払い、主を守るのが魔導の器の努め。貴方を守るための最も優れたやり方を、私に選ばせて下さい」
「そやけど……ずっと悲しい思いしてきて……やっと!……やっと救われたんやないかあぁ!!」
「私の意志は、貴方の魔導の騎士達と魂に残ります。私はいつも貴方の側にいます……」
「そんなんちゃう!そんなんちゃうやろ!!」
「駄々っ子はご友人に嫌われます。聞き分けを……我が主」
リインフォースは穏やかに笑いながら話す。
「リインフォース!!」
それを見たはやては車イスをこいでさらにリインフォースに近付こうとする……が、石に躓き転んでしまう。
「……なんでや……」
そのときはやてが呟く。
「……これからやっと始まるのに……これからうんと幸せにしたらなあかんのに……うぅ……」
「大丈夫です。私はもう世界で一番……幸福な魔導書ですから」
リインフォースは片膝をつき、泣いている主の涙を優しく拭う。
「リインフォース……」
「我が主……ひとつお願いが。私は消えて小さく無力な欠片へと変わります。もしよろしければ私の名は……その欠片ではなく、貴方がいずれ手にするであろう新たな魔導の器に送ってあげていただけますか?」
「…………」
「祝福の風……リインフォース……私の願いはきっとその子に継がれます」
「リインフォース……」
「はい、我が主」
そしてリインフォースは立ち上がり
彼女は再び魔方陣の中央に立つと、目を閉じる。
彼女の脳裏には今までの光景が映っていた。
(これが走馬灯というものか……)
こちらに優しく笑いかけてくれる主……
その主を慕う守護騎士達……
世界を破壊しようとする自分を必死に止めようとしてくれた小さな
そして……
何度力の差を見せつけても……
何度圧倒的な強さを見せつけても……
決して諦めることなく、主のために本当に守るべきもの……
本当の強さというものを教えてくれた優しい
「主はやて……守護騎士達……それから小さな勇者達……そして優しい
そしてリインフォースは穏やかに空へと還っていった……
「その儀式……少し待ってくれ」
そこに一人の
まるで助けを求める
しかし……
この
第三者side end
◆◆◆
ヒエンside
『ガゥガゥー』
「ん?」
俺は目を覚ます。
部屋を見回すと真っ暗であった。
どうやら自分の寝室で眠っていたらしい。
起き上がり、寝ぼけ眼で時計を見る。
時刻は18時を回っていた。
そのままボーッと考える。
「……俺、何してたんだっけ?」
妙にだるい身体で考える。
というかなぜか全身が筋肉痛で痛い。
「……んー」
何か重大なことを忘れているような?
『ガォー。ガゥ?』
すると心の中にいるピッツから『やっと起きたー。大丈夫?』との思念が届く。
「ああ、妙に身体が重いのと、全身が筋肉痛で痛むのを除けば大丈夫」
『ガゥ……』
『それ全然大丈夫じゃないと思う……』とピッツから思念が届くが、とりあえずスルーの方向で。
『ガゥガゥ。ガォ?』
「うん?なのは達が??」
『それはそうと、なのは達が高台前に集まってるけど行かなくていいのー?』とピッツが質問してくる。
「なんで集まってんの?」
『ガォー』
「…………は?はあああぁぁぁぁ!?」
そして俺はピッツから送られてきた思念でようやく忘れていた情報を思い出す。
「しまった!そうだった!リインフォースの件がまだ残ってた!?」
ピッツが説明してくれる。
どうやら俺が気絶してから軽く一時間半ほど経っているらしい。
ナハトヴァール侵食暴走体を倒した後、なのは達は気絶した俺とはやてを一旦医務室へと運び、簡単な検査を受けさせた。
そして俺とはやてを自室へと寝かしつけた後、そのまま高台の方へと行ったようだ。
そこでリインフォースから頼まれた……
夜天の魔導書を破壊するために。
はやてを苦しめていた元凶であるナハトヴァールを倒すことはできたものの、やはり夜天の魔導書本体の基礎構造は歪められたままであり、このまま放っておくと問題が起きるらしい。
放っておけば、再び自動防衛プログラムであるナハトヴァールが再生され、はやてがまたしても苦しめられることになるとのこと。
それを危惧したリインフォースが、なのは達に自分を破壊してほしいと申し出たのだ。
原作でも彼女は、はやてのことを思って自らを破壊し、空へと還っていった。
だが俺としては本音を言えば……
「救ってやりたいよなあ……」
前世の世界で穏やかな表情で空へと還っていく彼女を映像で見ていたとき、なんとかしてあげたい気持ちでいっぱいであった。
だが問題があった。
(一体どうやって救えばいい?)
