大空の炎の力を操る転生者   作:Gussan0

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どうも(゜▽゜*)

やっと続き書けたで候。

最近見たい映画が多いっす。

ONE PIECEみたいし、天気の子みたいし、仮面ライダージオウみたいし。

休みの日になんとか見にいきたいですね。

では、どうぞ( *・ω・)ノ


第二百六十六話 歌い舞い踊る戦姫Ⅶ

第三者side

 

 

 

話し合いが終わった後、なのは達はそれぞれの部屋を割り当てられる。

 

そしてふと時間が空いた三人は、なのはの部屋でこれからのことについて話し合っていた。

 

先に会話を切ったのははやてだ。

 

 

「なあ、なのはちゃん、フェイトちゃん。なんやとんでもないことになったなあ」

 

 

「うん……」

 

 

「そうだね……」

 

 

しかしとても話し合いという空気には見えない。

 

どちらかと言えば愚痴大会のように思える。

 

すると三人は顔を見合わせ……

 

 

 

「「「はぁ……」」」

 

 

 

大きなため息をついた。

 

 

「いきなり別の世界の地球に来たと思うたら、大きな蛇に襲われてる人達がいて、助けるために戦って……」

 

 

「その流れでパヴァリア光明結社の錬金術師さんと、S.O.N.Gのシンフォギア装者さん達とも知り合って……」

 

 

「その後、私達のこと自己紹介して並行世界の秘密についても話し合ったね……」

 

 

はやて、なのは、フェイトの順で話す。

 

 

「で、あの人はいつもの如くさっそくやらかしたんよな」

 

 

「うん。いきなり宣戦布告なんてするし」

 

 

「それに私達にもまだ秘密にしてることがあるみたい」

 

 

そして三人は再度顔を見合わせ……

 

 

 

「「「はぁ……」」」

 

 

 

再度ため息をついた。

 

 

「でもこれでよう分かったわ。ヒエン兄ちゃん、このまま放っておいたらどんどん先にいってまう」

 

 

「うん。このままじゃきっと……色んな意味で置いていかれちゃう」

 

 

「心配事はそれだけじゃないよ。私はアンジェさんが言ってた『ヒエンは近い将来、大きな争いに巻き込まれる』って方も気になる」

 

 

三人は深刻そうに話す。

 

ちなみにこのとき件の少年はというと昼寝をしていたりする。

 

暢気な野郎である。

 

そのとき側にいたリインフォースが三人へ声をかける。

 

 

「我が主、それにタカマチにテスタロッサも。ここでずっと悩んでいても気が滅入るだけです。気分転換に出歩いてみてはどうでしょう?」

 

 

「そうやな。二人ともちょっと散歩にでもいかへん?」

 

 

「うん、そうだね」

 

 

「そうしよっか」

 

 

そして三人と保護者一人は潜水艦の中を探検することにした。

 

 

 

────────

──────

────

 

 

 

四人で歩いていると、前の方からシンフォギア装者の面々が歩いてくる。

 

さっそく響が四人に気付く。

 

 

「あ、おーい!なのはちゃーん!皆ー!!」

 

 

「あ、響さん!」

 

 

なのは達は笑顔で響達の元へと駆けていく。

 

ちなみにその様子を見ていた響達はほっこりしていた。

 

 

「皆でどこかいこうとしてたの?」

 

 

「はい。気分転換に散歩でもしようかってことになって」

 

 

「でも途中、どこに行ったらいいか分からなくなったんよなあ」

 

 

「にゃはははは……実はそうなんですはい」

 

 

なのはが先頭を切って歩いてたのだが、既に迷っていたことにはやては気付いていた。

 

 

「そうだ!良かったら四人とも私の部屋にこない?実はこういうもの手に入れたんだー」

 

 

見れば響の手には二つのDVDケースがあった。

 

タイトルは『魔法少女リリカルなのは』『魔法少女リリカルなのはA's』であった。

 

 

「そ、それって!?」

 

 

「私達の世界のお話!?」

 

 

「なんか改めて見るとびっくりやなあ」

 

 

「主が可愛く映っています!」

 

 

なのは達はそれを見て驚く。リインフォースだけは違う意味で驚いていたが。

 

 

「これを今から皆で見ようかって話してたんだよー。ね?」

 

 

響が他の面子にも目を向けると皆が頷く。

 

 

「なのは達も一緒に見るデース!」

 

 

「美味しいお菓子とジュースも用意してる」

 

 

切歌と調のキリシラコンビも笑顔で話す。

 

 

「ぜひ来るといい。君達とはじっくり話してみたかったからな」

 

 

「翼、あまりなのは達に変なこと言っちゃダメよ?」

 

 

翼も意外と乗り気である。マリアはそんな翼に注意を促す。

 

と、ここでクリスがあることに気付く。

 

 

「そういやお前らのとこの、あのお気楽バカはどこいったんだ?」

 

 

なのは達はお気楽バカと聞いてすぐに誰か検討がついた。

 

 

「ヒエン君は今お昼寝中です。たぶん疲れちゃったんだと思います」

 

 

「部屋に様子を見に行ったら幸せそうに眠ってたので起こすのも悪いかなって」

 

 

「またお腹すいてきたら、起きてくると思いますー」

 

 

それを聞いていたクリスは思った。

 

 

(年下のこいつらの方がしっかりしてんなあ……)

 

 

そして皆で響の部屋へと向かった。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

響の部屋につくと、調が慣れた様子でお茶の準備を始める。

 

それを見たなのはとフェイトも手伝いを申し出た。

 

 

「調さん!」

 

 

「私達も手伝います!」

 

 

調は少し驚きながらも笑顔になり、指示を出した。

 

 

「えっと、じゃあ戸棚にある紙コップと紙皿を人数分用意してくれる?」

 

 

「「分かりました!!」」

 

 

なのはとフェイトはキビキビと動く。

 

その慣れた感じで動く様子を見ていた装者達は驚いていた。

 

 

「なのはとフェイト……しっかりしてるデース」

 

 

「す、すごいよね。私なんか誰かしてくれると思って動こうとも思わなかったよ」

 

 

「貴方達はあの二人を見習いなさい」

 

 

マリアが二人に呆れたように言う。

 

 

「しっかし、本当にしっかりしてやがんなあ。まだ十歳だろ?」

 

 

「ああ、確かその筈だ。それにしても……かなり動き慣れているな」

 

 

クリスと翼も感心する。

 

 

「二人共、ヒエン兄ちゃんが何回も大怪我して動けんかったときとか、甲斐甲斐しくお世話焼いてたことありましたから。それでこういうのには結構慣れてるんです」

 

