続き書けたで候。
今回から『幕間 月村家御家騒動編』始まります。
では、どうぞ( *・ω・)ノ
第二百四十三話 新たな目的
ヒエンside
俺は日課の早朝訓練にてあることを行っていた。
「うぉおおおおおおお!」
俺は激しく回転しながら空中を跳躍する。
右足には炎が纏われており、眼前にはオレンジの魔力球が形成されている。
俺はその魔力球を勢いよく蹴り出した。
「ファイアトルネーーード!」
だがその右足は虚しく……空を切る。
俺はそのまま真っ逆さまに落下していき……
「ぎゃああぁぁ!!」
勢いよく地面に激突した。
ドガァアアアアアアンン!!!!!!
「いってぇー」
俺はお尻をさすりながら立ち上がった。
っていうかあの技、目が回る。
あんなに勢いよく回転しながら技を放てる豪炎寺さんマジ尊敬します。
「……何やってるのヒエン君?」
と、そこに聞き覚えのある声が。
顔を向けると呆れた目でこちらを見ている我らが未来の【白い魔王】こと、高町なのは様がおいでなさった。
「おはようヒエン」
なのはの隣ではこちらを苦笑いしながら見ている未来の【金色の死神】こと、フェイト・テスタロッサ様もおいでなさった。
今思ったけどこの二人の二つ名、【魔王】と【死神】って考えた人、最強じゃね?
しっくり来すぎてやばい。
ちなみにフェイトがなぜ【金色の死神】なのかというと、黒ずくめの衣装と、バルディッシュの形態が鎌であるため死神と大変マッチするのである。
「二人ともおはよう。そして何をやっていたかと言われたら、暇だから某超次元サッカーアニメの必殺技を再現していた」
「朝起こしにいっていなくなってると思ったらそんなことやってたんだ……。というか突っ込みどころ多すぎなの」
それがヒエンさんクオリティだからしゃーない。
「ところで魔法の練習はもう終わったの?」
なのはが質問してくるので俺はキメ顔でこういった。
「ソッコーで終わらせた」
彼女は驚く。
「なんか練習時間、段々短くなってない?」
「慣れたら作業みたいなもんだからなー」
あの筋肉痛を乗り越えてから、すこぶる調子がいい。
闇の書事件ではずっと戦い通しだったからか、自然と体力もついていた。
前より魔力も幾分か増えている。
魔力が増えたのはリンカーコアを蒐集された影響もあるのだろう。
限界まで蒐集された結果、その反動で魔力限界量が増えたのだ。
このまま魔力が増えていけばいずれSランクに届く日も近いかもしれない。
でもSランクって俺の中じゃ人間やめた人達のイメージしかないんだよな。
主に『元大魔導師』や『元管理局の英雄』、『現地上のエース』の三人の影響で。
「今日は旅行なんだから無理しちゃダメって言おうと思ったんだけど、余計な心配だったね」
「まあなー」
あのクリスマスの決戦から十日あまりが経つ今日のこの日。
年もすっかり変わり既に四日となっている。
今夜から二泊三日の五家族合同旅行が開かれることになっている。
高町家、ハラオウン家、月村家、バニングス家、大空家の五家族だ。
残念ながらはやて達八神家は本局の個人面接と、集団面接があるため旅行にいけない。
いや、その面接も今日の昼頃には終わる。
行動拘束自体もそんなにないのだが、はやて自身が真面目に罪を償っていかなければならないと定めたので、自ら行動を自粛しているのだ。
これは八神家全体で決めたことらしく、はやて達は自分達に気にせず旅行を楽しんでくれと言ってきている。
何か良さそうなお土産があったら買ってきてあげよう。
まあ八神家のことは石田先生や、さざなみ寮の人達が気にかけてくれるそうなのでそんなに心配はしていない。
「じゃあ私達も魔法の訓練始めようかフェイトちゃん」
「そうだね」
すると二人は準備を始めていく。
そこで俺はあることに気付く。
「あ、手袋さっそく使ってくれてるんだな」
「うん」
「温かいよー」
なのはとフェイトの手には俺がクリスマスプレゼントとしてあげた手袋があった。
二人にあげた手袋は、なのはがピンク色、フェイトが金色である。
二人の魔力光の色を参考にした。
ちなみにアリシアは水色、はやては銀色、アリサは赤色、すずかは紫色の手袋をあげた。
俺の体感時間としては二回目のクリスマスとなるのだが(プリキュア世界で既にクリスマスを経験しているため)、細かいことは気にしてはいけない。
そうこうしている内に二人はリニスとクロノ考案訓練メニューへと入る。
俺はそれをベンチに座りながらボーッと見学する。
(平和だなー)
そして平和を謳歌しながらこれからのことを考える。
とりあえず鬼門となるPT事件や、闇の書事件などの大きな事件は無事乗り越えることができた。
