続き書けたで候。
では、どうぞ∠( ゚д゚)/
ヒエンside
『さあ、いよいよ最終ステージ! ここまで勝ち残った三名の挑戦者には、最後の試練に挑んでもらおう!』
会場に響き渡るGMの声を聞きながら、俺は目の前に広がる光景に思わず感嘆の声を漏らしていた。
「うわぁ……すっげぇな、これ」
そこにあったのは、一つの街だった。
いや、正確には市街地を再現した巨大なステージなのだが、立ち並ぶ建物や舗装された道路、商店街を思わせる通りなど、どれも本物と見紛うほど精巧に造られている。
建物の高さも様々で、数階建てのものから、見上げるほどの高層ビルまで存在していた。
これ、全部この番組のために用意したのか?
だとしたら、相当な金額がかかっているんじゃなかろうか。
「いやぁ、テレビ番組って凄いんだなぁ……」
『おや? どうかしたのかね、ヒエン君?』
「いや、これだけのステージを用意するのに、どれくらいお金がかかってるのかなって」
『はっはっは! そこは企業秘密というやつだよ!』
「ですよねー」
まあ、教えてもらったところで俺には想像もつかない金額だろうし、深く考えるのはやめておこう。
それよりも、今は目の前のゲームに集中しないとな。
『さて、ここで最終ステージのルールを説明しよう!』
GMの声に、俺を含めた三人の挑戦者が正面へと向き直る。
『今回、君たちに挑戦してもらうのは、三十分間の逃走ゲームだ!』
「逃走ゲーム?」
『そう! この市街地に放たれたエージェントたちの追跡をかわし、制限時間まで逃げ切ることができればクリアとなる!』
なるほど。
要するに、鬼ごっこみたいなものか。
ただし、相手が普通の鬼ではないということだろう。
『なお、このステージでは魔法の使用を許可する!』
「おっ、マジで?」
それはありがたい。
これまでのステージでは色々と制限があったからな。魔法が使えるなら、こちらも取れる手段が大幅に増える。
『もちろん、エージェントたちも必要に応じて魔法を使用するぞ! ただし、過度な攻撃やステージ外への逃走は禁止だ!』
「了解。つまり、相手を倒すことが目的じゃなくて、三十分間逃げ切ればいいんですね?」
『その通りだ!』
ふむふむ。
だったら、そんなに難しいことでもなさそうだ。
少なくとも、これまで経験してきた戦闘や訓練と比べれば、危険は少ないだろう。
もっとも、相手がどの程度の実力を持っているのかは分からないけど。
「ちなみに、エージェントって何人くらいいるんです?」
『それは始まってからのお楽しみだ!』
「……なんか嫌な予感がするんですけど」
『はっはっは! まあ、楽しみにしていたまえ!』
……うん。
このGM、絶対に何か企んでるな。
俺は小さくため息をつくと、隣に立つ二人の参加者へ視線を向けた。
二人とも緊張しているようだが、その表情には最後まで勝ち残ろうという意気込みが感じられる。
「お互い頑張りましょうね!」
「ああ! ここまで来たんだ。絶対に逃げ切ってやる!」
「そっちも頑張れよ!」
「はい!」
互いに健闘を祈り合い、それぞれの開始位置へと移動する。
そして、いよいよ。
『それでは、最終ステージ……スタート!!』
開始を告げるブザーが鳴り響き、空中に表示された時計が三十分からカウントダウンを始めた。
「さて、と……」
俺はまず、周囲の地形を確認することにした。
目の前には大通りがあり、その左右には複数の路地が伸びている。建物の屋上を移動することもできそうだし、身を隠す場所にも困らなさそうだ。
もっとも、闇雲に逃げ回っても仕方がない。
まずは相手の位置を把握することが先決だろう。
「エリアサーチ」
探索魔法を発動すると、周囲に広がった魔力が建物の配置や移動する反応を捉えていく。
「……お?」
早速、複数の反応がこちらへ近づいてきた。
どうやら、エージェントたちのお出ましらしい。
「それじゃあ、行きますか!」
俺は軽く地面を蹴り、その場から駆け出した。
◇◆◇◆◇
開始から数分。
俺は既に何度かエージェントたちと遭遇していた。
「いたぞ! 確保しろ!」
「おっと!」
背後から伸びてきた腕を半身になってかわし、続いて迫ってきた別のエージェントの拳を受け流す。
そのまま相手の手首を掴み、踏み込んできた勢いを利用して身体を捻った。
「ほいっと!」
「うわっ!?」
エージェントの身体が宙を舞い、地面へと転がる。
もちろん、怪我をさせないように力加減はしている。
今回の目的はあくまで逃走だ。必要以上に相手を痛めつける理由なんてない。
「悪いね!」
そう声をかけ、俺は再び走り出した。
背後から追いかけてくる足音が聞こえるが、今のところ速度を上げる必要はなさそうだ。
エージェントたちもそれなりに鍛えられているようだが、こちらを捕まえるには少々速度が足りない。
「さて、次は……っと!」
前方の路地から新たなエージェントたちが飛び出してきた。
どうやら、挟み撃ちにするつもりらしい。
「なるほどねぇ」
俺は軽く膝を曲げると、地面を蹴った。
魔力による身体強化を利用して跳躍し、近くの建物の壁へと足をかける。
そのまま壁を蹴り、屋上へと跳び上がった。
「なっ!?」
「上だ! 屋上へ回れ!」
下から慌てた声が聞こえてくる。
「いやぁ、ご苦労様です」
思わず苦笑しながら、俺は隣の建物へと跳び移った。
さて、これでしばらくは追跡を振り切れるかな?
