大空の炎の力を操る転生者   作:Gussan0

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どうも(゜▽゜*)

続き書けたで候。

今回はAXZ原作でいう第四話どす。

あとXV見てて思ったのですが、未来さんに憑依してるシェム・ハの目がギアスにしか見えないのは僕だけではないと思います(真顔

では、どうぞ( *・ω・)ノ


第二百七十四話 歌い舞い踊る戦姫XV

第三者side

 

 

 

『お母さんを助けてください!』

 

 

雨が降りしきる中、一人の少女が取り押さえられながらも、一人の男性へと必死の懇願をしていた。

 

少女は奴隷だった。

 

 

「ずっと熱が下がらなくて、すごく苦しそうで……お願いです!助けて!!」

 

 

少女の母も同じく奴隷であったが、運悪く病気にかかってしまった。

 

しかし奴隷故に医者にかかるためのお金もない。

 

だからこそ自身の雇い主でもある男、父へと少女は助けを求めた。

 

 

「お父さん!!」

 

 

しかし無情にもその声は届かなかった。

 

 

「奴隷が私にすり寄るな!!」

 

 

「……え?」

 

 

「この服虫の……分際でっ!!」

 

 

男は少女を叩く。

 

力一杯叩かれてしまったのか少女はそのまま倒れてしまう。

 

 

「慰みを与えた女の落とし子だ。付け上がらせるな。奴隷根性を押し付けておけ」

 

 

そう言って男は建物の中へと入ってしまった。

 

 

 

────────

──────

────

 

 

 

「ごめんお母さん。今日も食べ物を手に入れられなくて。でも一昨日(おととい)のパンがまだ残ってるから……」

 

 

少女は母のいる家へと戻る。

 

そこは家と呼べる立派な代物ではなかった。

 

雨風が凌げる小さな小屋のような物であった。

 

だが少女には帰りを待ってくれている母がいる。

 

だからこそどんな辛い目にあっても少女は頑張れた。

 

 

「お母さん?」

 

 

しかし今日は様子がおかしかった。

 

いつもなら反応してくれる母が身動(みじろ)ぎ一つしないのだ。

 

 

「おかあ……さん?」

 

 

少女の母は……

 

 

「おかあぁぁさあぁぁん!!!!」

 

 

既に息を引き取っていた。

 

 

 

────────

──────

────

 

 

 

「忌々しい思い出ね……」

 

 

サンジェルマンは自身の研究室にて、シンフォギアに対抗するための装備を開発していた。

 

彼女の目の前には赤い液体に入った3つのハート型の宝石があった。

 

 

「ラピス……錬金の技術は支配に満ちた世の(ことわり)を正すために」

 

 

その宝石の名は賢者の石。

 

赤き輝きを放つ宝石とされ、数多の錬金術師達が追い求める技術の到達点。

 

叡智(えいち)の結晶体である。

 

 

「私はこの力で必ず、『バラルの呪詛』から人類を解放する……!!」

 

 

彼女はこの力を使って支配の世を終わらせるため、『革命』を起こすべく動き出す。

 

 

 

第三者side end

 

◆◆◆

 

ヒエンside

 

 

 

俺達は現在、長野県松代(まつしろ)にある国土安全保障の要、風鳴機関本部へと足を運んでいた。

 

バルベルデ共和国より持ち帰った機密資料を解読するため、特殊な設備のある研究所が必要となったのだ。

 

そのため陸地での活動となるため、大きなトレーラー2台での移動となった。

 

トレーラーの中は、潜水艦の設備に負けないほどの規模で設備が整っている。

 

まあ異端技術を解析するんだ。

 

それくらいの規模にはなるか。

 

到着してから軽いブリーフィングを行った後、響達は周辺の警戒任務に当たることとなる。

 

パヴァリア光明結社の錬金術師達が数日前に襲撃してきたこともあって最大級の警戒態勢という訳だ。

 

そして肝心の俺達は今何をしているかというと……

 

 

「うん!良く似合ってるよ!!」

 

 

S.O.N.Gの制服に袖を通していた。

 

 

「ううむ……なんだか変な感じだ」

 

 

響が褒めてくれるが俺としては違和感が半端ない。

 

なぜ俺がS.O.N.Gの制服に袖を通しているのかというと俺達は今、S.O.N.Gの外部協力者の魔法使い……という立ち位置になっている。

 