 

はやての言葉にマリアが驚く。

 

 

「何回も大怪我!?」

 

 

「あ、はい。ヒエン兄ちゃんってばその、日常生活も慌ただしいといいますか、トラブルが起こるのも日常茶飯事といいますか。事件が起こったときや、巻き込まれたときとかも率先して解決しようとするから生傷も絶えないんです。それで怪我で動けない兄ちゃんの代わりに二人が色々やってまして。それに兄ちゃんも結構ズボラやからご飯とかコンビニ弁当とかで済ませようとするし。だから二人とも、私もですけど、空いてるときはできるだけヒエン兄ちゃんの側にいてるようにしてるんです。最近はローテーションも安定してきたし、ようやく落ち着いてきた感じですね」

 

 

「ロ、ローテーションって、なんでそんなのが必要なんだよ!?」

 

 

クリスが思わずツッコミを入れる。

 

 

「あー、えっとヒエン兄ちゃんはその、近々大きな大会に出るので、それまで皆でサポートしようって決めたんです」

 

 

「「大会?」」

 

 

響と切歌が首を傾げる。

 

 

「はい。インターミドル・チャンピオンシップって言うんですけど。簡単に言えば魔導師の格闘大会ですね。ヒエン兄ちゃん、その大会のチャンピオン目指してるんです」

 

 

「へぇー!面白そう!!」

 

 

「なんだか聞いててとてもワクワクするデース!!」

 

 

「なんの話?」

 

 

すると準備を終えた調が疑問符を浮かべながら皆に話しかけた。

 

はやて達が視線を向ければ机の上には色とりどりのお菓子と飲み物が置かれていた。

 

 

「とりあえず準備できたからDVD皆で見よう?」

 

 

調の提案に一同は頷いた。

 

 

 

────────

──────

────

 

 

 

響はプレーヤーにDVDをセットすると、さっそく視聴を開始する。

 

心なしか皆一様にソワソワしていた。

 

特にそれが顕著に出ているのがなのは達であった。

 

 

「な、なんか緊張するね」

 

 

「そ、そうだね」

 

 

「二人とも、力入りすぎやで?」

 

 

そしてDVDの放送が開始される。

 

まずは一作目の『魔法少女リリカルなのは』からである。

 

 

『♪~』

 

 

OPが流れる。

 

すると響があることに気付く。

 

 

「あれ?これって翼さんの曲じゃないですか?」

 

 

「そうだな。これは私がソロデビュー仕立てのときに出した曲だ。懐かしいな」

 

 

翼の言葉になのは達は驚く。

 

 

「翼さんって芸能人なんですか!?」

 

 

「そうなんだよ。翼さんは世界を魅了するトップアーティスト『ツヴァイヴィング』の一人なんだよ!!」

 

 

「それだけじゃないデース!ここにいるマリアもデビューからたった二ヶ月でアイドルの頂点に立った歌姫なのデス!!」

 

 

「ほぇ~」

 

 

「すごい」

 

 

「大したもんやなあ。なあリインフォース?」

 

 

「はい我が主」

 

 

「うむ。誉められて悪い気はしないな」

 

 

「そうね。でも少し照れるわ……」

 

 

和やかな雰囲気が場を包む。

 

そして()()()()、魔法少女リリカルなのはの放映が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数時間後……

 

 

 

なのは達は放送を全て見終わる。

 

だがなのはとフェイトの二人は唖然としていた。

 

それは二人にとって全くの予想外なことがあったからだ。

 

二人は()()()()予想はしていた。

 

DVDのパッケージから、PT事件の内容が語られることを。

 

当初なのははフェイトの過去が語られることに少し思う所があったが、フェイトが大丈夫と言ったことからしぶしぶ納得。

 

しかし肝心の内容が、二人が想い描いていたものと随分違っていた。

 

まず一つ目、なのはとフェイトのバリアジャケット、デバイスのデザインが違っていたこと。

 

二つ目、二人が関わったジュエルシードの事件に微妙に差異があること。

 

三つ目、プレシアとアリシアの生存の有無。

 

そして四つ目。

 

 

「ヒエン……いなかったね」

 

 

「うん」

 

 

少年の存在がなかったこと。

 

なのはとフェイトは痛感する。

 

少年がいなければ自分達の世界のアリシアとプレシアもこのアニメと同じ末路を辿っていたことを。

 

はやてやリインフォースも、なのはとフェイトの出会い、PT事件での関わり、フェイトの出生の秘密を知り少なくない衝撃を受けていた。

 

そしてそれは一緒に見ていた装者達も同じであった。

 

響はフェイトがプレシアに失敗作、嫌いだったと言われたシーンをかつて自身の境遇と父が家を出ていったことと重ね合わせ、翼は父に認められたい一心で防人として(つるぎ)として生きようと足掻いていた頃を思いだし、クリスはかつてフィーネと暮らしていた時のことを思いだした。

 

切歌、調、マリアは幼いながら天涯孤独となってしまったフェイトの境遇を自身の過去と重ねていた。

 

彼女達には(マム)と呼べる存在、ナスターシャ教授がいた。

 

だが()()()()()()()()()()そういった存在はいない。

 

それでも画面に映る彼女は懸命に生きようとしていた。

 

敵として立ちはだかった女の子と友になることをきっかけに未来を歩き出そうとしていたのだ。

 

その結果……

 

 

「うわあああぁぁぁんん!フェイトー!よく頑張ったデスよおおおおぉぉぉ!!!!」

 

 

「なのはちゃんも諦めずによく頑張ったねえぇぇぇ!!!!」

 

 

切歌と響(お馬鹿二人)にかなりの影響を及ぼした。

 

切歌はフェイトに、響はなのはに勢いよく抱き付く。

 

 

「「え、えええぇぇぇぇぇ!?」」

 

 

案の定フェイトとなのはは驚き、なすがままにされる。

 

だがそこに待ったをかける常識人が一人。

 

 

「落ち着け馬鹿共!!」

 

 

 

スパパパアアァァァンン!!!!!!