◇◆◇◆◇
『おおっと! ヒエン選手、またしてもエージェントの追跡を振り切ったぁ!』
実況の声とともに、会場の大型モニターには建物の屋上を軽快に駆け抜けるヒエンの姿が映し出されていた。
『ここまで何度も追跡を受けていますが、いまだに捕まる気配がありません!』
『いやぁ、見事ですね』
解説者が感心したように頷く。
『単純な身体能力も優れていますが、それ以上に周囲の状況判断が素晴らしい。相手の人数や位置を把握し、常に逃走経路を確保しています』
『なるほど!』
『それに、必要以上に速度を上げていません。あれなら体力の消耗もかなり抑えられているでしょう』
『ということは、まだまだ余裕があるということですね!』
『そう見ていいと思います』
その言葉を裏付けるように、画面の中のヒエンは随分と気楽な様子で屋上を移動していた。
◇◆◇◆◇
ヒエンside
「ふぅ……」
俺は建物の屋上で足を止め、周囲を見渡した。
残り時間は二十五分ほど。
まだ始まったばかりだな。
「……しかし、長いなぁ」
いや、別に疲れているわけじゃないんだけど。
今のところ、追いかけられては逃げるの繰り返しだし、少々単調になってきた。
「相棒、どう思う?」
「ガウ……」
肩に現れたヒッツが、何とも言えない表情で鳴いた。
「いや、分かってるって。油断はしないよ」
そう答えたところで、ふと気配を感じた。
「……ん?」
屋上の出入り口へ視線を向ける。
直後、扉が勢いよく開いた。
「見つけたぞ!」
「確保しろ!」
三人のエージェントが飛び出してくる。
「うおっ!? もう見つかったの!?」
おかしいな。
結構距離を取ったつもりだったんだけど。
まあ、いいか。
俺は飛びかかってきた最初の一人をかわすと、続く二人目の足を軽く払った。
さらに三人目の腕を受け流し、その脇をすり抜ける。
「じゃ、お先に!」
そのまま屋上の端から飛び降りた。
「なっ!?」
背後から驚きの声が聞こえる。
俺は落下しながら身体を捻り、建物の壁を蹴って落下速度を調整すると、向かい側の建物へと着地した。
「よっと!」
着地の衝撃を逃がし、そのまま走り出す。
さて、次はどこへ行こうかな。
◇◆◇◆◇
それから、さらに数分が経過した。
「……ふむ」
俺は路地の途中で足を止め、周囲の気配を探った。
どうやら、エージェントたちの動きが少し変わってきたらしい。
先ほどまでは、こちらを見つけると真っ直ぐ追いかけてくることが多かった。
しかし、今は違う。
こちらが逃げ込む方向を予測し、あらかじめ別の部隊を配置しているようだ。
「なるほどねぇ……」
単純な追跡だけでは捕まえられないと判断したわけか。
なかなか考えてるじゃん。
俺は感心しながらも、近くの路地へと駆け込んだ。
すると、案の定。
「いたぞ!」
「確保!」
前方から数人のエージェントが姿を現した。
さらに背後からも追っ手が迫ってくる。
「おっとっと!」
俺は地面を蹴ると、右側の壁へ足をかけた。
そこから反対側の壁へ跳び、さらにもう一度壁を蹴る。
「なっ!?」
驚くエージェントたちの頭上を越え、そのまま包囲網の外へ着地した。
「悪いね!」
そう声をかけて走り去る。
いやぁ、こういう地形を利用した移動って、結構楽しいんだよな。
もっとも、向こうにしてみればたまったものじゃないだろうけど。
そのときだった。
『おおっと! ここで一人目の挑戦者が確保されたぁ!』
会場に実況の声が響き渡った。
「……あらら」
どうやら、他の参加者が捕まってしまったらしい。
まあ、あの人数を相手に三十分間逃げ続けるのは、普通に考えればかなり大変だろう。
「残念だったなぁ……」
俺は小さく呟くと、再び走り出した。
残る参加者は俺を含めて二人。
さて、もう一人はどうしているかな?