司令の兄でもあり、翼の父親でもある風鳴八鉱(かざなりやつひろ)さんが力を貸してくれたおかげでこうした位置に治まったのだ。

 

その他にも八鉱さんは、戸籍や衣食住に必要なもの、その他もろもろ用意してくれた。

 

この前、通信で直接話す機会があったのでお礼を言おうとしたのだが、さすが翼の父親。

 

威圧感が半端なかった。

 

正直ちょっとビビった。

 

こちらの事情を司令が説明していたのを隣で聞いていたのだが、俺の予想とは裏腹に思いの外すぐに信じてくれた。

 

そして色々必要だろうということで手を回してくれたのだ。

 

本当もう頭が上がらんとです。

 

なのは、フェイト、はやてもS.O.N.Gの制服に袖を通している。

 

それぞれマリア、切歌、調が手伝ってくれている。

 

ちなみに俺のネクタイの色はオレンジ色、なのははピンク色、フェイトは金色、はやては銀色となった。

 

 

「えへへへー。お揃いだねぇ」

 

 

響とネクタイの色が重なっているのは気にしない。

 

だからそんなに嬉しそうにリアクションするのやめて。

 

勘違いしちゃうから。

 

陥落一歩手前だから。

 

 

「ヒエンかっこいい」

 

 

すると側にいた巫女姿の久遠がポツリと呟いた。

 

 

「久遠ちゃんもそう思うよね!もっと自分に自信持つべきだよヒエン君!!」

 

 

「お、おう」

 

 

響の力説により少し戸惑いながらもネクタイをキュッと締める。

 

あとリニス、リインフォース、フィリス先生の三人にも一足早くS.O.N.Gの制服が支給されている。

 

三人はそれぞれの分野でS.O.N.Gの仕事を手伝っている。

 

リニスはデバイスの事にも詳しいということもあって情報を扱うのが得意なので友里さんや、藤尭さんのサポート、リインフォースは料理の修行ということもあって食堂勤務、フィリス先生は引き続きメディカルルームでの仕事だ。

 

ちなみにこの三人、美人ということもあってエージェント達に大変人気である。

 

仲良くなったエージェントの一人がそう教えてくれた。

 

今度他の男性陣も誘って男子会でもするか。

 

勿論題材は、恋バナだっっ!!

 

 

「なにニヤニヤしてるの?」

 

 

「なんでもない。それよりそろそろ行くか」

 

 

「うん、そうだね」

 

 

「行くぞ久遠」

 

 

「くぅ!」

 

 

そして俺は小狐となった久遠を肩の上に乗せて響と一緒に外へと向かう。

 

今から警戒任務に当たるからだ。

 

俺の他にもそれぞれがペアを組んで任務に当たっている。

 

ちなみになのは達はまだ小学生ということで基本的にはトレーラーで待機しながらリニス達の手伝いだ。

 

っていうか今気付いたけど本当最近、響と行動することが多くなった気がする。

 

そんなことを考えながら俺は外へと向かった。

 

 

 

────────

──────

────

 

 

 

「うーん、空気が美味しいねぇ」

 

 

「だな」

 

 

響と二人で歩きながら外を見回る。

 

田舎の方なのか都会とは違い、畑や田んぼが多い。

 

肩の上にいる久遠も気持ち良さそうだ。

 

 

「とはいっても、こうして歩いてても人っ子一人いないな」

 

 

「政府から退去命令が出てるからね……」

 

 

響が少し辛そうな、哀しそうな表情で話す。

 

 

「守るべきは人ではなく国……か」

 

 

司令がブリーフィングでそう呟いていた。

 

風鳴機関の総本山が鎌倉にあるらしいのだが、その機関の方針ともいえるものがそれなのだ。

 

人を守るのではなく、国を守る。

 

つまりは小を犠牲にしてでも大を救うことにこそ意味があると、風鳴機関はそう考えているのだ。

 

理屈は分かる。

 

だが俺としては、なんだかやり切れない気持ちでいっぱいであった。

 

敵の襲撃があると予測して研究所周辺の住民には、既に政府からの退去命令が出ている。

 

しかしこの松代に住んでる人達にだって仕事はあるし、普段の生活だってある。

 

それを有無をいわさず、無理矢理退去させるというやり方にどこか納得できないでいた。

 

まあ、襲撃がなければ全然問題ないのだが。

 

というか、これもそれも全部パヴァリア光明結社の奴らが悪い。

 