しばらくは大きなトラブルもないだろう。
だがここからの展開は原作知識でも少ししか語られていない状況が続く。
リリカルなのはの作品はテレビシリーズだけでいえば一作品目である無印、二作品目の
Strikersの時系列はA'sから十年後が舞台となっている。そのためファンの間ではその空白の期間のことを空白期と呼んでいる。
空白期では主に大きな事件が三つ起こる。
一つ目がなのは撃墜事件。
二つ目が戦闘機人事件。
三つ目がティーダ殉職事件だ。
PT事件や、闇の書事件が起こった年月が新暦65年とされているがその二年後、新暦67年に一つ目と二つ目の事件が起こる。そしてさらに二年後、新暦69年に三つ目の事件が起こる。
簡単に内容を説明すると、なのは撃墜事件とはなのはが異世界からの任務の帰還中、未確認飛行物体からの襲撃に合い、重傷を負ってしまう。
原作で語られた内容では、その襲撃は普段のなのはなら問題なく対応できていた筈なのだが、日頃から行っている無茶な訓練や、身体に負担を与えるエクセリオンモードを多用していた結果、身体に見えない形で負荷がかかっており、動きが一瞬硬直してしまい、その隙をつかれて重傷を負うのだ。
ちなみに未確認飛行物体は後にガジェットドローンという名称で呼ばれる。
二つ目の事件がゼストさん達に起こる戦闘機人事件だ。
首都防衛隊に所属するゼスト隊であるが、彼らはある件を追っていた。
それが戦闘機人だ。
戦闘機人とは、人の身体を機械と融合させ、常人を超える能力と強力な身体能力を得たサイボーグの総称であり、 違法とされる技術である。
戦闘機人は丈夫な鋼の骨格、強烈な人工筋肉を持つ他、インヒューレントスキル(通称:IS)という特殊技能を持っている。
レアスキルが天然の能力であるとすれば、ISは人工的に作られた能力だ。
ゼスト隊はそれらの違法技術で生み出された戦闘機人についての案件を追っていた。
そしてあるとき、彼らは戦闘機人が生み出されているとされるある研究施設の情報を掴む。
ゼストさんは部隊を率いてその研究施設への突入捜査へと向かうのだが、それは罠であった。
トーレ、クアットロ、チンクと呼ばれる戦闘機人ナンバーズと、ガジェットドローンIV型の機械兵器と戦闘し、殺されてしまうのだ。
その結果クイントさんは殉職し、ゼストさんも抹殺される。その上メガーヌさんは人造魔導師の素体として捕らえられてしまう。
ゼストさん達を罠に嵌めたのが、【
このジェイル・スカリエッティという男、実はStrikersのラスボスの位置にいる全ての黒幕であり、フェイトを生み出すきっかけとなった記憶転写型クローン技術【プロジェクトF】の基礎を作った人物でもある。
戦闘機人自体の技術に関しては長年研究されてきた人型兵器なのだが、完成の域に達したものはほとんどなく、倫理的にも技術的にも問題しかないため違法技術とされている。
非合法組織等で開発が秘密裏に進んでいたのだが拒絶反応が起こったり、機械部分のメンテナンス方法の問題など幾度もの課題が残っていたため実用化は不可能とされていた。
しかしジェイル・スカリエッティは人間をあらかじめ機械に受け入れられる素体として生み出すことでこの問題を解決させた。
つまり
この技術の確立により、数々の問題が解決し、多くの違法研究者が戦闘機人を開発するようになる。
そしてさらにジェイル・スカリエッティがこの技術を改良し続けることで生まれたのがナンバーズと呼ばれる集団なのだ。
実を言うと俺の所属する時空管理局のトップ、最高評議会は裏でこのジェイル・スカリエッティと繋がっている。
というかジェイル・スカリエッティを生み出したのがこの最高評議会である。
最高評議会はアルハザードの技術でジェイル・スカリエッティを誕生させると自らの手駒として利用するのだ。
そもそも最高評議会とは三人の人物で構成されている。
だがその正体は、肉体を捨て、生命維持ポットにて生き続ける脳髄である。
簡単に言えば、ルパン三世に出てくるかの有名な複製人間マモーのようなものである。
かつては世界の平和のために尽力していた三名であったが、時代が進むにつれて自分達の思惑で世界を動かそうと考えるようになる。
要は世界の中心は自分達と勘違いしているのだ。
だが結局、この最高評議会はジェイル・スカリエッティの策略により殺されてしまうのであるが……。
三つ目がティーダの殉職事件だ。
ティーダは21歳という若さにして亡くなる。
ティーダの亡くなった原因が、今の時間軸でいえば現在から四年後……いや年が変わったから三年後か?