◇◆◇◆◇
『さあ、残り十五分! ここからはエージェントの数をさらに増やしていくぞ!』
「……まだ増えるの?」
GMの声を聞き、俺は思わず顔をしかめた。
いや、確かに最終ステージなんだから、途中から難易度が上がるのは分かるけどさ。
それにしたって、さっきから随分と増援が多くない?
『はっはっは! ここからが本番だと思ってくれたまえ!』
「元気なこって……」
俺は呆れながら周囲を見回した。
建物の屋上、左右の路地、そして正面の大通り。
次々と黒いスーツを着たエージェントたちが姿を現している。
「……ふむ」
さすがに人数が増えてきたな。
別に、このままでも逃げ切れないわけじゃない。
ただ、せっかく魔法の使用が認められているんだ。
そろそろ、こちらも準備を整えておこうか。
「よし!」
俺は軽く両手を打ち合わせた。
「相棒、セットアップするぞ!」
「ガウッ!」
肩に乗ったヒッツが元気よく鳴いた。
それを合図に、俺は体内の魔力を循環させると同時に、死ぬ気の炎を燃え上がらせた。
ボウッ!
額にオレンジ色の炎が灯る。
「フルドライブ」
足元にオレンジ色の魔法陣が展開され、そこから放たれた光が俺の全身を包み込んだ。
身に着けていた服が光の粒子へと変わり、代わりに黒いズボン、白いカッターシャツ、黒いベスト、黒いネクタイが形成されていく。
さらに黒いジャケットが構築され、全身を包んでいた光が収まった。
「真・スピリットフォーム」
セットアップ完了。
体内を循環する魔力がリヴィジョンシステムによって安定し、死ぬ気モードによって引き出された身体能力と相まって、全身に力が満ちていく。
「問題なし」
軽く拳を握り、開く。
やっぱり、この状態の方が動きやすいな。
「さて、と……」
俺は改めて周囲を見渡した。
エージェントたちは既に包囲網を形成しており、こちらの動きを警戒しているようだった。
「それじゃあ、第二ラウンドといきますか」
◇◆◇◆◇
『おおおおっと!? ここでヒエン選手がセットアップしたぁ!!』
実況者の声が会場に響き渡る。
『先ほどまでの服装から一転、黒いスーツ姿へと変わりました! さらに額にはオレンジ色の炎が灯っています!』
『あれはバリアジャケットですね』
解説者が興味深そうにモニターを見つめた。
『ただし、一般的なバリアジャケットとは少々異なるようです。身体能力の強化に加え、体内の魔力循環を補助する機構が組み込まれているのかもしれません』
『なるほど! つまり、ここからがヒエン選手の本領発揮というわけですね!』
会場から歓声が上がる。
一方、その様子をテレビで見ていたなのは、フェイト、はやての三人も、画面に注目していた。
「あ、ヒエン君がセットアップした」
なのはが声を上げる。
「うん。あの姿になると、ヒエンはもっと速く動けるようになるんだよね」
フェイトも頷いた。
「せやなぁ。それにしても……」
はやては画面を見ながら苦笑する。
「ヒエン、随分楽しそうやなぁ」
「にゃはは……まあ、ヒエン君らしいけどね」
なのはも苦笑した。
もっとも、三人ともヒエンの実力をよく知っている。
あれだけの人数に囲まれていても、彼が簡単に捕まるとは思っていなかった。
◇◆◇◆◇
### ヒエンside
「さて、それじゃあ……」
俺は軽く腰を落とし、両手を構えた。
周囲には数十人のエージェント。
さらに後方からも増援が迫っている。
「行きますか」
直後、エージェントたちが一斉に飛びかかってきた。
俺は最初の拳を半身になってかわし、続く相手の腕を受け流した。
そのまま一歩踏み込み、掌底を相手の胸元へ軽く当てる。
「ほい」
「ぐっ!?」
相手が後ろへよろめき、後続の足が止まった。
その隙間へ身体を滑り込ませ、左右から伸びてきた腕をかわす。
さらに背後から迫る攻撃を、超直感によって捉えた。
「っと!」
振り向くことなく身体を沈めると、頭上を拳が通り過ぎる。
そのまま相手の軸足を払い、体勢を崩したところで軽く背中を押した。
「うわっ!?」
倒れ込んだエージェントが後続の進路を塞ぐ。
「よし!」
その隙に包囲網を抜けようとしたのだが。
「逃がすな!」
前方にいたエージェントたちが横一列に並び、進路を塞いできた。
さらに後方からも追っ手が迫る。
「なるほどねぇ……」
なかなか連携が取れてるじゃん。