この行き場のない感情は奴らが出てきたときにぶつけさせてもらおう。

 

 

 

ピピピピピッッッ……

 

 

 

すると響の持つ端末から音が鳴る。

 

 

「はい響です。えっ!?襲撃!?はい……はい……分かりました!すぐにヒエン君と援護に向かいます!!」

 

 

響は通信を切ると俺に話しかける。

 

 

「ヒエン君!」

 

 

「分かってる。今、場所が送られてきた。ここから近いみたいだ。すぐに向かうぞ」

 

 

「うん!」

 

 

俺は空間モニターで場所を確認すると響に指示を出す。

 

そして響は赤いペンダントを構え、聖詠を唱えた。

 

 

「Balwisyall Nescell gungnir tron」

 

 

響はオレンジの装甲を纏い、首元に長いマフラーを装備する。

 

 

「セットアップ」

 

 

俺もバリアジャケットへと換装すると同時に死ぬ気モードとなる。

 

 

「ちょっとごめんな」

 

 

そして響をお姫様抱っこで抱える。

 

 

「えっ!?えっ!?えっ!?」

 

 

響は訳が分からないといった表情で驚きの声をあげる。

 

 

「少しだけ我慢してくれ。相棒、襲撃場所までの案内よろしく。久遠はしっかり捕まってろよ」

 

 

「ガゥ」

 

 

「くぅ」

 

 

そして俺は炎の翼を展開させて空を飛ぶ。

 

 

「えええぇぇぇぇぇ!!!!????」

 

 

叫び声を上げる響を抱えながら俺は猛スピードで飛んでいく。

 

襲撃場所へはすぐに到着した。

 

見れば調、切歌、クリスの三人が既にギアを纏い、アルカ・ノイズとの戦闘を開始していた。

 

翼とマリアはまだのようだ。

 

 

「あらあ?炎の坊やと黄色い方のご到着?」

 

 

そして襲撃の首謀者はカリオストロであった。

 

こいつ数日前に襲撃に来たばかりなのにもう来たのか。

 

 

「あ、お兄さん……って響さんがお姫様抱っこされてるデエェェェス!!??」

 

 

「未来さんの次は響さんとは、なんというか手が早い……」

 

 

「お前ら!そんな暢気なこと言っている場合か!戦いに集中しろっての!!」

 

 

とりあえずキリシラコンビの二人は後でOHANASHIするとして、俺は響を降ろすと同時に射撃魔法でアルカ・ノイズを攻撃していく。

 

 

「はぁああああ!!」

 

 

響もアルカ・ノイズの群れへと突っ込んでいく。

 

俺はアルカ・ノイズをひと通り倒した後、今度はカリオストロへと攻める。

 

見れば調と切歌の後ろには一人の御婦人がいたが、クリスがカバーしながら戦っていたので問題ないだろう。

 

俺は高速でカリオストロへと接近し、炎の拳で攻めていく。

 

カリオストロはいつかのように両手にシールドを展開させて、俺の拳を受け流していく。

 

 

「まさかもう攻めに来るとはな。なのはにあれだけコテンパンにやられたのに懲りない奴だ」

 

 

「挑発のつもり?残念だけどあーしにそういうのは効かないわよ」

 

 

「嘘つけ。あの三人の中じゃお前が一番挑発に乗りそうだ」

 

 

「失敬ね!」

 

 

するとカリオストロは両手に青いエネルギー弾を収束させると、こちらへと放ってくる。

 

俺も自身の周囲に炎のスフィアを展開させると、カリオストロへと放つ。

 

互いの攻撃は相殺される。

 

その間に俺は周囲の状況を確認する。

 

アルカ・ノイズの数は順調に減っていた。

 

そして丁度大型のアルカ・ノイズを倒した響と目が合う。

 

俺は大声で叫ぶ。

 

 

「響!今のうちにカリオストロをぶっ飛ばせ!!」

 

 

「合点承知!!」

 

 

「ちょっとおぉぉぉ!?二対一なんて卑怯よおおおぉぉ!?」

 

 

「戦いに卑怯もクソもあるか!」

 

 

響はカリオストロが俺との撃ち合いに意識を取られている間に近寄り、強烈な肘打ちを食らわせた。

 

うわあ……いたそ。

 

 

「内なる三合(さんごう)外三合(そとさんごう)より(けい)(はっ)す。これなる(こぶし)六合大槍(ろくごうたいそう)ッ!映画は何でも教えてくれるッ!!」

 