現実問題、彼女を救う手立てが見つからない。
そもそも彼女を救うには、改悪された夜天の魔導書を元に戻す必要がある。
(ジュエルシードを使うか?いやダメだ。21個全て揃ってるならまだしも、たかだか10個程度じゃ、そもそものエネルギー量が足りない)
ジュエルシード単体の魔力保有量はせいぜいAランク。
夜天の魔導書を書き換えるだけのエネルギー量が圧倒的に不足している。
いや、仮に21個全て揃っていたとしてもうまくいく保証なんてどこにもない。
それによくよく考えれば、書き換え自体が不可能だ。
なぜなら……
誰も夜天の魔導書の元の形が分からないからだ。
それならせめて防衛プログラムのナハトヴァールだけでもなんとかしてやりたいが……
(時間が足りなさすぎる……)
防衛プログラムをなんとかするだけの時間もない。
ピッツの話では、現在なのは達は高台、桜台へと集まり始めたらしい。
後五分もすれば、儀式が始まってしまうだろう。
なんとかしたいと思っていても焦りだけが募り、思考もどこか投げやりになってしまう。
「……もうこうなったら、リインフォースに砲撃を当てて【調和】の能力で無理矢理なんとかするくらしいか思い付かないな……」
と俺は適当に呟くが……
「ん?」
どこか
「あれ?」
今さっき適当に呟いた言葉であったが冷静に考えれば……
「……これ案外いけるんじゃね?」
【調和】の能力でナハトヴァール自体を浄化もとい消去すれば、彼女を救えるのではないだろうか?
ナハトヴァールは現在、夜天の魔導書の本体であるリインフォースの中で再生しようとしている。
だとすれば、今のナハトヴァールは残りカスみたいなものだから、ブレイカークラスの攻撃を当てれば完全に消し去ることができるんじゃないか?
それに今思い出したが、PT事件でプレシアに最大パワーのビッグバンアクセルを食らわせたとき、【調和】の能力であいつの病気を治したことがあった。
病気を治すことができたのだから、ナハトヴァールを消去することもできない訳ではないだろう。
意外なところで光明が見えた。
「そうと決まれば……いくぞピッツ」
俺は筋肉痛で痛む身体をなんとか動かし起き上がる。
『ガゥ……ガォー』
『はいはい……分かってましたよー』と、ピッツが何やら投げやりになりながら転送魔法を発動させる。
え?
あのピッツさん?
なんでそんなに投げやりなの?