 

 

 

「デエェェェス!?」

 

 

「きゃん!?」

 

 

クリスの見事なハリセン捌きが炸裂した。

 

そして落ち着いたことを機になのはとフェイトは話す。

 

自分達の世界のPT事件とは根本的に違うこと……プレシアとアリシアが無事であること。

 

それを聞いた装者達は驚く。

 

 

「だとしたら、二人は一体どうやって助かったの?」

 

 

調が疑問の声をあげる。

 

それに答えたのはフェイトだった。

 

 

「ヒエンが助けてくれたんです。バルディッシュ」

 

 

《Yes.sir》

 

 

バルディッシュは主の意図を察して映像モニターを出す。

 

そこに映っていたのはプレシアと相対する少年の姿だった。

 

 

『だからこそ……たとえどんな手を使っても………私はあなたを必ず殺す』

 

 

『だったら俺も必ずあんたを止める。だから……死ぬ気でかかってこい!!プレシア・テスタロッサ!!』

 

 

激しい戦いを繰り出す二人。

 

 

『貴方にアリシアの何が分かる!?わたしの何が分かる!?知った風な口を聞くなクソガキが!』

 

 

『ああ!分かんねぇよ!あんたの気持ちなんてこれっぽちも!だけど……あんたが娘が望んでいないことを起こそうとしていることくらいは分かる!!だから止めるんだろうが!!』

 

 

何度もぶつかり合う。

 

 

『なんで分からない!?あんたの言うアリシアが優しい笑顔の素敵な女の子なら!!人々が犠牲の上に成り立った過程で蘇ったって喜ぶはずがないだろうが!?』

 

 

『そんなことない!アリシアなら……わたしのアリシアならきっと分かってくれる!!』

 

 

そして互いの信念をかけて戦いながら言葉を紡ぐ。

 

 

『だいたい娘の死ひとつ受け止められない母親がどこにいる!?あんたがそれを否定したらアリシアと過ごした日々も否定することになるんだぞ!?』

 

 

『そうよ!だからわたしはあの子との日々を取り戻す!!だからあの子を蘇らせるのよ!!』

 

 

『くそったれ!いい加減現実から目を背けるな!アリシアの死から逃げるな!!フェイトから逃げるな!!お前は母親だろうが!!プレシア・テスタロッサアアアァァ!!』

 

 

『わたしは認めない!全て認める訳にはいかないのよ!!』

 

 

装者達はその映像をしっかりと見る。

 

 

「それでヒエンは見事母さんに勝利しました。そして……」

 

 

映像にはアリシアと共に虚数空間へと落ちていくプレシア。

 

フェイトが必死に腕を伸ばす……とほぼ同時に一筋の影が虚数空間へと飛び込んだ。

 

 

「姉さんと母さんを助けてくれたんです」

 

 

「あ、あの子はなんて無茶をしているの……」

 

 

「うん。でも凄くボロボロのはずなのに」

 

 

「フェイトのお母さんとお姉さんを無事助けてるデース」

 

 

マリア、調、切歌が驚く。

 

するとここではやてが呟く。

 

 

「そういえばヒエン兄ちゃんが家の前で傷だらけで倒れてたのって……」

 

 

「うん、たぶんそれは母さんにやられたときのやつだよ。このときの映像のヒエン、包帯巻いてるでしょ?治療したのがそのときの傷なんだ」

 

 

「え?でも待って。確かそのときヒエン兄ちゃん入院してて、私とちゃんと会話してたけど」

 

 

「……脱走したんだよ」

 

 

「脱走?」

 

 

「そのときはやてちゃんと病室で話してたヒエン君は分身で、本体はプレシアさんと戦ってたの」

 

 

「……ホンマに?」

 

 

「「うん」」

 

 

はやての疑問になのはとフェイトが答える。

 

一年越しの疑問が解けるとはやては頭を抱える。

 

 

「そ、そのときから無茶苦茶やったんか……」

 

 

「む、無茶しすぎだよ……」

 

 

「お前が言えたことじゃねえが、それは一理あるな」

 

 

「確かに」

 

 

響、クリス、翼も唖然とする。

 

とここで空気を変えるためにマリアが提案する。

 

 

「と、とりあえず少し休憩してから次の作品を見ましょう。ここまできたら全部見たいわ」

 

 

「次はA`sデース!!」

 

 

「はやてちゃんが出るやつだね」

 

 

休憩してから次の作品、『魔法少女リリカルなのはA`s』を見ることになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

閑話休題

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しばらく休憩した後、全員で()()()()『魔法少女リリカルなのはA`s』に目を通す。

 

だがそれははやてとリインフォースにとって辛いものであった。

 

初めて第三者目線から見るヴォルケンリッター達の行動。

 

彼女達にとってアニメの話は並行世界の出来事であるが、とても無視できる内容ではなかった。

 

徐々に語られるヴォルケンリッター達の行動の秘密。

 

なのは達への襲撃は、第一級指定ロストロギア【闇の書】を完成させるために魔導師の源であるリンカーコアを奪うためであった。

 

そしてそれは闇の書の影響で両足を麻痺させているはやての為でもあった。

 

幾度も衝突するヴォルケンリッターと管理局。

 

するとある時、謎の仮面の二人組が姿を現す。

 

その二人組はなのは達の友人、クロノと因縁深い者達であった。

 

その正体はリーゼロッテとリーゼアリア。

 

クロノの魔法の師匠である。

 

リーゼ達が動くのは主であるギル・グレアムのため、そして憎しみの塊である闇の書を封印するためであった。

 

 

「なのはちゃん、フェイトちゃん?この人達って報告書にあった仮面の男達やんな?」

 

 

「う、うん」

 

 

「そうだね……」

 

 

だが現時点ではやてはまだ仮面の男達の正体を知らない。

 

そして仮面の男達が遂に動き出す。

 

クリスマスイブになのは達とヴォルケンリッターは、はやての病室で邂逅してしまい、病院の屋上で激突する。

 

二人はなのは達が戦っている間に、病室で眠っていたはやてを屋上へと転送魔法で転移させると、それぞれなのはとフェイトに変身魔法で成り済まし、はやてへと精神的に追い詰める言葉を投げ掛ける。

 

徐々に追い詰められていくはやて。

 

更なる追い討ちとしてヴォルケンリッターが仮面の男達によってリンカーコアを闇の書に奪われていく。

 

その結果……

 

 

『……また……全てが終わってしまった』

 

 

闇の書、いや夜天の魔導書の管制人格が復活した。

 

そして始まるなのは&フェイトvs管制人格の戦い。

 

二人とも善戦するが管制人格の圧倒的な強さに押されていた。

 

そしてここで予想外なことが起きる。

 

なんとフェイトが闇の書の中に吸収されてしまったのだ。

 

一人になってしまったなのはであったが、彼女は切り札であるフルドライブ:エクセリオンモードを発動させることで管制人格との決戦に望む。

 

しかしそれでも管制人格の方が戦闘力は上であった。

 

追い詰められるなのは。

 

万事休すかと思われたそのとき無事闇の書の空間の中から脱出してきたフェイトが来たことで状況は一変。

 

ナハトヴァールの暴走が始まる。

 