 

ごめん響……ちょっと何言ってるか分かんない。

 

そして吹き飛んだカリオストロはなんとか立ち上がる。

 

 

「くっ……え、壁?」

 

 

そして自身の後ろに映る自分の姿を見る。

 

だがそれは壁ではない。

 

 

「壁呼ばわりとは不躾(ぶしつけ)な!(つるぎ)だっっ!!」

 

 

巨大アームドギアの上に立つ翼の姿があった。

 

その姿はまさに威風堂々であった。

 

しかし壁か。

 

壁から連想される言葉って言えば……

 

 

「絶壁……まな板……ぬりかべ」(ボソリ

 

 

 

ギロリッッッ!!

 

 

 

「おうふ」

 

 

俺は翼の言葉でつい思い付いた言葉を呟いてしまう。

 

しかもそれは翼にはしっかり聞こえていたようで……

 

 

「オオゾラ……後でじっくりKATARIAIをしようではないか。二人っきりで」

 

 

「慎んで断らせてもらう」

 

 

シンフォギアって五感も強化されるんですね(震え声

 

 

「くらいなさい!!」

 

 

すると同じく到着していたマリアがだめ押しのビームをカリオストロへ放つ。

 

 

「くっ……多勢に無勢ね」

 

 

カリオストロは間一髪ジャンプしてかわすと後退する。

 

 

「ちっ……」

 

 

すると何を思ったのか転移ジェムを地面へと投げる。

 

撤退するようだ。

 

 

「次の舞踏会は新調したおべべで参加するわ~。楽しみにしてなさい。ばぁ~い」

 

 

カリオストロは転移したのか姿を消した。

 

それにしてもおべべってどういう意味なんだろうか?

 

たぶん方言で衣装のことなんだろうけど……

 

 

「オオゾラアァァァ……」

 

 

ひとまずは暴走しそうになっている翼から逃げねば。

 

 

 

 

 

 

閑話休題(そんなこんなで)

 

 

 

 

 

 

俺達は御婦人を連れて避難先の学校の体育館へとやってきた。

 

勿論御婦人は俺が背負ってきた。

 

とても軽かったとです。

 

ちなみに翼との鬼ごっこは俺が制した。

 

伊達にリニスに鍛えられてはいない。

 

だけどあの千の落涙はあかん。

 

どうみても千ではなく万はあった。

 

絶対、万の落涙だった。

 

 

「ありがとうねぇ。これ良かったらお食べ」

 

 

すると御婦人はお礼にトマトをくれた。

 

瑞々(みずみず)しい。

 

 

「いただきます」

 

 

俺は遠慮なくいただく。

 

 

「あまっ!うまっ!やばっ!」

 

 

フルーツのように甘い。

 

滅茶苦茶美味しいです。

 

 

「お兄さん、感想が小学生みたいデース」

 

 

「なんだか微笑ましい」

 

 

切歌からは呆れられ、調からは微笑まれた。

 

あれ?

 

調が段々フェイトみたいに見えてきたぞ??

 

 

「いいなあ~」

 

 

「うふふふ。あんた達もお食べ?」

 

 

すると御婦人は響達にもトマトを渡す。

 

トマトを食べた響達は表情を輝かせる。

 

 

「おいしい!?」

 

 

「なにこれ!?本当にトマトなの!?こんなに甘いの初めて食べたわ!!」

 

 

「うめぇ!?」

 

 

翼に至ってはキャラ崩壊するまである。

 

 

「驚きに 我を失う 美味しさです」

 

 

調が一句作っていた。

 

だけど字余りよ。

 

 

「トマトを美味しくするコツは厳しい環境に置いてあげること。ギリギリまで水を与えずにおくと自然と甘味を蓄えてくるもんじゃよ」

 

 

「なるほど。水を与えすぎたらダメなんですね」

 

 

「そうじゃな。人と同じじゃよ。甘やかしすぎたらダメになってしまう。大いなる実りは厳しさを耐えた先にこそじゃよ」

 

 

「なんだかこのトマトに親近感が湧いてきた。特に厳しさを耐えるという部分において」

 

 

俺はマリアの方を見ながら話す。

 

 

「貴方の場合は自業自得でしょ」

 

 

マリアが俺の頭を軽くチョップする。

 

 

「おいマリア、なぜチョップする?」

 

 