『ガゥガゥ』
『ナンデモナイヨー。サァ、イキマショー』と棒読みの思念が届く。
棒読みの時点でなんでもないことないと思うのだが……。
まあいいか。
そして俺は転送魔法で桜台へと向かった。
数分後……
「ヒエン、様子はどうですか……って、え?」
そこには絶叫する山猫がいたそうな。
────────
──────
────
俺が桜台へとやってくると、はやてがリインフォースに呼び掛けているところが遠目で確認できた。
「って、さぶっ!?」
周りを見渡せば、雪が降っておりすっかり積もっていた。
とりあえずこのままでは凍え死ぬので、俺はセットアップを済ませる。
そしてゆっくりと様子を伺いながら、はやて達の元へと歩み寄っていく。
今まさに儀式が行われようとしていたところであった。
(ギリギリだな)
「その儀式……少し待ってくれ」
俺の登場に他の面々は驚く。
「「「「「ヒエン(君)!?/オオゾラ!?」」」」」
「君は……!?」
中でも一際驚いているのはリインフォースであった。
「ヒエン……兄ちゃん?」
俺は座り込んでいるはやてに目を向ける。
その顔は涙と鼻水でグシャグシャであった。
俺は懐からオレンジのハンカチを取り出すと、はやての涙をふいてやる。ついでに鼻水も。
そして彼女の頭にポンと手を置き、言った。
「心配するなはやて。リインフォースは絶対に助ける」
「……ほんまに?」
「ああ、必ずだ」
それだけ言うと俺はこちらを唖然と見ているリインフォースに近付いていく。
「元気そうで良かったよ」
「それはこちらの台詞なのだがな……」
銀髪の女性……リインフォースはこちらを戸惑うような目で見てくる。
俺は早速彼女に話題を持ちかけた。
「単刀直入に聞くぞリインフォース。お前を助ける方法が……お前が消えなくてもいい方法があると言ったら……お前はどうする?」
「「「「「!?」」」」」
俺の言葉に全員が驚く。
「何を言って……そんな方法あるはずが……」
「ある。じゃなきゃ、わざわざここまで言いにきたりしない」
そして俺は説明する。
「今からお前に俺が全力の砲撃を放つ。そうすれば、俺の能力【調和】の力でお前の中にあるナハトヴァールを完全に消滅させることができる」
「……本当に……」
「?」
「本当に……ナハトをどうにかできるのか?」
彼女は俯いていた。
不安なのかもしれない。
主との別れを覚悟していたところで……
まさに今別れようとしていたところで……
突如、一筋の光明が見えたのだから。
だから俺は彼女を安心させるように言った。
「ああ、大丈夫だ。はやてのためにも絶対にあんたを救う。だから俺を信じてくれ」
俺の言葉に彼女はゆっくりと反応した。
「分かった。君を信じよう」
するとリインフォースは魔方陣を解除する。
俺はさっそく周りの面々に声をかける。
「皆、悪いんだが俺の後ろに来てもらえるか?あとリインフォースはそのままそこにいてくれ」
直後、なのはとフェイトがこちらにいの一番に近寄ってきた。
「「ヒエン(君)!!」」
「おう」
俺は二人が何か言う前に先に話す。
「悪いが二人とも話は後だ。お叱りも説教も全部終わらせた後でたっぷり受ける」
俺の言葉になのはとフェイトは呆れたように返す。
「うん。フェイトちゃん、予想通りだったよ……」
「ヒエンならもしかして……って思ってたもんね?」
うん?
「……二人共、もしかして俺がここにやって来るって分かってたのか?」
もしそうだとしたらビックリである。
未来予知なんてどこぞの大空のアルコバレーノだ?って話になってくる。
「まあ、ヒエン君だし」
「うん、ヒエンだし」
「おい」
だが彼女達から出た理由は「まあ、ヒエンだし……」であった。
全然納得できねぇ!?Σ(゜Д゜)
閑話休題
俺は準備に入る前に、再びなのはとフェイトに話しかけた。
「二人とも……急で悪いんだが魔力を少し分けてくれないか?」
「え?別にいいけど」
「私も大丈夫だけど」
「悪いな」
俺はなのはとフェイトの片手を掴む。
二人の細い手はすっかり冷たかった。
俺の右手にピンク色の淡い光が、左手に淡い金色の光が灯り、周囲を優しく照らした。
俺の中に彼女達の魔力が入ってくる。
あのフォームを展開するには今の俺の魔力残量じゃ足りなすぎるからな。
念には念をってやつだ。
「サンキュー二人とも」
二人から魔力を受け取った俺は向き直り、正面を見る。
そこには覚悟を決めたような表情をしたリインフォースがいた。
「……シャマル、結界の構築頼む」
「え、ええ。分かったわ」
そして俺はシャマルに結界を頼み、準備へと入る。
「
ドオオオ!!!!!!