だったら、こっちも少し魔法を使わせてもらおうか。
「チェーンバインド」
右手を振ると、オレンジ色の魔力鎖が複数伸び、前方のエージェントたちの身体を拘束した。
「なっ!?」
「悪いね。ちょっと通してもらうよ!」
俺は地面を蹴り、拘束したエージェントたちの頭上を跳び越えた。
着地と同時に、足元へ魔力を集中させる。
「ソニックムーブ」
瞬間、身体が一気に加速した。
周囲の景色が後方へと流れ、エージェントたちの姿がみるみる小さくなっていく。
「よし」
この調子なら、十分逃げ切れそうだ。
……もっとも。
『さあ、残り十分! ここからはさらに追跡部隊を投入するぞ!』
「……また増やすのか?」
『当然だとも!』
「お前、どれだけ俺を捕まえたいんだ?」
『それがこのゲームの目的だからね!』
「そりゃそうだけどさ」
俺は思わず苦笑した。
しかし、次の瞬間。
「……おいおい」
周囲の建物の屋上に、次々とエージェントたちが現れた。
さらに、通りの向こうからも大量の黒スーツの男たちが押し寄せてくる。
「……多いなぁ」
いや、本当に。
どれだけ用意してるんだよ。
『さあ、頑張りたまえ!』
「はいはい」
俺は軽く息を吐き、右手を掲げた。
「それじゃあ、ちょっと派手にいこうか」
魔力を集中させると、周囲に五つのオレンジ色の魔力弾が出現した。
「フレアレイ!」
放たれた魔力弾が、それぞれ別の方向へと飛翔する。
狙いはエージェントたちの足元。
直撃させる必要はない。
進路を塞ぎ、足を止められれば十分だ。
ドドドドドンッ!!
着弾と同時に小規模な爆発が発生し、エージェントたちの足が止まる。
「よし!」
俺はその隙に駆け出した。
だが、前方の路地から新たな追っ手が姿を現す。
「おっと」
だったら、こっちはどうだ?
俺は左手を地面へ向け、魔力を流し込んだ。
瞬間、地面に白い霜が広がり、エージェントたちの足元が凍りつく。
「うわっ!?」
「足元に気をつけろよ」
慌てて足を止めるエージェントたちを横目に、俺は建物の壁を蹴って屋上へと跳び上がった。
そこから隣の建物へと跳び移り、さらに距離を取る。
「ふぅ……」
さすがに、これだけの人数を相手にするとなると、なかなか忙しいな。
まあ、まだ余裕はあるけど。
そう思ったところで、再び実況の声が響き渡った。
『ああっと! ここで二人目の挑戦者も確保! 残るはヒエン選手ただ一人となりました!』
「……あらら」
とうとう俺だけになっちゃったか。
『さあ、これでエージェントたちの追跡がヒエン選手に集中するぞ!』
「……ん?」
ちょっと待て。
つまり、今まで他の二人を追いかけていた連中も、全部こっちに来るってこと?
「……マジかよ」
俺は思わず遠い目をした。
「こりゃ、ますます面倒になりそうだな……」
◇◆◇◆◇
それから数分後。
「……ふむ」
俺は建物の屋上で足を止め、周囲の気配を探った。
どうやら、エージェントたちは本格的にこちらを包囲するつもりらしい。
さっきから追跡が妙にしつこいと思っていたが、単純に人数が増えているだけではなかった。
俺が逃げ込む方向を予測し、先回りして部隊を配置している。
しかも、こちらが進路を変更すると、それに合わせて別の部隊が移動してくるのだ。
「なるほど……」
なかなかやるな。
もっとも、こちらも簡単に捕まるつもりはない。
「さて、どうするかな……」
周囲の反応を確認しながら、次の移動先を考える。
そのときだった。
『さあ、いよいよ残り五分!』
GMの声が響き渡る。
「おっと、もうそんな時間か」
あと五分。
ここまで来たら、何としても逃げ切りたいところだ。
俺は屋上から飛び降り、広場へと着地した。
そして、周囲を見回す。
「…………」
思わず言葉を失った。
そこには、無数のエージェントたちが立っていたのである。
右も左も、前も後ろも。
さらには建物の屋上にまで、黒いスーツを着た男たちがびっしりと並んでいた。
「……おいおい」
俺は思わず呟いた。
「これ、何人いるんだ?」
『現在、君を包囲しているエージェントは――』
GMが愉快そうに笑った。
『数千人だ!』
「…………」
俺はしばらく無言になった。
そして。
「ふざけんなぁぁぁぁぁ!!」
思わず絶叫したのだった。
また投稿しますー。
では、また∠( ゚д゚)