「大方、私とリニスさんのことを考えて言ったんでしょう?」

 

 

「自覚あるんじゃねえか」

 

 

「まだ言うのかしら。この生意気な口は」

 

 

「ほひ、ほほをつへるのはやめほ(おい、頬をつねるのはやめろ)」

 

 

「なんだか姉弟みたい」

 

 

「まあ精神的にガキっぽいしなあ」

 

 

響とクリスがこっちを見ながら言ってくる。

 

ただクリスにだけはガキっぽいと言われたくない。

 

お前も十分子供っぽいから。

 

 

「なんならトマトを栽培していくかい?収穫時期じゃから人手が欲しいんじゃ」

 

 

「ぜひ」

 

 

「じゃあ時間ができたときにでもまた来たらええよ」

 

 

「はい」

 

 

こんなに美味しいトマトが食べられたらいいよね。

 

なのは達にも食べさせてやりたいし。

 

勿論、お世話になってるS.O.N.Gの人達にも。

 

俺達はしばらく御婦人と話しながら楽しい時間を過ごした。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

日も暮れてすっかり夜になった頃、俺は友里さんの仕事の手伝いを終わらせた後、パヴァリア光明結社幹部の錬金術師三名の戦闘データと、アルカ・ノイズのデータをまとめていた。

 

ちなみになのは達は既に床に就いている。

 

まあ、まだ小学生だしね。

 

レイジングハートとバルディッシュ、夜天の書、ナハトが記録してくれた映像を見返しながら思考する。

 

 

「やっぱり身体能力の高さはシンフォギアを纏った響達と同等以上か。全くどういう理屈でシンフォギアと生身で互角に戦えるんだよ……」

 

 

サンジェルマンは言っていた。

 

 

『次は全力で貴方達の相手になりましょう』

 

 

全力……。

 

つまり本気ではなかったということ。

 

次に奴らと戦うときは何か仕掛けてくる可能性が高い。

 

 

「ううむ。もし仮にサンジェルマンの奴らがパワーアップしていたとして、今の響達じゃ対抗するのは厳しいかもな……。いやイグナイトを使えば……「ヒエンさん温かいものどうぞ(デース)」……ん?」

 

 

俺が考え事をしていると調と切歌が側に立っていた。

 

どうやらコーヒーを持ってきてくれたらしい。

 

 

「温かいものどうも」

 

 

俺は調の持ってきてくれたコーヒーに砂糖とミルクを多目に入れる。

 

 

「お、お兄さん……す、少し入れすぎじゃないデスか?」

 

 

「人生は苦いから、コーヒーくらいは甘くていいんだよ」

 

 

某ボッチ主人公の名言を借りる。

 

いや本当そう思う。

 

社会に出れば社畜にならないといけないし。

 

 

「な、なんだか名言っぽいデース……」

 

 

「名言というより迷言な気がする」

 

 

俺はコーヒーをチビチビ飲みながら空中モニターを見る。

 

ただまあ、あの三人の戦闘傾向は段々と分かってきた。

 

一人目、カリオストロはよくエネルギー弾を好んで使う。

 

その破壊力はなのはの砲撃とタメをはれるレベルだ。それだけでなく、こちらの攻撃を受け流すのがやたらとうまい。近接攻撃を余裕を持ってかわすことから、何かしらの格闘技の経験があると思われる。

 

二人目のプレラーティはカリオストロと違い、少し慎重に出る傾向にある。

 

相手の力量を正確に見極めてから大技で一気に仕留めようとするのだ。その証拠にフェイトを倒すとき、大量の水を錬成したのがいい例だ。

 

そして三人目、二人のまとめ役兼リーダーのサンジェルマン。

 

奴が最も厄介だ。

 

冷静沈着な判断力に、正確無比な射撃の腕前。そして素早く発動させる錬金術。

 

属性付与も強力であり、その用途に応じて臨機応変に対応してくる戦術も敵ながら見事だった。

 

俺は溜め息をつく。

 

素の状態でも厄介なのにここからさらにパワーアップするとか想像したくないんですけど。

 

 

「ヒエンさん、さっきから何見てるんですか?」

 

 

そのとき調が話しかけてきた。

 

 

「うん?あー、パヴァリア光明結社錬金術師三人の戦闘データとアルカ・ノイズの戦闘データまとめてた」

 

 

「なんかグラフみたいなのがあるデース……」

 

 

「さっきの戦いの映像もある……」

 