直後、俺を中心に激しい魔力の衝撃波が迸り、全員驚愕する。
「な、なんという魔力波動の強さだ……」
「ここにいる全員の強さを合わせても敵わないかも……出力が違いすぎる」
「ヒエンのやつ……こんな奥の手を隠してやがったのか」
「凄まじいまでの魔力の奔流だ……」
シグナム、シャマル、ヴィータ、ザフィーラが驚く。
「す、すごい……」
「これが……オーバードライブ」
なのはとフェイトもフルドライブを大きく超えた力……オーバードライブの力の一端を知り、目を見開く。
「ヒエン兄ちゃん……」
そしてそれを俺の後ろで見ているはやても同様であった。
黒コートを身に纏った俺は同時に死ぬ気モードとなり、
「オペレーション……ダブルヒート」
そして俺は両腕をクロスさせるように前へと伸ばす。
すると肘側の噴射口から放つ柔の炎で姿勢を制御させる。そしてクロスさせた両腕に膨大なエネルギーが凝縮されていく。
リインフォースの中にあるナハトヴァールを完全に消し去るには、ブレイカークラスの砲撃でなければならない。
だがソーラーブレイカーを放つには周囲の魔力を利用する必要がある。
しかし今、俺の周辺には魔力が十分に散布されておらず、ソーラーブレイカーを放つだけの魔力を準備できない。
よってここは体力と気力を大幅に消耗してしまうが、ブレイカークラスの一撃を放てるダブルヒートバーナーを放つしかない。
「リインフォース……今、お前を救ってやる。いくぞ!!」
そして俺はチャージされた膨大なエネルギーを放った。
「ダブルヒートバーナー!!」
ヒッツを模した巨大な剛の炎にリインフォースは飲み込まれる。
『調和』の炎でリインフォースの中にあるナハトヴァールを消し去っていく。
「あ、温かい……」
リインフォースは目を閉じる。
ダブルヒートバーナーを通じて
俺はさらに力を込める。
「はぁあああああ!!」
ドオオオオォォォォォォォンンンンンンンンンンンン!!!!!!!!!
巨大な爆発音が響く。
リインフォースは完全に飲み込まれた。
◆◆◆
「はぁ……はぁ……はぁ……はぁ……」
本日二度目となるダブルヒートバーナーを放ち終えた俺はすぐにオーバードライブを解除する。
「さ、さすがに一日に二度も使うと……身体が持たないな……」
俺は息を切らせながら前を見る。
「…………」
前方には目を閉じたリインフォースがいる。
「リインフォース……」
はやてが心配そうな声をあげる。
「「「「「…………」」」」」
俺達も様子を見守る。
するとリインフォースは……
閉じていた目を開け、静かにこちらに
「ナハトが……私の中で再生していたナハトヴァールが……消滅……しました」
その言葉を聞いたとき、周りは歓声に包まれた。
リインフォースはゆっくりとはやてに向かって歩いていく。
「……我が主……」
「リイン……フォース?」
そしてはやてに優しく触れた。
「ほんまにもう……消えへんのか?」
「はい」
「ほんまにもう……離れんでもええんか?」
「はい」
「ほんまにもう……お別れしなくても……ええんか?」
「はい」
そしてはやては勢いよくリインフォースに抱きつき……
「リインフォース!リインフォース!!良かった……よかったああああぁぁぁぁ!!!!!!」
大きな声で泣いた。
────────
──────
────
ひとしきり泣いてスッキリしたのか、はやては恥ずかしそうにしていた。
それを見守っていた女性陣ももらい泣きしていた。
「はぁ……はぁ……はぁ……」
ただ俺は体力の消費が激しすぎたためか、その場で座り込んでいたが……。
するとはやてをお姫様抱っこしたリインフォースが俺の元へとやってきた。
「本当に……君にはなんて礼を言えばいいのか……」
「別にいい。はやてには助けもらった借りがあったから……それを返しただけだ」