しかし二人が協力することで管制人格とナハトヴァールを切り離すことに成功したのだった。

 

そんななか、クロノは仮面の男達を捕縛する。

 

その二人はリーゼ姉妹であった。

 

そしてその二人を動かしていた男性、ギル・グレアムの存在をはやては知ってしまう。

 

 

「グレアム……おじさん?」

 

 

画面にはギル・グレアムとクロノが映る。

 

 

『……リーゼ達は貴方の指示で動いてた。そうですね?……グレアム提督』

 

 

クロノが話す。

 

 

『……十一年前の闇の書事件以降、提督は独自に闇の書の転生先を探していましたね?そして発見した。闇の書の在処と……現在の主、八神はやてを』

 

 

空中にはやてと闇の書の映像が展開される。

 

 

『しかし完成前の闇の書と主を押さえてもあまり意味がない。主を捕らえようと……闇の書を破壊しようと……すぐに転生してしまうから。だから監視をしながら闇の書の完成を待った。見つけたんですね?闇の書の永久封印の方法を……』

 

 

グレアムは静かに語り始める。

 

 

『……両親に死なれ、身体を悪くしていたあの子を見て心は傷んだが……運命だとも思った。孤独な子であれば、それだけ悲しむ人も少なくなる』

 

 

『だからあの子の父の友人を語って生活の援助をしていたんですね?』

 

 

クロノは机の上にある手紙の封筒と、写真を置く。

 

封筒には【グレアムさんへ】と書かれており、写真には仲良さげに写っているはやてとヴォルケンリッターの姿があった。

 

 

『永遠の眠りにつく前くらい、せめて幸せにしてやりたかった。……偽善だな』

 

 

『封印の方法は、闇の書を主事……凍結させて次元の狭間か、氷結世界に閉じ込める。そんなところですね』

 

 

『そう。それならば闇の書の転生機能は働かない』

 

 

すると今まで様子を見ていたリーゼ姉妹が声をあげる。

 

 

『これまでの闇の書の主だってアルカンシェルで蒸発させたりしてんだ!それとなんにも変わらない!!』

 

 

『クロノ……今からでも遅くない。私達を解放して。凍結がかけられるのは暴走が始まる数分だけなんだ』

 

 

『……その時点ではまだ闇の書の主は永久凍結をされる犯罪者じゃない。違法だ』

 

 

『そのせいで!そんな決まりのせいで……悲劇が繰り返されてんだ。クライド君だって……あんたの父さんだってそれでっっ!!『ロッテ』……っ!!』

 

 

クロノの言葉にロッテが言い返そうとするがグレアムに止められる。

 

 

『……法以外にも提督のプランには問題があります』

 

 

クロノは続ける。

 

 

『まず、凍結の解除ですがそう難しくはないはずです。どこに隠そうと、どんなに守ろうと、いつかは誰かが見つけて使おうとする。怒りや悲しみ……欲望や切望……そんな願いが導いてしまう。……封じられた力へと』

 

 

「そ、そんな。グレアムおじさんが私を……」

 

 

はやては項垂れる。

 

 

「お気を確かに我が主!……すまない。DVD再生を止めてもらえないだろうか?これ以上は主の精神が持たない」

 

 

「え、ええ。その方が良さそうね」

 

 

マリアが電源を切るとDVDの放映が終わる。

 

はやてはなのはとフェイトに顔を向けた。

 

 

「なあ、なのはちゃん、フェイトちゃん?二人はこのこと知ってたん?」

 

 

二人は答える。

 

 

「う、うん」

 

 

「ごめん……」

 

 

「ヒエン兄ちゃんは……?」

 

 

「ヒエン君も最初から知ってたみたい」

 

 

「行方不明になってるときに一人で調べてたみたいだから」

 

 

「じゃあヒエン兄ちゃんやったら私らの世界のグレアムおじさんが何しようとしてたか知ってる……。私ちょっとヒエン兄ちゃんの所に行ってくる!!」

 

 

「我が主!?」

 

 

「「はやて(ちゃん)!?」」

 

 

はやては部屋を飛び出し、走り去る。

 

それを見て急いで追いかけるリインフォース、なのは、フェイト。

 

 

「私達も行こう!!」

 

 

それを見た響達もすぐに後を追いかけた。

 

 

 

 

 

 

はやては走りながら考える。

 

 

(今はもう夕方になっとる。ヒエン兄ちゃんやったら、この時間帯にごはん食べてるかもしれへん。なら目指すとしたら食堂や!!)

 

 

はやてはさらにスピードをあげる。

 

しばらく走ると食堂の入り口が見えてきた。

 

そして食堂へと足を踏み込むと、丁度こちらへ向かってくる少年と目が合った。

 

はやては少年に話しかける。

 

 

「なあ、ヒエン兄ちゃん?」

 

 

「どうした?」

 

 

「正直に答えてほしいんやけど……」

 

 

そしてはやては言った。

 

 

 

 

 

 

「グレアムおじさんが……私を封印しようとしてたってほんま?」

 

 

 

 

 

 

少年の目が僅かに見開いた。

 

 

 

第三者side end

 

◆◆◆

 

ヒエンside

 

 

 

俺達は食堂から俺の部屋へと場所を移す。

 

後から来たなのは達と響達も一緒だ。

 

総勢十人の女子が部屋へとやってきたが、とてもではないが喜べる雰囲気ではない。

 

どこか空気は重苦しい。

 

そして俺ははやてと向き合う。

 

 

「ヒエン兄ちゃん教えて?()()()()()()グレアムおじさんがしようとしてたこと」

 

 

俺は言葉をなくす。

 

()()()()()()……ということは既にはやてはある程度事情を察しているということだ。

 

 

(失念していた……。考えてみれば分かることじゃないか。この世界に『魔法少女リリカルなのは』のアニメがあるということは、それを見れば隠していた情報も分かってしまう)

 

 

「一つ聞きたい。どこまで知ってるんだ?」

 

 

「ある程度は。この世界の『魔法少女リリカルなのはA´s』のアニメからだいたいのことは知ってる。所々は違うけど、大まかな部分は私達の世界で起きた出来事とも一致してるから」

 

 

「そうか」

 

 

俺達の世界は、リリカルなのはのテレビ版と映画版の両方が混ざってる世界である。

 

テレビ版を見るだけでもある程度は事情を察せられる。

 

 

「…………」

 

 

俺は無言になる。

 

周囲の人達から見れば今の俺は、苦虫を噛み潰したような表情をしていることだろう。

 

するとそんな俺を見かねてリインフォースが話しかけてきた。

 

 

「ヒエン、主に真実を話してあげてほしい」

 

 

「リインフォース?」

 