 

キリシラの二人はそれぞれ俺の肩越しに映像を見る。

 

あ、そうだ。

 

この二人は錬金術師のキャロルと戦ったことがある。

 

だとしたら俺よりも良い対策案が出るかもしれない。少し意見を聞いてみよう。

 

 

「なあ二人とも。少し聞きたいことがあるんだがいいか?」

 

 

「「なんですか?(デース?)」」

 

 

そして俺はサンジェルマン達のことについて話した。

 

次に戦うときに何かしらのパワーアップをしているかもしれないこと。

 

すると二人はしばし考えてから同時に呟いた。

 

 

「「ファウストローブ……」」

 

 

「ん?」

 

 

「ファウストローブデスお兄さん!」

 

 

「ファウストローブ?」

 

 

俺は首を傾げる。

 

それって確かGXでキャロルが使ってたあれか?

 

 

「ファウストローブは以前私達が戦ったキャロルという錬金術師が使っていたアイテムです。簡単に言えばシンフォギアみたいなものでしょうか」

 

 

調が説明してくれる。

 

 

「もしかしたらパヴァリア光明結社の三人もこれを使ってくるかもしれません……」

 

 

「調さんの言うとおりかもしれません」

 

 

「なかなか興味深い話をしてるわね」

 

 

するとエルフナインとマリアの二人も会話に加わってきた。

 

 

「ヒエン君、これを見て」

 

 

友里さんも会話に加わり、ある映像を見せてくれる。

 

そこには紫の衣装を纏った金髪の少女が映っていた。

 

その姿はまるで魔女を彷彿させた。

 

金髪の少女はイグナイトを抜剣した響・翼・クリスの三者と互角に戦っていた。

 

 

「このキャロルが纏っているのがファウストローブよ」

 

 

映像は前世で見たGXとほぼ同じであった。

 

イグナイトの三人と互角に戦うファウストローブを纏ったキャロル。

 

俺もイグナイトの翼と戦ったことがあるが、翼一人でも凄まじい戦闘力だった。

 

そこに響とクリスを加えた三人と互角に戦うなど、キャロルの戦闘力はそれ以上である。

 

もし仮に俺が彼女と戦った場合、オーバードライブのそれもフルパワー形態でなければ勝てないかもしれない。

 

彼女の強さは闇の書事件で目覚めた直後のリインフォースにも全く引けを取っていない。

 

しかし改めて思う。

 

 

「ファウストローブ……チート過ぎるだろ。いや流石に、あの三人はこのキャロル程ではないと思うが。少なくとも対抗するにはイグナイトは必須だと思う」

 

 

俺の言葉に全員が頷く。

 

 

 

ビーッビーッビーッ……

 

 

 

そのとき警報音が鳴り響く。

 

 

「多数のアルカ・ノイズ反応!場所は……松代第三小学校付近から風鳴機関本部へ侵攻中!」

 

 

「トマトお婆ちゃんを連れていったところデス!!」

 

 

 

ガタンッ!!!!

 

 

 

それを聞いたとき、俺は思わず席を飛び出していた。

 

 

「ヒエン!?」

 

「ヒエンさん!?」

 

「お兄さん!?」

 

 

俺は走りながらセットアップを済ませ、死ぬ気モードとなる……がその腹の内は、怒りでいっぱいであった。

 

サンジェルマンはかつて言っていた。

 

 

『人類を未来に解き放つため。紡ぐべき人の歴史の奪還こそ、我々パヴァリア光明結社、積年の本懐。今こそ……「革命」を起こすのよ』

 

 

『革命』を起こすと。

 

 

「これがお前の言っていた『革命』か、サンジェルマン」

 

 

ハッキリ言おう。

 

反吐が出る。

 

何が革命だ。

 

何が人類を未来に解き放つためだ。

 

何が紡ぐべき人の歴史の奪還だ。

 

 

「そんなもの……無関係な人間を巻き込んでまでやる価値なんぞあるものか!!」

 

 

そもそも関係のない人を巻き込んでいる時点で、そんな革命は間違っている。

 

どんな大義名分な理由があろうと、どんな合理的な理由があろうと、罪の無い人達を巻き込んでいい筈がない。

 

あってたまるか。

 

 

「絶対に止める」

 

 

奴がなんのためにアルカ・ノイズを放ったかは、だいたい検討はついている。

 

恐らく俺達を誘き寄せるための罠だろう。

 