俺の言葉にはやては疑問符を上げた顔になる。
「助けたって?私がヒエン兄ちゃんを?」
「ほら、俺が家の前で倒れてたとき……救急車呼んでくれただろ?」
「え?た、たったそれだけの理由で、私のこと助けてくれたんか!?」
「……あのとき、はやてが救急車を呼んでくれてなかったら、下手したら死んでたかもしれないからな。どうしてもその借りを返したかった」
あのときはプレシアにボロボロにやられて気を失っていたのだ。ひどければ出血多量で死んでいたかもしれない。
そしてリインフォースははやてを車イスに戻すと、こちらに手を伸ばしてきた。
「立てるかい?」
「あ、ああ悪い……」
俺はその手を掴み、立たせてもらう。
だが足元がふらつき姿勢を崩す。
その際にリインフォースが受け止めてくれた。
そのとき、彼女のとても大きくてたわわな物が俺の顔に当たった。
「おっと大丈夫かい?」
「ふごっ」
鼻と口がつまって呼吸ができない。
っていうか大きくて柔らかい大きくて柔らかい大きくて柔らかい大きくて柔らかいいいぃぃぃい!!!!!!!!!!
「ど、どうしたんだい?ずいぶんと顔が赤いが……」
「な、なんでも……ない」
そして俺は身動きをとろうとするが……
「あ……あん……きゅ、急にそんな動いたら……はぁん……」
リインフォースが扇情的な声を出し驚く。
その影響かさらに彼女の腕力が強まり、俺は余計に彼女の胸から脱出できなくなる。
するとそれに見かねたなのはとフェイトが俺とリインフォースを引き離す。
「え、えっちいのは、い、いけないことだと思います!!」
「そ、そういうのは……え、えっと、だ、だめだと思う!!」
若干名残惜しかったことは言わないでおこう。
「ヒエン兄ちゃん……リインフォースの胸を堪能するってなかなかやなあー」
はやてだけ別目線であった。
どこの親父だ。
するとリインフォースがこちらを顔を赤くさせながら見る。
おい。
リインフォース……お前さんがそういう顔をすると余計に誤解を生むだろう。
「き、君には一生かけてでも返せぬほどの恩がある。そ、その、何かしてほしいことがあればなんでも言ってくれ」
「え?なんでも??」
俺は思わずその言葉に反応する。
「き、君が
俺はリインフォースのその言葉を聞いたとき、衝撃が走った。
俺の脳内ではこういった妄想が展開されていた。
~あるホテルの一室~
ベッドの上でリインフォースが俺に迫る。
そして顔を赤くさせながら……上目遣いに言った。
『わ、私を、あなたの……貴方だけの……リインフォース色に染めてくれ……』
タラリ……
そんな妄想をしてしまったとき、俺は鼻から鼻血を出していた。
それに気付いたヴィータが声をあげる。
「おいヒエン!鼻血出てんぞ!?お前一体何想像したんだ!?」
「な、なんもしてねぇし!?リインフォースが迫ってくる妄想なんて欠片もしてねぇし!!」
「しっかり想像してんじゃねえかあぁああぁぁ!!」
「もうー!ヒエン君!!」
「ヒエン!!」
「お、落ち着けお前達……」
そしてなのはとフェイトもかなりのご立腹であった。
俺はこの状況からどう脱出するか考えていると……
チロリ……
急に何かに手を舐められる感触がした。
「ん?」
俺が側に目を向けるとそこには何やら白いモコモコがいた。
「きゅ~」
「え?なに??」
その白いモコモコは子狐のようであった。
そして手足の先と、耳が紫であり、何やら金色のペンダントを
「…………」
少しして考える。
(こいつもしかして……)
「お前……ナハトヴァールか?」
「きゅ~」
俺達の前に……
かつての闇の書の防衛プログラム……
ナハトヴァールが可愛らしくなって現れた。
次回から後日談。
そして今まで何やってたか説明会。
では、また(・∀・)ノ