 

「君が主に今回のことについて話さなかった理由も検討がついている。大方主を悲しませないためだろう?」

 

 

「…………」

 

 

「だが主は既に真実の一端を知ってしまった。なら、話してあげてくれ。大丈夫。何があっても()()()()()()()()()()

 

 

「リインフォース……」

 

 

「『主の傍にいて支える……それだって立派に主を幸せにするやり方だ』……君があのとき、迷っていた私に新たな道を示してくれた言葉だ。だから信じてくれ。()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

「その言葉も……」

 

 

「ああ。この言葉もかつて君が言ってくれたものだ」

 

 

「……分かったよ。話す」

 

 

そして俺は改めてはやてと向き合い、話す。

 

ギル・グレアムがはやてに向けてしようとしていたこと。

 

闇の書を封印するためにはやてに近付き、生活を援助していたこと。

 

ヴォルケンリッターが闇の書を完成させるのを待って後から奪うことを画策していたこと。

 

そしてあえて暴走させることで氷結の杖デュランダルで永久凍結しようとしていたことを話す。……途中、デュランダルという言葉を聞いた響、翼、クリスの三人が妙に反応していたが気にしないでおこう。

 

 

「やっぱり……そうなんや」

 

 

「……ああ」

 

 

はやては俯く。

 

 

「ギル・グレアムははやてが大きくなって一人立ちできるようになったら全てを話すつもりだった。それまでは援助も続けて……償いもするつもりだ」

 

 

「……うん。それは分かってる。グレアムおじさんとは手紙で連絡取ってるし。こっちを気遣ってくれてるのは分かるから。今はまだ心の整理がつかへんけどいつか直接話そうと思ってる」

 

 

「そっか」

 

 

「うん」

 

 

少し沈黙する。

 

会話を再開させたのははやてだった。

 

 

「……あと前から気になっててんけど、私らの世界の仮面の男達って()()いたやんか?この世界で見たアニメでは()()やってんけど、()()()()()()()()はやっぱりグレアムおじさん?」

 

 

「ああ」

 

 

「じゃあさ、いつ捕まえたん?クロノ君からは、ヒエン兄ちゃんとリニスさんの三人で捕まえたっていうのは聞いてんねんけど」

 

 

「あー、捕まえたのは闇の書が起動する早朝だったから……去年のクリスマスイブだな」

 

 

すると会話を聞いていたなのは達も質問してきた。

 

 

「それ、私達も後から聞いたんだけど、どうやって捕まえたの?」

 

 

俺はそれに答える。

 

 

「え?どうやってって、普通に戦ってだけど」

 

 

そこでフェイトも話す。

 

 

「でも三人目の仮面の男、グレアム提督はとんでもない強さだったよ?それこそ……砂漠を一瞬で南極大陸みたいに変えるほどの魔力の持ち主だし」

 

 

それを聞いた響達が驚く。

 

 

「さ、砂漠を南極大陸みたいに!?」

 

 

「そ、それって前にマリアが戦った自動人形(オートスコアラー)のガリィ以上の使い手ってことデスか!?」

 

 

「(ガリィって誰だろう?)はい。それだけじゃなくて『管理局の英雄』と呼ばれるほどの強者なので、たぶん私の母さんよりも強いです」

 

 

「フェイトちゃんのお母さん……プレシアさんだったっけ」

 

 

「こいつとお前の母親が戦ってる映像は見せてもらったが、それ以上の強さか」

 

 

調とクリスもこちらに顔を向けてくる。

 

 

「なあヒエン兄ちゃん、その捕まえたときのこと教えてくれへん?私考えてみたら、闇の書事件以外のことなんも知らへん」

 

 

「…………」

 

 

それを聞いた俺は冷や汗をダラダラと流していた。

 

あのときの仮面の男達との戦闘はなのは達には一切教えていない。

 

だって考えてみ?

 

かなりの激戦だったのよ?

 

かなりの戦いだったのよ?

 

加えて俺は流血沙汰のケガまでしている。

 

とてもではないが年頃の少女、女性には刺激が強すぎる。

 

 

「ジィー……」

 

 

そんな俺の反応を他所に調がジッと見てくる。

 

俺はつい目をそらす。

 

 

「なんで目をそらすんですかヒエンさん」

 

 

「べ、別に……」

 

 

「……何か言えない理由でもあるんですか?」

 

 

「いやそんなことは……」

 

 

「だったら教えて下さい。ここまできたら私達も全部知りたいです。貴方のことも知りたいです」

 

 

あの調さん?

明らかに男子が勘違いするような台詞を言っちゃダメよ?

 

いけると思ってつい告白しそうになっちゃうから。

 

 

「し、調!?」

 

 

すると切歌が焦ったような声を出す。

 

 

「どうしたの切ちゃん?」

 

 

対して調は可愛らしく首を傾げる。

 

惚れてまうやろ(迫真

 

 

「べ、別になんでもないデース……。そ、それよりお兄さん!私達もお兄さん達の事情はアニメを見てるから、ある程度は知ってるデスよ!だから話してほしいデース!」

 

 

「そうね。貴方達のことを知る良い機会だし、私達にも教えてくれないかしら?」

 

 

「そうだな。ここまで聞いたのだ。正直気になって仕方ない」

 

 

「ヒエン君!私達、貴方達の力になりたいんだ!だから話してほしい!!」

 

 

切歌、マリア、翼、響がこちらに向けて話してくる。

 

 

「あー、いやまあ、話すことは別に構わないんだが色々問題があるというか……」

 

 

「歯切れワリィなおい。なんか理由があるなら言ってみろよ?」

 

 

クリスが急かしてくる。

 

ええい!ままよ!!