ということは何かしらのパワーアップの算段がついたということ。

 

 

「だがそんなものは関係ない。奴らの思惑事、全部叩き潰せばいいだけのことだ」

 

 

そして俺は外へとたどり着く。

 

そこには無数のアルカ・ノイズがいた。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

俺の前には無数のアルカ・ノイズがいる。

 

数にすればおよそ数千体といったところか。

 

 

「まあ試運転には丁度いいか」

 

 

()()を実際に使ったのは翼との模擬戦だけだったしな。

 

 

「オーバードライブ……スピリッツフォーム改!」

 

 

俺は黒コートを纏い、戦いを開始する。

 

前方に手を向け、ヒートバーナーを放つ。

 

いつもより強烈な砲撃がアルカ・ノイズを一掃する。

 

空にいる奴らは、両手を上げて広域砲撃ワイドバーナーで丸ごと吹き飛ばす。

 

すると大型ノイズが数体現れるが、こちらも大型ゴーレムを召喚して対抗する。

 

 

「ゴライアイス!」

 

 

いつか出したゴライアイスを再び召喚。

 

 

「スパイラルフィンガー!」

 

 

そのまま攻撃して蹴散らしていく。

 

ゴライアイスは自動操作で動かし、俺はそのままアルカ・ノイズの群れへと突っ込んでいく。

 

炎の剣を出し、そのまま一閃。

 

アルカ・ノイズの群れは真っ二つに斬れていく。

 

すると周りのアルカ・ノイズが一斉に俺へと攻撃を集中させてきた。

 

 

「ちっ……」

 

 

俺は防御魔法で防ごうとしたのだが……

 

 

 

ドガァアアアアアン!!!!!!

 

 

 

アルカ・ノイズの集団が一気にやられてしまった。

 

俺は攻撃が飛んできた方向に目を向けると驚く。

 

 

「もう!一人だけで戦ったら危ないよー!!」

 

 

「心配するな立花。既にオーバードライブを使っていたようだしな」

 

 

「それでもだ!一人で突っ走りすぎだぞ!この馬鹿!!」

 

 

「いきなり飛び出していくなんて一体何を考えているの!」

 

 

「全く……これだけのアルカ・ノイズを一人で倒すつもりだったのデスか?」

 

 

「焦るのは分かりますが、少し落ち着いて下さい」

 

 

するとそこには六人の装者達がいた。

 

彼女達は俺を真ん中に横へと並ぶ。

 

左端からクリス、翼、響。

 

右端から調、切歌、マリアの順番だ。

 

俺は答える。

 

 

「別に雑魚ばかりだから特に問題はなかったぞ」

 

 

「「「「「そういう問題じゃ(ないよ!)(ねぇ!)(ないわ!)(ないデース!)(ありません!)」」」」」

 

 

翼以外の五人から怒鳴られた。

 

 

「……まあ話は後だな。今はそんな状況じゃない」

 

 

「この野郎、受け流しやがった」

 

 

「そう言うな雪音、猶予がないのは確かだ。皆、準備はいいか?ここは刹那になぎ払うぞ」

 

 

「「「「「了解!!」」」」」

 

 

翼の言葉に全員が頷く。

 

そして六人の装者は胸元のギアペンダントの2つのレバーを押し込む。

 

 

「「「「「「イグナイトモジュール!抜剣ッ!」」」」」」

 

 

《ダインスレイフ》

 

 

六人共にそれぞれの色と黒を基調とした邪悪な目のような紋様が入ったアーマーを纏う。

 

そして周りのアルカ・ノイズに攻撃を開始した。アルカ・ノイズは僅か数秒足らずで瞬く間に消滅していく。

 

 

(装者全員が揃うだけであんなにいたアルカ・ノイズが一瞬で……)

 

 

俺はその光景を見て呆気に取られる。

 

 

「ほらボーッとしてないで、さっさと動く!!」

 

 

「お、おう」

 

 

するとマリアが俺に喝を入れる。

 

俺もすぐに周りにいたアルカ・ノイズに攻撃するが、既に数体程しか残っていなかった。

 

っていうかマリアめ。

 

さっきから俺の一挙手一投足に注意しやがって。

 

正直やりにくいぞこの野郎。

 

 

「っ!?……この気配は!?」

 

 

すると急に現れた複数の気配を察知する。

 

慌てて見ればこちらを見る3つの人影の姿があった。

 

 