逃走した違法魔導師の追跡・捕縛で対象の魔導師との交戦に敗れてしまい殉職する。
だがティーダとはかつて広域次元犯罪者ミラー・テットナーを捕まえるために協力した仲だ。
そのティーダが簡単にやられるとは思えない。
そのときティーダの相手をした違法魔導師がよほどの強敵だったのか、何かしらの罠に嵌められたのかは分からない。
だがそのティーダが死ぬ要因を作ったのは何も違法魔導師だけじゃない。
ティーダの所属する部隊の上司が無能であったためにティーダが死ぬ羽目になってしまったのだ。
俺のこれからの目的としてはこれらの三つの出来事を防ぐことだ。
「ズズッ」
俺は水筒に入れたほうじ茶を静かに飲む。
そして思考を続ける。
最近気付いたのだが、この世界は映画版だけでなく、テレビ版の世界の要素も数多く含んでいる。
それを確信したのが、ギル・グレアムとリーゼ姉妹の存在だ。
この世界のPT事件と闇の書事件は、映画版のストーリーで進みつつ、テレビ版の要素も所々に含まれていた。
そのためこの三つの出来事が起こる可能性も非常に高いと思われる。
この三つの出来事を防ぐのは容易ではないだろう。
だが俺は転生者だ。
転生者は神の加護によって物語の事件や出来事に巻き込まれやすくなる体質になる。
だとすれば、俺がこの三つの出来事に巻き込まれる可能性は高いはず。
その前提で考えれば……
この三つの出来事の対策を打つことも可能だろう。
この最悪な流れを絶ちきることも絶対にできるはずだ。
「だから今よりもっと……誰よりも強くならないとな」
とはいってもそんな修羅道を歩んでまで強くなろうとは思わん。ってか精神的に持たん。
だけどできることは全力でやっていこう。
とりあえずは今後のことはリニスと相談して決めるか。
そして俺は練習を終えたなのは達と高町家へと戻っていった。
ヒエンside end
◆◆◆
???side
そこは人里離れた洋館であった。
戦前から存在する西洋館であり、幕末期から明治期に建築された異人館でもあった。
その洋館のある書斎で一人の青年と金髪の女性がいた。
青年は窓から見える景色を見ながら溜め息をつく。
すると女性が青年に話しかけた。
「遊様……綺堂家からパーティーの招待状が届きました」
「パーティー……だと?」
「はい。月村家、綺堂家、
「……もうそんな時期か」
「いかがなさいますか?」
「放っておけ。そのパーティーには人間共、劣等種も参加するのだろう?なぜそんなパーティーにこの僕が出なきゃならない?だいたいあの下等生物……安次郎の奴の尻拭いも終わっていないというのに」
青年が忌々しそうに呟く。
が、突如アゴに手を添えて考え始める。
「いや待て……あのパーティーには【夜の一族】の大半が参加する筈……だとすれば丁度いいか」
青年は不敵に笑う。
「おいイレイン、そのパーティーに氷村家も参加することを伝えておけ」
「畏まりました」
イレインと呼ばれた女性は書斎から出ていく。
青年は窓を見る。
外は曇っていた。
「あの忌々しい妹諸共……邪魔な奴らは全て排除してやる。優秀な【夜の一族】の純血種は……この僕だけでいい」
青年は窓を見ながら呟いた。
「覚悟しておけよ……さくら」
外は雨が降り始めていた。
次回予告~
旅行を終えた主人公達。
慌ただしい毎日を過ごす中、あるとき月村家の新年パーティーに誘われる。
そこで月村家と親交のある人達と知り合うことに。
では、また(・∀・)ノ