 

 

「そのまあなんつーか、流血沙汰の映像があるっつーか、年頃の女の子には刺激が強すぎるっつーか」

 

 

「「また大ケガしたの!?」」

 

 

「おおう!?」

 

 

俺が言い淀んでいると、色々察したなのはとフェイトが大声をあげる。

 

 

「「どうなの!?答えて!!」」

 

 

「あ、はい。大ケガしましたですはい」

 

 

二人の剣幕に正直に話すしかなくなった俺であった。

 

 

 

────────

──────

────

 

 

 

心の中で休んでいる相棒を呼び出し、ギル・グレアム達との戦闘映像を見せる。

 

俺がキュアヒートとなってる映像から出てきたときは装者達が別の意味で驚いていたが割愛する。

 

このときは俺がアースラから脱走したという設定で奴らを誘き寄せるのが目的だったと説明する。

 

 

『大人しく投降しろ。あんた達はもう逃げられない。ギル・グレアム提督、そしてその使い魔リーゼロッテ、リーゼアリア』

 

 

『『『!?』』』

 

 

俺の言葉に驚愕する三人。

 

 

『なぜ知っている?と言った反応だな。いいだろうネタバレしてやるよ。元々、俺がここにいたのはあんた達を誘き寄せるためだ』

 

 

『『なに?』』

 

 

白い仮面の二人が同時に反応する。

 

ここでクロノが説明する。

 

 

『そこは僕が説明しよう。僕はある二人にこう言ったのさ。「黒衣の少女がアースラから脱走した」と。そしてこのことはその二人にしか伝えていない。つまり……このことを知っているのはその二人だけということになる。そうだろ?ロッテ、アリア』

 

 

そして画面の俺は再び話し始める。

 

 

『あんた達の目的も正体も……もう全て分かってる。悪いがあんた達の出番はここで終わりだ。はやてに……あの子に手出しはさせない』

 

 

すると黒い仮面の男、ギル・グレアムは話す。

 

 

『……全てバレているということか』

 

 

『調べればすぐに分かったよ、あんたとはやての関係は』

 

 

『……やはり慣れないことはするものではないな。そうだ。君の言うとおり……私は……私達は八神はやてごと闇の書を封印するつもりだ。この完成させたデュランダルでな』

 

 

するとギル・グレアムはデュランダルを構える。

 

 

「グレアムおじさん……」

 

 

はやてが泣きそうな表情で画面を見る。

 

 

「はやてちゃん……」

 

 

そんなはやての様子を響が心配そうに見つめていた。

 

 

『私の長年の悲願は今日で達成されようとしている。君達には悪いが……さっさと倒させてもらおう。それがたとえ……愛弟子であったクライド君の息子でもね』

 

 

『……グレアム提督』

 

 

クロノはギル・グレアムに視線を向ける。

 

 

『止まるつもりはありませんか?僕はあなた方と戦いたくない。それに死んだ父さんも……こんなことは望んじゃいない!!』

 

 

『愚問だなクロノ。ここまで来て……止まるつもりなど毛頭ない!ロッテ!!アリア!!』

 

 

『『はっ!!』』

 

 

そのときギル・グレアムの攻撃によって分断されてしまった俺達はそれぞれの戦いへと入る。

 

俺対ギル・グレアム、リニス対リーゼロッテ、クロノ対リーゼアリアだ。

 

 

『グレアム提督……あんたの事情は知っている。そしてその胸の内に秘めた闇の書への憎悪もな』

 

 

『……本当に全てを知っているのか。ならば分かるだろう?闇の書を放っておけばまた新たな悲しみが生まれる。その連鎖を断ち切るには……闇の書を封印するしかないのだよ』

 

 

『……それははやてを犠牲にしてでも……か?』

 

 

『大を救うには小を切り捨てなければならない……。全てを救うなんてことはできないんだよ少年』

 

 

「こいつ!よくもイケイケシャアシャアと!!」

 

 

「落ち着け雪音」

 

 

荒れそうになるクリスを翼が宥める。

 

 

『……あんたの考えは分かった。そして同時に納得したよ。やっぱりあんたはここで止めなきゃいけないってな!』

 

 

俺は額の炎を出力をあげながら言葉を続ける。

 

 

『ギル・グレアム……あんたの考えを俺は否定する。あんたの決意を俺は否定する。なぜなら……その選択肢自体、間違っているからだ。

 

俺ははやてを犠牲にしたくない。たとえ大を救うために小を犠牲にする必要があったとしても……だ。

 

こんな現実を分かっていない子供(クソガキ)の意見を……何度でも言ってやる。そんな選択肢自体間違ってんだよ!』

 

 

「お兄さん!カッコいいデス!!」

 

 

「うん。中々言える言葉じゃない」

 

 

「ちょっと落ち着こうかキリシラコンビ」

 

 

台詞に一々突っ込まれたら恥ずかしいじゃ済まねえから。

 

穴があったら入りたいレベルになってくるから。

 

だから突っ込むのは止めてくださいお願いします。

 

すると奴の周囲に四機の浮遊ユニットが展開される。

 

ユニットは冷気を纏う。

 

 

『言いたいことはそれだけか?』

 

 

『ああ、そうだよ』

 

 

奴はデュランダルを構え、俺もグローブに炎を灯し構える。

 

 

『ギル・グレアム……あんたに闇の書の封印は絶対にさせない。あんたはここで……死ぬ気で止める!!』

 

 

『私は止まる訳にはいかない。無理矢理にでもここは突破させてもらうぞ少年』

 

 

「で、ここで戦いが始まった訳だ」

 

 

俺は解説しながら説明する。

 

どの戦いも激戦であった。

 

リニスは格闘が得意なリーゼロッテの身体強化に、クロノは多種多様な魔法を操るリーゼアリアの魔法戦闘にそれぞれ苦戦していた。

 

だがリニスは起死回生のカウンター魔法で、クロノも切り札のフルドライブを使うことによって見事に勝利をもぎ取った。

 

そして肝心の俺とギル・グレアムの戦い。

 

俺はギル・グレアムの操るユニット四機に苦しめられていた。

 

それだけでなく奴の繰り出すノーモション魔法も厄介だった。

 

攻撃がいつ来るか全く分からないからだ。

 

超直感があったからなんとか渡り合えていたが。

 

 

「グレアム提督ってこんなに強かったんだ」

 

 

「う、うん。予想以上だよ」

 

 

「ああ。あの冷気を纏ったユニット四機で奴には中々近付けないし、うまく近付けたとしてもノーモションで魔法を発動させやがるから防御するのにも苦労するし。本当に強かったよ……」

 

 

今思えば攻撃をクリーンヒットさせられたのも灼熱の加速(バーニングアクセル)一発だったしな。

 

すると映像を見ていた装者達も驚く。

 

 

「め、滅茶苦茶強いデスよ!?」

 

 

「もし私達が戦ったとしても苦戦するのは間違いない」

 

 

「つーか魔導師ってこんなに自由自在に空飛ぶのかよ……。あたしらとは根本的に相性が悪いな」

 

 

「そうだな。空を飛ばれると常に先手を取られてしまう」

 

 

「基本的にクリス以外、中距離と近距離からの戦闘が得意だものね」

 

 

「魔導師って凄いんだなあ」

 

 

切歌、調、クリス、翼、マリア、響の順で話す。

 

そういえば装者達は空を飛べる者が限られている。

 

最終形態のエクスドライブを使えば皆空を飛べるが、あの形態になるにはフォニックゲインと呼ばれる特殊なエネルギーが大量に必要になる。

 

正直、戦闘で使うには厳しすぎるのが現状だ。

 

そして話に戻るが俺とギル・グレアムの戦闘は佳境へと入る。

 

俺がなんとかバーニングアクセルでダメージを与えた直後、ギル・グレアムからの猛攻撃があったからだ。

 

四機のユニットから放たれる砲撃魔法や射撃魔法をなんとかやり過ごすが、俺は僅かな隙をつかれてバインドで捕えられてしまう。

 

そしてそこから連続で攻撃を食らってしまった。

 

 

『ぐぁああああ!?』

 

 

まずは砲撃を食らい……

 

 

 

ズドドドドドドッッッッ!!!!!!