「お出ましか」

 

 

パヴァリア光明結社の三人だ。

 

奴らは月を背にこちらをジッと見ていた。

 

 

「押して参るは風鳴る翼ッ!!この羽ばたきは何人足りとも止められまいっ!!!!」

 

 

 

炎鳥極翔斬(えんちょうきょくしょうざん)

 

 

 

すると翼が青い焔を纏い、三人に突っ込んでいく。

 

だがサンジェルマンが赤い円形のバリアを発生させると、攻撃は止まってしまう。

 

 

「翼の攻撃を受け止めたっ!?」

 

 

すると不思議な事が起こる。

 

翼のイグナイトが解除されていくのだ。

 

 

「ギアが!?……うわぁあああ!?」

 

 

そして翼はそのまま吹き飛ばされてしまう。

 

 

「翼っ!?」

 

 

しかしマリアが翼を受け止めたため、追加ダメージはない。

 

だが奴らが今やったのは……

 

 

「イグナイトの強制解除……」

 

 

だとしたらまずい。

 

今の響達では相性が悪すぎる。

 

 

「あれはまさか……ファウストローブ!?」

 

 

響が声を上げる。

 

見れば錬金術師の三人はシンフォギアのような装甲、ファウストローブを纏っていた。

 

サンジェルマンは銀色、カリオストロは金色、プレラーティが濃い赤色である。

 

まさかこんな隠し球を用意していたとは……。

 

 

「よくも先輩をっ!!」

 

 

クリスが奴らに向けてミサイルを放つが、プレラーティによって容易に防がれる。

 

 

「あれはけん玉?」

 

 

巨大化させたけん玉でミサイルをガードしたのだ。

 

そしてその隙をついてカリオストロがクリスへビームを放つ。

 

 

「このくらい……ぐぁあああ!?」

 

 

「「クリス先輩!?」」

 

 

しかし翼と同じようにイグナイトは無効化されてしまい、クリスは吹き飛んでいく。

 

だが切歌と調がすぐに受け止めた。

 

続けてサンジェルマンが響に向けて攻撃を放つ。

 

響は咄嗟にかわすが、撃ち出した弾は響の後ろで止まり破裂した。

 

 

 

 

 

 

ドガァアアアアアアアアン!!!!!!

 

 

 

 

 

 

「爆撃弾!?」

 

 

「はぁ……はぁ……はぁ」

 

 

見れば響は仰向けに倒れながら息を切らせていた。

 

サンジェルマンが近付いてくる。

 

俺は倒れている響を庇うように先回りして、サンジェルマンに立ちはだかった。

 

 

「……ラピス・フィロソフィカスのファウストローブ。錬金技術の秘法、『賢者の石』と人は言う」

 

 

「なに?」

 

 

続けてプレラーティが答える。

 

 

「その錬成にはチフォージュ・シャトーにて解析した世界構造のデータを利用、もとい応用させてもらったワケだ」

 

 

なるほど。

要はイグナイト対策にそれらのファウストローブを用意したという訳か。

 

元々イグナイトはキャロルの計画の一部にも含まれていた。チフォージュ・シャトーにその詳細なデータがあってもおかしくない。

 

すると今度は響がサンジェルマンへと話しかける。

 

 

「……貴方達がその力で誰かを苦しめると言うのなら……私は……」

 

 

「誰かを苦しめる?慮外(りょがい)な……。積年の大願は人類の解放。支配の(くびき)から解き放つことに他ならない」

 

 

「……人類の解放?だったらちゃんと理由を聞かせてよ。それが誰かのためならば私達、きっと手を取り合える……」

 

 

「手を取り合う……?」

 

 

「サンジェルマン、さっさと……ん?あの光!?」

 

 

するとカリオストロが何かに気付く。

 

視線に釣られて見れば、空中に黄金に輝く一筋の光があった。

 

その光はまるで小さな太陽の様であった。

 

そしてその光を一人の白いスーツを着た男性が展開させていた。

 

 

「……誰だ?」

 

 

俺の疑問に答えるかのようにサンジェルマンが厳しい表情で呟く。

 

 

「統制局長……アダム・ヴァイスハウプト……どうしてここに!?」

 

 

パヴァリア光明結社の親玉らしき男が現れた。

 




次回は統制局長、抜剣♂の回。

そしてそんな弱点丸出しなところを攻めない奴はいないわけで……(意味深

では、また(・∀・)ノ

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