 

 

 

『がぁああああ!?』

 

 

続けて射撃魔法で放たれた無数のエネルギー弾を食らってしまった。

 

俺の叫び声が部屋に大きく響く。

 

その叫び声を聞いた女性陣がビクッとなる。

 

なんかごめんね。

 

そこからは相棒が調和の咆哮でユニット四機を破壊してくれた。

 

ダメージを受けてしまった俺も自動治癒のおかげで回復する。

 

だがギル・グレアムもバーニングアクセルを食らってダメージを受けていることから五分五分であった。

 

そこから近接戦闘へと移行する。

 

デュランダルを槍のように振り回すギル・グレアム。

 

俺はそれを紙一重でかわしながら、奴に目眩ましの炎を放ち、後方へと回り込む。

 

そして追撃のビッグバンアクセルを放とうとしたとき……

 

 

『ぐ……がぁああああ!?』

 

 

再度、俺の叫び声が部屋の中に響いた。

 

 

『これで終わりだ』

 

 

そしてトドメとなる白銀の砲撃を放たれてしまった。

 

それを見たマリアが一言。

 

 

「滅茶苦茶ピンチじゃない!?」

 

 

「でもなんとかやり過ごしたぞ?」

 

 

「そういう問題じゃないでしょ!?ほら、あの子達を見なさい!!」

 

 

「え?……おうふ」

 

 

見れば三人の幼い少女達が泣きそうな顔でこちらを見ていた。

 

 

「結局大ケガしてるじゃない……」

 

 

「どうして私達に何も言ってくれなかったの?」

 

 

「ヒエン兄ちゃぁぁぁん……」

 

 

「うん。マジごめん」

 

 

だから見せたくなかったのだ。

 

結局こういう風に心配をかけてしまうから。

 

するとグレアムが小さく呟く。

 

 

『……許されるとは思っていない。だが私はもう……立ち止まる訳にはいかないのだ』

 

 

そして後ろを向き……

 

 

『もう……引き下がれないのだ』

 

 

飛び去ろうとする。

 

 

『リーゼ達は……捕まってしまったか。少し身を隠さねばな……思った以上に体力と魔力を消耗してしまった』

 

 

グレアムが移動を開始しようとしたとき……

 

 

『どこへ行くんだ?』

 

 

俺の声が小さく響く。

 

 

『まさか……』

 

 

そこには黒衣のマントを纏った俺がいた。

 

 

「なんで無事なの!?」

 

 

響が詰め寄ってくる。

 

 

「ちゃんと説明するから離れなさい。あのマントを纏うと攻撃を無効化できるんだ。その分、体力は消費するけど。だからここぞってときの俺の奥の手でもある。あと近い」

 

 

「そ、そうなんだ」

 

 

画面の俺は喋る。

 

 

『まだ勝負は終わっていないぞ……ギル・グレアム』

 

 

見るからにボロボロであるがこのときの俺は意地で話していた。

 

 

『そろそろ……決着をつけようぜ……』

 

 

戦いは遂に最終局面を迎える。

 

 

『君は……生きていたのか』

 

 

『はぁ……はぁ……ああ。かなりギリギリだったけどな』

 

 

『そうか』

 

 

『もう正直、俺には余裕がない。だから……俺のとっておきで決める。どうだ?乗る気はあるかギル・グレアム?』

 

 

『いいだろう。ならば私も……特別な一撃で決めよう』

 

 

「正直奴がこの勝負に乗ってくれなかったらヤバかった。もうフラフラだったし」

 

 

「こんなに傷だらけなら……」

 

 

「当たり前です!」

 

 

切歌と調の二人に怒られる。

 

なんか二人とも遠慮がなくなってきたな。

 

 

『上等だ……オペレーションダブルヒート』

 

 

そして画面の俺は両腕をクロスに構えて起動詠唱(ワード)を唱える。

 

 

悠久(ゆうきゅう)なる凍土(とうど) ()てつく(ひつぎ)のうちにて 永遠の眠りを与えよ」

 

 

ギル・グレアムも詠唱を終える。

 

直後、デュランダルに強力な冷気が纏っていく。

 

俺も両腕をクロスさせるように前へと伸ばし、肘側の噴射口から放つ柔の炎で姿勢を制御させ、クロスさせた両腕に膨大なエネルギーが凝縮されていく。

 

両者共に準備が完了する。

 

そして……

 

 

『これで決める!ダブルヒートバーナー!!』

 

 

()てつけ!エターナルコフィン!!』

 

 

互いに勢いよく放った。

 

特大のオレンジ色の砲撃と、極大の凍結魔法が激突する。

 

ダブルヒートバーナーと、エターナルコフィンは拮抗していた。

 

炎は氷を急速に解かし、氷は炎を急速に凍らせていく。

 

そしてダブルヒートバーナーがエターナルコフィンを徐々に押していく。

 

このとき俺は勝利を確信していた。

 

しかしギル・グレアムは底力を見せる。

 

 

『私は……私は……敗ける訳にはいかないのだ!!』

 

 

『なにっ!?』

 

 

するとエターナルコフィンは勢いをあげてダブルヒートバーナーを押し返す。

 

このときギル・グレアムは周囲の水分を吸収してエターナルコフィンの威力を上げていたのだ。 

 

 

『少年!君は言ったな!私の選択肢自体間違っていると!ならば……見せてみろ!君の覚悟を!!この魔法を……撃ち破って見せろ!!』

 

 

『上等だ!言われなくとも……撃ち破ってやるよ!!』

 

 

俺はさらに力を込めるがやはり地力ではギル・グレアムの方が上なのか徐々に押され始める。

 

 

『ぐ……くそ……』

 

 

そんななか俺は大声で奴に話しかけた。

 

 

『ギル・グレアム!俺はあんたの地力には叶いそうにない!だけど……あんたが敗ける訳にはいかないように……俺もあんたに敗ける訳にはいかない!あんたの行為を……絶対に認める訳にはいかない!!』

 

 

『ならばどうする!』

 

 

『だから……今から見せてやる!限界を超えた力ってやつを!!』

 

 

俺はワードを唱える。

 

 

限界突破(リミットブレイク)……オーバードライブ……スピリッツフォームrev3(リヴィジョンスリー)!!』

 

 

 

ドォオオオオン!!!!

 

 

 

俺はオーバードライブを発動させ黒コートを纏う。

 

それと同時にダブルヒートバーナーも極限にまで強化された。

 

 

『これは……威力が跳ね上がって……』

 

 

『うおおおおおおおおお!!!!!!』

 

 

爆発的に威力が上がったダブルヒートバーナーはエターナルコフィンを飲み込み、ギル・グレアムをも飲み込んだ。

 

 

『これは……完敗だな……』

 

 

そして決着がついた。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

「これが仮面の男達との戦闘の全てだ」

 

 

俺は映像モニターを消す。

 

すると再び響が疑問の声をあげる。

 

 

「ねぇねぇ、オーバードライブってなんなの?」

 

 

「うん?あー、簡単に言えば限界を超えた強化、超強化形態ってとこかな」

 

 

「ふむ。私達でいうエクスドライブのようなものか」

 

 

翼が妙に納得する。

 

 

「エクスドライブ……ですか?」

 

 

なのはが首を傾げるのを見て切歌が説明する。

 

 

「シンフォギアの超強化形態デス!パワーも跳ね上がって、テレパシーも使えるようになるデス!なにより宇宙空間でも活動できるし、あとはなのは達みたいに自由自在に空を飛ぶことも可能なんデース!!」

 

 

「ほへぇー。なんだか凄いですねぇ」

 

 

やいのやいのと女子達が盛り上がる。

 

いつの間にか重い空気は払拭されていた。

 

響と切歌の能天気&天然な空気で場が和んだのだ。

 

 

「ヒエン兄ちゃん」

 

 

ここではやてが話しかけてきた。

 

 

「改めて言わせて。助けてくれてありがとう。あんなに傷だらけになって、ボロボロになってまで……私のこと助けてくれて」

 

 

「気にするな。助けてもらった借りを返しただけだ」

 

 

「それ、前も聞いたけど。その理論で言うなら私なんてヒエン兄ちゃんにバカデカイ借り、二つも作ってることになるんやけど」

 

 

「はぁ。あのな、お前はまだ小さいんだ。子供を助けるのは大人の役目だ」

 

 

「ヒエン兄ちゃんだってまだ未成年やんか」

 

 

「あと三年で成人するし、お前達よりは十分大人だっつーの」

 

 

俺ははやての頭をガシガシと撫でる。

 

 

「むうううぅぅぅ」

 

 

何やら唸っているがされるがままになっていることから嫌ではないようだ。

 

 

「とりあえず話はこれで終わりだ。今日は早目に休めよ」

 

 

「……うん」

 

 

するとはやては何か思い付いたのか手をポンと叩く。

 

 

「あ、そうや。DVDの続き、ここで見てええ?途中までしか見てないから続き気になってもうて」

 

 

「別にいいけど……」

 

 

「じゃあ私部屋から取ってくるよ!!」

 

 

話を聞いていたのか響が猛スピードでDVDを取ってきた。

 

そして俺の部屋で女性陣はDVDの続きを見始める。

 

見ればナハトヴァール侵食暴走体が目覚める直前らしい。

 

そこからは俺も混ざって続きを見る。

 

内容は前世のときとあまり変わっていない。

 

皆で侵食暴走体を協力して倒し、コアを露出させ、アルカンシェルで蒸発させた。

 

そしてリインフォースとのお別れも終えた。

 

その様子を俺達の世界のリインフォースは複雑そうに見ていた。

 

皆も同様であった。

 

ちなみにだが魔法少女三人娘のトリプルブレイカーを見たとき、装者達の顔は引きずっていた。

 

これはあれだな。

無印であったなのはのスターライトブレイカーも同じ表情で見ていたに違いない。

 

そして中学二年生になったなのは達がエンディングで現れる。

 

なのはは自分の髪型がサイドテールになっていることにも驚いていたが、自分が武装隊の教導官になっていることにさらに驚いていた。

 

フェイトは自分が執務官になっていることに驚き、はやても特別捜査官として働いていることに驚いていた。

 

そしてA´sを無事見終わる。

 

少ししか見ていないが俺の存在はアニメでは語られていない感じである。

 

まあ当然だろう。

俺の存在自体イレギュラーだからな。

 

 

「ふわぁ~」

 

 

なんか全部終わったら眠くなってきた。

 

ついついアクビが出てしまった。

 

俺の様子を見たマリアが皆に声をかける。

 

 

「それじゃそろそろおいとましましょうか。ヒエンも疲れてるみたいだし。明日また話すことにしましょう」

 

 

そしてなのは達は俺に夜更かししないように、マリアもしっかり眠るように言ってから出ていった。

 

他の皆も自分の部屋へと戻っていった。

 

 

「はぁー……疲れた」

 

 

俺はベッドに寝転がる。

 

はやてがギル・グレアムのことを知ってたときは正直焦った。

 

本来なら大人になってから知ることをまだ幼い内から知ってしまったのだから。

 

だが思う。

 

 

(なのは達もこの世界に一緒に来たのには何かしら意味があるのかもしれないな……)

 

 

もしかしたらこの世界でなのは達に力を借りなければならない事象が起こるのかもしれない。

 

確証なんてない。

 

ただ……今までの経験と直感からそう思うだけだ。

 

 

「まぁ、成るようになるか」

 

 

そして俺は瞼を閉じて眠りについた。

 

 

 

ヒエンside end

 

◆◆◆

 

第三者side

 

 

 

「ふっ!はあああぁぁっ!!」

 

 

翼は訓練所にて刀を振るう。

 

彼女は眠る前に素振りをするのが日課となっている。

 

 

「ふう……」

 

 

素振りを終えた翼は息を整える。

 

だがその目はどこか生き生きとしていた。

 

まるで前から欲しいものを見つけた少女のようであった。

 

 

(ダメだ。いくら無心になろうとしても……身体が高揚してしまう)

 

 

彼女の脳裏には先程の少年の戦闘映像がよぎる。

 

少年の戦う姿は彼女の目指すもの……防人としての戦う姿に酷似していた。

 

よって彼女がこう思うのも必然であった。

 

 

(戦ってみたい!あの男と……大空と!!)

 

 

少年は防人、風鳴翼に完全にターゲットとして認識されてしまった。

 




次回はやっと日本だー。
ついに393登場かもなー。

では、また(・∀・)ノ

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